田舎では野良たぬきが車に轢かれることがそれなりに起こる。
滅多に車が通らないせいで「どうせ車は来ないし…」と油断して、車道のど真ん中を歩くたぬきが多いのだ。
そして今日もまた一匹……


「今日はどこからお野菜を採るか悩むし…あっちの畑はなんかヤバそうな柵がついたし…」
この畑泥棒の計画を立てている野良たぬきも車道を歩いていた。
下手に山の中を歩き回るよりも、車道の方がもどきに遭遇する確率が低いという理由もあるらしい。

「しかし…どうしてお野菜を採ったら怒るのかわからないし…生えてるものだから勝手に採ってもよくないし？」
生まれてからずっと野良たぬきだったせいで、人間の価値観がわからないようだ。
一匹で悩んでいても解決するはずのない問題に、たぬき如きのスカスカの頭で無駄に集中していたせいだろう。
後ろから迫っていた車の音に気付かず……

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ……ﾄﾞﾝｯ！
「だうぅっ！？」
「うわっ！たぬき轢いちまったよ…洗車しないとな…クソが…」
ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ……

野良たぬきは車に轢かれてしまった。
胴体はタイヤに轢き潰され、上半身と下半身が辛うじて皮一枚で繋がっているような状態だ。
口からは血やら泡やら内蔵やら、とにかく吐き出せるもの全てを吐き出していた。
もちろん呼吸なんてできておらず、微かに残っている気力だけでどうにか生きている。

(まずいし…どう考えても死ぬし…アレをやるしかない…し……)
野良たぬきは念じると同時に息絶え、併せてどこからともなく子たぬきが現れた。
それに留まらず、子たぬきは野良たぬきの死体に勢いよく飛びかかり、そのまま貪りついた。

「ｷｭｰ♡」ﾑﾁｭﾑﾁｭ
子たぬきは余すところなく野良たぬきの死体を貪っていく。
すると、食べていくうちに凄まじい勢いで成長し、顔つきも(たぬき基準で)一気に変わっていき……
「どうにか食べきったし…ｹﾞｯﾌﾟ…し…」
食べ終える頃にはすっかり大人たぬきとなり、顔は野良たぬきと(たぬき基準でも)同じ顔になっていた。

「危ないところだったし…まぁ元の身体は死んだけどし…」
たぬきの身体はションボリの塊のようなものである。(たぬき談)
その特性を利用して、リポップで生まれた子たぬきに自分の死体を食わせることでションボリを移植。
つまり、疑似的な転生……たぬきの言葉で言うなら「記憶引継ぎリポップ」のようなものを実現したのだ。

「噂には聞いていたけどまさか本当にできるとは思わなかったし…やってみるもんだし…」
この通りいい加減な生態をしているおかげで、その気になればリポップの制御すらできたようだ。

「安心したら眠くなってきたし…お腹いっぱいだし………………ﾀﾇｰ…ｽﾋﾟｰ…zzz…」
死の危機から脱したおかげで安堵しきったのか、たぬきは眠りについてしまった。
しかし、ここは依然として道路のど真ん中である。なので……


ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ……ﾄﾞﾁｭｯ！
「ｷﾞｭｶﾞｯ！？」
「あ"ぁ"っ！？なんだ…たぬきか…」
ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ……

今度は即死だった。もちろんリポップ制御なんてできる時間は無かった。
頭をぐちゃぐちゃに潰され、目玉や小さな脳味噌が辺りに飛び散っている。
結局のところ、野良たぬきの窮余の一策は死体を無駄に増やすだけの結果に終わったのだった……