「あの黒い線はなんだし…？」
「電線だし…あれで街中に電力…人間の家の中を明るくするためのションボリを供給するんだし…」
「ぶーぶーについて知りたいし…」
「ぶーぶー…車のことし？あれは人間が遠くに移動したりするための道具だし…」

ションボリとした気の抜けた顔をしたたぬきたちが公園に集まっている
薄汚れた服持ちもいれば服のない全裸の野良たぬきまでいる
その中で中心になっているのはもこもことした着ぐるみのようなくるみルフくんを着ているたぬきであった
野良と違ってもっちりとした頬から人間に飼われている事は明白のたぬきではあるがどうやら野良からの質問にどんどん答えているようだった

「…さっきから見ていたけどお前何やってるの？」

質問したい事を終えた野良たぬきたちが去って行った後、それを遠くから飼い主はたぬきに問う
ここのところ公園に連れて行けば野良たぬきに囲まれている事をよく見かけ、こっそりと眺めていたようだった

「そこまで大したことじゃないし…野良だと分からない知識を与えてただけだし…たぬきたちも知りたい事が知れて満足だし…」

たぬきの大半は野良として暮らしているが、それでも住んでいる場所は人間社会だ
一部のたぬきを除けば人間の道具や常識を知らぬ者も多く、そのために無用なトラブルを招くことも多い
もしくは個人の好奇心や知識欲も刺激されて知らない事を知りたがる者もいる
何せたぬきは生命力があるが死にやすい
スラムとして成り立つ群れが産まれて一週間後には壊滅していることも珍しくないからだ
そのため知識の継承は難しいので物知りの同族は貴重な存在であった

「ふぅん…それで良い事あるのか？」
「教えられるたぬきは満足感があるからうぃんうぃんだし…教えられたたぬきは生かせずにだいたい死んでるからその辺は別にないし…」

あまりにもあまりな無情な答えに飼い主もその先の言葉が詰まってしまった
後日、公園にいた野良たぬきがここ最近の寒波によって全滅していた知らせを知って「ああ、こういうことか」と納得はする
そして公園に新しくポップしたたぬきたちの質問に答えるくるみルフくんたぬきがいたが、その顔はションボリながらも満足気であった