たぬき

それは人とも狸ともつかない謎の生物
二頭身のモチモチとした肉体を持ち、緑色の勝負服と呼ばれる衣服を纏い、ションボリとした雰囲気を纏った不思議な存在
身体特徴は雌のようだが生殖はせず、代わりにポップ・リポップという謎の生態を持ち、生物としてまことに脆弱でありながら爆発的な繁殖力を持っている
人間にとっての認識はかわいいゆるキャラ、安価なペット、不愉快な生物、方々に迷惑をかける害獣…とさまざまである
だが最近そこに「食用」という新たな認識が生まれつつある
曲がりなりにも人型のこの生命体を食べようという発想に至った経緯はさておき、所謂「たぬ食」需要は近年急速に広まっている
独特のモチモチとした食感やクセのない味わい、そして低カロリーなおかつ安価であることに目が付けられたのだ
とはいえたぬ食はまだまだ歴史の浅い、手探りのジャンルである
そこで我々は「4本足は机以外、2本足は親以外、空を飛ぶものは飛行機以外、泳ぐものは潜水艦以外」の全てを胃袋に収める、と称される中国の食文化の助けを借りることにした
今回は四千年の歴史が誘う、魅惑の食文化をご紹介しよう

『～たぬ美食を求めて～』



しがないフードライターの私は近頃人気のたぬ食を提供するという店にアポを取り、そして横浜中華街へと足を運んだ

「你好(ニイハオ)！」

店に入ると人懐っこい笑みを浮かべた中年の男性が現れた
横浜中華街に居を置く中華料理店、処无堀飯店の総料理長俊 安岐氏だ

「本日はよろしくお願いします」
「たぬき料理の取材したいね？　遠慮なく見てって」

俊氏はカタコトの日本語で喋りながら厨房へ案内してくれた

「たぬき、とてもいい食材ね。中華の技法で、もともとおいしなる」

厨房には大量の水槽が並んでおり、その中にはちびたぬき・子だぬき・成体たぬきと大きさ順に分けられ、ぎゅうぎゅうに詰められている

「せまいし…出せし…」
「押すなし…もうモチモチしたくないし…」
「ダヌッ!　今しっぽ踏んだの誰だしぃぃぃ！」
「ただでさえ狭いんだし…ジタバタするなし…」
「ﾏﾏ…ﾄﾞｺﾀﾞｼ…？」
「ｵﾅｶｽｲﾀｼ…ﾓｳﾔﾀﾞｼ…」
「ｷｭｰ…ｷｭｰ…」
「ﾂﾌﾞﾚ…ｼﾞ…」
「ちゃんとした業者から仕入れたみんな清潔たぬきよ。絶食させて糞抜きも済ましたね」

たぬきは大きさごとに分けられ、水槽の中で狭そうにションボリし合っている
ここまで密着していれば却って喧嘩や脱走の心配もないのだろう

「料理によてたぬきの大きさ変えるよ。一口で食べる料理ならちび、もと食べ応え欲し料理なら子、メインディッシュなら成体ね」

俊氏の準備も整ったようだ
厨房には様々な調理器具や調味料、そしてたぬきたちが並んでいる



「まずは酔貉(ツェイハオ)ね。これはたぬき、酔ぱらわせる料理よ」

俊氏が取り出したのはガラス製の透明な鍋だ
この中に手の平サイズのちびたぬきたちを、勝負服を剥ぎ取りながら次々と放り込んでいく

「ｷﾞｭッ!」
「ｷﾞｮﾌﾟ!」
「ｲﾀｲｼｨ…!」
「ｺｺｶﾗﾀﾞｼﾃｼｨ…!」
「ｷｭｰ! ｷｭｰ!」

鍋の中が裸のちびたぬきでいっぱいになり、痛みにうめいてモゾモゾジタバタと短い手足で蠢いている
そこに甘いカラメルの香りが漂う紹興酒が注がれた

「ﾀﾇｯ!?　ﾅﾆｺﾚｼ…」
「ｼｯﾎﾟﾓﾇﾚ…ｶﾞﾎﾞﾎﾞｯ!?」　
「ｶﾞﾎﾞｯｶﾞﾎﾞｯ…ｵﾎﾞﾚ…ｼ…」
「ｱｯﾌﾟｱｯﾌﾟ…ｺﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞ…!」

鍋の中が琥珀色の液体で満たされ、溺れたちびたぬき達がジタバタともがいている
当然しっかり蓋されているのでちびが逃げたり酒がこぼれたりする恐れはない

「これで終わり。たぬきが紹興酒飲んで酔ぱらったら完成ね」

あっという間に1品完成してしまった
流石の手際である



「次は貉血旺(ハオシュエワン)よ。たぬきの血使った激辛スープね」

次に俊氏は30cmほどの子たぬきを鷲掴みにした

「さわるな…」

不満げな顔でジタバタするたぬきに構わず、俊氏は身に纏っている勝負服をはぎ取る

「ﾀﾇｯ!?　いやーん、し…」

子たぬきは顔を赤らめて、露になった平らな胸や子供の落書きのような陰部を手で覆い隠す
だが俊氏は一切気にも留めず、そのまま流れるような手さばきでたぬきをまな板に押し付けると、その首を中華包丁で断ち切った

「ｸﾞｪ」

間抜けな声と共に頭を失ったたぬきの胴体が狂ったようにジタバタし始める
俊氏は胴体を逆さに持ち上げ、首の断面から流れ出る血をボウルに貯めていく

「たぬきの血、とても精つくね。でも豚や鴨よりクセない、食べやすい」

首の断面からドクドクと血が滴り落ちるのに合わせて、胴体が激しくジタバタしている
―――粗方血が出尽くすと、ジタバタも収まって小刻みに痙攣するだけになった
血を流し尽くした胴体の腹を裂いて内臓を取り出し、きれいに洗いって身と共にぶつ切りにしていく

「かえしてし…たぬきの胴体…かえせぇ…」

頭だけで怨嗟の声を絞り出すたぬきの生命力には驚きを通り越して呆れる
もちろん俊氏の手さばきが止まることはない
あっという間にたぬきの血のスープが出来上がる
四川唐辛子と花椒がたっぷりと入り、グツグツと煮えたぎった真っ赤なスープにたぬきの頭とぶつ切りのたぬきモツとたぬき肉を投入する

「ｯｱｯﾂ゛ｩｩｩｩｩ!!!　ｱﾂ゛ｩ!!　ｲﾀ゛ｲ!　ｱﾁﾞｲ!　ｲﾀ゛ｲｨ!　ｲ゛ﾀ゛ｲ゛ｨ゛ｨ゛ｨ゛ｨ゛ｨ゛!!!」

さっきまでションボリしていたたぬきの生首が目を見開いて叫んでいる
しかし頭だけではジタバタすることも叶わず、哀れにも灼熱と激辛の地獄の中で煮込まれるしかない



「お次は三套貉(サンタオハオ)ね。ちょと変わたたぬきの煮込みね」

成体たぬき、子たぬき、ちびたぬき
それぞれ大きさの異なるたぬきが1匹ずつ並べられた
調理前にやはりこいつらの勝負服も剥ぎ取られており、裸のたぬき共が身を寄せ合ってションボリしている姿は何ともみすぼらしい

「ｺﾜｲﾁ…」
「ママ…たぬきたちどうなっちゃうし…？」
「大丈夫だし…ママが守ってやるし…」

どうもこいつらは家族であったらしい
こんな偶然もあるものだ
無論ここでためらう俊氏ではない

「ｷｭｳｳｳﾝ! ﾏﾏｧ! ﾀｽｹﾃﾁｨ!」
「ママー！　たすけてしぃぃぃぃ！！」
「あぁ！　放すし！　たぬきのちびと子を返せしぃぃぃぃぃ！！！」

俊氏はちびたぬきと子たぬきをそれぞれの手で掴み上げた
そしてジタバタする子たぬきの陰部に、ちびたぬきの頭をめり込ませる

「ぎぃぃぃぃぃぃ！！！　い゛だい゛ぃぃぃぃぃぃぃ！！！　だぬぎのながにぢびがはいっでぐるぅぅぅぅぅぅ！！！」
「―ｯ! ――ｯ!　―――ｯｯｯ!!!」
「ちびぃぃぃぃぃ！！！　子たぬぅぅぅぅぅぅぅ！！！」

プチプチと音を立てながら子たぬきの陰部が裂け、ちびたぬきの体が挿入された
声も出せないちびたぬきは全身を苛む圧迫感にジタバタすると、全身を貫くような激痛が子たぬきを襲う

「ｷﾞｭｱｱｱｱｱｱｱ!!!　やめるじぃ！！！　ジタバタしちゃだめｷﾞｬｱｱｱｱｱｱｶﾞｶﾞｶﾞｱｱｱｱｯｯｯ!!!」
「なんてことするんだしぃぃぃぃぃぃ！　やめろし！　やめろぉ！　ダヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！！！」

ちびと子の惨状にダヌー癇癪で抗議する成体たぬき
無力なたぬきなりに精一杯の抵抗であろうが、見苦しさ以外に何の意味もない行為だ
続いて俊氏はひっくり返ってジタバタする成体を鷲掴んだ

「ダヌー！　さわるなぁ！」
「ｷﾞﾋｨｨｨ…ぽんぽんいたいしぃぃぃ…うごがざないでぇ…ﾀﾞﾇｯ…!!!」
「…ｯ! …ｯ! …ｯ!」

歯を食いしばりながら痛みに耐える子たぬき
その腹はまるで妊婦のようにぽっこりと膨らんでおり、胎内でちびたぬきが蠢く度にうねうねと変形し、耐え難い苦しみに目を血走らせる
俊氏はその子たぬきの頭部を、今度は成体たぬきの陰部に当てがった

「ひっ…や、やめるし…たぬきのまんまんにひどいことしちゃ駄目だし…！」

恐れ慄く成体たぬきに構わず、子たぬきを無理やりねじ込んでいく

「ダッヌウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛！！！！！」

子たぬきとちびたぬきより、成体たぬきと子たぬきの方がサイズ差が小さく、まんまんへの負荷が大きい
ブチブチと肉が引きちぎれる音と共に成体たぬきの絶叫が木霊する
…毎回この調子だと、たぬきを調理する厨房には防音加工が必要なのかもしれない

「ﾀﾞﾇｰ…ﾀﾞﾇｰ…ぎぃぃぃ…おまだ…さけぢゃっだぁぁぁ…おなが…パンパン…だじぃ…！」

息をするだけでも想像を絶する痛みが襲って来るのだろう
荒い呼吸を精一杯抑えて、成体たぬきは仰向けで浅い呼吸を繰り返している
平らな胸とは正反対に腹が極限まで膨れ上がり、裂けた陰部からは破瓜のごとく出血している
土鍋の中に横たわる受胎たぬきに構わず、水を注いで葱と生姜を加えた
おや、味付けはしないのだろうか？

「たぬきから濃くていいダシ出る。体に染みわたる最高のスープできる」

そうして土鍋を火にかける
次第に温度は上昇していき、水からお湯、そして熱湯へと変化すると受胎たぬきの苦悶の顔がさらに色濃くなる

「じぃぃぃぃぃぃぃ……！！！　あづぃぃぃぃぃぃぃ……！！！」

熱傷の責め苦にジタバタをしたくとも、動けばもっと辛いため、歯を食いしばりながらじっと耐えている
しかし、そんな成体たぬきの思いに反して胎内の子たぬき、そのまた胎内のちびたぬきが熱さに耐えかねてジタバタを始めた

「ぎっひいいいぃぃぃぃぃぃぃ！！！　ｷﾞｭｱｱｱ!!!　ｷﾞｭｸﾞｱｱｱｱｱ!!!　ｼﾞｲｲｲｲｲ!!!」

臓腑を直接抉るかのような激痛に涙と脂汗を滝のように流し、ついに成体たぬきがジタバタを始めた
しかし火が通ったことによりたぬきの肉体のタンパク質は凝固を始めており、緩慢かつ弱々しいジタバタが精一杯であった

「このまましばらく煮込むね」

並みの料理人ならたぬきの断末魔で参ってしまいそうなものだが、俊氏はどこ吹く風…いや、むしろやり遂げたかのような晴れやかな表情だ
これがプロというものなのだろう



「次はとっておきのご馳走、烤乳貉(カオルウハオ)よ」

今回使うのも成体たぬきだ
適当に見繕った3匹がまな板の上でションボリしている

「仲間の絶叫がここまで聞こえたし…まあまあいいたぬ生だったし…」
「たぬきたちも食べられちゃうし…？　せめておいしく食べてし…」
「みんな、最期にモチモチするし…モチ…モチ…」

そういってションボリしながらお互いモチモチと抱き合う
自らの運命を悟っても泣き叫んでジタバタしたり命乞いしたりダヌーしたりしない、達観したたぬきたちだ
だが俊氏のやることは変わらない
適当に1匹を手に取った

「放せし…さわるな…」

たぬきの決まり文句も意に介さず、成体たぬきを寝かせて足をこじ開ける
そして薄汚れたパンツをはぎ取ると直視に耐え難い、たぬきの陰部と肛門が露になった

「タヌ…？　み、見ないでし…恥ずかしいし…」

ションボリした顔を赤らめさせ、モジモジとした様子で照れるたぬき
俊氏の手には太くて頑丈そうな鉄棒が握られている
たぬきの肛門に狙いを定めると、一息に鉄棒を突き入れた

「殺(シャ)ッ！」
「ﾀﾞﾇｩｩｩｩｩｩｩｩｩｩ！！！？？？」

鉄棒がたぬきの肛門を突き抜け、たぬきの絶叫が厨房に響き渡る
目を血走らせ、歯を食いしばった苦悶の表情は先ほどまでのションボリさは微塵も感じさせない
俊氏の手さばきは止むことなく、グリグリと鉄棒をさらにたぬきの奥深くへと挿入していく

「殺ッ！　殺ッ！　殺ッ！」
「ｶ゛ｱ゛ｧ゛ｧ゛ｧ゛ｯ゛!!!　やめっ、やめるﾀﾇｩｩｩｩｩｯ!!!　やめろｵｫｫｫｫｫｫ!!!」

獣のような咆哮を上げて必死のジタバタで抵抗しているが、鉄棒はどんどんたぬきの体内を蹂躙し、突き進んでいく
そして―――

「殺ァ！！！」
「ﾀ゛ﾇ゛ｳ゛ｩ゛ｩ゛ｩ゛ｩ゛ｩ゛ｩ゛ｩ゛ｩ゛!!!　ｶﾞﾎﾞｯ、ｶﾞﾊﾞｯ、ｺﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞ…!」

たぬきの口から舌とヘシ折れた歯が飛び出し、血に染まった鉄棒が出てきた
文字通り見事に串刺しになったのだ

「一見乱暴でしょ？　でも骨や肉傷つけず綺麗に刺す、熟練の技要るね」
「ｵ…ｵｫ…ｧ…」

俊氏が自分の腕を叩いて朗らかに笑った
串刺しにされたたぬきは目を真っ赤に見開き、ピクピクと弱々しく痙攣している
鉄棒で突き出された舌がまるであっかんべーをしているようだ

「あ…あわわ…しぃぃぃ…！」
「や…やだしぃ…こんなのやだしぃぃぃぃぃ！！！」

想像をはるかに超える凄惨な光景に、残りの2匹が恐怖に怯えてジタバタしている
先ほどの余裕は何処へ吹き飛んだことやら

「やだぁ！　やだしぃ！　こんなのやだしぃぃぃぃ！！！　ダヌッ！　ダヌ！　ダヌ――――ッ！！！」
「助けてしぃぃぃ！！！　たぬき死にたくないしぃぃぃぃぃ！！！　ダヌゥゥゥゥゥゥ！！！」

「ｶﾞ…ｱ…ｱｱ…」
「ｺﾞﾎﾞ…ﾎﾞﾎﾞ…ｫ…」

手際よく3匹のたぬきの串刺しが出来上がった
おや？　調理前に勝負服は取らないのだろうか？

「服着たまま焼く、服に燃え移ってゆっくり焼ける。じっくり熱通る。美味しく焼ける」

成程、別に加虐趣味のためではないということか
串刺しになったたぬきは余熱の済んだオーブンの中に入れられる

「「「ｺ゛ｵ゛ｵ゛ｫ゛ｫ゛ｫ゛ｫ゛ｫ゛ｫ゛ｯ゛!!!　ｵ゛ｵ゛ｯ゛!　ｵ゛ｵ゛ｵ゛ｵ゛ｵ゛ｵ゛!!!」」」

たぬきのくぐもった悲鳴と共に香ばしい匂いが立ち込めてきた
これは出来上がりが楽しみだ



「最後はデザートね。これは三不貉(サンプーハオ)。作れる人、滅多いない幻のデザートよ」

子たぬきを手に取ると、服を脱がせる

「なにするし…かえせし…！」

当然ションボリ顔で不満を訴えるたぬきだが、水差しでシロップを飲ませるとすぐにニッコリ顔に変わる

「あまーし♪　あまーし♪」

裸にされたことも忘れてご満悦のたぬきをよそに、俊氏は熱した鍋に油を馴染ませる
そして子たぬきを持ち上げると鍋に放り込んだ

「あづいしいいいぃぃぃぃぃ！！！　こっ、ここから出すしいいいぃぃぃぃぃ！！！」

当然たぬきは熱された鍋の中でジタバタし始める
すると俊氏がお玉でたぬきをガンガン叩き始めた

「ｷﾞｬﾍﾞｯ!　ｺﾞｯ!　や、やめｷﾞｪ!　ｸﾞｴｯ!　ﾌﾞﾍﾞｯ!　やめろｵﾌﾞｯ!　ｷﾞｮｯ!　ｱﾍﾞｼｯ!」

ジタバタするたぬきを鍋の振りでコントロールしながら、お玉で力いっぱいたぬきを滅多打ちにしていく
いくらたぬきのモチモチとした肌でも熱と打撃の責め苦は耐え難いだろう

「ﾝｷﾞｮｯ!　ｹﾞﾌﾞｩ!　ｺﾞｹﾞｯ!　ﾌﾞｷﾞｮｯ!　ｹﾞﾍﾞｯ!　ﾌﾞﾌﾞｩ!　ﾎﾞｹﾞｯ!　たすけﾍﾞｪ!」

おっ？
お玉でボコボコに叩かれているたぬきが増してモチモチとした質感になっている
恐らく熱と打撲で体組織がズタズタになったのだろう
なめらかな餅のようになったたぬきが皿に盛り付けられた

「ﾀﾞ…ﾀﾞﾇｰ…ﾀﾞﾇｰ…ﾀﾞﾇｩ…」





こうして完成した俊氏渾身のたぬき中華がテーブルに所狭しと並べられている
ちょっとした満漢全席だ

「请用饭吧(召しあがれ)！　前菜の酔貉からね」

鍋の蓋が開けられると、紹興酒に漬けられたちびたぬきたちが顔を出した

「ﾅﾝﾀﾞｶ…ｲｲｷﾌﾞﾝﾀﾞｼ…」
「ｳｲ～　ｷｯﾂｯﾈ♪　ﾀｯﾇｯｷ♪　ﾋｯｸ…」
「ｱﾀﾏｶﾞｶﾞﾝｶﾞﾝｽﾙｼ…」

鍋の中では紹興酒をたっぷり吸って酩酊したちびたぬきがいい気分でうどんダンスを始めている
成程、これで酔貉…言わば酔っ払いたぬきという訳だな
では早速頂きます

「ｷｭ～?　ｷｭｯ!　ｷｭｰ!　ｷｭｰ!　ｷﾞｭｳｳｳｳｳ!!　ｷﾞｭﾍﾞｯ」

もちっとした表皮を噛みちぎるとプリっとしたちびたぬきの身が口の中で弾けた
すると紹興酒の豊かな香りとたぬきの何とも言えない風味が混じり合って…これは絶品だ
次はすぐに噛み潰さず、口の中で感触を楽しんでみよう

(ｷｭ～♪　ｳﾄﾞﾝ♪ ｳﾄﾞﾝ♪ ｳﾄﾞﾝ♪ ｽｰﾌﾟｯ…ｳｯ…ｳｨ～♪）

酔いで恐怖心が麻痺しているのだろうか、口の中でうどんダンスを踊っている
モチモチした肉感のちびが口内で動き回り、くすぐったいようななんとも言えない感触だ
試しにそのまま一息に飲み込んでみた
紹興酒の香りが鼻に抜け、しばらく腹の中でもモチモチした感触がしたがやがて「ｷﾞｭｱｱｱ! ﾄｹﾙｩｩｩ!!!」と腹の奥からちびの断末魔が響いた
たぬ食通が活きたぬきの生食を好むという理由を垣間見た気がする



「お次は貉血旺よ。とても辛いから気をつけるね」

次に真っ赤なスープに煮込まれたたぬきのぶつ切りと恨めしげな顔がやって来た

「ヒリヒリするしぃぃぃ…いだいしぃぃぃ…あづいしぃぃぃ…！」

真っ赤に煮えたたぬきの顔が苦悶の声を上げる
相変わらず出鱈目な生命力には驚かされるがとにかく頂こう
まずは見るからに辛そうな真っ赤なスープをレンゲで啜った
…辛い！
これは凄い辛さだ
唐辛子の突き刺すような辛さとビリビリと舌を痺れさせる花椒の辛さが突き抜ける
だが…この鮮烈な辛みの中に複雑な旨味も感じられ、何ともクセになる味だ
たぬきモツのコリコリとした食感と煮込まれたたぬき肉のもちもちプルンとした歯触りも絶妙である

「一番おいしい、頭よ」

俊氏の助言に従って、次はたぬきの頭を頂こう
よく煮込まれているため、頬肉を箸で突くと簡単にほぐれた

「ｲ゛ﾀ゛ｧ゛!　もうたべないでしぃぃぃ…！」

頬肉はたぬきの体で最もモチモチを誇る部位だ
きめ細かな肉質と蠱惑的な食感が絶品であった

「目玉おいしいね」
「ｷﾞｬｱ゛ｱ゛!　たぬきのおめめがぁぁぁ…！！！」

トロっとコリっとした食感で、強い旨味がある
中の固い水晶体だけ吐き出した

「舌も食べなきゃ」
「ｴﾚﾚﾚﾚｯ!!!　ﾝｰ!　ﾝｰ! ﾝﾝﾝｰ!!!」

たぬきタンは噛みしめるごとにしっかりとした肉の旨味とスープの味が絡み合って、えも言われぬハーモニーを奏でる

「脳ミソ、最高よ」
「ﾝ! ﾝﾝﾝ!!! ﾝﾝﾝﾝﾝﾝﾝﾝ!!!」

トロリとクリーミーな風味が辛いスープでヒリヒリする舌を優しく包んでくれる
生首たぬきは脳を半分ほど食べたところでようやく絶命したのか反応が無くなった
しかし段々体が火照ってきたぞ
たぬきの血の一滴まで味わい尽くせる、なんとも精のつく一品だ



「三套貉、これは優し味のスープね」

先ほどの貉血旺とは対照的な、芳醇な香りが漂う黄金色のスープだ
そしてその中でよく煮込まれた腹の膨れたたぬきが瀕死の状態で喘いでいる

「ダヌー…ダヌー…子たぬ…ちび…いきてるかし…？」

いい色に煮込まれ、ぐったりした様子でも腹の中の子どもたちを心配するのは母の愛のなせる技か
では早速頂こう
まずはレンゲでスープを一口…
おぉ…滋味深い優しい味わいに、濃厚な旨味が広がる絶品のスープだ
たぬきからこんなダシが取れるなんて思いもしなかった

「たぬきのお腹割って、子やちびの肉も食べるよろし」

早速箸で妊婦たぬきの腹を突いて破った
よく煮込まれているので箸で簡単にほぐれるのだ
すると中から妊婦子たぬきが現れる

「ﾀﾞﾇｰ…ﾀﾞﾇｰ…ﾀｽｹ…ｼ…」

そのたぬきの腹も破ると、今度はちびたぬきが現れた
まるでマトリョーシカだ
最奥部のちびたぬきから頂こう

「ｷﾞｭｱｱ…ﾏ…ﾏ…ｵﾈｴ…ﾁｬ…」

素晴らしく柔らかく、モチモチホロリと口の中で肉がとろける
次に子たぬきを頂く

「ｷﾞｨｨｨ…ﾏﾏ…ﾁﾋﾞ…ﾀｽｹ…ｼ…ｨ…」
「やめろぉ…ちびたちをぉ…たべるなぁ…！」

こちらはちびほど柔らかくはないが、その分旨味が濃い
親たぬきが抗議の声を上げるがそれだけだ
もはやその体は二度とジタバタすることもできないのだから
では最後に親たぬきを食べよう
肉質はちびや子とは比べるまでもなく固いが、旨味は一番濃厚である
成程、この調理法ならちびたぬき、子たぬき、成体たぬきのそれぞれ違う食感や味わいが楽しめ、それぞれのダシがお互いに染み込んでより旨味も増すという訳だ
よくぞこんなアイデアが考え付くものである

「じぃぃぃ…たぬき…たちが…なにを…した…ぁ…」



さぁ、遂にメインディッシュの登場だ
烤乳貉…たぬきの丸焼きが3匹運ばれてきた
「ｵ゛ｫ゛ｫ゛…ｵ゛ｵ゛ｵ゛…ｺ゛ｵ゛ｵ゛ｵ゛…」
「ｶﾞﾎﾞｫ…ｺﾞﾎﾞｫ…ｺﾞﾎﾞﾎﾞ…」
「ｵ゛ﾛｫ…ｵ゛ﾛﾛﾛｫ…ｵ゛ﾛﾛﾛｫﾝ…」

たぬきなのに綺麗な狐色に焼きあがった肉塊からは何とも香ばしい香りが立ち込めた
鉄棒で串刺しにされ、数時間かけてゆっくり焼かれたにも関わらずたぬきの口からは呻き声が漏れ、こんがり焼けた体は時折ビクっと動く

「これは皮おいしい。皮だけ食べる。残りの身はまた別の料理使うから取っとく」

モチモチしていた肌はパイや春巻きの皮みたいにパリっと焼き上がっていて、それを俊氏がナイフで切り分けてくれた

「ｵ゛ｰ…ｵ゛ｰｵ゛ｵ゛ｵ゛…ｵ゛ｵ゛…」
「ｺﾞ…ｺﾞ…ｺﾞ…ｵ゛…ｫ…」
「ｺﾞ…ﾛ゛…ﾋ…ﾃﾞ…」

3匹のたぬきの眼球から透明な液体が零れた
それが脂なのか、涙なのかはたぬきのみぞ知る
では満を持して…頂きます
…これは…うまい…！
この食感はサクサクでもパリパリでもない
シャク…？　サキ…？　何とも形容しがたい軽やかな歯触りが病みつきになる
敢えて乱暴に例えるなら究極にうまいポテトチップスとでも言うだろうか
この食感だけでご馳走と言っても過言ではない
そこに脂の甘み…旨味…これぞまさしくたぬ食の王様と名乗るに相応しい、究極の一品だ



「最後にデザート、三不貉よ」

先ほど散々叩きのめされたたぬきが皿の上で未だに荒い息でのびている

「ﾀﾞﾇｰ…ﾌﾆｬｰ…ﾀﾞﾇｰ」

これは…！？　
箸を入れたらたぬきの身がするっと千切れた
モチモチというよりは最早フニャフニャの感触である
骨や内臓の感触すら感じられない
なんとか箸から滑り落ちないように口に運ぶ
これは…？
まるで極限まで滑らかな白玉のような食感だ
だがまるで綿菓子のようにさらっと溶けて、一切歯に残らない
そして口にはカスタードのような素朴な甘さだけが心地よく残る

「隅々まで叩いてたぬきの骨も内臓も粉々しないと三不貉できない。私もこれできるようになるまでたぬき何匹も焦がしたり潰したりした」
「ﾌﾆｬｰ…ﾀﾞﾇｩ…ﾓﾁ…ﾓﾁｨ…」

成程
皿にくっつかず、箸にくっつかず、歯にもくっつかない三不貉という訳か
そしてこれを実現するためには絶妙な火加減と力加減が求められる
一見地味なようでたぬ食の粋とも言える料理であろう



食後に熱い烏龍茶を啜りながら、ふぅと一息吐いた
すっかりたぬ食と中華料理の奥深さを味わい尽くすことができた
そういえば、と今になって気づいたことがある
今日の料理のたぬきは全て生きた状態のまま食べるものだった
何か理由があるのだろうか？

「中国には同物同治という考え方ある。足が悪い時食材の足食う。内臓が悪い時内臓食う。たぬき生きたまま食べる、生きる力湧くね」

成程、たぬきの桁外れの生命力を食べることで自分のものにしてしまおうという訳か
俊さん、今日は本当にありがとうございました
ご馳走様でした

「再见了(さようなら)！」



こうして未知の食体験をした私は興奮冷めやらぬまま一気に記事を書き上げた
この記事が一大たぬ食ブームを巻き起こすだなんて、この時の私は想像もしていなかった―――