マッサージ機
それは現代の過酷な社会を歩む者の味方にして必需品
肩こりや腰痛に悩まされ、そうでなくても硬い肩は神経を圧迫し、頭痛を引き起こす事がある
そうした働きすぎた人の肉体をほぐすための道具は欠かせないものとなっていた

こけしのような形をしたマッサージ機を使い、肩からをほぐす男性が一人
普段からデクスワークをしているのだと分かる机の上には乱雑した書類やパソコンが置かれている
特に負担のかかる肩や首を和らげる事に余念がないのか、時折呻き声を出すあたりにマッサージの気持ちよさを味わっているようだった

「……前々から気になってたけどし…それ本当に気持ちが良いのかし…？」

そんな男の姿に疑問を浮かべるたぬきが一匹
男の飼うたぬきであり、ちょこんと男の膝に大人しく乗っている様は愛らしい
仕事の合間に頬をモチモチとされたりするのが仕事らしく、マッサージ機を使っていない空いた男の手はたぬきの頬をもにもにと弄られている
相応に付き合いが長く、愛されているのだろう
普段はたぬき以外の他者に触れようなら「さわるな…」とそっけない態度をたぬきもされるがままである

そんな飼いたぬきからの疑問に男は少し手を止めると、マッサージ機をたぬきに向けてみる
お前も使ってみるか、と
その提案をたぬきが受ければマッサージ機の先端がたぬきのモチモチの頬に触れる
ぐにりとちょっとした反発のある弾力を機器越しに受けながらもスイッチオン
振動がたぬきの頬から全身に伝わっているのか、小さなたぬきの体ごと揺れているように見えた

「おぉぉ…おぉぉぉおお！？ゆゆゆれれしぃぃぃ！」

もはや何を言ってるのかわからない
確かなのは全身モチモチボディのたぬきにとって、マッサージ機は全身をぶるんぶるんにさせるということだ
まるで水中の波紋が端から端まで伝わるかのように、一つの揺れが絶え間なく全身に広がる様は見ていて奇妙で面白い

ここで男は少し、悪戯心が芽生える
マッサージ機の振動の強さは「大」「中」「小」に分かれ、今は「小」の強さだ
これで一気に「大」にすればこのたぬきはどのような反応を示すのか？
膨れ上がった悪戯心はもはや留まらず、たぬきも気づかぬ間にマッサージ機の強さは「大」に切り替わった

「にゅしししい…？ぼぼぼぼぼぼぼぼ！！！しししんどががががぼあばば！」

今までが小さい波紋が頬から全身に伝わっていたのだとしたら、これはもはや海の波の如く頬から全身にぶるぶると伝わっていた
見た目で言えばぬいぐるみのようなションボリとしょぼくれたたぬきであるが、これではあまりの波の速さと大きさで顔の全容が分からないほどだ
面白いものを見たと言わんばかりに男も笑うが、マッサージ機のスイッチを切ろうと瞬間にたぬきの体が少し崩れたように見えた

「……たにゅっ」

その瞬間、たぬきの体が溶けたように崩れた
たぬきのモチモチの体も、緑色の服も、長い髪も、尻尾も
まるで複数の絵具を雑に掻き混ぜたような液体となってしまったのだ

同族で行うようなモチモチとは歯牙すらかけない、全身をぶるぶるとさせるマッサージ機
それはたぬきの体を文字通り蕩けさせ、気持ちよさのあまりに昇天するには十分すぎるほどの効力を発揮したのだった

なおこの後、うどんを用意することで液体だったたぬきはなんとか固形に戻って飼い主と仲良く食事を楽しむ事になる
しかしサナギにならずに一気に液体化した影響なのか、しばらく「たうき」のような訛った言葉になったそうな