豆たぬきは困惑していた。

この豆たぬきは公園に住んでいる野良の豆たぬきである。
公園で壁当てをしている少年をなんとなく見つめていた時のことだった。
少年はいきなり豆たぬきをむんずと掴んだのだ。

豆たぬきはこのままだとボールと同じように、壁に投げつけられるだろうことを瞬時に理解した。
「やめてし…投げないでほしいし…」
豆たぬきは必死に命乞いをしたが、少年は聞き入れる素振りなんて一切見せずに大きく振りかぶった。

瞬間、豆たぬきの脳裏に思い出が走馬灯のごとく駆け巡る。
今日みたいな雲一つない晴天の日に母たぬきに拾ってもらったこと。
曇りで気分が落ち込んでいた時に母たぬきとうどんダンスを踊ったこと。
雨で肌寒かった日に母たぬきとモチモチし合ったこと。

思い出は母たぬきと共に何かしていたものばかりであった。
豆たぬきは不意に母たぬきのことを呼ぼうとした。
それと同時に少年の手が振り下ろされる。

「マ"！」
豆たぬきは壁に叩きつけられ破裂した。