逃れようもない苦境。切羽詰まった立場。差し迫った窮地の状態。
「さてそれらを四字熟語で何というし…」

ちゃぶ台をたぬき3人で囲んでの食事時。
唐突なクエスチョンに何事かと思いつつも、もーんと考えるターボを見て回答を譲るたぬきである。
「…絶対絶命だもん！」
「何となく察したけど正しくは絶体絶命だし…絶は窮まる、体も命も窮まった状況と覚えるといいし…」
ターボの回答に次いでたぬきも幾つかの類義語を挙げてゆく。四面楚歌、風前之灯、窮途末路、焦眉之急、山窮水尽、等々。
「ピンチの見本市だもん」
「ピンチと言うには手遅れというか、既に剣ヶ峰を転がっちゃった感はあるし…しかし急にどうしたし」

唐突に語り始めたたぬきに、はたして何かしら窮地を連想させるような物があったかしらんと卓上を眺めてもう一人のたぬきが問う。
キライな食べ物があっただろうか。しかしターボの手前苦手でも我慢して食べてもらわねば。
「いや…それ自体思い付きからの連想だし」
そう言って汁椀をひとすすりするたぬき。
語形は違えど相似の意義。意識は違えど相似の形容。
類義語の有り様とたぬきの在り様に何かしら思うものでもあったのだろうかなどと思いつつも、とりとめのない話題こそまた茶飯事でもある。
食事の本旨を侵さぬ程度には、多少の歓談もまた良しだろうとしたたぬきは、「じゃあ何から思いついてそんな連想したし…？」と重ねて問うた。

問われたたぬきはというと。
「男女の仲の睦まじい事。極めて仲の親しい様だし…」
今度はそう言って小皿に箸を伸ばしたものである。
首を捻ってもんもんと考えつつも今度は答えのでないターボを見て、今一つぴんとくる問いでもないだろうとたぬきが答える。
「…落花流水とか比翼連理とか…双宿双飛に鴛鴦之契なんてのもあるし…」
そう列挙するたぬきであるが、ふと思うところがあった。今度の問いは四字熟語とは言っていない。
そうして箸の伸ばされた小皿を見て、もしやと察するところがあったのはやはり似た者同士の直感故か。いやしかしまさか。

「ちんちんかもかもとにんじんしりしりはリズムが似てるなってふと思っただけだし…」
そんなおそろしくどうでもいい事を言いながら人参を口に運ぶたぬきと語感に噴き出しけたけたと笑うターボを前に。
「色んな意味で噴飯ものだし…」
残るたぬきはしょんぼりと取り出した布巾でターボの飛ばした米粒を始末しながら、やはり食事はある程度静かにさせようと思うのだった。

「食事マナーを無礼るな…」
「ごめんなさいですし…」
「もうしわけありませんでしたもん…」

おわり