冬が来る頃に、火防たぬ（かぼたぬ）は火を注ぐ使命と戦装束、そして身の丈よりも大きい弓を携えて遠い地へと赴く。
その地の名はタヌリック。古き時代からあるそこには、かつてその身を燃やし火を存続させた薪の王と呼ばれる者がいるのだ。
道中、死に至ることが出来ぬ狂気の亡者たちの剣戟を掻い潜り、弾いて渾身の一撃を叩き込み……時に袋叩きにされてポムポム跳ね飛ばされながらションボリと拠点の篝火に戻る羽目になれど、やがて火防たぬは薪の王の玉座にまでたどり着いた。

石造りの神殿のような建造物、その中心に今は灰しか残っていない火鉢が据えられている。
それを見下ろすように巨大な玉座があり、そこには華美であった名残を遺す外套を身に纏った巨大な骸に似た怪物が座していた。
それこそ、薪の王であった。
薪の王との戦いは熾烈を極めた。薪の王の振るう炎を纏った剣と、彼の持つ杖から放たれる結晶に似た魔力の奔流が乱れ舞い、火防たぬに襲い掛かった。
その直撃を受けて幾度となく篝火まで跳ね飛ばされるハメになったが、ションボリこそすれど火防たぬは決して諦めなかった。
そうして幾度目かの戦い、薪の王が見せた微かな隙に、火防たぬは矢を乱れ撃ち。その一本が薪の王を穿ち貫いたかと思うと、彼は燃え尽きた炭のように崩れ落ちた。
ついに火防たぬは薪の王に勝利したのだ。

火防たぬは未だに燻り続ける薪の王の身体を持ち帰り、それを玉座に置くと、玉座の横に転がされていた熱で赤みを帯びた剣を取り上げて中央に据えられた火鉢に突き立てた。
薪の王の身体は燃え上がり、その火が火鉢に突き立った剣に集い……やがて、そこにたぬきの両手のひらに収まる程に小さな火が現れた。
火防たぬはその火を掬い上げると、傍にある炉へ放り込み、そして炉の扉を閉めて傍らのスイッチを押した。
すると、けたたましい音と共に炉は燃焼を始め、サーマルエネルギー供給施設が駆動し始めた。
モニターに状態を表示させると、全て異常無しを知らせる緑に染まる。火防たぬの使命が終わったのだ。
「あ゛ーやっとこさ終わったし…里に帰って風呂にでも入るし…」
火防たぬは一匹のたぬきに戻って里へと歩みを進めた。
たぬきが帰る頃には炉の冷却水が良い塩梅の温度になって里に噴き出すはずである。里の者はその正体を知らぬまま温泉として浸かるだろう。
火防たぬは冬の始まりと終わりの頃にこうしてサーマルエネルギー供給施設を稼働と停止をしているが、それを知る者は少ない。
そして夏場には別の冷却エネルギー供給施設を動かすたぬきがいることは火防たぬすら知らない……。