「あー、その……今日は実技を行うわけだが……」  黒板の前に、赤いジャージを身に纏った虎獣人が腕組みしながら立っている。  大柄で筋肉質かつ目付きが悪い彼の名は虎岡 賢吾(とらおか けんご)。男子校である星煌高校に勤めている、三十五歳の体育教師だ。  顔が厳ついのに加えて口調は荒く、地の底から響くような低音ボイスの持ち主であるため、初見で恐怖心を抱かない者は居ないはずだ。しかし、実際は生徒思いの優しい先生である。  虎岡先生は、運動が苦手な生徒に対しては段階的な目標を設定して、少しずつできる事を増やしていくように工夫しながら授業をしてくれる。  ざっくり言うと、運動神経が鈍い太った熊獣人である僕のような生徒でも、運動を嫌いにならないように気を遣って授業をしてくれるのだ。それに加え、授業以外の事でも親身になって相談に乗ってくれる。  僕──熊里 修也(くまざと しゅうや)は、そんな虎岡先生の事が好きだ。先生としても、それ以外の意味でも。 「今年度から、同性間性交実技の必修化が決定してだな……」  虎岡先生の目は泳ぎ、縞模様の尻尾は落ち着きなく揺れていた。  今、この教室内には大量の布団が敷き詰められている。普段、勉強のために使用している机や椅子は廊下に出ている状態だ。 「まどろっこしい言い方をしないで、今からホモセックスの授業をしますって言えよ、トラセン!」  教室の後ろの方に立つ狼獣人の生徒が放った言葉に、ドッと笑いが起こる。  この狼獣人──大狼 信彦(おおがみ のぶひこ)くんはあまり素行が良くない。暴力沙汰を起こす程の不良ではないが、遅刻や早退は当たり前。不真面目な同級生だ。 「ちゃ、茶化すな。これは真面目な授業なんだぞ。散々ニュースやらで報じられているから知っているだろうが、男同士の性交はメリットが沢山あってだな……」  男同士の性交──つまり、男同士のセックスは発情期の雄獣人が性犯罪を起こす確率を下げたり、多大な幸福物質が脳内で分泌されて精神的な病の発生リスクを減らす効果があったり……そんなメリットがある事が証明されている。  そのため、近年、この国は男同士でセックスを行う事を推奨しているのである。その一環として、今年度から高校二年生の男子生徒は実際に同性同士でセックスする授業を行うようになったわけだ。 「御託はいいからさっさと始めようぜ。オレ、女とはヤった事あるけど男とヤった事はないからちょっと興味があったんだよな」  やはり、大狼くんはチャラいなと思ってしまった。僕とは違い、すでに彼は童貞を卒業しているようだ。 「はあ……今日、お前らは隣の席のやつと性交するわけだが、ちゃんと互いを労われよ? 独りよがりな性交は絶対にダメだ」  虎岡先生は、大狼くんに向かって穏やかにそう言った。 「げっ! 隣のやつっちゅーと、ワイは大狼とヤらねばあかんのか」  僕に負けないぐらいに太った猪の獣人──猪田 三郎(いのだ さぶろう)くんが、がっくりと肩を落としている。 「マジか。オレ、豚とヤらないといけないのかよ」 「豚やない、猪や! このノンデリわんこ!」 「あ? 喧嘩売ってんなら買うぞ?」 「こらこら、喧嘩はやめろ!」  殴り合いの喧嘩が始まりそうになり、虎岡先生が二人の間に慌てて割り込む。  大狼くんと猪田くんは幼馴染らしいが、仲が悪い。  中学時代は猪田くんの方が素行が悪く、大狼くんは真面目だったそうだが、高校生になってからは何故か逆転したらしい。不思議だ。 「……ゴホン。クールダウンしたようだし、授業を再開するぞ」  ひとまず落ち着いた様子の二人から離れ、虎岡先生は黒板の前に戻った。 「性交の前に、忘れちゃならんもんがある。それがこれだ」  虎岡先生はジャージのポケットを弄り、薄く小さな正方形の物体を取り出した。 「男同士の性交で妊娠する事は無いが、性病のリスクはあるからな。だから、避妊具(コンドーム)を装着するのが推奨されている」 「どうせオレ以外は童貞だろうから別に着けなくてもいいんじゃないか?」 「どどど童貞ちゃうわ! ワイはこう見えても経験豊富で……」 「話の腰を折るな! とにかく、性交の前には必ずコンドームを装着するように! 分かったな!」  虎岡先生はそう言って、僕たちにコンドームを配布した。  今から、これを装着してセックスする。それを意識すると、僕の心臓が早鐘を打った。 「これ、どう着けるんや?」  猪田くんが首を傾げている。どうやら、コンドームを見たのは初めてのようだ。経験豊富とは一体……? 「今から教える。……コンドームの装着方法と肛門の解し方は、教師が実演して生徒に教えるようにとお達しを受けているからな」  それはつまり、今から虎岡先生が僕たちにあられもない姿を見せる事を意味している。期待と興奮で、僕の鼓動がさらに早くなった。 「……一回しかやらないから、真剣に覚えるんだぞ」  頬を赤く染めた虎岡先生が、ゆっくりとジャージのズボンを下ろす。  ──露わになった先生の男性器は萎えた状態でも太く、少し皮を被っていた。包皮に覆われていない亀頭の先端は、薄いピンク色。 「っ……!」  密かに想いを寄せている相手の秘部を見た。その事実に興奮した僕の下半身に、血が集中する。 「こ、この突起部分が精液だまりと呼ばれる場所でだな……」  包装を破ってコンドームを取り出した虎岡先生は、一物をぶらぶらと揺らしながら解説を開始した。 「まず、ここを指の腹でつまんで空気を抜く必要がある。精液だまりに空気が残ったままだと、摩擦で破れる可能性が高くなるからな」  僕もコンドームを取り出して、先生の指示に従って突起部分の空気を抜いた。 「空気抜きが済んだら、あとは勃起した男性器に装着するだけ……なんだが、少し待ってくれ」  虎岡先生は、コンドームを持っていない左手で自身の一物を掴み、荒々しく扱き始めた。 「うわっ、トラセンがオナニーしてやんの」 「し、仕方ないだろうが! 勃起させる必要があるんだからよ……!」  恥ずかしそうに顔を歪めながらも、虎岡先生は一物を扱き続ける。  やがて先生の一物の先端からは透明な汁が溢れ、彼が手を動かす度にぐちゅぐちゅと湿った音が響くようになった。 「よ、よし、これで着けられるな」  手淫が功を奏し、虎岡先生の一物は膨張して天を仰いだ。  先生の勃起した一物は迫力があって、いやらしくて……僕は思わず、ごくりと喉を鳴らした。 「コンドームの表側を上にして、亀頭の上に乗せる。そうしたら、後は両手でリング部分をコロコロと根元まで転がす。……これで、装着完了だ」  透明なコンドームを装着した虎岡先生は腕組みし、僕たちに一物をしっかりと見せつけてきた。けれどやはり恥ずかしいのか、視線は明後日の方向を向いている。 「や、やり方は分かったな? お前らも装着してみろ」  そう言われたものの、秘部を晒すのが恥ずかしいのか、クラスメイトは中々ズボンを脱ごうとしない。僕も、最初に脱ぐのは抵抗があるな。 「ええい! 男は度胸や!」  口火を切ったのは猪田くんだった。彼は勢いよくズボンを脱いで、先端まで皮を被った小振りな一物を曝け出した。 「うわ、ちっせ」 「やかましいわ! お前もさっさと脱がんかい!」 「バ、バカ! 脱がすな!」  猪田くんは大狼くんのズボンに手を掛け、一気に引き摺り下ろした。  露わになった大狼くんの細長い一物は、すでに天を仰いでいる。 「なんや、もう勃起しとるやんか。このスケベわんこが」 「う、うるせえ! お前もさっさと勃たせろや豚!」 「ぎゃー! ワイのデリケートゾーンを急に触るのはやめんかい!!」  大狼くんが猪田くんの小さな一物を掴み、勢いよく擦り始める。  彼らの大胆さに釣られたのか、クラスメイトは一人、また一人とズボンを脱いでいく。僕も、意を決して一気にズボンを下ろした。そして、虎岡先生の教えを思い出しながらコンドームを装着する。 「──よし、全員コンドームを装着したようだな!」  ややあって、クラスメイトはみんな勃起した一物にコンドームを装着したようだ。それを確認した虎岡先生は、細長いプラスチックの容器をクラスのみんなに配布した。 「こ、今度は男性器を受け入れる準備をするぞ。まず、これを使ってだな……」  虎岡先生は、プラスチック容器の蓋を開けて中に入っていたローションを自身の右手の人差し指に垂らした。そして、黒板の前に敷かれた布団の上で仰向けになり、大きく股を開く。  透明なコンドームがぴっちりと張り付いた一物。ずっしりとした睾丸。そして、キュッと閉まったピンク色の肛門が丸見えだ。 「ローションを纏った指を、ゆっくりと肛門に……っ、挿入、する……っ!」  ぐちゅりと湿った音を立てて、先生の太い指が肛門に飲み込まれていく。 「指の先端を挿入したら、あっ……ゆっくりと円を描くように掻き回しながら、んぐっ、奥まで挿入していってだな……ううっ」 「おいトラセン、喘ぎすぎだろ」 「お、お前らもやってみれば分かる……。つい、声が出ちまうもんなんだよ……っ!」  顔を真っ赤にした虎岡先生が、苦しげな吐息を漏らしながら指を動かし続ける。 「がっ、あっ、ある程度解れたら、適時ローションを追加しつつ、挿入する指を一本ずつ増やしていくんだ……! 三本くらい指が入れば、男性器を受け入れられるはずだ……っ!」  そう言って、虎岡先生は中指も肛門にゆっくりと挿入した。そして、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を鳴らしながら、円を描くように中を掻き回す。 「とにかく、痛みが出ないように注意しながら、ゆっくりと慣らしていくんだ……! さあ、俺のやり方を参考にして、お前らも慣らし始めろ……!」  そう言われたものの、目を潤ませながら自身の肛門を解す虎岡先生から、僕は目を離せずにいた。今は、彼の痴態を目に焼き付ける事に集中したい。 「よっしゃ! お前のケツはワイが解したるわ!」 「はあ!? 何でてめーに……うおおおおっ!?」  どすん、と大きな音が響いた。どうやら、猪田くんが大狼くんを布団の上に押し倒したらしい。 「へっへっへっ、今からお前はワイのデカチンを受け入れないとあかんのやぞ? じっくり慣らさんとなあ」 「クソッ、勃起したらバカデカくなるとか卑怯だろ……! 豚のクセに……!」  猪田くんの一物は膨張率が凄かったらしい。果たして、大狼くんは彼の一物を無事に受け入れられるのだろうか。……気になるが、僕は虎岡先生の方に集中しないと。だって僕は、隣の席の生徒とセックスする事になるのを見越して、手を打ったのだから。 「……熊里?」  僕は先生の元にゆっくりと歩み寄り、彼のすぐ前にしゃがみ込んだ。 「虎岡先生。今日、竜牙峰くんがお休みなんですよ」  普段、僕の隣の席には竜牙峰 貞治(りゅうがみね さだはる)くんという巨漢の竜人が居るが、今日は欠席だ。僕が事前に、今日は欠席してほしいとお願いしたのだ。  竜牙峰くんは小学生時代からの友達で、何でも言い合える仲だ。だから、僕が虎岡先生に好意を寄せている事も彼は知っている。知っているから、僕のお願いを聞いて欠席してくれたのだ。 「そうなると、僕は一人あぶれちゃいますよね?」 「あ、ああ……」  このクラスの生徒数は二十人。だが、竜牙峰くんが欠席しているため、現在このクラスに居る生徒は十九人。どうしたって、一人余るようになっている。 「僕、どうしても性交実技をしてみたいんです。だから──」  虎岡先生の目をしっかりと見つめ、言葉を続ける。 「先生が、僕の相手をしてくださいよ」  虎岡先生が、目を見開く。  しばしの沈黙の後、虎岡先生は首を左右に振った。 「だ、ダメだ! 俺とお前は、教師と生徒だ……! 肉体関係を持つわけには……」 「僕、予習したから知っているんですよ。授業の一環としてなら、教師と生徒で性交する事も認められているって」  通常なら、教師と生徒が肉体関係を持つ事は許されない。しかし、同性間性交実技の授業中なら認められる。それが、国の定めたルールだ。  そう。今なら、合法的に虎岡先生とセックスできる。大好きな相手と、繋がれるのだ。 「そ、そうだとしても、こんなおっさんを相手にするのは嫌だろう……!?」 「いいえ。嫌じゃありません」  戸惑う素振りを見せる虎岡先生を、ゆっくりと抱き締める。 「僕はずっと、虎岡先生と繋がりたいと思っていました。初めての相手は、先生が良いんです」  先生の温もりと、ほんのりと漂う汗の匂い。それらが、僕の身体をより熱くさせる。 「……んうっ!?」  気がつくと、僕は先生と口付けをしていた。  もう、衝動を抑えられない。独占してやる。この授業中、彼は僕の──僕だけの男だ。 【続く】  舌を先生の口内に捻じ込み、掻き回す。 「んむっ、ん、んんっ!」  彼はしっかりと歯を磨いているようで、ほのかにミントの風味がした。  僕のファーストキスは、清涼感を感じる口付けか。悪くない。 「ぷはっ! ……どうですか、僕のキスは上手かったですか?」 「そ、そんな事を俺に聞かれても困る……! 俺はこういう経験が全くねえし……」 「もしかして、先生って実際に性交した事はないんですか?」 「ね、ねえよ! 今まで、実技授業は無かったし、生徒とこんな事になるのも想像してなかったからよ……」  虎岡先生は両手で顔を覆いながら、小さな声でそう呟いた。  僕は少し振り向き、大狼くんの方を見る。いつもの彼だったら、性交経験が無い先生を揶揄うような言葉を投げかけるはずだ。 「や、やめろっ! そこ、強く押さえるなぁ……っ!」 「んー? この硬いとこを指でぐりぐりされるのが気持ちええんかー? ほな、もっとぐりぐりしてやらんとなあ!」  猪田くんの指を肛門に挿入されて全身をガクガクと震わせる大狼くんに、先生を揶揄う余裕は無さそうだった。  他のクラスメイトも、自身の肛門を拡張している最中だったり、猪田くんのように隣の席の子の肛門を指で拡張していたり、早くも性交を始めている子も居たりする。  みんな思い思いに実技をこなしているので、僕も周りに気を遣う必要は無さそうだ。 「虎岡先生。僕も初めてだけど、先生を気持ちよくさせてみせます。そして、一生忘れられない性交にしてみせます!」  クラスメイトの喘ぎ声に掻き消されないように、僕は大きな声でそう宣言した。 「……分かった。俺も腹を括って、お前を受け入れる。……で、でも、優しくしてくれよ?」 「勿論です」  僕は、自身の勃起した一物にローションを垂らした後、湿った先端部を虎岡先生の肛門に突きつけた。  さあ、ここからが性交実技の本番だ。 【続く】