彼女に興味を持ったのは3月、弥生賞が終わってすぐのころ、シンボリ家のスイートシゴナナのフランス遠征に伴うパーティーでのことだった。 「トレセン学園の生徒会長さんは大変だね」 「サイワイ殿、ご足労いただき」 「弟子も同然の子が2度目のフランス遠征、顔を出さない理由はないよ」 スイートシゴナナ、そのトレーナーに影響を与えたウマ娘、サキガケサイワイ。 彼女もまた偉大なるウマ娘であり、ワールドレコードでの勝利でもって日本ダービーの価値を高めた方でもある。 「昨年はロンシャンレース場でのレコードでしたが、今年こそは重賞制覇をと意気込んでいます」 「ティアラ路線の海外遠征は遅れてるからね、僕としてもここで勝てればいいと思ってるよ」 会場でいろんな人から応援の言葉を受け取るスイートシゴナナ、昨年の遠征ではロンシャンレース場2400のレコードを記録するも、残念ながら重賞勝利を得ることはできなかった。 今年はG3中山牝馬特別を勝利し、その勢いもあり今年の遠征も決定していた。 「でも、今年もダービーを見に一時帰国する予定だよ」 「ダービーウマ娘として、見ておきたいと」 「それもあるけど、気になる子がいてね」 「それはオグリキャップの事でしょうか?」 皆がオグリキャップの実力に気づき始めていて、世間もざわついてるが彼女は首を横に振る。 「同門の後輩に、そのオグリキャップに引けを取らない子がいてね」 「そうなると…サキガケサンゾウでしょうか?」 この時の彼女に対する印象は弥生賞を走ったウマ娘の一人、その程度でしかなかった。 「ですが、彼女は」 「弥生賞は巡り合わせが悪かったけど、ダービーまでには戻せるさ」 「ご期待なさってるんですね」 「百聞は一見に如かず、次のレースを見ればわかるよ」 そういって彼女はシゴナナのもとへと向かう、彼女の言葉に従い、中山でのレースを見て、それに納得した。 サキガケサンゾウは、確かに才能を持っていると、それはダービーでもって確信になった。