洋館のサロンルームを思わせる格式高い家具に、日替わりの香しいアロマと落ち着いたクラシック音楽 そして可愛らしいメイドの声が来客をドアのベルと共に迎え入れる。 此処はこの町では珍しいデュエルメイドカフェ「デッカーパイント」 「い…いらっしゃいませ…」 どうして私がと、不服そうに頬を赤くしてデッカーパイントの制服の裾を引っ張る少女 まだ14歳の綺羅坂ノリコがなぜ、デッカーパイントで接客をしているのか? それは数日前デッカーパイントで開催されるデュエリストの交流イベントが原因だった 洋館の中庭で行われるイベントは参加費無料、デュエルディスクが無くてもデュエルテーブルは使い放題 紅茶類も飲み放題とかなり良心的なイベントで不良学校通いのノリコにも有り難いイベントなのだが 「手札のレボリューションシンクロンの効果シンクロレベル7ガリトラップの檻より飛び立ち妖かしの光で戦場を照らせ!エンシェントフェアリードラゴン!」 「ぐぬぬ…」 「レベル1のレボリューションシンクロンとエンシェントフェアリーで」 客層の関係で対戦相手がまばらなのもあり、デュエルが成立しない場合は店員のメイドとデュエルができる その中でも古参の富盛遊璃は召喚獣を愛用するが、レボリューションシンクロンとの相性がいい召喚師アレイスター そこから出力できるエンシェントフェアリーにブラックローズと、チーム5dsを敬愛する関係で構築に組み込めないノリコには 連続シンクロのつなぎやフィールドリセットに使うのは色々と悔しい相手ではあった。 「この効果初めて使った…セリオンズリリーボレアを除外してブラックローズドラゴンの効果を発動!いっけー!」 「ちっくしょー!!」 メイド相手のデュエルはテーブルデュエル、不良中学生故の台パンが発生する確率はピン挿しのデッキに眠っていないといけない 出張セットの片割れが手札に来るのと同等の避けれないレベルの確率だった。 ガンッと思わず台パンをしたとき、外すのも面倒だからと腕掛け代わりにしていたディスクがアンティーク調のテーブルにぶつかり その強度と勢いでテーブルにヒビが入ってしまったのだ… 「あっ!?お…お客様…」 「う…嘘だろ…?」 ピンクの髪に入ったミントグリーンのような寒色に青ざめるノリコの顔、こうして面接等で使う執務室でオーナーを待つことになり いったいどれだけの価値があるか分からないが、テーブルの弁償にと命より大事なデッキとディスクが取られないかと 頭を抱えていたノリコにやってきた雅音が事情を聞いて (マキナちゃんの時と同じね…30万程度別にどうでもいいけど…この子なんだか面白そうね~♥) 「あの…バイトして弁償します…だからデッキだけは勘弁してください…」 「…貴方中学生よね?アルバイトはさせられないわね」 まだバイトができない年齢を突っ込まれ、ぐっと歯を食いしばる絶対にデッキだけは守りたいと腕に付けたデュエルディスクを 庇うように抱くノリコだが雅音はそんな顔しないでと、和ますようにカラカラと笑みを浮かべてから 何やら書類とペンを差し出し、一つ一つ順を追って丁寧に説明していく…ノリコはマガジン的な思考で首をかしげるが 「簡単に言えば法律に触れない形式のアルバイトね」 「は?いやそれってヤバ…それって大丈夫なんですか?」 「えぇ、法の上では問題ないわね」 デッカーパイントのメイド体験のレクリエーションという形で働いてもらい、その分の働きで弁償してもらうと言う形式だった 明らかに胡散臭いと思ったが、ノリコはこれに飛びついた仮に親に弁償させることになったら デュエルディスクを没収される危険もある…ならばとメイド体験での弁償を選んだのだが 「うぅ…は、はずい!!」 採寸等を済ませ後日、メイド体験という事でデッカーパイントでお手伝いをするようになったが デッカーパイントの制服のようなミニスカートなんて穿いたことが無いと、頼りない丈を隠そうとする日々 中学生なので高校生組とは日程が合わない…時が殆どだがそうでないこともあって 「ノリコちゃんお姉さんが手伝ってあげ」 「うるせー尻軽女ー!」 「尻軽女って言われたー!!」 遊璃に対して尻軽女って言ったり、お手伝いのお礼の形式で渡されるデッカーパイントのスイーツ兼カードショップ専用の商品券(4万円分ぐらい) がお給料の代わりに渡されて額にぎょっとしてたり、賄いのスイーツのレベルの高さに恐る恐るフォークで突いて 一口したら頬を抑えて嬉しそうにしたりして欲しいですね