「ほい、注文のモンや」 「いつもありがとうございます!雨になると買いに出るのが億劫で…」 梅雨時の湿った空気を吸いながらウチは冷蔵庫に瓶を移す。 ──妙に漂う生臭さを務めて無視しながら。 「まだ結構降ってますし、ちょっと上がって休んでって下さい!」 実の所、ここんちに長居するのはあまり気が進まへん。 さりとてお得意さんであることも確かや。しゃーないやんな。 テーブルの向かいに家主を挟んでいま届けたばかりの瓶を開ける。 泡のこぼれんように氷を詰めたグラスに慎重に中身を注ぐ。 「じゃあ…どうもお疲れさまでした。」 「……おう。」 一杯ごちそうになって、それでおしまいや。そう、思っとったのに。 「~~♡!♡♡!~! !!」 奥からにゃあにゃあとけったいな声が聞こえた時、思わず口にしてもうた。 「なあ、気ぃ悪くせえへんといて欲しいんやが…アンタら随分その、  "仲が良い"やん。他所さんに言えんようなことしとるんちゃう?」 「あははははははは!そんなこと。」 「せやな!そんなんあるわけ」 「当然じゃないですか。」 「……」 「おーい、2人ともちょっと服着てこっちに来てください」 あかん、震えが止まらへん。 どろりとした目つきの2人が左右に並ぶ。さも当然のように付けた首輪を 隠そうともせずしなだれかかる。 「"子供が卵を欲しがるのにさそりを与える父があろうか。" ─娘が種を欲しがるなら  そうしてやるのが当然でしょう?」 犬みたいに頬ずりされながら頭を撫でる。 「愛し愛されて、私たちは楽園にいるんです。」 太ももに埋めた頭がウチを見る。 「そうだ、せっかくですからもうちょっと「休憩」しましょうか。」 そのあとウチが何を見たかって? ……好奇心は猫をも殺す、とだけ言っとこか。