歴史を紐解けば異性に溺れて身持ちを崩す話は枚挙にいとまがない、歴史上から伝説に至るまで洋の東西関係なく。  それを聞くたびに千秋は笑った、ある種の軽蔑か侮蔑か、つまりは理性の信奉者である以上、そのような情動に流されるようなの愚かなことであると。あるいは時代的な背景があるとも考えた、娯楽の少ない中で異性関係は大きなウェイトを占めるものである、今はそうならないであろうと断じた。  今、そんな愚かさの渦中に千秋は身を投げている。かつて自分には関係ないと考えていた欲求に身悶えをさせていた。恋愛感情などという不条理極まりない感情に。  数式にだって表せるはずなのに、メカニズムだってある程度証明されているはずなのに逃れえることが出来ない。動物的本能だからか、繁殖欲求という生命の本質のうちにあるからか、千秋もまた逃れえない。時折思ってしまう、もう投げ出して欲望に身を任せてしまおうか、と。  だがそれを押しとどめる理性が確かに存在する。  それは積み上げてきた過去、という。発明家の息子としての矜持、自分を自分足らしめるものが確かにそうあることを許すのか、と己にささやいている。  それを思う起こすたびにそうだな、と奮い立たせ、そして立ち上がらせた。あまりにも稚拙な自分の感情への向かい方だった。  だが深刻な問題だ。下半身に従い続け獣になった自分をそれは自分と言えるのか、というアイデンティティの問題でもあり、そのようなものばかりを女性に見せるのかという社会通念からくるものもあり、何より志だ。  両親の後を追うように自らの意思で目指した発明家という道は千秋の性に合っている。研究は没頭できた、歳を考えれば不相応なほどの研究成果を作ることだってできる、歳を重ね大学の研究を経て行けばもっと多くの事が出来るという輝かしい自らの夢を放棄してしまえるのかと。  それは薄っぺらいふたでしかない、本当はもっと、もっと思うところがある。  甘い匂いが鼻に来る、女モノの香水は千秋が使うようなものではない。そこにはいないはずなのに、確かに存在感として感じさせる。柊英理香、情を結んだ少女。  自分が何をしたか忘れたことなどかけらもない。セックス、性行為、あるいは本来繁殖行為とされるそれは年齢を考えれば本来は経験するような身の上ではない。千秋は13で、英理香は14、早熟なうちに入る。  なぜそんなことをしたかと自答すれば決まっていた。戦いの果て、理性の底がついた先に残っていたのは本能だけ、獣と大して変わりはしない。  第二次性徴に入ったばかりの男子にとって劇薬というほかがなかった、あらゆるものをそれ一色に染める。どうして大人が警告するのか分かった気もする。あれは、危険だ。  ふとした瞬間、かつてならば何を作るか研究するかというテーマが脳裏にあった中、今は時間があれば英理香のことばかり思い浮かべている。自らを定義していたものを塗りつぶすように少女の笑みだけを何度も思い返してしまう。  それはとても怖い事だった。  女に溺れて歴史に汚名を残した人間と同じように、今溺れかけている自分を英理香はどう見るだろうか。かつて自分が感じたように、愚かな人間とみられないだろうか。  怖い、英理香からくる愛を受け入れ続けてただの馬鹿な自分になり、それを失望して離れてしまうのではないかという恐怖がある。  もちろん英理香がそんなことするはずがないと千秋は知っている。では、ただの馬鹿になった自分は?あるいは下半身に負けてただセックスをねだるようになってしまった自分なら?あるいは……あるいは……あるいは……――  考えたくない可能性が脳裏に浮かんでは消える、同年代に比べて優秀な脳はこのような時でも優秀に可能性を想像してくれる。馬鹿め、こんな時は働かなくたっていい。 「っ……と、危ない……」  うわの空で目元からそれていた手元を見る、ガラス製のグラスにはもう麦茶がなみなみと注がれていた、もう少しでこぼれそうなとこで注ぎ口を閉める。自分と英理香の分を盆の乗せ再度部屋に戻る。  一瞬手にもっと盆を落としそうになる。 「あ、千秋君お帰りなさい」  笑顔で出迎えられる、かわいい、それはそうだが違う。千秋の脳髄を突きさすのはその胸元だ、薄手のワンピースがややはだけられている、いつ見ても誘う胸の谷間があらわになっていた、しかしそれ以上に刺激してきたのは下着だ、黒い布が見える、少年の脳みそを揺さぶるには十分すぎる。そのうえその下着は透けていた、覆っているはずの肌の色がうっすらと出ている。いわゆるエロ下着、セクシーランジェリーと呼ばれるものだと分かった、千秋も男だ、性的なものはとても気になるし調べたこともある、知識はしっかりと備えている。ただしそれを思い人がつけているとなれば話は別だ。  セックスをしたことがある以上千秋は肌をしっかりと見たことがある、乳首にしゃぶりついたこともある、女性器を舐めたことも、若さの情動に任せてまだ知らなくてよいことをたくさん学んだはずなのに、ここにきてまだ知ることがあるのか、あるいはせいぜい年齢に対して経験が多いだけで知らぬことがあるのか、それはどちらかわからない。  しかしその不意打ちは確かに効いた。ご無沙汰な本能が一気に燃え上がる。他者を愛すること、愛されることを知った欲望はもはや自分で処理した程度ではどうにもなりはしない。頭の中にたくさん溜め込んだ数式が、科学知識が、機械知識が、あるいは発明家として必要な知能が、一瞬にしてセックスという言葉に飲み込まれていく。  放り投げるように盆をテーブルに乗せた、そして手が伸びる、グラスにではない、英理香の肌へ。 〇   日数を数えるのもばかばかしいほどの久しぶりのセックスだな、と興奮しつつ、英理香のいまだに冷静な部分が思っている。千秋はリアルワールドに戻ってから全くと言っていいほど迫ってくることがなかった、何か気づかないうちに嫌われることでもしただろうかと思ったが、セックス以外での態度は全く変わらない、それは無意識に思いかけていた最悪な想像すらも適当に捨てるほどのものだ、ほかのだれかに目移りしているようには思えない。  だから何か思うことがあるのだろう、と、千秋の意思を尊重し控えることには決めたが、だとしても待たせたのは少々マイナスだ。熟年夫婦ともなればまた別なのだろうが、まだ恋が愛が欲しい年ごろだ、求めあいたいという欲求は日増しに溜まっていく。女は男に比べて性欲が溜まりにくいという、脳のメカニズムの違いらしいがそれだって限度がある。 (恥ずかしさを抑えて正解でしたね)  向こう十年関係ないであろうエロランジェリーを手に入れたのは、デジタルワールドでできた伝手経由だった、運び屋を生業にしているというテイマーになけなしの知識でウェブを漁り見つけたお気に入りのデザインの……より、やや過激なものを入手してもらったのだ。面倒ではあったが普通の通販サイトでは足がつく。  サイズ確認のために初めて身につけた時はあまりの卑猥さに自分の身体なのか疑うことがあった、乳房を覆うカップ部分はワイヤーでギリギリ形作られていると言えるような頼りないもので、布部分は透けるようになっている、今はワンピースで隠れているが脱げば乳首が丸見えだ。パンツ部分はもっとひどい、女性器部分がくりぬかれ、隠すつもりなど毛頭ないやや大きめのビーズがまるで自分がクロッチですが、と鎮座している。はいてみればビーズが大陰茎を両脇に寄せて直接穴を隠しているのか隠していないのか……おおよそ上下を合わせてコレを下着と呼ぶのかと疑問視させた。  普段使いしている落ち着いたものに比べれば100倍は過激と呼んでもよい……しかし千秋の意思をこじ開けるにはこれくらいの方がいいとなりふり構わないことに決めて、この選択は正解だったと胸をなでおろす。  目の色が変わっている。情欲にまみれた色が貫いてきていた。向こうにその気があることを確認できたことは重畳だった、あとはただ本能のままにあるだけだ。  胸元に来た千秋の手が震える。  そちらも久しぶりなのだから、わたくしの身体が欲しいのでしょう、求めてくださいと、乳を突き出す。服を脱がせて、その下のもっと刺激される部分を見て、獣になってください、と。  しかし予想外の行動が来る。  途中までは乳に向っていた手が行く先を変える、ワンピースの胸元部分を持ち上げて、谷間を隠した。震えている、名残惜しさを一切隠そうとしない手の震え、唖然としながら顔を見る。隠せない欲求を無理矢理抑えるように笑おうとして形容しがたい表情だ。しいて言うなら泣き顔にも見える。  ゆっくりとその顔を胸元に抱き寄せる。今、そうしなければならないとそう思った。抵抗はない、ゆっくりと引かれて双丘に顔が埋まる。 「千秋様」 「うぅ…そ、その他人行儀な呼び方は勘弁してください……」 「だめです……今わたくしは怒っています、原因は分かりますね?」 「……はい」 「ならいいです……聞きたいんですけど……エッチ嫌になっちゃいました?」 「ないです……正直ヤりたくて仕方ないよ……」 「そうですよね……途中までおっぱいに触ってくれると思ってましたし……なら、何で?」 「……笑わない?」 「笑いません」  自分の欲求を抑えてでもこちらを気遣おうとしてくれた、それ自体はとてもうれしい事でもある。それだけ思ってくれているということなのだから。ならば真摯に接しても笑って茶化すようなことなどあろうはずがない。 「なら……なんだけどさ」  ぽつぽつと言葉が紡がれる。 「僕は何かを作るってことが好きなんだ、発明家の卵やってるしわかってくれると思う」 「ええ、もちろんです」 「その…英理香さんのことも同じくらい……うん」 「そこは言い切ってくださってもいいと思うのですが……」 「……だ、大好きです……」 「よろしい……いえ、それならなおさらためらう理由なんて」 「あるんだよ……」  見つめる目は、どこか悲壮。 「最近、ずっと英理香さんのことばっかり考えてる……論文を書こうとしても何か作ろうとしても手が動かない」 「……」 「だけどさ……そうやって好きだったことが手につかないって、な、なんだろうね……今までの自分がどうにかなっちゃってるんじゃないかって!それに、それにさ……あ、明らかに溺れそうになってる……い、今ちょっとくらいって思うけど、このままズルズルいってセックスばっかりねだるような男になったら……そ、その時は……み、見限られるんじゃないかって……」 「そんなこと……」 「ないって言えるの……?どこに惹かれてくれたのかわからないけど、もっともっと情けなくなった僕を見て、まだずっと一緒にいてくれるなんてわからないじゃないか……学問をしてると、歴史だって勉強することがあるよ、立派な人が異性に溺れてダメになる事例なんてたくさんある……怖いよ、同じように道を踏み外す人間になるかもしれない……ねえ」 「はい」 「運命を、信じる?」 「例えば……?」 「……僕と英理香さんが出会う、とか」  なら、 「きっとそれは運命です」 「……そう言うと思った」  それは嬉しそうであり、しかしどこか諦めを感じていた。 「物理学的に見て運命、完全に決定された未来と言うものは否定されている、計算しきれないからね……僕はそれを正しいと持っていた、確定しない未来って言うのは言い換えれば切り開けるものでありチャンスでもあるから……でも」  息を飲み、声を発する、大きい。 「僕は望んじゃったんだよ……運命……!そうさ……英理香さんとの出会いが僕にとっての運命だって……ありえないけどね運命なんて……この出会いだって偶然の積み重ねによってできたまた1つの偶然に過ぎない……でも思いたいじゃないかこう言う出会いが運命だって……だけど、これが運命だとして……もしもこのまま溺れておかしくなったらそれも運命なのか……?嫌だ!そんなの納得できるわけがない……!そうだろう……堕落するために出会う運命なんてものであって欲しくない……!僕は……僕は……この出会いが良いものであるってそうあってほしいって……だ、だから……怖くなったんだ、自覚してるよ、お、おかしいこと言ってるし、話の筋めちゃくちゃだけど……ああ、ああ……僕は……そうさ、もっと1人の人間としてちゃんとしているままで一緒にいたいよ……溺れて溺れて……体だけ見てるとか、セックスだけのことしか考えていないような人間になんて……」  声がしぼんでいく、普段の明瞭とした自信に満ち溢れている声とは違う、弱弱しく惑うような声。爆発した感情を持て余し、それを処理しきれていないのがよくわかる。 (嗚呼……)  それを見て英理香の心に感情が芽生える。 (なるほど、まだこの方をどこか見ていなかったのかもしれない)  目の前に居るのは1つ下の少年だ、デジタルワールドで頼もしく思えたその姿は正しく千秋の一面なのだろう、しかし同時にデジタルワールドに居る姿だけが千秋のものかと言えばそうではない。こちらの世界で今見せたように自らの心に戸惑うような姿もまた一面だ。人には多くの面がある、多面、勇気ある人間が臆病に、優しい人間に粗暴さが、理知的な人間にも暴力性を、矛盾するような面同士を抱えて生きている、それが人間と言う複雑な生き物。  今まさにそんな複雑さが目の前であらわになっていた、もしかしたら恐ろしいことをしたのかもしれない。そうだろう、無理矢理に暴く様なことをしてしまった、意図ではないがそれを関係ないと言えるほど英理香は愚鈍ではない。  だが、見てしまった以上そこに感情が芽生えるのは仕方がない。  これは弱さだ、弱さを見て失望する者もいるだろう、しかし同時にそれを愛する者も確かにいる。英理香は大事な存在の弱さを愛せた。自らの前にひけらかされた悩みに触れて寄り添うことができた。  欲しくなってしまう。 (千秋君の言っていることが少しわかるかもしれません)  その悩みは普遍的なものだ、まだ完全に理解できるとはいいがたいが、聞いてしまえば同意する考え方も多い。何より、自分の一面だけを見てそう言うものだと見られたくないというのはまさしくそうだ。自分がやや派手で豪快な戦術を好むとは言えそれだけを見て暴力的な人間と断じられたいか、と言われればまったくそんなことはない。自分たちの関係が体だけの関係でありたいかと言えばそんなことはない。自分たちの在り方は、きっとまだまだもっとあるはずなのだ。  今明らかに深みに足を進めようとしている、沼とも言える。一度はまってしまえばそうそう抜け出すことのできない男女の機微と言う底なし沼だ。1つ間違えればあらゆるものが壊れても仕方がない。  だが、英理香はどうしようもなく欲しくなってしまった。きっとその先に破滅があったとわかっていても英理香は進むだろう。英理香は貴種だ、名家の生まれだ、それが元からのものか教育かあるいは両方故かはわからない、しかしより高い位置から見た選択肢を選ぶことができる。  踏み越えて、手に入れる。強欲とも言える。しかし名家、あるいは歴史を積み重ねて何かを得ていた家系と言うものは往々にしてそのように動いている。  欲しい、今柔らかな心を見せた千秋を愛したから、より求めてほしいと思ってしまった。  話は聞いた、千秋の考えにも同意した、その上で英理香は手を伸ばす。 「千秋君が言っていること、わかりました」  英理香は善性の人間だ、悩みに手を差し伸べることができる寄り添うことができることのできる人間だ。それを他者が称すならば大半が優しい人、と言うだろう。客観的に見て自分がそうなのかどうかは判断できないが、少なくとも優しさを渋る人間ではない、そうあるべきではないと考えている。 「なら、一緒に悩みましょう」  故に手を差し伸べる、それは時に甘えにつながるかもしれない、心をむしばむかもしれない、しかしそれでもなお踏み込んでいく。 「大丈夫です、1人でならば出ない答えも、2人でならば」  人は心を完全に理解することなどできない、しかし、それでもなお伝えようとするならば、伝え合えば少なくともきっと悪いことにならないだろう。やや楽観的ではあるが、そうでありたいと願う。 「ズルいな」  千秋の声が漏れる。 「ズルいでしょうか」 「そうだよ、自分で立たなきゃって思ってるのに溺れさせようとしてくる」 「それは……ええ、そうです、女とはズルいものですから、弱さを見せられてしまえば癒したいと思います」 「うぐ…そうだよなぁ、今のは弱かったよなぁ」 「でも嬉しいんですよ、そう言うところを見せてくれる相手だってわたくしを思ってくれてるってことですもの」  その言葉に千秋の顔が真っ赤になる。その姿がいとおしく、笑みがこぼれてしまう。 「わ、笑わないで欲しいなぁ!」 「いえいえ、愛らしいと思っただけですので」 「も、もう……まあでも……」  うん、とうなずいた、 「英理香さんが一緒にいてくれるって言うのなら、何とかなるって思えるかも……こ、根本的な答えの解決になるかなぁ!これ!?!」 「それも一緒に探していきましょう!」  顔を胸から離した、そして今度は見つめ合う、頬に手を添えて目はそらさず。 「大丈夫!だってそうでしょう、デジタルワールドで出会ったというだけならば旅の中で色々な人と出会いました、でも、こうやっているのは私とあなたと、です、だからそうあることがきっと……そう」  それはきっと、 「運命なんです!さっき、千秋君が言いました、運命を信じるかって、これは……こんなにいい出会いが運命じゃないわけがないんです」  まるで答えになってないような都合のいい返答であっても、今はそれでいい、それが納得できないならまた新しく答えを見つければよい。  きっと、それを見つけることも答えならば、見つけるまでに共にいることもきっと運命だ。 「うん……そうだね、あー……もうなんか悩んでるのが馬鹿らしくなったかも!」 「元気になってくださったようでよかった」  衝撃がくる。 「うん、元気になったよ……安心したらいろんな意味でも」  千秋の顔から悲壮感が消える。先に見せた科学者の顔からは一切読み取れないであろう獣の顔。男の顔。舌なめずりをし、獲物を狙うかのようなその表情を見た瞬間に、どうしようもなくそそられた。応える。 「なら、少しばかり空っぽになる時間があってもいい、それが今でしょう」 〇 「んっ♡ふふっ……見て頂けますか、この下着……あなたが私を待たせるからこんなものまで買ってみたんです……怪我の功名でしょうか?」  するっ♡ 「んっ……あんっ♡いえ、同じでしたね、あなたもため込んでいたのでしょう……ふふ♡」  さわっ♡ 「ああ、大きいです♡知っているときより……なら、これを……アスタ商会謹製の避妊具、何でもこれを付けるとデジタル的に――」  がんっ! 「きゃっ…何をっ……んっ……ええ、そうですか、失礼しました。そうですよね発明家の卵に、他の開発者のものを見るのは嫌ですよね…♡でもゴムはいいんですか?あれは物理的に隔たりがありますが……あー……なるほど、確かに実際に知り合いの顔が浮かびそうになるのはちょっとってなりますよね……」  なら、 「んっ……こんなやり方は初めてですが……」  じゅるっ…じゅぷぅっ……じゅるぅっ……じゅぽぉっ!ちゅぽっ……ちゅぱっ♡ちゅぽんっ♡ 「まさかお口でゴムを付けるだなんて……はしたない真似をするとは思ってもいませんでしたが…いかがでした?♡そう言う動画を見て多少は知識を付けて――」  どさっ…! 「あんっ……♡んっ……♡興奮しましたか♡なら……どうぞ、わたくしのほうも触れてくださいますか♡」  ぬちゅっ……♡ 「んっ……♡まだ乾いてはなかったようですね……♡わたくしがこうなるまで放っておいた責任、とって♡」  ずりゅっ……♡ぐちゅぅん!!!♡ 「はっ……ぁあぁっあぁ♡そう、これ、これです♡こちらに戻ってきてから何度思い返してもっ……現実にはかなわないっ……千秋く――千秋!私をっ、このまま!♡」  ばちゅっ!ぱんぱんっ!ぱんぱんっ!!!! 「あっ、あぁっ♡は、激しいっ!♡んっ、あぁな、なら、も、もっと奥までっ!!♡」  ずぢゅっ……ずんっ!!!! 「ぉ゛っ……ぉ゛っ♡こ、ぉ、れぇ、な、ナカっ、し、しきゅぅ、つ、つぶれっぇ♡」  ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ……♡ 「ひぐっ♡あ、ぃ、こ、壊れっ、ぇ♡そ、そこっ……そんなにっ、激しいのはっ――!」  ぴたっ…… 「あ、え、な、なんでっ……と、止まってぇ……ぁ、そ、そんなっ……い、今でも十分はしたないことしたのにっ……ま、まだっ」  ぴたっ……ぎゅぅ……♡ 「あ、ず、ズルいっ、こんなの生殺しではないですかっ……♡さ、さっきまではうじうじと悩んでっぅぅ……♡」  くいっ……くいっ♡ 「あ、ああ、刺激するだけっ、ズルいズルいっ!!そうですっ……♡お、おまんこぉっ……♡おまんこ切ないからっ、もっとわたくしのおまんこぉっ、こ、壊してぇっ♡  ばちゅっ!ばちゅばちゅばちゅっ!!!!!ぱんぱんぱんっ!!!!! 「あ、ぃっ、あぁ~~~~~っ♡ら、めれすっ♡わ、わたくしぃ、こ、こんな声ぇっ♡ぉ゛っぉ゛っ♡お、おまんごぉっ、こ、こわれ、ぇ、っ♡」  ぱんぱんぱんっ!!!ちゅぽっんっ……!! 「ひ、ぅっ!?あ、ぇ、き、器用ぅっ♡お、おっぱいぃ、ちゅ、ちゅうちゅうぅるのっ、し、痺れちゃうぅっ♡あ、ぇ、も、もうっ、か、体全部ぅっ♡あ、ぁ~~~~~っ♡」  びくんっ!びくびくっ!!!!♡ 「ま、待ってっ♡か、体っ、先にっ、あ、甘イキっ!い、嫌♡ひ、1人でイクのはっ、い、いやれしゅぅっ♡い、一緒っ♡千秋もぉっ……♡い、一緒にぃっ!ん~~~~~~~~~~っ!!!!♡」  びくんっ!!!!  びゅくっ!!!びゅるぅうううううううっ!!!!びゅくんっ!!! 「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……♡あぁ……♡」  ずちゅっ! 「ぇ、あ、何をっ…!?い、いま、イって……ぇ、あ、んっ♡ま、待って、せめてゴムは変え――」  ずちゅんっ!!!ぱんぱんっ!!! 「ん、くぅっ♡あ、あなたの性欲っ、あ、煽ったのは謝りますからっ♡ま、待ってっ…こ、壊れぇ――♡」  ばちゅっ!!!ぱんぱんぱんっ!!! 「ぉ゛っ……♡ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ……♡」  ぱんっ……ぱんぱんぱんっ!!!―― 〇 「千秋君のけだもの」  いつの前にかベッドにいた、床で押し倒されたはずなのに動いているということは若さと情熱に任せてシまくったということになる。落ちているゴムを数えれば何度絶頂したかくらいは数えられそうだが、流石にする気は起きない。 「め、面目ない」  バツが悪そうに後頭部を掻く姿をみてちょっとだけ笑う。まるで怒られてしまった小動物のようだから。 「もう、怒っていませんよ」  怒れるわけがない、そもそもしびれを切らして先に煽ったのは英理香からだ、行為も結局のところ本当に止める気があるのならば既に終わっている、結局のところは共同作業だ、なんだかんだ言って楽しんだ。 「とは言えまさか千秋君にあそこまでサディスティックな一面があるとは」 「はは……自分でもびっくり」  そう言いつつも笑い、 「ああ、もしかしたら誰かさんの押せ押せなところが移ったのかもね」 「まあ!」  頬をむくれさせる。千秋の言う誰かさんとは自分のことで、押せ押せと言うのは自分の好む先述のことだろう、待ちの戦術よりも自分から向かっていくのが性に合っている。 「もうっ…さんざん待たせてくれた奥手な殿方にこんなことを言われてしまうなんて……」 「え、あ、気に障ったならごめ――」  どさ。 「くすっ……とことん行かせてもらわなければなりあませんね」 「あ、英理香さん……」 「科学知識はあるのでしょう?性欲とは一定を越えたときから……女性の方に火がつくんですよ?」  千秋の目を見る。  今度は英理香が獣になっている。