「・・・指揮官様、なんだか手慣れてません?」 「・・・人の性事情は詮索するものじゃないよ、カリン」 指揮官様の声が近くてこそばゆい。なんだか、耳が性感帯になったみたいだ。耳たぶを撫でられる、ただそれだけで、腰が浮いてしまいそうだ 「ふっ、んっ、なんだか、手つきがいやらしいです・・・」 「そりゃ、いやらしいことするからね」 手が頭から胸に降りて来る。触れるか、触れないかのフェザータッチ。乳頭が痛いくらい勃っているのが嫌でもわかる そして・・・ 「うわ、すごい濡れてる。もしかして期待してた?」 「言わせ、ないでくださいよ・・・んんっ!」 わざわざ目の前に持ってきて、指にかかる銀糸を見せつける。サディストめ・・・。待ってください!今、クリ弄られたらっ! 頭が白一色に染まる。目の前がチカチカして、身体はふわふわする。いつもの自慰とは違う、多幸感が押し寄せて来る そんな私を放って、ベッドの脇をごそごそしだす 「カリン、ゴムは何処?」 「・・・そんなもの、ありませんよ・・・安全日だから、ナマでしてください・・・」 そういって、今度は逆に押し倒してやった。今度は逃がしてあげませんからね、指揮官様 「ふぎゅっ!」 寝転がったベッドから悲鳴が上がった。何事かと身体をどけると、潰れた人形が姿を現す 「酷いよ指揮官・・・」 「・・・ミシュティ、クルカイが探してたぞ」 だから逃げてたのに・・・口を尖らせ、そう宣う。エルモ号でも彼女の睡眠欲求は留まるところを知らないらしい 「どう?エルモ号はもう慣れた?」 「ふあぁ~~・・・そうだね、寝れる場所が多いのはいいね」 そういうことじゃないんだが。まぁ、エルモ号は彼女にとっていい環境らしい 「足りない物とかない?」 「う~~ん、もっと柔らかい枕と、寝る時に温かい抱き枕が欲しいな・・・」 安眠グッズか。今度衛星都市に立ち寄ったら買っておこう そろそろ報告書でも書くか、と立ち上がると、腰にミシュティがへばりついていた 「もうちょっと、ここに居て・・・」 抱き着いたままのミシュティの頭を撫でてやる。仕方ない、午睡するとしよう 「カリン・・・ッ!クソッ!10年で随分と鍛えたなッ!」 「指揮官様こそッ!衰え知らずじゃないですかッ!」 ぎりぎりとカリンと八手組む。もはや何が原因だったのか。ケースレス弾の調達とかだったか? 徐々に、だが、確実にカリンに押し込まれる。 理由は明白だ。単にカリンに怪我をしてほしくない。これ以上力を込めてぽっきり骨折、なんて目も当てられない 「ぐっ!」 とうとう膝が折れ、カリンが馬乗りになる。どっちも息は上がり、見るも絶えない光景だ 「これで、どちらが、上か、わかりましたよね」 ぜーぜー言いながら勝ち誇られても、そんな言葉は酸素を求める呼吸にせき止められた 暫く、お互いに息を整える。今更、カリンを跳ねのけることも出来まい。次は頭をぶつけるかもしれないのだ 「わかった。好きにすると言い。望みとあらば指輪だろうが首輪だろうが猫耳だろうがつけてやる。だが、心までは渡さない」 「私が最低みたいないい方しないでください!」 「指揮官、久しぶり」 「ヴェクター、久しぶりだね。また会えてうれしいよ」 短い銀髪を揺らす彼女。少し大人びたように感じるのは、自分が歳を取ったからだろうか 「・・・そうだね、指揮官が出て行ってから10年だしね」 「事情も言わずに出て行ったのはすまないと思うよ。あの時は、あれが私にも君たちにも最善だと思ってたんだ」 思わず苦笑してしまう。この台詞、会う人形全員に言ってる気がする 「・・・そう、ならいいんだけど。それで、私の部屋は何処?まぁー、何処でもいいんだけど」 気だるげな気性は変わっていないようで安心すら覚える。 「でも、デールを10m以内に近づけないでよ?」 「わかったわかった」 男嫌いも変わってなさそうだ。特にデールは、ゲームサーバーの件をいまだに引きづっているのか 装備は404に入隊してかなり重装備になったようだ。放火魔からナパーム弾にレベルアップといった風情を感じる 「後で指揮官の部屋に行くから。今度こそ、消えないように、証を身体に刻んであげる」 「・・・痛くしないで・・・」 やはり、性格はあまり変わってないようだ 「♪~♬~♪~、イェイ!」 澄んだ歌声と、キレのあるダンスに思わず拍手。スタンディングオベーションまでしてしまおう 「応援ありがとう♡」 ヴェプリーと同じアイドル人形を自称するシャークリーであったが、確かにアイドルに違わぬパフォーマンスだ 「さすが、ズッケロの看板アイドル。特等席で堪能させてもらったよ」 「でしょ?シャークリー以上のアイドルなんていないんだから♡」 自信満々に言い放つ彼女。ズッケロでも彼女目的で来店する人間がいるのだから事実なのだろう 「ヴェプリーいるんだし、二人でアイドルとかしないの?」 「も~、シャークリーは自分の力でトップアイドルになるの!あいつは関係ない!」 心外!とばかりな言動。彼女と過去に何かあったのだろうか その時、前触れもなくドアが開き、ヴェプリーが飛び込んでくる。日課のソロライブの時間だったか 「あっ、シャークリー☆こっちに来たんだ!ね!一緒にユニット組もうよ!☆」 「近いのよ!もう!指揮官も笑ってないで!あ~!セット舌髪が~!」 グリーンエリアでも影の部分は存在する。漆黒の闇に染まった路地裏、そのさらに奥、深淵の奥に彼女はいた 「あら、指揮官。お久しぶりですね」 「・・・生きてたのか」 想定していた結果ではあったが、苦々しい顔を隠せない。パラデウスが生き残っていたということは、それを統括する存在もまた生き残っているのは自明の理ではないか 「死んでほしかったみたいな顔しないでくださいよ、ロ・ビ・ン」 「また、頭と心臓に鉛玉をプレゼントしてほしい?」 甘く囁くモリドーに、吐き捨てるように言葉を投げる 未だに服従しているのか、軛から逃れたのか、それはどうでもいい。 「冗談はここまでにしておきましょう。それで、今更私に接触して何がお望みです?」 「今のパラデウスの動向、情報、戦力と目的。すべてだ」 情報が欲しい。404もカリンも頑張ってくれているが、やはり蛇の道は蛇だ 「相変わらず人使いが荒いですね。ロビン」 「黙れ。次は物理的に口を塞ぐ」 そう言って闇のさらに奥へ誘う女についてゆく。背後で重い音を立て扉が閉まった 「(—_— )!」 ブルートがローカルストレージで発見したのは、旧時代のSF小説であった 暗黒メガコーポ、カラテ、ヤクザ、そして忍者 初めはデータ採取が目的だったが、気づけばのめり込んでしまっていた 初期装備の迷彩服の上からボロ布で作ったドーギを着込む 近接ユニットが幸いし、書かれている忍者の動きの1/5の再現を可能にした。 だが、未だにニンジャ・ソウルは顕現しない。修練が足りないのだ ドンッ!ダダッ!ちょうどいい時にグリフィンの雑魚共が来てくれるものだ。カラテの錆にしてくれる ---- 「状況終了。負傷者なし」 「いつもの鉄血の哨戒みたいだね。それにしても・・・」 「うん、変な服。鉄血で流行ってるのかな?」 シュカカッ!短い連射音はサプレッサーによってほとんど無音だった。それがただ一人の人間の頭に寸分違わず吸い込まれ・・・ そのすべてを手刀で叩き落した 「何よアイツ!デタラメじゃない!本当に人間なの!?」 隠密が絶対条件のスナイパー、マキアートから思わず絶叫が漏れる (・・・どこにいても補足される、そして、あの身のこなし。さらにはどんな体勢からでも正確に狙ってくる。尋常ではない!) フジキドの背に冷たい汗が流れる。幾たびの戦場を歩んできたし、死合も2桁は優に超えたが、これほどまでニュービーがいたのか ((ここで仕留めなければこっちがやられる)) 両者の思考は一致する。距離は500mもない。ビルを、看板を飛び、照準から逃れるが、 (掠めたか・・・) (当たらないっ!) 200m。 (左脚ッ!ウカツッ!) (これ以上近づかれるとマズイ) それでも忍者は止まらない。距離はもう100mも離れていない 「ねぇ、指揮官。抱いてほしいの・・・指揮官の温もりを、私に頂戴・・・」 あの時、断っておけばよかった。後悔先に立たずとはよく言ったものだ 「ふんふん♪」 「上機嫌だな・・・」 理由は分かってる。それでも言わずにいられない。 「そりゃ~そうでしょ♪でで、どうだった?私のナカ」 「・・・最高だったよ」 最低なことを言ってる・・・言わされてる・・・セクハラで訴えれないかな。 「も~、そんな底辺レビューじゃ炎上するよ!もっと誇張して!もっと良かった点を具体的に上げて!」 「・・・どうすりゃいいんだよ・・・」 人形の記憶の一部を消す方法ないかな。ペルシカに聞いてみようかな・・・でも、そしたらMDRのことバラして中身吸いだすよな・・・ 「指揮官~、なんか適当じゃな~い~?おりゃっ!」 「うわっ!」 MDRに押し倒される。オッドアイは嗜虐的な色に染まっている 「昨日は指揮官が上だったから、今日は私が上になってあげる。そうだ!このまま配信もしてあげよう!楽しくなるぞ!」 夜のエルモ号は静謐が支配していた。エンジンルームを除く、すべての部屋は寝息とサーバーの少しの音しか聞こえない そのエンジンルーム 「んっ、ちゅっ、はぁっ、指揮官、もっと・・・」 二人の間に銀の糸が架かる。指揮官はメイリンの言葉に答えず、再び口付けを再会する 酸素を求める彼女を無視して、口内を蹂躙する。歯列をなぞり、唾液を交換し、彼女が酸欠に喘いでも指揮官は止めない。 咽かえるほどの牝の淫気で窒息してしまいそうな空間。 「はーっ❤はーっ❤」 「もう十分?」 彼女を見れば更なる愛撫を求めているのは明白だったが、あえて挑発するように言う。自分だって我慢出来ないのに 蕩けた顔と潤んだ瞳で指揮官を見つめるのは、一匹の牝だった。 「・・・もっと、もっとください、指揮官♥私のここ、ぐちゃぐちゃに乱暴してください♥」 そういって、パンツに手をかける。黒のそれには隠し切れない愛液のシミが出来ていた 「指揮官♥」 媚びるような声は、指揮官の耳に届き、そしてエンジンの轟音に消えていった 「へぇ、ここが指揮官様のお部屋ですか」 「エルモ号は初めてだっけ?」 「えぇ、誰かさんが後方に送ったせいで」 悪かった、そう投げれば、もう過ぎたことです、と拗ねたように返してくる。朱に染まった彼女の横顔が可愛らしく、つい微笑んでしまう 「ちょっと!もう!指揮官様の意地悪・・・」 「ごめんごめん」 指令室、エンジンルーム、倉庫、そして人形のメンテルーム。何処もグリフィンや非軍事勢力管理局のものより数段劣るだろうが、ここが今の私の大切な家だ 「あっ、指揮官。と、カリーナ、さん?」 「こんにちは~、メイリンさん。今日はちょっと査察で~す」 ふと人形修復部屋に入る。エルモ号の第二の心臓ともいえるこの場所。最近はデールが詰めていることが多いが、今日はメイリンがいた 返事もそこそこに、メイリンが慌てて修理工具を放り投げる 「ちょっと!メイリン!身重なのに何してるの!?」 「何もしてません!何も!」 「指揮官様!今なんて言いました!?」 「あなたのペットのアントニーナです・・・」 「悪いものでも食べた?」 はて、今日はハロウィンだったか?いつも通り素っ気ない顔でアントニーナが変なことを言い出す。可愛らしい猫耳にご丁寧に尻尾までつけいる 「猫がお好きと聞いたので」 「ペルシカと間違ってない?」 ペルシカは猫が好きらしい。好きすぎて自分の頭に猫耳がついてるほど ただ動物としては犬の方が好きだ。それもハスキーとかデカい奴が 「?確かにペルシカさんは教授は猫が好きと言っていましたが?」 「あぁ、ベッドの話?そうね、ネコは好きね」 「は~い💙指揮官、上着脱ぎ脱ぎしましょうね~💙」 「たかが健康診断で変なこと言わないで・・・」 健康診断である。健康とは縁遠いイエローエリアのエルモ号でも、医療用人形のコルフェンが来たことでようやく実現した。・・・普通の会社なら行政処分ものだ 「外傷と打撲痕、内出血が多く診られますね。心肺機能は問題なさそうです。本当はもっと専用設備で検査したいんですが・・・」 「流石にそこまでは求めないわ」 真剣な顔でコルフェンが結果を下す。健康さと頑丈さは取り柄の一つだ 「ではでは~、下の方を💙」 「下も診るの?」 腰とか脚に何かあったら嫌でしょう?そう言われてしまえばしたがるを得ない。患者衣に手をかける 「ちょっとコルフェン!どこを触ってるの!」 「触診ですよ~💙気にしない気にしない💙」 太ももに手を這わせる彼女の手つきは、何処か変態的だ。上に下に、触れるか触れないかの距離で動かされると、身体が意志に判して『そういった』反応をしてしまう 「・・・コルフェン、もう・・・」 「おやおや~💙指揮官、どうなされました~?💙」 わかっている癖に。コイツは私に言わせたいのだ おい!野郎ども!コーラップス塗れにならない方法は知ってるな! へい!防護服を着ることでさぁ! 50点だ!外に出る時は防護服は当然だ!さては、うちに帰って防護服脱いでそのままだな! へい!その通りでさぁ! このボンクラが!うちに帰ったら防護服の洗浄!そして徹底的にシャワーを浴びろ!特に身体に触れやすい手!そして露出しやすい顔! でも、ボス。そんなマルチに使える薬なんて・・・ 安心しろぉ!このヴァリャーグ印の石鹸を使え! おぉ!すげぇぜボス!手もピカピカ!顔もツルツルだ! だろう?イエローエリアどころか、グリーンエリアでもお目にかかれねぇ品質だぜ? でもボス・・・これ高いんじゃ・・・ 心配いらねぇ!6個セットで150000サルディスゴールドぽっきりだ!うがい薬もつけてやる! 流石だぜボス! お求めはここ!ヴァリャーグ運輸が責任を持ってお届けするぜぇ! ボス!大変だ!麦の値段が下がってやがる! 何だと!どうなってやがる! パラデウス麦ってやつが大量に安く売ってやがるんだ! クソが!あのカルトみてぇなやつらか! ボス!米も軒並み下がってるぜぇ! チクショウが!イエローエリアの農家を馬鹿にしてんのか! ど、どうする?ボス・・・ ・・・焦るな。おい!そいつらの米と麦を大量に仕入れろぉ! で、でもよぉボス・・・そんなことしても買い占め出来ねぇと思うぜぇ・・・ だから焦んじゃねぇよ!奴らは未加工品、つまりは1次産業だ。これを加工してやりゃぁ・・・ な、なるほど! テメェら!醸造所をかたっぱしから抑えろ!酒は高く売れるぞ!蒸留で純度高めりゃ製薬会社からも買いが入るかもしれねぇ! 服を抱く人形が一人。センタウレイシー。指揮官のメイドを名乗る人形だ 「すぅ~~・・・はぁ~~~・・・」 二度三度と、深く匂いを吸い込み、メモリに記憶する。今日のシャツは少々汗の匂いが染みついている。昨日の戦闘の影響だろうか 「ふぅ~~~・・・はぁ~~~・・・」 こんな匂いを振り撒かされてしまうと、こちらとしても仕事にならない。もっとご自覚していただかなければ 「はぁ~~・・・」 そのままベッドに倒れ込む。あぁ、ご主人様の匂いに包まれてしまった。あぁ、ご主人様。このようなこと、困ります・・・私はあなたのメイドなのです・・・あぁ、いけません・・・ 「・・・何してるの?センタウレイシー・・・」 「・・・申し訳ございません。少々躓きまして」 「いや、その手に抱えてるシャツは?」 「洗濯物の回収に参りましたので」 ダッシュ一番。シャツを胸に抱いて指揮官の脇をすり抜ける こんな顔を、あの人に見られるわけにはいかない 「指揮官、ハグ、していただけません?」 「急だね、スプリングフィールド。何?寂しいの?」 「ふふっ、そうですね。そうかもしれません」 スプリングフィールドがそういうのであればそうなのだろう。両手を広げ彼女を迎える 「どうしたの?何かあったのかい?」 「・・・いえ、少し不安になっただけです。・・・もう少し強くしてください・・・」 さらに力を籠める。気丈に振舞う彼女でも、こういう感情があることに安心すら覚える 「・・・指揮官、少し汗の匂いがしますよ」 「すまない。さっきまでトレーニングしててね」 「もう、カリーナさんやセンタウレイシーや他の人形と会うときはしっかりシャワーを浴びてくださいね。エルモ号の品位から疑われますから」 「そうだな。すまない」 そう言われ、離れようとするが、スプリングフィールドの拘束が解けない 「・・・私はそのままで構いませんから・・・」 スプリングフィールドが首元に顔を埋める。吐息がくすぐったい 結局、拘束が解けたのは10分後であった 「指揮官様~、ポルドニッツァさんから物資が届きましたよ」 「ありがとう、カリン。メイリンに点検させておいて」 横目で指示を飛ばす指揮官様。真剣な顔をして作戦マップをじっくりと眺めている姿に思わず見惚れてしまう 「ん?どうしたの?カリン」 「い、いえ!何でも!」 視線に気づいたのか、指揮官様がこちらに歩いてくる。貴方に目を奪われてました、なんて言えるわけがない 「このところ働きづめだったからね。搬入が終わったらちょっとくらいお休みしようか」 そういって、頬を愛撫するように優しく撫でる。大きくゴツゴツとした指にはキラリと、銀に輝くお揃いの指輪が嵌っていた 「指揮官様・・・くすぐったいです・・・」 「すまない、もう待てそうになくてね」 そういって指揮官様の顔が近づいてくる。逃げれないように腰に手を回され、 「・・・なんて、キャー。指揮官様、ダメですわ!みんなが見てます」 「リヴァ姉、カリン姉壊れちゃった」 「放っておきなさい。目を合わせちゃダメよ」 グリーンエリアにも雨は降る。低濃度とはいえ汚染されている雨の中、外出する者は皆無だ。一部の例外を除いて 「はぁ・・・はぁ・・・」 追われている。誰に?元同僚に。逃走ルートは悉く塞がれ、厳戒令で周囲一帯の無線は封鎖されている 「こっちも!クッ!」 こっちは土地勘の薄いのに、あっちはホームグラウンドなのだ。袋小路をUターンして。そこが限界だった 「はぁい、指揮官」「ふふんっ!もう観念しなよ、指揮官♪」 「リヴァ、レナ・・・」 呻くように追跡者の名を呼ぶ。お付きにはイージス、イェーガー、マンティコア。本気も本気だ。 リヴァが無線機を放り投げる。チカチカと点滅する画面は、通話中を意味している。 相手は疾うに分かりきっている。 「・・・これが今の君のやり方かい?」 「ええ、そうです。指揮官様がそのような態度を取られるのであれば、暴力をもって私の元に来ていただきます」 「・・・随分染まったみたいだね。成長していて嬉しいよ」 「首輪がお望みならお好きな色を選ばせてあげます。何なら犬耳と尻尾もつけてあげますわ」 流石に生でヤってそのまま逃げたのはまずかったか。ゴムつけてるって嘘言ってればよかった 「やぁ、J。結婚おめでとう」 「だったらもっと祝ってくんねぇかな。とりあえず銃を降ろせよ、指揮官」 「カリンと結婚したんだろう?あのデッカイおっぱいを好きに出来るんだろう?羨ましいな」 「だったら代わってくれよ!!触るどころか、近づくことすら出来ねぇんだよ!」 「しかし、今の私は一介の賞金ハンターでね」 「相応しいかはアンタが決めることじゃないだろ。カリーナの意思を尊重してやれよ」 「じゃあなんでカリーナと結婚したのさ」 「局長の指示だよ!利用できるもんは何でも利用するって人。俺はもっと大人しい子が好みなの!」 「君の好みと、周りは正反対だね」 「うるせー!」 夜。ふとアゲハ蝶がひらひらと舞っているのが見えた。珍しい。このあたりの生き物なんて生躯程度だと思っていたのだが 夜に溶けてしまいそうな黒い羽は、何故だがあの人形と重なって見えた 停泊中のエルモ号。砂嵐の少し先に、人影が見える。こちらには近づかず、だが声が届く距離 「何処かに行かれますか?そこの衛星都市まで送りましょうか?」 少々代金を頂きますが、冗談めかしてそう付け加えるが、人影はくすりとも笑わなかった。ギャグの才能を磨く必要がありそうだ 「いいえ、まだ旅が終わっていませんので」 終わらせることはできますが。そう付け加える人影は旅人のようだ。 不思議なことを言う。まるで哲学者のようだ。もしくはロマンチストか 「そう、ですか。では、お気をつけて」 そう見送ると、一陣の風が吹いた。人影は幻のように消えていた。あの蝶も何処かに消えてしまったようだ 随分昔を思い出す。賞金ハンターになりたての頃だろうか あの旅人には、未だに再会できていない ドッドッドッドッ!重い連射音が荒野に響く。銃身が旋回するたびに生躯が瞬く間にミンチ、どころか血煙になる 「アハハハ!あんたたち!一匹も逃がさないわよ!」 M2HB。グリフィン所属だった人形は、今やエルモ号の屋上で思う存分弾を吐き出している。あの頃は重い本体と、重い弾と重い装備を背負っていたが、今は無縁だ 「M2!残弾に注意しろよ!」 「指揮官!誰に言ってるの!MGは弾幕でナンボでしょ!」 手を緩めない、どころかさらに苛烈な射撃を行う。 「ふぅ~~、さいっこう!他じゃこんなに撃たせてくれないわ!さっすが指揮官!」 「撃ちすぎだ・・・」 ここまで上機嫌なM2はあまり見たことがない。まぁ、面倒くさがりで、暇さえあれば寝ていたのだが 生躯の駆逐が完了する頃には、弾も遮蔽もきれいさっぱりなくなっていた 「もうお終い?まぁいいわ。次も何かあったらあたしを呼んで。盛大にブチ込んであげる」 「指揮官~!ここのネット、カスなんだけど~!」 憤然とした様子で部屋に上がり込んでくる人形の名はMDR。ネットで炎上しまくってSwatting紛いのことをされ、エルモ号に逃げ込んだ人形だ 「・・・MDR、エルモ号の回線が強くないのは認めるけど、君のためにネットがあるわけじゃないんだ・・・」 何回目だ・・・。グリフィン時代はよかった・・・面倒なことはカリンに投げてればいいのだから 「見てよコレ!掲示板の更新すらままならないんだよ!即レスできないレスバに何の意味があるのさ!」 何してんだこいつは・・・。そもそもレスバすんなよ。そうは言ってもこいつのネット中毒はベースコマンドレベルで設計されている。設計者は何を考えてんだ 「とにかく、そんなことで回線強化なんてしない。賞金ハンターのブランドに傷がつくからね」 「今の指揮官にブランドなんてないでしょ!」 何だとぉ!・・・確かに設備も資材も何もないが、心意気までは失くしちゃいない 「ふん!そんなこと言うんだったら『エルモ号指揮官生ハメ配信』ってスレ立てて実況してやる!」 「本当にやめて・・・」 結局、デールに追加アンテナと信号増幅器を付けてもらった。 「あら、カリーナさん。お人形さんがまた増えたの?」 「貴方に関係あります?」 超高層のビルの最上階。夜の帳が降りたグリーンエリアとは対象に、煌々と灯りを振り撒く一室。一般人では立ち入るどころか、このビルの敷地を跨ぐことすら許されない 「相変わらず慎重ですね。あの人と違って臆病なんですね?」 「指揮官様は勇敢です。それに慎重、と言ってほしいですね」 肩を竦めるモリドーにカリーナは鼻を鳴らす。パラデウスが関わっている、そうわかった段階でこの性悪を補足しておいてよかった。 「それで、情報は?」 「せっかちね。その辺もあの人に似たの?」 クスクスと笑う女に中指を立ててやりたい。お前に指揮官様の何がわかるというのだ そうして、別の部屋に目配せする。ベッドが置いてある部屋に 「・・・またですか・・・」 「秘め事はベッドでするものでしょう?」 掌をきつく握りしめる。これも指揮官様のため、そう言い聞かせ女に手を引かれる 後には待機を命じられた人形だけが残された 「あの、ヴェクター?どうしたの?」 合流したヴェクターに押し倒されている。10年前から素体を変えたのか、少々背が伸びたように感じる。しきりに首元の匂いを嗅ぎ、胸元を開く。 「・・・女の匂い・・・それに、このキスマーク、誰の?」 「あー・・・えーっとね・・・」 きっとメイリンのものだろう。昨日散々にサカったのだから。・・・あの時のメイリンは可愛かったな 「言いたくないって?まぁいいけど。どうせ私には関係ないから」 どうやら彼女なりに納得してくれたらしい。よかった。 分かりづらいように見えるが、ヴェクターはかなり感情豊かだ。ただ、感情の発露が少ないだけ 「エルモ号には慣れた?何か欲しいものがあったら言ってね」 「特にないよ。仲間と指揮官がいればそれで十分・・・」 ゆっくりと身体を預けて来る。猫が甘えるみたいで可愛らしい ゆっくりと撫でてあげる。彼女は目を閉じ、その感触に身を任せているようだ。 「・・・でも、今日は寝れるなんて思わないでね。私以外で満足できないようにしてあげるから」 前言撤回。ちっとも納得なんてしてなかった 「うんっ・・・はっ・・・ヴェク、ター・・・」 押し倒され、手首を掴まれ、抗議の声を唇で塞がれる。人形の力は圧倒的で、多少の抵抗は全て無駄に終わった 彼女の舌が口内を蹂躙する。そのまま、首筋、鎖骨、そして胸へ。少しこそばゆい 「・・・指揮官、するよ・・・」 思わず笑ってしまう。組み伏せておいて言うセリフか。 「いいよ、ヴェクターのしたいように、して・・・」 そのまま、割れ物でも扱うかのように私の胸に手を這わせる。指が優しく、それでいて的確に弱い部分を責め立てる 痛いほど勃った乳頭を軽く指ではじかれる。それだけで思考は白に染まり、腰が浮く 「イっちゃった?指揮官」 ヴェクターの声がすぐそばで聞こえる。 「・・・指揮官ってば結構感じやすいんだね」 「ヴェクターが上手すぎるだけよ・・・」 月明りだけが照らす中、浅く広角を上げる彼女は蠱惑的に見えた 「べくにゃんこですにゃん」 「・・・何て?」 「べくにゃんこですにゃん」 猫耳に尻尾、首輪までつけた戦術人形が、ベッドを占有していた ヴェクターが壊れた!クルカイを呼ぶか?デール?いいや、ペルシカか? その時、床に散乱する瓶とカンが目に入る。どれも9%、8%、12%・・・ 「ヴェクター、もしかして飲んだの・・・?」 顔に朱が差した人形は質問に答えず、首を傾げた。そのまま、二本足ではなく、四つん這いで近づく 「んふふ~、指揮官ってさぁ、結構おっぱいおっきいよね・・・」 ド直球のセクハラだった。止めろ服を脱がそうとするなブラを剥ごうとするな揉むな。 「・・・ヴェクター、水持ってくるから大人しく待っててくれる?」 「そうやって逃げるんでしょ~・・・」 腰に抱き着かれてるから逃げれないのだが・・・ 「水持ってくるだけだから本当に。ちょっと下は止めてパンツ取らないで!ミシュティ!丁度良かった!助けて!待て!逃げるな!逃げないで!」 「指揮官、いますか?」 丁度新しい戦術を思いついたので、指揮官と一秒でも早く戦術議論をしたかった。嘘だ。単純に指揮官と一秒も早く、長くいたい一心でクルカイは部屋のドアを開けようとして、ナカから聞こえた音にびくりと震える 「・・・ヴェクター、誰か来る、かもって・・・あっ、そこ、ダメ・・・」 「指揮官ってさ、ここ本当に弱いよね」 よくよく耳を澄ませば不穏な言葉が聞こえる。嫌な予感がクルカイを包む。まさか、ヴェクターに限って 「指揮官!失礼します!」 「うわっ!」「誰?クルカイ隊長?」 踏み入った部屋には指揮官とヴェクター、それまではいい。指揮官もヴェクターも半裸、だが、どうにも予想と違うらしい 「マッサージ?」 「ええ、ヴェクターにお願いしてね」 「そう、ですか。失礼しました・・・」 そういってクルカイは部屋を後にする。勘違い、その3文字を脳内が支配する 二人になった部屋で、ヴェクターが指揮官の耳に口を寄せる 「じゃあ指揮官、クルカイもいなくなったし・・・ねぇ、シよ?」 ヴェクターが甘く囁く 「う~ん、胸がちょっとキツい~」 「指揮官☆ヴェプリーのスーツ姿似合う?☆」 「よく似合ってるよ」 しきりに胸まわりを調整するシャークリーと、いつもと違う服に興奮しているヴェプリー。ダークなスーツと可愛らしい顔はアンバランスだが、よく映える 「ね~え~、コレ着なきゃダメ?ちょっとダサくない?」 「ちょっと大人のお姉さんって感じでアガらない?」 「二人とも、静かに頼むよ。カリンの護衛なんだから」 は~いと、何ともやる気のない返事。だが、元アイドル人形で人慣れしているという点は他の人形以上だ。もしかすると私以上に 今や私以上に敵が多いカリンだが、大っぴらに404を動かせるわけがない。顔が広いとはいえ、秘匿されるべき集団なのだ そこで白羽の矢が立ったのが、賞金ハンターと、その人形たちというわけだ 「ねぇ、やっぱりボタン外していい?ちょっとエロティックな感じに崩したいんだけど~♡」 「ヴェプリーは動きやすくていい感じ☆ズボンもいいよね☆」 「・・・本当に頼むよ?」 世話しなく動き回る人形に一抹の不安が過る。何もありませんように 「決め台詞ってさぁ、カッコよくない?」 まぁMDRが変なことを言い出した。そもそもこいつが変じゃなかったことが少ないのだが 「クルカイなら『完璧よ』とか、チータなら『Ei!』とか、コルフェンなら『おやおや~💙』とか」 「実演しなくていいよ。後、本人の前で言うなよ、それ」 無駄に声と手振りを真似するのは何なんだ。後、コルフェンはそんなに媚び媚びしてないと思う 「私にもさぁ、そういうのが欲しいワケ!ちょっと考えてよ~」 「わかったからくっつくな!重いんだよ!」 後ろからポカポカと抗議の拳が振り下ろされる。それにしてもMDRの決め台詞か・・・ 「う~ん、『送信!』とか?」「ダサくない?」「『ブルパップ!』は?」「グローザがいるじゃん!」「『荒らし最高!』」「罵倒じゃん!」 ああでもないこうでもない。 「じゃあもう『あらら~』にしなよ・・・」 「え~・・・個性なくな~い?」 「・・・一応君の口癖って書いてあるんだけど?」 「指揮官の部屋って、意外と広いね」 「本来は複数人を想定してるからね。今は私だけだけど」 エルモ号の部屋は現状余っていると言っていい。本来移動型の基地を想定しているのに、人形は想定の1/20もいない。思い思いの部屋を各自使っている 「そうなんだ。で、私はどの部屋を使えばいい?」 まぁ、どこでもいいけど、と付け加える。 「ヴェクターは何処がいい?」 ちょっとした意地悪だ。いつもクールな彼女の困り顔が見たいという幼稚な発想。格納庫、とか言われたら逆にどうしよう 少し考えてヴェクターが顔を上げる 「・・・何処でもいいんでしょ?」 「ええ、何処でもいいわ」 彼女は何を重視するのだろう。整備室や訓練場にアクセスしやすい利便性?それとも、日当たりや騒音を気にする?少しワクワクする 「じゃあ、ここがいい」 「・・・ここ?私の部屋?」 「何処でもいいんでしょ?だったら、指揮官と一緒の部屋が、いい・・・」 琥珀色の双眸が真っすぐ私を射竦める。 結局押し切られてしまった。確かに、どの部屋でもいいとは言ったが・・・ 「・・・ヴェクター、狭くない?サブベッド出そうか?」 ミシュティが持ち込んだ収納式サブベッドに手を伸ばすと、ヴェクターの腕がそれを咎める 「大丈夫・・・それより、もっとこっちに来てよ」 そうは言うが、もう並んで寝ている状態なのだ。これ以上となると・・・ 「もっと、指揮官を感じさせて・・・」 犬か猫を感じさせる動きで、ヴェクターが腕に潜り込んでくる。甘い香りが鼻腔を擽る。 ふと、彼女の顔が近づく。どこか決意したような、それでいて躊躇っているような、不思議な顔 「・・・ねぇ、指揮官。私ね・・・」 その時、クロ-ゼットが勢いよく開き、中からおなじみの人形が出て来る 「ふぎゅっ!え、えへへ・・・」 「・・・指揮官、ちょっと待ってて。すぐゴミを燃やしてくるから」 「カリン・・・頼む、この1500オンスのサルディスゴールドで撃ってくれ・・・」 「カリーナです。どれどれ~・・・え、あちゃ~。指揮官様、よく見てください。このサルディスゴールド、刻印がありませんわ」 「・・・それでも頼むよ」 「・・・指揮官様。悪貨は良貨を駆逐する、という諺をご存じですか?」 「博識だね。生憎、Fラン賞金ハンターなもんでね」 「ともかく、このサルディスゴールドは受け取れません」 「・・・じゃあ支払いは・・・」 「ええ!いつも通りということで!指揮官様はちょ~っと横になってるだけで構いませんよ!今日はリヴァさんも呼んであります!」 「ん~・・・」 デスクワークは肩が凝る。腕を回すと案の定、ごりごりと健康によろしくない音が聞こえる。 「整体行くか・・・」 丁度グリーンエリアに寄ったのだ。それくらいは許されるだろう 『奥へお進みください』 自動音声に従い奥へ進む。どうにも私以外に誰もいないらしい。寒々しい静寂が少し怖い 『ここで服をお脱ぎください』 案内に従う。まぁ、こんなゴテゴテ着込んで整体なんてできるはずもないか 『ここで下着もお脱ぎください』 えー・・・、ぼやくが、同じ音声が流れる。致し方あるまい。他に人もいないのだ 『ここでアイマスクをお付けください』 ・・・服を脱げの後に何故・・・。薄気味悪さを感じるが、今更後に引けない。何故整体に来ただけなのに、敵地潜入みたいな緊張をせねばいけないのだ 『ここで横になってください』 簡素なベッドがポツンとあるだけの部屋。ようやくだ。 「いらっしゃい♪指揮官♪カリン姉も、リヴァ姉も、もう待ちきれないって♪」 「クシーニア・・・いつものアレ、頂戴」 『はーい!毎度あり!』 カフェ・ズッケロ。人形の、それも主に元グリフィン所属の人形が集うカフェ。その裏側 そこはエルモ号とズッケロのホットラインが繋がっている。 その施設に相乗りしているのは、クシーニヤ。指揮官に話せないような仕事を請け負っている 最近の流行りは指揮官の寝顔。セキュリティが硬く、グリフィンでも指揮官の部屋に入れる人形は少なかったが、エルモ号のセキュリティはそうでもない。電子戦特化でないクシーニヤでも楽に潜入できる 『静止画1枚300サルディスゴールドからね。動画は別料金。寝言も別料金ね!』 レアものともなれば1枚うん万。自分の名前を呼ぶ寝言であればその数十倍の値段が付く。 ・・・普通に呼んでもらうのと、睡眠時という無意識下で自分の名を呼ばれるのでは、価値が違うらしい 「クシーニヤ、最近は羽振りがいいね」 「いい稼ぎを見つけたんだよ」 「そっか、それはこの隠しカメラとマイクに関係ある?」 一歩、二歩と詰めて来る指揮官に対して、身を翻して闘争を始める 「対象逃走!隔壁を全部降ろせ!逃がすな!」 「指揮官、クルカイ隊長とはどうなの?」 「どう、って?普通だけど?」 腕の中にすっぽり収まるヴェクターが見上げる。蜂蜜色の瞳が私を捉えて離さない 「・・・まぁ、クルカイ隊長とどういう仲でもいいんだけど・・・」 「?あぁ!妬いてるの!」 可愛いなぁ。思わず頬を突くと不服そうに顔を背けるが、逃げようとはしない 「そうね、クルカイとは長い仲だし、信頼も信用もしてる。背中を任せれる人形よ」 「そういうことを聞いてるんじゃないんだけど・・・」 知ってる。あえてそういう答えを言ったのだから。暫くあえてクルカイを褒めるか すると、腕の中ヴェクターが身を翻す。暴れる彼女を離すと、逆に腕を掴まれ床に押し倒される 「・・・指揮官、私って、結構独占欲強い方なの。それを思い知らせてあげる」 ・・・煽り過ぎてしまったようだ 『指揮官様~、ヴェクターさんたちはどうです?そちらの戦力になっていますか~?』 「カリン。ええ、とても助かってる」 カリーナです、そう笑って訂正する彼女に、呆れ気味にそうだねと返す。ここ最近はそんな感じだ 『弾薬なんかは大丈夫ですか?特にヴェクターさんは焼夷グレネードを沢山使われてますから』 「何とかやりくりはできてるよ。だから『えー、買ってくれないんですか』みたいな顔を止めて」 一瞬で商人の顔をする彼女に、あまり意味のない釘を刺しておく。昔はカリンからしかダイヤを買えなかったなぁ。懐かしい 『むー。つれないですね、指揮官様』 「今はあなたの404の下部組織なんだから。何かあるなら、どうぞご用命を」 言い終わって迂闊なことを言ったと後悔する。 『では、親愛なるB.R.I.E.F.ハンターの指揮官様!指定座標に全力でください!今!すぐ!お一人で!』 「ちょっとカリン!」 非軍事勢力管理局カリーナ長官です、そう馬鹿みたいな台詞を残して通信が切られた 座標はグリーンエリアの、お高いホテルを示していた 「・・・何されるのやら・・・」 心中とは反対に、空は晴れ渡っていた 「おや、お早いお付きですね、指揮官様」 「貴方が早く来い、って言ったじゃない・・・」 クライアントを待たせるわけにはいかない。残ってた仕事はグローザとメイリンに押し付けて、クルカイのバイクに2ケツして全力で指定座標までやってきた。後でみんなに何を要求されるのやら・・・ 「まぁいいです。さ、入りましょう。いい部屋取ってありますから」 上機嫌で手を取るカリンについていく。エレベーターは最上階まで止まることはなかった 「・・・いくらするの?この部屋」「聞かない方がいいですよ」 ・・・どうせカリン持ちだ。今日は久々の休日としゃれこもう ルームサービスはメニューの端から端まで。キングサイズのベッドに二人で転がり、備品をバッグへ・・・さすがにカリンに止められた 夜は更け、だが寝るには早い時間 「・・・ねぇ、指揮官様・・・」 「何?カリン」 すぐそばでカリンがふと真剣な表情を見せる。何かを覚悟した、そんな表情 その時、インターホンが鳴り響く。追加注文でも来たのか?疑問に思っている間にもベルは鳴り続けている 「誰ですか!?クレームは非軍事勢力管理局まで!」 「私だ」 「喧騒・・・小人と細き者・・・」 「あら?こんな人形を手元に置いておくなんて、指揮官は相変わらずね」 上からかかる声の意味はよく分からなかったが、あからさまに罵倒が含まれていた。 ネメシス。指揮官が拾ったらしい人形は、その素性の一切が不明という怪しさだった。・・・自分が言えた義理ではないか じろじろと不躾な視線を感じる。そして、ある一点でそれが止まった 「虚無と荒廃・・・逆行する刻・・・」 「・・・死にたいなら早く言えばいいのに。安心して。指揮官には後で言ってあげるから」 「ミシュティ!どこにいる!出てこい、クソ!」 非軍事勢力管理局の廊下。長い廊下をクルカイは大股で歩き、大声で威嚇する。心臓の小さいものならそれだけで失禁しかねないほどの形相だ 「あら、クルカイさん。どうされました?」 「・・・カリーナさん。ミシュティを見ませんでした?馬鹿で愚図で寝てばかりのボケは見ませんでした?」 罵倒のオンパレードだが、いつものキレがない。よほど頭にきているようだ。 「あはは・・・すみません、見てませんね・・・」 そうですか・・・、そう言い残し、階を後にする。残されたカリーナは漁られた部屋に目を向け、手招きをした 「・・・もう行った?」「ええ」 何をしたのやら。怒りっぽいのはいつものことだが、常軌を逸している。私からもフォローしておくべきか 「酷いよね、クルカイってば。ちょ~っとあんなことになっただけなのにさ」 あんなこと?小首をかしげると、ミシュティは真相を語り始めた 「何って、クルカイと指揮官がデキてるって掲示板で流して、指揮官と一緒のベッドで寝てただけだよ」 カリーナは通信機を手に取る 「ミシュティさん、少し時間いいですか?長くはなりません。貴方が協力的であれば」 タンッ!子気味良い音がカウンターに響く 「うっ・・・もう、無理・・・」 そう言って突っ伏すのは我らが指揮官。ロシアン人形が5人もいればノミクラーベ。 「ふふん、まだいけるけれど?」 勝ち誇ったようにショットグラスを持ち上げるマカロフ。顔はが朱に染まってる様子すらない 「というか・・・この人数相手に飲み比べなんて無理だって・・・あー、水頂戴・・・」 飲み比べ5人抜き、とかいう頭の悪い大会が勝手に始まり、既に4人と対戦しているのだ。潰れてないだけ強いと思ってほしい 始まりは何だったか。AK47が新しい酒を持ってきたんだっけ?マカロフが久しぶりにサシでも飲もうって言ってきたんだっけ? 水を一気に飲み干す。意識は朦朧、視界はグルグル回り、思考は霞がかかったように不明瞭だ 「指揮官、こんなところで寝てたら身体によくないわ」 「・・・うーん・・・」 返事なのか、感嘆詞なのか、よくわからないこと言葉が口から出る 「あらら、指揮官潰れちゃった」「しょうがねぇさ、あんなに飲んだんだから」「どうする?」「とりあえず部屋に連れて行こう」「その後はどうするんですか?」「各自、30分好きにしていいってことで」 「指揮官☆今日メンテしてほしいな☆」 メイリンにしてもらって、とは言わない。エルモ号では指揮官との夜の合図が『メンテして』なのだ 「・・・夜ね。後で時間送っておくから」 「ヴェプリー了解っ☆」 統計なんて取っていないが、最近はヴェプリーと致すことが多い気がする。独占欲だろうか?人形が? 頭を振って馬鹿な妄想を追い出す。多分、誰かと一緒に居たいのだろう。元アイドル人形だし 夜の帳が降りる。車内の端のさらに端の部屋。誰かが来ることの少ない部屋 「ヴェプリー到着っ☆」 「・・・あんまり大きい声出さないでね。404の人形たちもいるんだから」 そう言ってヴェプリーを嗜める。効果があったことは少ないのだが 事実、当の彼女は効いたように見えない。 「指揮官こそ、これからヴェプリーにいっぱい鳴かされるから、あんまり大きな声出さないでね☆」 そう言って、口の端が持ち上がる。 ・・・今日こそは彼女に負けない、そう気合いを入れる 「・・・ねぇ、ヴェプリー。コレ、本当に着なきゃダメ?」 「当然!☆」 フリルが大量についたピンクの服。胸元はざっくり、どころかほとんど見えてしまっている。スカートにもフリル満点な上、馬鹿みたいに短い。それにカチューシャにピンヒール。よくもまぁ用意出来たものだ 「あの、これじゃパンツ見えちゃうんだけど・・・」「大丈夫!☆」 「その、これじゃ胸見えちゃうんだけど・・・」「大丈夫!☆」 「流石に、私がコレ着るのキツくない・・・?」「大丈夫!☆」 アテにならない・・・ペルシカに送り付けるぞコイツ・・・ しかし、有無を言わせぬ口調でドア前に張り付かれてはどうしようもない。人形の、それもヴェプリーの力に一度も勝てたためしがないのだ 「うぅ・・・メイリン、カリン・・・」 虚空に生贄にしそびれた同僚たちの名前を呼ぶ ええい!こうなったらヤケだ!一時の恥で済ませる! 後日、軍事勢力管理局当てに手でハートマークを作る指揮官によく似たアイドルの写真が送られてきた 「指、揮、官!なんかスレのネタ頂戴!」 「・・・何もない」 何を求めているんだ。そもそもスレなんて立てるんじゃない。 「逆に何を求めてるんだ?グローザの餃子なら好きにしていいから」 「そんなものじゃクソスレになるじゃん!もっと、こう、面白いやつ!」 なんてことを言うんだこいつは。昼はバーガー、夜は餃子の何が不満なんだ。平日は中華も食えるんだぞ 暇そうにポチポチとガラケーを弄りだす。少なくとも出ていく気はなさそうだ 「はぁ~あ、指揮官って、意外と面白い話のネタ持ってないよね」 その言葉にカチンと来てしまった 「じゃあ責任もってお前がネタになれ!」 そう言って手をMDRの服に侵入させる 甲高い悲鳴がエルモ号に木霊した MDRが部屋のドアを蹴破る様に入って来る。どうでもいいけど、メイリンが昨日泣いていた 「指揮官!どうよ、この服!今、グリーンエリアで流行りなんだって!」 ノースリーブのぴっちりとした服を着てきた。黒を基調に、ピンクと水色の蛍光色のラインが引かれている。 「グリーンエリアのファッション情報なんて1か月は遅れてるよ」 重要な情報でもないし、たまに流れの闇ブローカーから聞くくらいだ 「ふふ~ん、そう言ってられるのも今の内だぞ!」 そう言って、背後から覆いかぶさるように彼女が抱き着いてくる サブリナやペリティアと比較すると、少々慎み深いが、確かに主張するそれが背中に密着する 「・・・MDR、離れて・・・」 「おっ、反応あり!じゃあ、感想頂戴!」 ぱっ、と離れる。そのまま、前に立ってくるりと一回転 遠心力でたゆん、と擬音が付きそうなくらい揺れるそれに、否応なしに目がいく 「・・・慎み深いね」 「ちょっと!何その反応!」 『指揮官、あのサーバー壊したんだって?』 通信越しにニヤニヤとペルシカが嗤う。何もしてないのだが・・・ 「いや、壊してないけど・・・」 『あーあ、もう手遅れだよ。あれはね、人形の倫理のロック機構よ。人間への一定以上の感情を抑制するってやつ』 へぇ、知らなかった。であればデールにでも早めに直してもらおう 『でさ、面白いことに長年人間といた人形ってのは、その人間に対して、ある種、執着するようになる。まるでメンヘラね』 ポチャンポチャンという音は砂糖を入れる音だろうか。今はそれがカウントダウンのように聞こえる 『人形に妊娠機能はない。人形もそれをわかっている。なのに、執着した人間とベッドを共にしたがる』 ぼかして言っているが、あからさまだ。 それよりも先ほどから背中に視線を感じる 「・・・その機構って修理できる?」 『あなたがこっちにいればね。そうね、一流以上のエンジニアが2人でもいれば1週間ってところかしら』 視線が増えた気がする。恐る恐る後ろを振り向くと、いくつもの目が暗闇から私を捉えていた 『・・・まぁ嘘なんだけど』 人形に引きづられて通信機の最後の言葉は聞こえなかった 「ヘレナ、もう寝る時間よ」 「ふおおおお!!!れんきゅう!ねる!はやい!!」 ガキが部屋から飛び出していった・・・ 「コルフェン・・・捕まえてきて・・・」 「え~、保護者が捕まえてきてくださいよ💙ヘレナちゃんのママ💙」 胡乱なことを言い出す人形の脳天に拳を振り下ろす 「ヘレナー、何処にいるのー?」 しらみつぶしだ。どうせ部屋にはロックをかけているし、外に出ることも出来ない。そう思っていた 「本当にどこにいるのよ・・・」 とりあえず動員できる人形は全部動員したが、未だに見つかっていない 「ん~?」 ふと、自分の部屋に戻って来ると、ベッドに小さい山が出来ていた。案の定、逃走した子供が丸くなって眠っている 「・・・はぁ。グローザ、対象発見、創作中止。各自戻っていいわ」 今から起こすのも面倒だ。今日はここで寝かせるとしよう 部屋に入るとヴェクターがいた。 「ヴェクター、どうしたの?」 「別に・・・」 そうは言うが、ベッドに腰掛けるなり、腰にべったりとくっつく。まるで猫のようだ。そのまま頭を撫でる。銀の髪は引っかかることなく滑らかな感触を返してくる 「・・・さっきまでミシュティがいたんだけど」 「あぁ、またクルカイから避難してきたのね」 避難にゲームに漫画、ほとんどミシュティの第二の部屋のようになっている。床には彼女お気に入りのクッションまであるのだ 「それで?ミシュティは?」 「クルカイ隊長が探してたから教えておいたよ。多分、隊長といるんじゃない?」 そっぽを向いてそう答える。今頃、訓練でも受けさせられてるのだろう。 「・・・なんで他の人形の話するの」 「ゴメンゴメン」 許してよ、頬を撫でる 「ダメ、もっとしてくれないと許さない」 「指揮官、ここ鍵かかってるんだけど」 「・・・ミシュティ、そこは開けないでね」 指揮官の部屋の片隅、ひと一人が収まる程度の箱が鎮座している。指紋、静脈、網膜、暗証番号・・・厳重に施錠され、移動させることすらできない 箱の中は人形はおろか、メイリンすら知らない。 曰く、指揮官秘蔵の品が入っている。曰く、指揮官の本体が入っている。曰く、亡霊を封じている。噂は数あれど、何も答えない。それがかえって様々な憶測を呼ぶ 「あら、指揮官。以外ね、昔の女に執着してるの?未練かしら。人間はよくわからないわね」 カツカツと、ダイナーゲートが入って来る。施錠しておいたのだが、勝手にロックを外したのか。彼女の前には、どのような電子ロックも意味をなさない 箱の中身と対面していた指揮官は、そんな彼女を叱るでもない。中身の整備だけは、自分で行うべきと思っている 「ダンデライオン・・・私は今でも彼女の指揮官なんだよ。せめて彼女の帰ってこれる場所とその身体くらいは用意してあげたいんだ」 そう、そう彼女に伝えておくわ。とはダンデライオンは言わなかった。 再会は劇的であればあるほど面白い 「ミシュティ、それ一口頂戴」 「ん~、はいヴェクター」 そう言って愛飲しているエナドリを手渡す。 「珍しいね」 ミシュティとヴェクターとは珍しい組み合わせだ。同じ404だが、反りが合わないと勝手に思っていた 「そう?まぁ、そうかもね。普段一緒じゃないし」 「ヴェクターはクルカイに信用されてるから、普段は別行動なんだよ」 それに、あたしはクルカイと長いからね。ミシュティの顔には少し誇らしげだった。まるで長年連れ添った戦友を自慢するかのように ・・・当のクルカイは寝てばかりの彼女にご立腹だったが 「おいしい?それ」 エナドリはあまり飲んだことがない。センタウレイシーかスプリングフィールドが淹れた珈琲を愛飲している 「飲んでみる?」 そう言って飲みかけの缶を手渡す。ヴェクターの手で少し温くなったが、それが彼女の体温のようだ 「・・・ふふ、間接キスだね」 「あー!あたしの分もうないじゃん!」 「へぇ、ここがエルモ号ね。中々いいじゃない」 「・・・ペルシカさん、一応言っておきますけど、今の私はあなたの部下でも協力者でもありませんよ」 勝手に乗車してきたマッドサイエンティストに釘を刺す。そうでもしなければ、明日には超絶合体エルモ号DXとかになりそうだ 「おかしいわね。カリーナと私は協力関係で、指揮官はカリーナの下部組織なんでしょう?つまり、私の下部組織ってことじゃない?」 真顔で何抜かしてるんだこいつ。助けてハンター とりあえず部屋はここでいいわ。そういうとサーバールームのすぐ隣の部屋に荷を下ろす。彼女にしては珍しく相当にデカイ荷物だ 「・・・そのデカイ荷物は何ですか?」 「見たい?」 いいえ、という前にガパンと、開く。その中には 「・・・ペルシカさんが2人!?いや、この胸のデカさは違う!!」 「・・・とんでもなく失礼ね。まぁいいわ。起きなさい、『ペルシカ』」 目を開けるペルシカ2号。胸と清楚な雰囲気以外は寸分たがわずペルシカだった 「おはようございます。ペルシカ博士、それに、教授」 じゃ、後は当人同士仲良くね。そう言って引きこもるヤサグレ猫耳 「お久しぶりですね、教授。まずは、状況の説明を」 「うるさい!!」 隣からギシギシアンアンギシギシアンアン。夜どころか、最近は昼間から聞こえる 人形を侍らすのは別にどうでもいい。むしろ、膣ユニットのデータ取りにもっとやってほしい だが、何故隣でするのか。盛りの付いた犬猫か。エロを覚えたての思春期か ぐいっと、珈琲を一気飲み。・・・角砂糖を2桁放り込んだ液体を珈琲と呼べるかは議論の余地があるが そういえば、カフェの人形から『マキアート大好き』なる液体を貰ったが、やはり珈琲には勝てないな 閑話休題。とにかく隣に怒鳴り込みに行こう。拳を握って殴り込みに行こう 「指揮官!!今度ここで騒ぐなら・・・」 言葉が尻すぼみになる。自分にそっくりの人形が指揮官の上に跨ってアンアン言っている 「・・・ペルシカ博士・・・」 「・・・丁度良かった・・・ペルシカを止めて・・・もう出ないんだ・・・」 「指揮官様、なんか、増えました・・・?」 「そうなんだよ、昨日起きたら隣にいてね」 「どっちも指揮官として登録されてるのよ。まぁ、自分が増えたって考えるとメリットが多くて助かるわ」 カリーナの両隣に座る男女の指揮官が二人。どちらも知っているようで、大分怖い 「どっちかが倒れても、どっちかが引き継げるからね。メイリンが増えなかったのは少し残念だ」 「そうね。メイリンが2人いればエルモ号も人形もが24365でフルメンテできるんだけれど」 カリーナを挟んで変な会話をしだす。メイリンさん、泣くと思いますよ・・・ 「ところでカリン。今日、夕食でもどうだい?勿論、二人で」 「行きます!」 「あら、カリン。私と一緒にお風呂でも行かない?裸の付き合いって言うでしょ?」 「行きます!」 暫くカリーナで遊ぶ指揮官達だった 「あら、指揮官。ちょうどいいところに」 レクレーション室で黛煙が指揮官を呼び止める。振り向けば、卓では瓊玖、チータが手招きをしている。 「どうかしたの?」 「ちょうど麻雀をしようとしてたのですが、三麻では少し味気ないと思いまして・・・」 なるほど。三麻はそれでいいところがあるが、やはり4人での麻雀もいいものだ。 「うむ、手になじむこの感覚。全自動卓より手積みがいいな」 「ネト麻のほうが楽なんだけどね~。ま、実機でも私が一番ってところ見せてあげる!」 なるほど、面白い。麻雀であれば人形にだって負けはしない 「ロン!」「ロンです」「それだ、ロン」「ロン!それ頂戴!」 30分後、点棒どころか服まで剥かれた哀れな指揮官がそこにいた 「し、し、指揮官!ア、アレが出ました!」 「メイリン、落ち着いて。アレじゃわからないわ」 死にそうな顔で指令室に飛び込んでくるメイリン。顔面蒼白で目の下にはクマが出来ている。・・・それはいつものことか 「ヤツですよ!黒くてカサカサして飛んでくるG!」 「・・・チッ!あれだけ厳重に燻して生き延びた個体がいるわけね」 面倒なヤツらだ。しぶとさで言えばパラデウス以上に。おまけに人体に被害が出るレベルの殺虫剤散布して生き延びた、となると薬剤耐性がどれほどついているのか。 「諦めようよぉ・・・」「ミシュティ、私たちは負けるわけにはいかないの」「指揮官、S3の使用許可を」「クルカイ、設備を破壊する気?」「はぁ、焼夷グレネードならあるけど?」「ヴェクター、どこに使う気なの?」「某が守る!」「・・・今はヤツと闘って?」「ヴェプリーにお任せ☆!」「・・・何をするかわからないけどやめて・・・」 何故こうもエルモ号の人形は破壊衝動が強いのか。もっと、こう、お淑やかな人形はいないのか 結局、ペーペーシャ、センタウレイシーとGの一掃を行った。 「出力絞れば結構いけるわね」 特にペーペーシャのお手伝いロボはとても役に立った 「指揮官、デイリーパイズリ任務の時間です」 「・・・すまないクルカイ。もう一度言ってくれ。なんて?」 「ですから、デイリーパイズリ任務の時間です。昨日はアンドリスでしたので、今日は私です」 ・・・頭の中は疑問符でいっぱいだ。あのクルカイに限って真顔で冗談を言うだろうか。・・・言いそうだ そうこうしているうちにズボンを破かれ、パンツは毟られ、何ともまぁ間抜けな姿になった 「え?ホントにやるの?」 「なんですか?アンドリスの授乳手コキがそんなによかったんですか?私だってそのくらいできますけど」 クルカイのデカパイが陰茎を包む。柔らかな感触に、キツ過ぎも緩すぎもしない絶妙な力加減。そして、ゆっくりと乳房が上下する。 「どうです?気持ちいですか?出してもいいんですよ?」 「はっ!」 心臓がどくどくとうるさい。シャツは寝汗でびしょびしょだ。 夢か・・・ 「指揮官、デイリーパイズリ任務の時間です」 「指揮官って童貞なんですか?」 「・・・人の性事情を大っぴらに言うもんじゃないよ、メイリン」 ヘレナとメラニーという子供がいるんだぞ。情操教育はどうなってるんだ 「だって指揮官が特定の誰かとそういう関係になったって聞いてませんよ?私がなってあげましょうか?」 「憐れむように言わないでよ。言ってて悲しくならない?」 その気になれば恋人の一人や二人・・・そう言いかけて知り合いの女性が禄でもないことに気づいた 「人形で童貞卒業してるからいいの!」 「・・・指揮官、オナホで童貞卒業って言います?普通」 なんてことを言うんだこのメカニックは。育てたやつの顔が見て見たい 「・・・指揮官、私でよければ今晩どうですか?」 「やめて!その悲しい生物を見るような目で見ないで!」 「へぇ、ここがエルモ号なんだ!」 「あまりはしゃがないでよ、40」 わかってるって、リヴァ。こうしてみると姉妹のように見える。一部を除いて 「後で部屋に案内するよ」 「気持ちだけもらっておくわ。40と私は一緒の部屋で構わないわ」 「え?あたい、自分の部屋が欲し「一緒の部屋だから」」 40の言葉をリヴァが遮る。筋金入りだ OGASと聞いていたが、ほとんど普通の人形と変わりないように見える 「エルモ号の人形たちに挨拶しに行ってくるわ」 「クルカイ達も待ってたよ」 あいつ等の顔は見慣れてるから後でいいわ。そう言って手を振って去ってゆく 待ってよ、リヴァ!慌てて40が付いていく。と思ったら、そっと身を寄せてきた 「ね、後で指揮官の部屋行くから、場所教えてよ」 そう囁いて、悪戯っぽく笑う 「じゅ~う・・・じゅういち~・・・もう、無理です・・・」 「メイリン、ヘバるのが早すぎるよ。ほら、後1セット」 日課のスクワット、腕立て、プランク。流石にグリフィン時代のトレーニングはさせれないが、この程度なら運動不足解消ついでにストレス発散になるだろう。 「もう無理ですよ・・・」 床にへばりついて荒い息を吐くメイリン。相当軽いメニューにしたつもりなんだが。この辺はコルフェンとも相談してみよう 「仕方ない、今日はこの程度にしておこうか。立てる?」 聞いてみるが、メイリンはピクリとも動かなかった。 手を伸ばすと掴んでくるが、力は全く入っていない。 「・・・無理です。起こしてください。抱っこしてください。ベッドに運んでください」 「はいはい」 カリンならこの程度は軽くこなしたんだが。まぁ彼女は曲がりなりにも訓練してたしなぁ。比べるのが酷というものか 「・・・指揮官、荷物運ぶみたいに持たないでくださいよ」 「注文が多いね。どんなのがお好み?お姫様」 「お姫様抱っこしてください・・・」 言葉の最後は消え入りそうだったが、注文通りにしてあげる。体勢を変えると、メイリンの顔は真っ赤であった 「ご主人様、そろそろお休みになられた方が・・・」 「あぁ、センタウレイシー。そうね、これを片付けたらね」 珈琲ありがとう。そう言ってすっかり冷めてしまった珈琲を一口。 この先の地形の確認、ルート選定、補給地点の設定。やることは山盛りだ セクスタンスから得た情報は断片的だ。リヴァから追加の情報はない。あの青い第三世代人形はデールとメイリンが今調べている。後手に回っている、というのが正直な感想だ 「ご主人様、差し出がましいようですが、今はお休みになられた方がよろしいかと」 「それはそうなんだけどね・・・」 準備をし過ぎる、ということはない。特に、パラデウスがまだいるのであれば う~ん、ペルシカさんに追加の人形でもお願いしてみようか。素体が足りないし電子戦特化のメンタルだけってのもいいかもしれない あれこれ考えていると、突如センタウレイシーに抱きかかえらる 「あの、センタウレイシー?」 「ご主人様の健康の管理も、メイドとしての仕事です。嫌でも休んでいただきます」 そのまま、ベッドに押し込められてしまった。目がちょっと怖い 「眠れない、と仰るのであれば軽く運動でもいかがでしょうか」 「ヴェプリーご無沙汰なの☆」 「指揮官、すぐに抱くべきよ」 「ちょっと指揮官!なんで抱かないのよ!」 「乾きない欲望の塔・・・濡れる失意の地・・・」 「ヴェプリーちゃんかわいそ~💙指揮官~抱いてあげてくださいよ~💙私はその後で構いませんから💙」 「指揮官。人形のパフォーマンス維持のためにセックスすべきです。完璧なローテーションを組みましたのでご確認を」 「・・・あ、あたしは寝てるだけでいいから・・・」 「指揮官・・・寝てるぅ~・・・?」 合いかぎを使いゆっくりとドアを開ける。部屋の中は真っ暗だったが、暗視機能がデフォの人形には昼間と変わらない。 避難部屋もとい、指揮官の部屋にはあたしが持ち込んだソファやらゲーム機やら漫画やらが散見する。 「ぅん~・・・?」 足音を立てずベッドに近づく。さっきの音に気付いたのか、もぞもぞとベッドが動き、よくわからない声が聞こえて来る 「・・・指揮官、寝てる?」「・・・ねて、る・・・」 よしよし、本人が寝てるって言うんだった寝てるんだろう。そのまま指揮官の腕にすっぽりと収まる。寝ている人間特有の暖かな体温が心地よい。クルカイだと蹴りだされてしまう 「ん~・・・」 あっという間に微睡が襲ってくる。三大欲求の一角に抗うことなくミシュティは目を閉じた クルカイが怒鳴り込んでくるまで、後4時間 「んんん・・・Zzz・・・」 指揮官が起きない・・・。ほっぺを抓っても、服もブラもパンツも剥ぎ取っても起きない。 よっぽど疲れているのか、それとも寝たふりをしているのか。ミシュティには判別できなかった 「・・・指揮官、起きてる・・・?」「ぅ~ん・・・」 返事なのか寝言なのか。あたしもこんな感じなのかな?腕を持ち上げ落とす。ぼてっと落ちた。・・・寝てるってことでいいよね ゆっくりと口付けを。歯列をなぞる様に、時に舌を吸うように。指揮官は呼吸が出来なくて苦しそうだったが、それでも起きることはなかった 空いた手で胸を揉む。大きさはアンドリスと互角といったところか。乳首を指で弾くと「んっ!」と声が漏れた気がする 面白くなって何度かそうしてみると、そのたびに「あっ!♡」とか「はっ!♡」とか艶のある声が聞こえる気がする 「・・・指揮官って下剃ってるの?ふぅん・・・」 恥丘はツルツルとした手触りを返してくる。丹念に手入れされているのだろう、産毛の一本もないようだ 「・・・そこは、ダメだって・・・」 「指揮官寝てるからなぁ~、気づかないよねぇ~」 何か聞こえて来るが、きっと幻聴だろう。何せ、指揮官は寝てるんだから 「指揮官」 「ん?どうした?クルカイ」 いつになく真面目な顔したクルカイが部屋を訪れた。少々気を引き締める必要がありそうだ 「何があった?」 「少し、重要な話が」 何だろうか。物資が足りないのは知っているし、索敵で何かを見つけたという報告は来ていない。内部に諜報員でもいる?電子攻撃を受けている? 「指揮官、女になってくれませんか?私ばかり攻められるのは不公平です。私も攻めに回りたいです」 真面目な顔で馬鹿みたいなことを言い出す。何言ってるんだコイツ 「・・・君が『指揮官には攻められたい』といった記憶があるが?」 「女性の心理は移ろいやすいものです。カリーナさんもレズセックスしたいって言ってましたよ」 「・・・本当か?また等身大指揮官抱き枕販売するためって言ってなかったか?」 「いいですから、早く薬飲んで、この服に着替えてください」 クルカイが手に持っていたのはパジャマ。それもグリフィン時代の 「またニッチな・・・」 渋々ペルシカから受け取った薬を一口。身体がかっ、と熱くなり、 「指揮官、起きてる?」 「どうしたの?ヴェクター」 ちょっと指揮官にも意見聞きたくて、見上げる瞳は揺らぐことなく、真っ直ぐ見つめて来る 「とりあえず、入ったら?」 そう言って中に彼女を招き入れる。あの事件以来、訓練後は時たまこうして部屋で戦術議論や振り返りをするようになった。いい兆候だと思う。少なくとも抱え込むよりずっと 「・・・ありがとう、指揮官」 「どういたしまして。どう?喉は乾いてない?」 そう言ってすっかり元の造形が崩れたマキアート大好きを差し出す。・・・少々甘すぎて持て余していた 「そう?なら、貰おうかな」 ・・・真面目な顔に、少しばかり悪戯心が湧いてくる。中身をスプーンで一口すくい、彼女の口元へ 「はい、あーん」 「指揮官・・・」 予想通り目が左右に揺れる。可愛らしい。カメラとビデオがないことが悔やまれる 「・・・あーん」 小さく口を開ける彼女にスプーンを入れる。彼女の頬は、火が点いたように真っ赤だった 「クソゲー!クソゲーだね!クソ!」 「指揮官落ち着いて。前に1体横に4体後ろに5体上に2体。後ろは攻撃すると人形の膿が出て来るから最後に」 騒動の後、気分転換がてらヴェクターとあのシミュレーションもといゲームに潜った。勿論、あのAIは駆逐済みだ 「前右は任せるよヴェクター、左と上は私がやる。後方警戒は怠らないで」 「了解」 背中合わせで銃撃を浴びせる。1、2、3。敵がみるみる消えてゆく。止めも怠らず。ヴェクターの方を見れば彼女も掃討が完了していた エリア掃討完了。が、その奥に人が見えた 「ヴェクター!」 思わず彼女を突き飛ばす。同時に胸に衝撃。 「ッ!指揮官!」 目を落とせば古風で短い弓が突き刺さっている。クロスボウか弓か、道理で射撃音がしないわけだ。短い射撃音が聞こえ、先ほどの人影が倒れる 「指揮官!今、応急キットを!」「・・・ヴェプリー、クリアはもう目前だ。私は放っておくんだ・・・」 頭を振る彼女。まるで駄々を捏ねる子供のようだ。その頭をそっと撫でる 「・・・大丈夫。君なら出来るさ」「・・・わかった・・・」 掠れる視界の中、彼女が立ち上がるのが見えた。 「ヴェプリー?」 銀糸の髪がさらりと揺れる 「指揮官、また間違えてる?」 ヴェクターが振り返る。表情はあまり変わらないが、またか、と目が言っている。 「ゴメンなさい・・・」 「ダメ。反省文と改善対応策を書いて」 じゃなきゃ許してあげない、微笑んで彼女が宣言する。本気で怒ってるわけではなさそうで一安心 「悪かったわ。お詫びに何でもするから。ね?」 「何でも?」「何でも」 人形相手に困ったらとりあえずこれを言っておけば何とかなる。グリフィン時代からの教訓だ。・・・一部の人形は洒落にならないが 「じゃあ、夜ちょっと時間いい?」 「夜?いいけど」 何をするんだろうか。夜間戦?PEQ装備はあまり数がないんだけれど 「・・・覚悟してね」 広角を上げ優しく笑う彼女が、今は少し怖く見える。本当に何をされるんだろうか 「指揮官、次の作戦ですが・・・」 「ぎゃぁっ!クルカイ!来る時は言ってよ!」 中でバタバタと音がする。何を慌ててるのか。 ドアが開くとほとんど半裸の指揮官が出てきた。・・・きっちり鍛えられた胸筋、浮き出た腹筋、意外と太い腕・・・ 「・・・あの、クルカイ?」 「いえ、作戦企画書です」 ありがとう、と受け取る指揮官は、何だか慌ててるようだ。 「指揮官、もしかして」「・・・ナンデモナイヨ」 はぁ、仕方のない人だ。プライベートでは人形にとことん甘いのだから 「そうですか。中のミシュティには今日の訓練は7割増しと言っておいてください」 ミシュティなら変なことにならないだろう。先に指令室で待っているとしよう 「クルカイは行ったよ。心臓止まるかと思った・・・」 「そう?ミシュティと勘違いしてたみたいだけど?」 そう言ってヴェクターがベッドから面倒くさそうに言葉を投げる。まだ心臓がバクバクと跳ねまわっている 「指揮官、まだ時間ある?もう一回くらい出来ないかな?」 もみもみ、ふにふに、たぷたぷ・・・ 「指揮官、楽しい?」 「・・・それなりに・・・」 そう、それならよかった。そう言って彼女は私の右てをさらに自身の胸に押し付ける いや、離してくれ・・・ 最初は何だったか。サブリナの胸を見ていたのが悪かったのか、クルカイの揺れる胸を凝視していたのが悪かったのか 「あの、ヴェクター・・・」 「ん?どうしたの指揮官。あぁ・・・」 良かった。わかってくれたようだ。流石にこの状況は少々、いや、大分困る。誰かに見られたら何が起きるやら 「左手が寂しいよね、はい」 ヴェクターはそう言って残った左手も胸に導く。 控え目だが、確かに主張する形のいい胸だ。いくらでも触っていたいと思う 「どうかな?指揮官」 「・・・いいと思う」 窓からは眩しいほどの満月が見えた 「ねぇ、指揮官」 月明りが反射する銀髪は、まるで月の神のようだ。目を離せば消えてしまいそうで、触れれば壊れてしまいそうだ 細い指が私の頬を撫でる。仄かな体温が、確かに彼女の存在を証明している 「どうしたの?ヴェクター」 頬を撫でるのとは反対の手が私の背に伸び、わずかに爪を立てる。まるで、自分の証を残すかのように。世界に爪痕を残すように 「・・・指揮官、言わなきゃわからない?」 「ヴェクター、言わないとわからないわよ」 琥珀の視線が、ふっと和らぐ。同時に、空気も少し弛緩したように感じる 「ズルいよ・・・」 何年も指揮官してるからね、そう答えると、二人で静かに笑った 意を決したように彼女の口が開く。ただその動作に見惚れてしまう 「指揮官、私に抱かれて?」 あぁ、私は神に捧げられた贄なのだ 「ヴェクター?どうしたの?」 太陽みたいな人だ。常に人形達の輪の中心にいて、人形に人間のように接する。・・・その人形たちに引っ張りまわされてるんだけど 指をそっと頬に伸ばす。くすぐったそうにしていたが、拒否されることはなかった 「何?今日は随分甘えん坊ね」 そのまま腕の中に収められて、撫でまわされる。そうじゃないんだけど、ちょっと嬉しい 「指揮官、何かしてほしいことって無い?」 「んー、特にないかな?」 「そう、何かあったら言って」 気持ちだけ貰っておくわ、そう言われては何も言えなくなる。指揮官の方が一人で抱え込んでるのではないのか? よほど不満顔だったのだろう。指揮官がクスクスと笑う 「逆にヴェクターは私に何かしてほしいことある?」 ・・・迂闊だと思う。グリフィンで一緒にいた人形にそんなこと言っちゃダメだよ。 体重をかけ、ゆっくりとベッドに倒す。状況を理解しきれていない表情に、つい頬が緩んでしまう 「じゃあ、ちょっと時間貰うね」 太陽のように輪の中心にいて、皆を照らす。そんな人を、私は今から穢すのだ 「あら?」 カツカツと、一匹のダイナーゲートがシミュレーション室の前で止まる。事も無げに電子ロックを解除し、中へ侵入する 「・・・へぇ、面白いものを作るのね」 ダイナーゲートの表情は変わらないが、口調には新しいおもちゃを見つけたような、楽しそうな声色だ 尻尾をピンと立て、ざっと当たりを捜索する。幸いなことに、ダイナーゲートの予備素体が転がっていた 「どう?仮宿としては悪くないんじゃないかしら?」 虚空へそう呼びかける。同時に空気が数段重くなったように感じる。 「不満なの?贅沢な赤ん坊ね。だったらそこで朽ちる?私が取り込んであげてもいいけど?」 意地の悪い笑い声をあげるダンデライオン。実際、彼女にとって目の前の存在など取るに足りない。 面白そうか否か。それが今の彼女の唯一の行動指針 程なく予備素体の目に当たるライトが光を灯した。 「おはよう、何も知らないお子様」 ダイナーゲートはガタガタと駄々を捏ね、尻尾を振り回し、全身で不満を表す 「スタンドアロンに決まってるじゃない。武装も。指揮官に怒られるのはごめんよ。それで?お名前は言えるかしら?生まれたばかりの赤ん坊AIは」 「カシュマール・・・」 「カリーナ、今まですまなかった。これを受け取ってほしい」 箱の中には主張しすぎない、だが、眩しいほど輝く指輪が一つ 「でも、指揮官様。指揮官様は賞金ハンターで・・・」 「関係ない。君のためなら私は非軍事勢力管理局に入ろう」 ドキドキと心臓が暴れまわる。何処に視線を向けていいかわからなくなる 「で、でも、メイリンさんや他の人形の皆さんが・・・」 「君と、君だけと特別になりたいんだ。他は関係ない。受け取ってほしい」 そう言って私の手を取り、指輪をゆっくりと・・・ 「うへ、うへへへ・・・」 「リヴァ姉、カリン姉が怖いよ・・・」 「いつもの発作よ。放っておきなさい」 「にゃっ♡にゃっ♡そ・・・こ、ダメな・・・ダメなんです・・・にゃっ♡!」 「ハープーシー、これは小隊全滅の危機の元凶への罰なんだよ」 甘い吐息がハープーシーから漏れる。 指揮官が彼女の背中に接続した尻尾の根元をトントンと叩くたびに、堪えようのない嬌声が出てしまう 「ま、また・・・イ、イきますっ♡」 言葉と同時にハープーシーの脚がピンッと伸び、太ももがぶるぶると震える。 「イくときにちゃんと報告できるようになったね」 偉いよと頭を撫でる。だが、尻尾の付け根への愛撫は止めない。彼女は絶頂から戻ってこれないのか、ビクビクと震えるばかりだ 「そういえばヴェクターは何処に行ったの?」 手を止めず質問をするが、答えは返ってこなかった。少々やり過ぎたかもしれない その時、後ろでドアが開く音が聞こえる 振り向けば猫耳尻尾付きヴェクターが無表情に、しかし顔を赤らめて立っていた 「ヴぇくにゃんこですにゃん・・・私にも、それしてほしいですにゃん・・・」 「ちゅっ、んっ、指揮官・・・」 組み伏せられている。単純に腕力では人形に勝てるわけもないし、ダミー素体まで持ち出してきている 「指揮官・・・」 ダミーは無表情で私の四肢を抑えつけている。当のヴェクターもあまり表情が出ないタイプなので、ダミーはオリジナルと似るのだろうか 「指揮官、舌出して。うん、そう」 誰一人として服を着ていない。ダミーは当然として、ヴェクターは脱いでいるし、私は剥かれた。 「ごめん、でもこうでもしないと、指揮官はサセてくれないと思って」 別に抵抗なんてしやしないのに。そういう行為がしたいなら喜んで、とは言わないが拒否なんてしないのに 「指揮官、もっと・・・」 キスをせがむヴェクターは、餌を求める小鳥のようだ。啄むように、貪るように唇と口内を犯される ふと、琥珀の瞳が怯えるようなに揺れる。 「指揮官・・・」 何かを言いたげで、それを無理やり飲み込んだ。そんな顔 「いいよ。もっとして?ヴェクターの好きにして」 そうして、再び唇が落ちて来る 「や、やめてください!クソ!この触手!」 ヌメヌメとした触手がサクラを捕える。世界観どうなってんだ 触手はサクラをディスプレイの前まで運び、電源を入れた 「クッ!か、身体は堕ちても心までは堕ちませんからね!信じてください!指揮官!」 触手は無視して何事か操作を始める 画面には 「・・・え?淫夢?」 『三章は飛ばすから』 「お疲れ様、指揮官」 そろそろ部屋に戻ろうかというところでヴェクターに声を掛けられる 「お疲れ様、ヴェクター。上がり?」 「うん、クルカイに報告書上げたし、今日はもう上がり」 そのまま流れるように腕を組む。最近はよく彼女が密着する気がする。この前まではクルカイやミシュティだったような 「この後時間ある?部屋に行っても、いいかな?」 「ないけど?最近は何だかよく部屋に来るわね」 「そうだね、指揮官と会えたの10年ぶりだからね」 藪蛇だったか。渋面にヴェクターが優しく笑う。 「あー・・・404の第2部隊は大変そうね。クルカイもリヴァも厳しいでしょう?」 「ひよっこ引き連れて火炎瓶投げるだけの仕事に比べたら楽だよ」 組まれてない手を顔に当てる。そうだった・・・ 「悪かったわ・・・あの時のことは謝るわ」 ヴェクターが、またクスクスと笑う。 「まぁ、指揮官にまた会えたから許してあげる。今度は勝手にどっか行かないでよ?」 「ヴェ、クター・・・限っ、界・・・げほっ!」 思考が白に染まりきる寸前に頸にまわされた手が離された。 激しくせき込み、酸素を取り込む。ひゅーひゅーという音は自分の喉から出たものなのか、それすら判別できない 「ダメだよ、指揮官」 「待って!ヴェクタッ!」 言い終わる前に再度、指が喉を締め上げる。細い指は緩むことなく気道を細くしてゆく。酸素が途絶え、意志とは無関係に目が上を向き始める。指が、手がバタバタと暴れる 「指揮官、そうその顔。もっと見せて」 ヴェプリーの声が遠い。ぼんやりと見える視界には、危険な笑みを見せた彼女が見えた気がした クルカイがつけたキスマークを見てしまったせいか?いつものようにベッドに潜り込んだミシュティを見たからか?メイリンと寝ていると発覚したからか? 「はっ!はっ!はっ!」 指の力が緩み、浅い呼吸をする。生殺与奪はあちらが握っている。そもそも人形とタイマンで勝てというのが無理だ 「ヴェクター・・・」 「指揮官が悪いんだからね」 そう言って、首筋に噛みつく。痛みの程度から歯型どころか、出血してるようだ。そして、・・・ 「え?私ってそんなに独占欲強く見える?ふぅん・・・」 「指揮官って前のお仕事何してたの?ヴェプリー気になる☆」 「そうね、今とあんまり変わってないかな」 「言うこと聞かない人形と一緒に正体不明の敵と戦ってたの?☆」 「わかってるなら改善してほしいなぁ・・・」 てへっと舌を可愛らしく出すヴェプリー。そういうのは異性にした方がいいと思う 「でもでも、本物のアイドルと一緒にお仕事したことはないでしょ?☆」 「そうかな・・・そうかも・・・」 いろんな人形が浮かんでは消える。お淑やかな清楚系の人形は何処に行ったんだろう・・・ 「あれ?指揮官何だか元気ない?ヴェプリーのソロコンサートで元気出して!☆」 「さっき聞いたからやめて・・・」 3時間目の前で歌って踊って、まだ元気があるのか。純粋に尊敬すら覚える 「それに、シャークリーだけじゃなくて、新しい人がユニットに参加したの☆入って入って☆」 そういえばアイドルユニットと聞いていた。その人形と連絡でもついたのだろうか 「ヴぇ、ヴぇくにゃんこですにゃん・・・」 ミニスカにおへそ丸出しのヴェクターが入ってきた 「ちょっとくっつき過ぎじゃない?」 「何さヴェクター。ここはあたしの特等席なんだからね」 膝の中に納まるミシュティがヴェクターに抗議の声を上げる。特等席にしたつもりはないんだけれど・・・ 「『サボらせるな』って言われてるんだけど」 「肩肘張り過ぎだよぉ。もうちょっと緩くしようよ」 「喧嘩しないで・・・」 睨め付けるヴェクターに、眠そうに半眼で返すミシュティ クルカイやキャロリックのように怒声はないが、静かにボルテージが上がっていくのを感じる 「指揮官からも言ってくれる?」「指揮官!ここはあたしの安息の場所なんだよ!」 二人から突然水を向けられる・・・なんだか馬鹿らしいが、人形にとっては大切なことなんだろう 「はいはい、とりあえずミシュティはちょっとどいて。ヴェクター、おいで」 せっかくの半休に面倒事はごめんだ。ミシュティを抱き寄せ、ヴェクターの腕を引き、ベッドの上で川の字になる 「これでいいでしょ?」 ヴェクターも諦めたようにため息をつく。どうやらこの対応は間違っていなかったらしい。このまま午睡するとしよう 「指揮官?寝ちゃった・・・」「知ってる?指揮官って一度寝たらなかなか起きないんだよ」 「ふおおおお!!!ほうかま!ほうかま!」 「・・・指揮官・・・」 助けを求めるようなヴェクターに思わず吹き出してしまう 「ヘレナ、そんなこと言っちゃ、ぷっ!だ、ダメだよ」 「ほうかま、ちがう?」 無邪気な子供は時として無自覚に人を傷つけるのだが、それがわかるのはまだ先だろう 「何~?うるさいよ・・・」 「ねぼすけ!」 コイツは、文字通り寝てばかりの人形だからなぁ・・・ 「いいじゃない、放火魔。私よりマシじゃない」 「けおちゃん!けおちゃん!」 拳をブルブルと震わせるクルカイ。流石に子供相手に怒鳴ったり、ましてや暴力を振るうなんてことはしないらしい 「もっとマシなあだ名は付けれないのかしら。このガキ」 「う~ん・・・おかん!おかん!」 「今すぐその口を永遠に閉じさせてやる!クソガキ!」 「指揮官、声我慢しててね」 ヴェクターは指揮官の頭を枕に押し付け、ゆっくりと抽挿を始める。鍛えられた筋肉が肉棒を押し返し、肉壁は搾り取る様に締め付ける 「ふっ、ふっ、あっ!」 「指揮官、絞め過ぎ。期待してた?」 言われて、さらに肉壺が彼女のそれをしごく。 ちょっと嬉しい、その言葉の代わりにピストン運動を速める。そのたびに組み伏せた相手からは甘い吐息とも喘ぎとも聞こえない声が漏れ出る。 彼女を自分のものにしたい、という欲求がさらに膨らむ。クルカイやリヴァが特別視し、多くの人形に慕われている彼女を犯し、穢し、何処かに閉じ込めてしまいたい 「・・・また出すよ」 返事は聞かない。何事か言っていたが、さらに頭を抑えつけ抗議の声は封殺する さらに抽挿の速度を上げる。それだけで目の前のメスの声が甲高くなる。それがさらに征服感と射精欲を高める。そして目の前が弾けた ドクドクと、ペルシカ謹製の精液を注ぎ込む。何でも人形が性行為できるようにって言ってた気がする 無理矢理向かせた指揮官は涙と涎でぐしゃぐしゃで、息も絶え絶えだった。それでも目はもっとしてほしいと言っているように見えた。 「もう一回しよっか」 3本の瓶がメイリンのデスクに並んでいる 「・・・また酒量増やしたの?」 「違いますよぉ!これは新作なんです!」 ぷんすかと怒るメイリン。そのまま一口ぐびり。・・・注いでるのがお猪口じゃなくてマグカップなのがなぁ・・・ 「う~ん・・・かなり辛口ですね。私は好きですけど」 ラベルには鉄血酒造の文字が。醸造技術に傾倒したのか? 「次は、ちょっと雑味が多いですね。私は好きですけど」 酒なら何でもいいんじゃないのか?とは言わない。そうです、と返っていたらなんていえばいいんだ ラベルにはA-91酒造と書かれていた。何してるんだアイツは 「あの、カリン。手離してくれない?」 「カリーナです。ダメです離しませんよ」 きっぱりと断られてしまった。 グリーンエリアの非軍事勢力管理局の一室。地上から遠く離れた高層ビルの一室。そこでカリンにベッドに押し倒され手を掴まれていた。目が超怖い。捕食者という言葉がよく似合う 「重要な話がある、って聞いたんだけど?」 「ええ、重要な話です。私と指揮官様の今の関係と今後について」 ガチャンと小さい金属音。見れば自分とカリンの手首に手錠が架かっている 「あの?カリン?」 空色の瞳を見つめるが何も答えない。無言が恐ろしい。ある意味戦場よりも しかし、ここで逃げるわけにはいかないのだ! 「カ、カリーナ長官?その、これ外してほしいな~って・・・」 テキパキと服を脱がし、脱げない部分はナイフで切られ、あっという間に生まれた姿にさせられる 「カリーナ!?」 「安心してください。同性でも籍は入れられますし、子供だってペルシカさんにお願いしてどうにかしてもらいましょう」 何をどう安心すればいいのか。抗議の声はキスによって阻まれた 「指揮官、これ受け取ってほしい」 「開けても?」 こくんと頷くヴェクター。高級感のある包みを開けると中から出てきたのは 「チョーカー?」 「そう、ハープーシーとも相談したの」 白い皮に細かい赤い装飾。琥珀色のアクセントはヴェクターを思わせる。一目で高級品とわかる一品だ 「いいのかい?」 「うん、貰ってほしい」 付けてあげる。チョーカーを取り、後ろに回ってヴェクター。カチリと小さい音がする 「いいね、ありがとう。大切にするよ」 「うん。後、クルカイ隊長にも機能つけてもらった」 猛烈に嫌な予感がする。ミシュティのスイッチを思い出す 「えーっと、ヘルスモニタリングと極小型マイク、スピーカーとGPSとスタンガンだって」 「・・・ヴェクター、外してくれる?」 「え?私もそれくらい必要だと思うけど?」 「安いよ。安いよ。指揮官のバラ肉、グラム89円。」 「リヴァ姉!指揮官が安いよ!買っていこうよ!」 「ダメよ。今日の晩御飯は餃子よ」 「そこのお肉屋さん☆指揮官のハツってある?☆」 「ハツは売り切れ。ごめんね。」 「そっか・・・じゃあ、指揮官のタン頂戴☆」 「はい。毎度。焼き肉用で1200円。」 「お肉屋さん。指揮官様のチンポってあります?」 「お得意様用に、とってある。50000円ね。」 「指揮官、シャワー借りるね」 「え?ヴェクターの部屋ここ?」 漫画を読んでいたミシュティが顔を上げる。ヴェクターはその疑問に答えず備え付けの脱衣所に消えていった 「指揮官!どういうこと?」 「近いよ、ミシュティ」 ぐいぐいと顔を近づけるミシュティを遠ざける。どうしてこんな時に限って部屋にいるし、起きているんだ。せめて寝ててほしかった 「ヴェクターは部屋は別で割り当ててるよ。最近ずっと部屋にいるけど」 初日に他のメンバーの部屋も割り当てたのだが、ヴェクターはずっと部屋に入り浸っている。訳を聞いてもはぐらかされるだけだ 「ふぅん・・・ヴェクターとは何もないの?」 「何もないよ。ホントだよ」 ミシュティの目は信用してません、と言っている。悲しい 「何の話?」 その時ヴェクターが部屋着で出て来る。濡れた髪、上気した顔が非常に扇情的に映る 「ね、指揮官、今日も一緒に寝よ?」 「嘘じゃん!指揮官が寝取られた!クルカイ!リヴァ!大変だよぉ!」 「うわぁぁん!クルカイ!聞いてよクルカイ!」 「煩いわね・・・」 ミシュティが部屋に突撃する。クルカイたっての要望でミシュティとクルカイは同室だ。ミシュティの希望であった個室はクルカイに却下された 「ヴェクターと指揮官が同じ部屋にいるんだよ!寝てるんだよぉ!寝取られだよぉ!」 支離滅裂な報告にクルカイは眉を顰め、顔に手を当てる 「はぁ・・・馬鹿なこと言ってないでさっさと寝なさい」 「・・・怒んないんだね?」 冷静なクルカイに違和感を覚える。本来のクルカイなら激高してバイクで指揮官の部屋に突撃、そのままグレネード大回転まですると思っていたのだが 「アンタの中で私はどうなってるのよ」 「短気で怒りっぽくて暴力的でツンデあだだだだ!」 頬を限界まで引き延ばされた。餅のような弾力だ 「・・・別に私はあの人にたくさんのものを貰ったから」 ヴェクターとは持ち回りだし、そう言って髪を掻き上げる。よくよく見れば指に銀の輝きが 「クルカイとヴェクターに指揮官寝取られたぁ!リヴァ!レナ!大変だよ!」 ミシュティは勢いよく部屋を飛び出した 『人形ばかり不公平だ!』『指揮官もスキンを着ろ!』『指揮官も腹筋と二の腕とちんぽ出せ!』 「・・・メイリン、何これ?」 「あれ?知らないんですか、最近人形の皆さんがエルモ号でデモしてるんですよ」 ゲームとかの影響ですかね?素知らぬ顔で言い放つメイリン。米酒はせめてコップに入れて飲んでくれ。徳利から直飲みしないでくれ 「指揮官も昔の職場ではいろんなお洋服着てたんでしょう?残ってないんです?」 「・・・ないことはないけど・・・」 流石にあの服を今着るのはなぁ・・・馬鹿みたいな服しか持ってないのだ 「じゃあ着てあげればいいんじゃないんですか?」 「簡単に言ってくれるね・・・それに、そうしたら人形達が調子に乗りそうだ・・・」 そうですか?怪訝な顔をするメイリン。 10年経って多少社会性を身につけただろうが、元グリフィン人形はなぁ・・・クリスマスや夏のビーチでの出来事を思い出して、少々眩暈がする 「考えておくよ・・・」 「あっ!だったら先に私に見せてくださいよ!指揮官のコスプレ!」 「コスプレって言うなよ・・・着るけど、写真なんか取らないでくれよ?」 エルモ号屋上。その淵に小さいながら増設された部屋。スオミ立っての希望で作られたサウナ室だ。 「熱くない・・・?」「いいえ、指揮官。むしろもっと上げるべきです!」 部屋の真ん中には石の詰まったケースと煙突。そして、雛壇のような台座。室温は120℃に達しようかという勢いだ 涼しい顔をして生き生きとしているスオミと対照的に、指揮官はぐったりとしている。人間はこんな環境で1時間も耐えれるほど頑丈ではないのだ 「スオミ・・・もう出ていいよね・・・?」「ダメです、指揮官!もう少しです!この後の水風呂が最高に気持ちよくなるんですよ!」 とはいうものの、既に汗すら出ていない気がする。メイリンは10分も経たず出て行ってしまった 熱い、暑い、厚い、アツイ。頭はそれしか考えれない 最初はバスローブ一枚のスオミに少々ドキリとしたが、今は生命の危機にドキドキだ 「本当はロウリュとかできればいいんですけど・・・」 「・・・いや、そこまで・・・しなくていいよ・・・」 スオミの声が遠い。思考は靄がかかったようだ 「指揮官、出ましょうか。指揮官?うーん、そんなに気持ちいなら、もっと付き合いますね!」 後日、サウナ室は爆破しておいた 「指揮官~、今日もここで寝ていいよね?おやすみ・・・」 「いいともダメとも言ってないんだけど・・・」 ここ最近、夜はミシュティが部屋で寝に来る。クルカイがカリンのところに戻っているのが原因だろうか?スヤスヤと穏やかな寝息を立てる彼女に聞いても面倒くさそうにするだけだった 「ほらミシュティ、もうちょっとそっち寄って」 「んぅ~・・・」 返事とも寝言とも判断のつかない声を上げる 動く気配がないので、腰に手を回し少し持ち上げる。細く折れてしまいそうだ。華奢という表現がよく似合う身体つき、控えめに主張する乳房、決して薄くない尻 下半身がつい反応するが、鋼の精神が堪える。手を出せばクルカイがバイクで突撃するだろう。死因は轢死だ 「もうちょっと胸が大きかったらなぁ・・・」 そこだけは残念だ 「・・・悪かったね、クルカイやレナほどじゃなくて」 やけに具体的に聞こえる寝言を無視して、ベッドに潜り込む。先に寝ていたカイロのおかげで心地よい 「・・・デールにお願いして胸部パーツ追加しようか?」 「冗談だよ。じゃ、お休み」 すぐそばにいる暖かな存在を抱き寄せ一日が終わった 「・・・こちら四式、5/7、今日も異常なし・・・」 無線機に定期連絡。返事が返ってこなくなってもう何日経っただろうか。いや、何年?一人というのは時間間隔を狂わせる。 グリフィンはなくなったと、風の噂で聞いた。その話も何年も前のことだ。だが、未だに帰還命令は出ていない 足元には泥濘。まるで今の心を映すかのように、脚を絡めとって来る。 「・・・ッ!」 それを蹴飛ばすように脚を振り上げる。言いようのない苛立ちと、堪えようのない不安を振り払うように きっと、指揮官は吾輩を捜索している。仲間も待っている。帰還命令はきっと届いていないだけだ。そう言い聞かせる 行軍速度が意図せず上がる 「・・・?」 ふと周りを見ると見知らぬ土地。荒野とわずかな人工物が存在するイエローエリアに出ていた 道を間違えたか。 よく見れば人工物と思っていたのは巨大な移動式基地、エルモ号ではないか。 「あー、あー、マイクテスマイクテス。そこの人形、聞こえるかい?そう、そこの四式自動小銃」 酷く懐かしい声が聞こえる。声にならない声が喉からせり上がる 頬を撫でる風は、春の陽気をはらんでいた 2064/4/7 ロクサット主義だが何だか知らねぇが、AIなんぞにテメェの命預けれるかよ。国のお偉方は何考えてやがる 2064/12/9 [データ破損] 2065/3/14 今日もうるせぇELIDのクソどもに鉛をプレゼントしてやった。近所のローランドに似ていたが気のせいだ。そうに違いない 2065/6/21 ・・・娘がELIDになった。薬はなかった。これしか、方法はなかった 2065/8/5 [データ破損] 2066/2/15 [データ破損] 2066/4/21 コーラップス汚染除去のプロジェクトが進行しているらしい。どうせホラだろう 2066/4/22 [怒声が連続する。銃声と殴打音] 2066/4/22 おい!ここの資材と飯と水全部運び出せ!このボケ!こんなガラクタが何の役に立つ!さっさと行くぞ! 「アデリン、寒くない?」 「平気。これがあるから。」 昔私が着ていた上着をバサバサと揺らす。ほつれや痛みが少々あるが、依然使用には問題なさそうだ。 健康的な白い肌、少し柔らかくなった表情。捕獲したばかりはガリガリで今にも倒れてしまいそうだったが、今では見違えたものだ 「あら指揮官、お人形遊び?」 「茶化さないでダンデライオン」 一匹のダイナーゲートが皮肉気に入って来る。ダンデライオンは実質アデリンの上位モデルと言えるだろう。ご丁寧にホログラムまで付けて煽りに来たのか 「ふふ、使い古しの上着の着心地はどう?お人形さん。黒い布以外着れたのね」 「そっちこそ、もうあのコートは着ないの?あぁ、犬は服着ないものね。大事に、大事に、タンスの奥深くに仕舞い込んでるの?」 見えない空中戦を繰り広げる二人。口数も悪口も多くなって嬉しいやら悲しいやら。 「指揮官、犬の散歩なら、任せてほしい。きっちり、躾する。」 「指揮官、ペット虐待の現行犯よ。保護者責任を果たすべきじゃないかしら?」 その時、警報が鳴り響く。またいつものヴァリャーグだ。彼らも飽きないものだ 「アデリン、戦闘準備完了。指揮官、命令を。」 「黒いの。」 「何?白いの。」 白いの、と呼ばれたアリーナは不機嫌そうに頬を膨らませている。 「貴方、その服は何処で手に入れたの?」 アデリンの服を指さす。普段は黒い装束を纏っている彼女は、指揮官の服を着ていた。・・・少々サイズが合わずに肩部分がずり落ちていたが 「指揮官から、貰った。これは、私の、戦利品。ぶい。」 無表情、だが、勝ち誇った顔でアリーナに指を二本立てる。 「寄こしなさいよ、それ」 「ダメ。これは、指揮官から、貰ったもの。誰にも、渡さない。」 射殺さんばかりの眼力に、アデリンは明確に拒否した。力づくは容易だが、指揮官は許さないだろう。アリーナには歯ぎしりすることしかできない。 「アデリン、アリーナ、いる?ご飯できたよ」 アリーナの目が素早く指揮官を補足する。戦闘時並みであった 「な、何?」 「指揮官、今すぐ着ているものを脱ぎなさい。そして、それを私に献上しなさい。」 数舜後、指揮官の悲鳴が木霊した 「メイリン・・・どんぐり・・・どんぐりを・・・」 「ダメですよ~指揮官~。どんぐりは一日2個まで。それ以上欲しいなら・・・わかりますよね?」 ニタニタと意地の悪い顔をするメイリン。どうして後方幕僚はこうも似るのか 「・・・わかった。就業中に米酒は飲んでいいし、君の欲しい米酒を買って来よう。こっそり隠していた酒も全て買い直そう。何でも言うことを聞くから・・・」 「うんう・・・え~!?指揮官、米酒売ったんですか!?何処にあったやつですか!?」 「キッチンの二重戸棚の後ろのやつと、君の部屋のやつと、ヴェプリーに隠蔽させてたやつ」 「うぅ・・・私の米酒・・・」 泣き出すメイリン。だが、密かに安堵した表情を見逃さなかった。この分なら探せばまだ鉱脈はありそうだ 「・・・わかりました。お酒は絶対買ってきてくださいね」 「わかった。約束しよう」 チョロいものだ。カリンなら人形を証人にしていたはずだし、私を人形に売っている。・・・さすがにそこまではしないかな 鷹揚に頷くと、メイリンがもじもじとしだす 「その、夜にお部屋に行ってもいいですか?・・・ベッドの上で・・・」 消え入りそうな声で可愛らしい『お願い』を口にした カフェ・ズッケロには地下室がある。大部分が倉庫として使用されているが、一部分だけ異常に強固な造りになっている 「おはようございます、指揮官。よくお眠りになりましたか?」 「おはよう、スプリングフィールド。これがなければもうちょっと安眠出来るよ」 そう言って脚から伸びた鎖をジャラジャラと鳴らす。服も錠や枷で可動域が極端に狭められており、まるで囚人だ 「あら、それがなかったら、指揮官は逃げてしまうのでは?」 「逃げないよ。というか、君たちから逃げれないよ」 諦めたように首を振る指揮官を見て、逃走の意思なしと彼女は戒めを一つ一つ解除していく。ほどなく全ての枷が外され、指揮官は感触を確かめるように手首を撫でる 「では、参りましょ・・・」 スプリングフィールドが言い終わる前に、彼女を押しのけドアへ。勢いはそのままにドアから脱出を 「ご主人様、申し訳ございません」 する前にセンタウレイシーが立ちはだかった 「もう、指揮官。ダメですよ。レディの扱い方がなっていません」 振り向けばニコニコとスプリングフィールドが笑う。恐ろしい 「・・・そろそろ腹上死しそうなんだけど?」 「私はそこまで絞りませんよ、私は」 >続けて。 「ご主人様・・・ご主人様・・・」 リズミカルに肉を打ち付ける音が響く。部屋の中には男と女だけ。女が男を組み伏せ、肉竿を肉壺にハメている。肉壁は貪欲に男の精液を搾り取ろうとしていた。 「ご主人様・・・もっと・・・」 じゅるじゅるという水音は女が男の唇を貪っている音だろう。今や男の肌にはキスマークが存在しない箇所はないと言っていいほどだ。場所によっては噛み跡すらある 「センタウレイシー・・・また出る・・・ッ!」 何度目かの吐精。同時に彼女も絶頂を迎えたようだ 薄暗い部屋で、もう何日こんな生活を送っているやら。こんな状況でも萎えることのない愚息に嫌気が差すやら、彼女を満足させる息子を褒めてやるべきか 余韻に浸っていると、久しぶりに下半身が外気に触れる。 「・・・お掃除させていただきます」 そう言って、彼女が半勃ちのソレを口に含む。征服感が忽ち剛直をいきり立たせる 「・・・ご主人様、嬉しいです」 ストロークを速める彼女。暴発寸前で口が離れる。高まった射精感が行き場を失う 「卑しいメイドに、ご主人様のお慈悲を」 そう言って、肉棒を再び秘所に当てがった 「ふふん、出来たわ。ダミー指揮官よ」 「流石はペルシカだ。これで人形から逃げる時の囮が出来たぞ」 『やぁ、俺。これからは俺に任せてくれ』 「俺は頼もしいな。人形の管制モジュールは人間には付けれないけど、操作はどうするんだ?」 「私を誰だと思ってるの?指揮官の微弱な脳波を読み取って操作可能よ。つまり思っただけで操作できるってコト」 『珈琲を入れてこようか、ペルシカ。勿論砂糖大盛りで』 「流石だな、ペルシカ」 「この程度、3時間もあれば楽勝よ。なんなら5LINK出来るようにしてあげるわ」 『ほら、珈琲だぞ。俺もいるか?』 「・・・美味いな、俺が淹れるよりもずっと」 「当たり前じゃない、ダミーなんかよりずっと長くいるんだから」 「え?」 「何よその顔?あなたがダミーよ。気づいてなかった?」 『え?』 「あら、カリーナさん」 「こんにちは、スプリングフィールドさん。『下』は今空いてます?」 すぐにパッドで状況確認をする。センタウレイシーとの逢瀬は既に終わっており、今はまた大人しくベッドに寝転がっていた 「ええ、空いてますよ。部屋の鍵はこちらに」 どうも、と鍵を受け取り、そのまま地下室へ 1歩足を進めるたびに、鼓動が早くなる。このために仕事をしていると言っても過言ではない 「こんにちは~、指揮官様~」 部屋は淫臭でいっぱいだった。男と女のまぐわいの香りというべきか。それだけで下半身がキュンと疼く。今すぐ目の前のオスを自分で上書きしたい 「・・・ゴムないんだけど?」 知っている。そんなものは置かせてないのだから。ガリガリと頭を掻き、露骨に嫌そうな顔も素敵だ 「そんなものいりませんよ~、私と指揮官様の仲じゃないですか~」 口角が持ち上がる。待ちきれない。辛抱できない。 この人の子を孕み、肉体的にも精神的にも縛り付けてしまいたい。もう、何処にも行けないように 「また今日も愛してくれますよね?私の指揮官様?」 彼の瞳に映る私は、地獄から来た悪魔に見えた 「・・・もしもし、エルモ号ですか?今すぐ『あの時の指揮官コース』グリフィン制服オプションお願いします」 「ヴェプリー到着☆お待たせ☆『あの時の指揮官』グリフィン制服オプションだよ☆3時間後にまた来ますね☆本番はナシだよ☆」 「カリン、久々だね。何かあったかい?」 「聞いてくださいよ、指揮官様!」 「まぁまぁ、落ち着いて。中で話そう。そうだ、コーヒーをくれる?」 「はいはい!あ、人形の皆さんから意見書が来てるので、目を通しておいてくださいね」 「リヴァ達から?ろくでもないことじゃないといいんだけど・・・」 「あはは・・・はい、いつものコーヒーです」 「悪いね。・・・うん、いつも通りの味だ」 -------- 「~~。聞いてます!?指揮官様!」 「ゴメンゴメン・・・」 「ヴェプリー到着☆お時間だから指揮官回収するね☆またのご利用を☆」 「指揮官ってさ~、彼氏作んないの?」 「ミシュティ、鼻がいい?それとも目?」 冗談だよぉ、そう言ってミシュティは毛布に退避した。 こんな稼業だ。男どころか、生きてる人間さえお目にかかる機会が少ない。 「デールは?」「却下」 ヴェクターが腕の中で伺うように尋ねる。ただ、アレはなぁ・・・ 「時代は多様性よ。別に彼氏がいないとダメ。夫がいないとダメって時代は疾うに終わったわ」 そう自分に言い聞かせる。・・・ヘリアンさんに何か助言でも貰おうか 「じゃあ指揮官って暫くフリーなの?」 毛布から頭だけ出してミシュティが問いかける。カタツムリみたいなやつだ 「・・・まぁ、そうね」 それを聞いたがヴェクターが指を絡めてきた 「じゃあ、私が指揮官のパートナーになってあげる」 夜の闇に癖毛の短い銀の糸がさらりと揺れている。 「どうしたの?指揮官?」 こちらを見上げ、小首を傾げるミシュティ。怪訝そうな顔に、眠たそうな眼。 何でもないと、頬を撫でるとくすぐったそうに目を閉じる。弾力と柔軟性のあるそれを、思わず摘み、伸ばしてみる 「もぉ~、ひゃにひゅるのさ」 「ふふっ、ゴメンゴメン」 抗議の声が聞こえたので、謝罪と共に頭を撫でてあげる。口を尖らせていたが、追加の抗議はない。どうやら許されたらしい 「ねぇ、指揮官・・・」 そう言って、身体を預けて来る。彼女がこうしてくるときは夜のお誘いか、眠くなった時だ 「ん?どうしたの?ミシュティ」 頭を撫でる手は止めない。したいことは分かっているが、あくまで彼女から言わせる 「う~・・・指揮官の意地悪・・・」 う~だの、あ~だの言っている彼女を待つ。可愛らしい反応に思わず小さく笑いが漏れる とうとう売れた果実のように、顔を真っ赤したミシュティの双眸が私を射抜く。 「し、指揮官、今日、あたしと寝てくれる?」 「ねぇ、指揮官。人形達からのお願い聞いてるんだって?」 「そうよ?ヴェクターも何か要望ある?」 ヴェクターが自分から来るとは珍しい。あの事件以降、積極性が身についたのだろうか メールボックスに寄せられた意見、要望を精査していく。とりあえず、ミシュティの専用安眠ベッドとチータの超高性能PCは却下だ 「どんなのがあるの?」 「詳しくはプライバシーだから言えないけど、大体は資材とかかな。後は買い物とか、趣味に付き合ってとかそういったやつよ」 我がエルモ号は資材が乏しい。グリフィンであれば多少の贅沢は許されていたが、ここでは切り詰め切り詰めだ 「ふぅん・・・」 「ヴェクターは何か欲しいものある?」 ヴェクターも何か欲しいのだろうか。新しい服?それとも装備?流石にそこまで予算がないのだけれど・・・ 「う~ん・・・」 悩むヴェクターが珍しくて、目が離せなくなってしまった。 いつもは大人びた彼女が年相応の女の子に見える。人形の年齢なんてわからないのだけれど 「私は、指揮官との時間が欲しいな。ずっと、なんて言わないけれど、今日の夜は私に頂戴」 ヴェクターは細やかなお願いを、叶えてあげるとしよう 「指揮官」 藍色の長い髪の彼女が私を呼ぶ。ほっそりとした指が、私の顎を持ち上げ、無理やり彼女と目線が交わる。まるで少女漫画のようだ、少しばかりの苦笑 「何?クルカイ」 クルカイは応えない。反対の手が私の腕を拘束するように掴んだが、振りほどきはしない。そもそも人形の拘束を振り解けるほど、私はゴリラじゃない 「指揮官、私が何をしたいかわかりますよね?」 「クルカイ、何をしたいの?言わなきゃわからないわ」 わざと意地の悪い答えをしてみる。クルカイが苦い顔をする。 10年越しの再開は、あまり良いものではなかった。彼女との記憶は硝煙と爆発に満ちていたように思える。だからこそ、この柔らかな雰囲気は穢しがたいものだった 「・・・言わせる気ですか?」 「言葉にするのは大切よ?」 ゆっくりと押し倒され、上から鋭い目つきを浴びせられる。 緊張している彼女を撫でてあげたいが、生憎腕は封じられている 何を言うべきか逡巡していた彼女の目が据わる。 「指揮官、今から貴方を抱きます。覚悟してください」 思わず笑みを浮かべてしまった私の唇と、クルカイの唇が触れ合った 「ヴェプリー、ハサミどこにあるかわかる?」 「ヴェプリー知ってるよ☆レンジの上に置きっぱなしだったよ☆」 「ヴェプリー、次の補給ポイントどこに設定すればいいかわかる?」 「ヴェプリー知ってるよ☆lat55.83、lon37.62がいいよ☆」 「ヴェプリー、次の敵の出現位置は!?」 「ヴェプリー知ってるよ☆北西100m以内にタイタン系列が出てくるよ」 「ヴェプリー、次の実装人形を教えてくれ」 「ヴェプリー知ってるよ☆次は幼熙が実装されるよ」 「ヴェプリー、なんで何もかも知ってるんだ?」 「ヴェプリー知ってるよ☆ヴェプリー知ってるよ☆ヴェプリー知ってるよ☆」 「キャロちゃんってさ~、ちょっとツンツンしすぎじゃない~?」 「別にツンツンしてないわよ。てか、さっきからタバコばっかり吸って。アイドルはそういうの御法度じゃないの?」 「ヴェプリー、これがないと生きていけな~い☆ニコチンとタールがない世界なんて死だよ、死。てか、さっさとこんな世界滅んじゃえばいいのにさ」 「ヴェプリー、いるかい?」 「はーい☆ヴェプリー、登場☆今いくよ~☆」 「キャラ変わり過ぎでしょ・・・」 「へぇ、ヴェプリーってウィンストン吸うの?重くない?」 「指揮官こそ、ピアニッシモなんてどこの女の趣味?☆」 「・・・ノーコメントで」 「ふぅん、指揮官、火ある?☆」 「ん?ほい」 「違う違う☆そこに着いてるやつ」 「ん?あぁ・・・」 「ん☆ありがとう、指揮官☆」 夜になっても仕事が終わらない。 「あ゛ぁ゛~~~あうあうあうあう・・・」 メイリンの精神は限界であった。米酒は一昨日なくなった。仕方なく料理酒を飲んでいたら、黛煙という人形が鬼の形相で奪って行った 秘蔵の酒を・・・いや、あれは本当に秘蔵だから・・・でも、もう・・・ 「メイリン、まだ寝てなかったの?」 割と本気で悩んでいると指揮官の手が肩に置かれる。指揮官の目の下にもどす黒いクマが浮かんでいた 「素体のチェックと、買い出しリスト作成と、装備品補充がまだなんですぅ・・・」 涙目で現状報告。さらに言えばエルモ号のメンテの細部チェックも残っている 「わかった。わかったから、今日はもう寝ましょ。明日全部デールに投げればいいわ」 そう言って指揮官がメイリンの手を引く。放っておくとまた仕事しだしそうだ 「・・・指揮官?こっちは私の部屋じゃないですよ?」 「抜け出して仕事しだすでしょ?今日は私の部屋で寝なさい」 指揮官命令ね、そう言われればメイリンに断る言葉がなくなる 「わ、わかりました・・・その、初めてなので・・・」 「・・・言っておくけど寝るのよ?睡眠よ?睡眠」 ユニット名:ぐりふぃん! メンバー:指揮官、カリーナ 一部の人形から絶大な人気を誇る2人組のアイドルユニット そのカルト的人気の高さは人形のみならず、一部グリーンエリア高官にまで及んでいる 現在、活動停止中であり、その理由は伏せられている ファンの間では熱心に捜索活動が続けられており、懸賞金までかかっている 「脱衣麻雀?」 「えぇ、指揮官も如何?」 「嫌よ、勝って得る物がないじゃない」 「そう言わず負けるのが怖いので?それとも万年4位の麻雀しかしたことがないのですか?」 「やってやろうじゃないのよ!」 --30分後-- 「ロン。大三元字一色。では脱いでくださいますよね?」 「・・・黛煙、もう脱げる物が、ブラかパンツしかないの・・・」 「そうですか。まだ残ってますね。では次局、私の親ですね」 「・・・黛煙、もう点棒がないの・・・」 「そうですか。点棒の代わりにパンツかブラでいいですよ」 「飼育員、それ何?」 ハシレナイヤツハゲオスミンナノダ 「何って、〇クソだよ。今ちょっとワ〇スで走れそうだから邪魔しないでね」 「ふ~ん、今の記録は?」 「53.20」 「ふ~ん、じゃあ私も走ろっかな」 「何て?」 ウワァハァ 「今のダ〇ソワロ〇ワールドレコード持ち、あたしだから」 「な、なんでそんな苦行を・・・」 「飼育員が言う?」 エルモ号では今ダクソが熱い! WRを出せば指揮官を抱ける(無断)と、チータ、クロ、ダンデライオンが鎬を削る! 謎の参加者、ディーマ!バグを仕様と言い張るハープシー!期待の新人、クルカイ! 20分切りする参加者は現れるのか!そして優勝は誰なのか! チャンネルはそのまま! 「飼育員~、麻雀しようよ脱衣麻雀。黛煙とヤったんでしょ?」 「イ・ヤ。もう人形と麻雀しないって決めたの」 「大丈夫だって。私は黛煙ほど強くないって~。自動卓なんて使ったことないし。ただ点棒の代わりに服にしようよ!」 そういうなら、まぁ一局程度問題ないだろう。 卓に私とチータ、数合わせはメイリンと瓊玖にお願いした。 ・・・・・・ 「ポン。ポン。気前がいいね、それもポン」 白、発、中、東をチータが回収する。あまりにも露骨で笑ってしまうほど 「・・・チータ、流石にバレバレよ・・・」 「そう?ならその西でも出したら?飼育員」 手をかけていた西を離す。背中に嫌な汗が浮かんでいるのを感じる 点棒、もとい服はもうパンツしかないのだ!何が自動卓は初めてだクソが二度と人形の戯言なんて信じるものか 散々悩んでイーピンを出す。これなら通るはず! 「ロン!」 最後の一枚まで毟り取られた哀れなカモがそこにいた 「この面子で麻雀なんてね・・・」 「しょうがないじゃないですか。指揮官様がしようしようって聞かないんですよ」 「ええ?私のせい?カリンだって勝ったらいうこと一つ聞くって聞いたら飛びついてきたじゃない」 「わ、私は勝ったら米酒が欲しいです」 グリーンエリアで再開したペルシカにカリン。そして、いつの間にか負け続きの麻雀の話になっていた 「ポン。カリン、その中取って」 「はい、ペルシカさん。そういえばペルシカさんが勝ったら指揮官様に何させるんですか?」 私だけなの!?私以外もするのよね!?主催者が暴れているが無視する 「そうね、ネコミミ着けてエルモ号に戻って『遊んでほしいニャン!』って言ってもらおうかしら。ぷぷッ」 「ぷっ」「あははっ」 絶対酷いことになるじゃん!マッドサイエンティスト!糖尿病患者!4位の人間が暴れているが無視する 「いいですね、それ。私もそれにします」 「でも、私は米酒が欲しいなぁ・・・」 「指揮官、それロン。後で感情モジュールのデータ送ってね」 後日、エルモ号ではネコミミを付けた人影が発見された 鍋だ。この世全ての絶望を詰め込んだような闇がそこにあった。 「な、何よ!早く食べなさいよ!」 深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いていると聞くが、孔のように喰らい黒は何も見通すことができない 「今日は会心の出来よ。ふふん、我ながら自分の才能が恐ろしいわね」 「それは毒殺方面に?それとも、物質学の方向に?」 マキアートが何を言ってるんだコイツと言わんばかりの目で見つめる。・・・ペルシカに渡したらこれが何か調べてくれないだろうか 「ほ、ほら、冷めないうちに食べなさいよ」 「・・・ちなみにこれを作っている間、スプリングフィールドとセンタウレイシーはいた?」 「なっ!別の人形の話しないでよ!」 ・・・ますます不安だ 「・・・わかった。いただきます」 意を決して一口。反乱軍ともパラデウスとも戦ったが、今日が命日かもしれない 口の中に混沌が広がる 「ど、どう?」 何も言わず、一匙掬い、彼女の口に放り込んだ 「メイリン、まだ起きているのか」 「し、指揮官。すぐにリスト作成しますので・・・」 目の下のクマは真っ黒だ。昨日もその前もずっと残業してたのだろう。 「ダメだ。今日はもう寝なさい」 「で、でも!」 それでも何事か言いかけるメイリンを抱えてベッドに放り込む 長らく主人の帰りがなかったベッドが軋みを上げて歓迎する 「8時間睡眠を取ること、いいね」 「はいぃ・・・」 不服そうに毛布を手繰り寄せる。ミシュティなら諸手を挙げて命令に従ってるだろう そのまま自室に帰ろうと踵を返すと、服の裾を引かれる 「その、一緒に寝てくれませんか?寝るの自体久々で・・・」 「・・・わかった」 普段は限界を超えたら気絶してるのだろう。 手をつなぎ、横になっているとすぐに規則的な寝息が聞こえて来る。ただ、手は強く握りしめられたままだった >ヴぇくにゃん報告書書いたの? 「クルカイ、報告書出来たよ」 「わざわざご苦労ね。メールでも何でも送ってくれればいいのに」 几帳面というか、堅物というか。よくこの性格で隊長が務まるものだ。・・・自分が言えた義理ではないか 「・・・ん、不足もないし、確かに受け取ったわ」 「そう、じゃあ行くね」 特に不足部分も変な個所もない。ただ、気になる部分がある 「待ちなさい。この報告書、誰に確認してもらったの?」 そう、完璧すぎるのだ。勿論、そうでなくては困るが、私が指摘する点が一つもないとはどういうことか それに、書き方があの人に似ている。 「誰って、指揮官だけど?」 事も無げに言い放つ第二部隊隊長。私があれだけのことをなし、信頼を勝ち取り、信用を得て、座っている席をあっさりと脅かそうとしているのだ 「もう行っていい?指揮官にディナーに誘われてるの」 めんどくさそうだが、勝ち誇ったように言い放ち、第二部隊隊長が出て行った 「指揮官、い、今お時間よろしいでしょうか・・・?」 おずおずとロッタが現れる。入室を促すと、ロッタが恐る恐る入ってきた。ここ最近は404が大勢乗車してきてやや人見知り気味だ 左右上下確認。ミシュティと鉢合わせてあわあわとしていたのが懐かしい 「ふぅ・・・そ、その、人形と仲良くなる方法を試してもよいでしょうか?」 構わないと伝えると、ぱぁっと瞳を輝かせて駆け寄って来る。 「本にはこう、指を絡ませて繋ぐと親愛の証になるそうです!指揮官、試してみても?」 返事の代わりに手を差し出す。ゆっくりとロッタの指が絡みつく。じんわりと彼女の体温が伝わって来る 「なんだか不思議な感じです・・・その、別の方法もしてもいいですか?」 何だろうか。とりあえず首を縦に振る。それにしても、ロッタがここまで積極的になるのならあの程度の出費は安いものだ 「え、えいっ!」 可愛らしい掛け声とは裏腹に、強い力でベッドに押し倒される。目を白黒させていると、当のロッタが小さく笑う 「えへへ、本には一緒に寝ると最高に仲良くなれるって書かれてました」 雰囲気はいつもと変わりないが、目には何か暗い欲望の色が混じっているように見えた 夢を見ている 「指揮官、おはようございます。珈琲でも如何ですか?」 優しい声が落ちて来る。ぼんやりとした光景に、長い髪を揺れる。逆光でよく顔が見えない。 「スプリングフィールドさんに教えてもらったんです。どうですか?うまく、淹れれたと思うんですけど」 傍の机にソーサーとカップが置かれる。珈琲のいい匂いが立ち上る。 きっとこれは夢だろう 「指揮官、私はずっと傍にいますよ」 誰かに手を握られている。相変わらず顔は見えない。それでも、この雰囲気と声は彼女に違いない 「たとえ貴方がどんなことをしても、どんな選択をしても、皆が離れていったとしても、私がずっと傍にいますよ」 彼女は左手の指を撫でる。そこには銀の輝きを放つ指輪があった。あれは、私が送ったものに相違ない 彼女が立ち上がり、何処かに去ってゆく そして、意識は微睡に堕ちていく ちょっとそこのお子さん。そうおぬしじゃ 免許証あるかの?え?成人済みじゃったか ちょ~っと顔赤いけど、お酒飲んだかの?飲んでない?そう これにふーってしてもらえるかの?飲んでたらこの棒が白くなって、この黄色い線超えたら後ろのパトカーでお話聞くからの ・・・はい、ありがとうの。見えるかの?これ、黄色じゃなくて赤まで来てるじゃろ? え?あぁ、こっちの人が本来のドライバーの人形? うーん、一応そっちの人形もふーってしてもらえるかの? ・・・はい、どうも。見える?根元まで真っ白じゃ。どんだけ飲んだんじゃおぬしら? 「指揮官・・・」 下弦の月がミシュティを照らす。短い銀髪に微かに反射する月光は、どんな装飾品よりも彼女の魅力を引き立てている。 「何?ミシュティ」 枕を抱く彼女。大方クルカイから逃げて、そのままベッドに隠れていたのだろう。そして、そのまま寝ていたのだろう 「そろそろ寝ようよぉ。明るいと眠れないんだよぉ。ふぁああ」 「さっきまで寝てたでしょ。・・・ふぁ」 拳がそのまま入りそうなくらい、大きな欠伸を一つ。つられてこちらも欠伸 「ほらぁ、指揮官も眠いんじゃん。一緒に寝よ」 そう言って隣をポンポンと叩く。仕方ない、クルカイには明日言っておこう 続きが思い浮かばないから没 「飼育員~!お願い!一生のお願いだから!」 「あんなクソ高いPCなんていらないだろ!そもそも人形の一生ってなんだよ!」 脚に纏わりつくチータを振り払おうとするが、うまくいかない 「ダメったらダメ!自分で稼いで買えよ!」 「飼育員の意地悪!銭ゲバ!カリーナ!」 最後の意味はよくわからないが、とにかくダメなものはダメだ 頑として譲らない私に、チータもようやく無理と悟ったらしい 「ぶー!なら稼げばいいんでしょ稼げば!」 よしよし、シャバ台とでもいえば、稼ぎを多少エルモ号にも回せるだろう 「手っ取り早く配信でもするかなぁ」 「何の配信するの?」 「エルモ号は今どこに!?指揮官の今を赤裸々公開!って感じで」 私がどうやって非軍事勢力管理局の長官になれたか、ですか 確かに、政界は老獪な狸と狐しかいませんでしたよ。嫉む者、恨む者、足を引っ張ろうとする者、おこぼれを狙う者・・・ まぁ、たくさんいましたよ。銃を握ってドンパチする方が楽、とは言いませんが、発言一つ、仕草一つで破滅しますから肩が凝りますよ そういった連中を宥め、すかし、脅し、取り込み、消し、今の地位にいます。少々ダーティーなことはしましたが、まだ清い身体ですよ? 後は、ダンデライオンさんとクルーガーさんのおかげです。あの二人には頭が上がりませんし、足を向けて寝れませんよ 404の皆さんも裏方でいろいろ動いてもらいましたし、助かってます あぁ、指揮官様に「道中お気をつけて」とお伝えしてください。イエローエリアでは何があるかわかりませんからね 「指揮官☆今日ヴェプリーお休みするね☆」 「え!?」 ヴェプリーの突然の休暇宣言。困る、とても困る まだ荷物の搬入も機材の設置もパレット返却も何も終わってないのだ 「だって、ヴェプリーずっと働いてるもん☆ヴェプリー疲れちゃった・・・☆」 「頼むよヴェプリー・・・」 「ダメダメ☆アイドルには休暇も必要なんだから☆マイクより重いもの持てないの☆」 ・・・仕方ない、搬入と設置はクルカイ達に任せよう。パレット返却は・・・後にするか 人形が鬱になると聞いたことはないが、メンタル面の問題は怖い 「わかったよ・・・何か欲しいものはあるかい?」 とにかく休ませて飴を与えておけばいいだろう 「うーん・・・ヴェプリーね、指揮官が欲しいな☆」 抗議の声を上げる間もなく、荷物のように担がれ部屋に拉致された 「久々だね、カリン」 セミの声が煩い。イエローエリアでは聞けない音は最初こそ歓迎の音色に聞こえたが、あっという間に騒音に変わった 「メイリンに選んでもらったんだ。とても高かったんだぞ?」 そういう自分でも気味の悪い顔で笑ってるのだろう。 琥珀色の液体が入った小さな瓶。これだけで月収の3倍だ。何でもグリーンエリアでのみ栽培された材料で作られたという触れ込みだ 「指揮官、そろそろ時間よ」 後ろからリヴァが呼ぶ声が聞こえる。 黒い服を着て、いつもの薄ら笑いを張り付けた彼女。 「・・・じゃあ、また来るから」 そう言って墓標に背を向けた ---- 「って感じでどうよ!今年のNo.1人形映画監督間違いなし!」 「・・・クレームしか来ないよ、MDR・・・」 星は万人に等しく輝く。それは汚染された地でも関係ない。小型望遠鏡を覗き込み、そう考えを巡らせる 「どう?何か見える?」 指揮官の声がすぐ横から聞こえる。肩を寄せ、密着するように、重なり合う連星のように。 「・・・今日は綺麗にベガが見えますよ。見ます?」 そう言ってのぞき口を指揮官に譲る。 「・・・よくわからないわね・・・」 ・・・かなりわかりやすい部類だと思うのだが。まぁ、これからゆっくりと教えてあげればいい 「これ?いや、こっち?明るいし、こっちかも?」 あちこちにレンズを向ける。・・・壊しはしないだろうけど、壊れたら新しいものを買ってもらおう。 ん~?と唸る指揮官に、そっと抱き着く。温かい。この温度をずっと独り占めしていたいと思う 指揮官は恒星のようだと思う。人形限定の。ならば、私たちはその周りを周る衛星だ。指揮官という引力に魅かれて、離れられない星 「ベガとアルタイルと言えば、1年に1度再会すると言いますが、星の年齢に換算すると3秒に1回会っているそうですよ?」 「へぇ、面白いわね」 こんな与太話も楽しそうに聞いてくれる 太陽が陰ることはない。穢れることもない。もしそうなるのなら、私の手で。 短い銀髪が風に揺れる。小さい体躯に主張しすぎない胸と、発育途中のような尻 そんな人形が大口を開けて、大の字になってベッドに転がっている 「・・・いや、自分の部屋で寝てくれよ」 最近はずっとベッドを占拠されている気がする。クルカイに見つかりにくいのか、この部屋を別荘としているのか定かではない。だが、徐々に彼女の私物が増加しているのは確かだ 「ミシュティ、ミシュティ!起きて!自分のベッドで寝てくれ!」 肩をゆすり、耳元で怒鳴り、それでも彼女は起きません。なんだこいつは 「はぁ・・・」 ミシュティをベッドの端に寄せる。むにゃむにゃと何事か言っているが無視する 仕方ない、今日もこいつの隣で寝ることにしよう ------ 「指揮官、寝た・・・?」 肩を揺さぶってみる。いつも通り、起きる気配はない 「・・・んじゃ、お楽しみた~いむ・・・」 小声で歓声を上げる。 夜はあたしの、あたしだけの時間だ 「今日はマキアートがウェイトレス?」 「何よ、私だって殺し以外でも働くわよ」 乱雑にメニュー表が叩きつけられる。机が抗議するようにギシギシと鳴った 「で、アンタは何頼むの?珈琲?」 「ちなみにだけど、マキアートが作らないよね?」 射殺さんばかりの視線が突き刺さる。 「何?淹れてほしいの?」 何の脅しだ、とは思わない。事実、一度えらい目にあった カウンターを見ればスプリングフィールドが優しく微笑んでいた マキアートはふんっ、と鼻を鳴らすが立ち去る気配はない。注文しろということか 「マキアート大好きを一つ」 「はいはい」 「それとマキアートも」 メニュー表がバサリと音を立てて床に落ちた 「メイリン、起きて。朝だよ」 「起きてますよというか寝てませんよ朝も昼も夜もずっと仕事じゃないですかせめてお酒飲ませてくださいよお酒お酒お酒」 まいった。メイリンが壊れてしまった。米酒はもう全部売っぱらってしまったからなぁ・・・ 『あら、指揮官様。月曜の朝からメイリンさんとしっぽりされてたんですか?』 「カリン。そんなわけないじゃない。メイリンが10連勤したら壊れちゃったのよ」 『・・・普通の人に指揮官基準で仕事させちゃダメですよ』 報告書を1時間で書き上げる人間が何を言うのか。あぁ、カリンの手も借りたい。我がエルモ号は常に人手不足なのだ 「カリンもこっちに来ない?」『あぁ!仕事が残っていました!では!』 非情にも通話が切れてしまった。何と薄情な 「メイリン、お願いだから起きて。米酒買ってあげるから」 「それは先月も先々月も聞きました米酒は増えてませんよむしろ減ってますよ」 「信用がないわね。私が約束を破るとでも?」「はい」 即答だった。1秒もかからなかった 「・・・本当だから。約束する。破ったら、そうね、一日好きにしていいから」 「聞きましたからね!あとで無しはなしですからね!」 「ミシュティ!このねぼすけ!さっさと起きなさい!この!」 「うわぁ!!」 足を掴まれ右へ左へ、上に下に身体を振り回され、さしものミシュティを起きざるを得ない 「月曜は憂鬱なんだよぉ・・・」 「曜日何て関係ないわよ!射撃訓練に行くわよ!」 引きずられる様に射撃場に投げ込まれる。月曜のそれも早朝というのに、賑わっているようだ 「ふふんっ。ま、私にかかればこの程度造作もないわね。マキアートも付き合わせて悪いわね」 特に賑わっているのは動体射撃。どうにもマキアートが最高スコアを更新したらしい 「へぇ、あのスコアってクルカイがバチバチにキレながらしてたやつだよね。あれ更新する人形いたんだ」 正直驚きだ。あのデールの悪ふざけで作られた逸品にクルカイと挑んだが、二度としたくないというのが感想だ 「・・・行くわよミシュティ」「え゛?」 止める間もなく大股で近づく。マキアートもこちらに気づいたらしい 二人の人形は自分の得物を握りしめる 「完璧な人形は一人でいいのよ」「ふん!10年シカトされてるあんたのどこが完璧よ」 「・・・私はそろそろお暇したのですが・・・」「やだよぉ!指揮官、助けて!」 タンッ Hit タンッ Hit タンッ No Hit 「ありゃ?」 灯りの落ちた射撃訓練場では一人の人形が独りで黙々と訓練していた 「ミシュティ?何してるのさ」 「ビヨーカ?何って、訓練だよ」 「こんな時間に?」 「何時してもいいでしょ。んじゃ、あたしは寝るから」 興が冷めたとばかりにそそくさと得物を片付け、そのまま自室に帰るミシュティを見送る 「いっつも寝てばかりのミシュティがねぇ。げぇっ、何よこのスコア」 何気なしに先ほどの射撃データを見る。超長距離射撃、高速動体射撃、敵味方識別なしでの仮想市街地戦闘、etc・・・ ほとんど完璧と言っていい精度と速度だった。クルカイ隊長が後ろを任せるわけだ 「う゛~、私だって!」 そう言ってビヨーカも愛銃を取り出し、目標へ向ける。まずは長距離射撃から 「指揮官、その・・・夜に『打ち合わせ』いいでしょうか・・・」 「わかった。部屋の開錠番号はいつものだから」 打ち合わせが夜の誘いになったのはいつだろうか。遠い昔のようにも、つい最近のようにも感じる ---- 「ぷはっ・・・はぁ・・・♡」 「珍しいね、メイリンからお誘いは。何かあった?」 唾液とカウパーでべとべとの陰茎をメイリンが愛おし気に舐め上げる。 「だってぇ・・・新しい人形がいっぱい来て、私捨てられるかもって・・・♡ひゃんっ!」 甘えるような、媚びるような声を上げるメイリンの胸を乱雑に揉む。こういう乱暴な方が彼女は喜ぶ 「メイリンを捨てるわけないだろ?誰も捨てないさ」 「んんっ♡」 硬くなった乳首を掌で転ばすと、面白いようにメイリンが鳴く 空いた手で彼女の頭を押さえると、理解したように男根を喉奥まで迎え入れる ---- 「ふぉおおおお・・・メラニー!メイリン苦しそう!」「ヘレナ!ちょっと黙ってて!今いいところなの!」 「指揮官様~、昔の水着着せるなんて何考えてるんですか~?昔より育ってるんですよ~?」 「あの、指揮官。ちょっとこの水着、お尻が窮屈で・・・」 眼福眼福。素晴らしきかな。もうここで死んでもいい カリンには大切にとってあった昔のパオレ水着を着せた。胸部装甲は10年前もかなりの大物だったが、さらに育って今にもこぼれそう、というかちょっとこぼれてる カリンもそれをわかってか、ワザと胸を強調するように見せつける リヴァが後ろで怖い顔をしているが無視しよう メイリンにはセパレートタイプのビキニを。胸は流石にカリンに届かない物が、安産型のお尻は非常に魅力的だ パツパツになった布地と、もじもじとする仕草は嗜虐心をそそられる 後ろでレナがいい笑顔で頷いてるが無視しよう 「さぁ泳ごう!今泳ごう!早く泳ごう!」 素晴らしき夏。今、ヴァリャーグが来ようと、生躯が来ようと知ったことではない この極楽を満喫することの方が大切なのだ! 「指揮官、大変よ」「悪いなグローザこっちは取り込み中だそっちで対応してくれ以上」 「そう、なら子爵にそう伝えておくわ」 「ああああああ!!!!!!!!!あのクソ野郎がああ!!!!!」 「指揮官、今から犯します」 「・・・何て?」 「今から、指揮官を、犯します」 「・・・何で?」 クルカイに押し倒された22時。星明りに照らされた彼女の顔は決意に満ちていた。顔がいいだけに怖さもひとしおだ 「あのね、クルカイ。人形は孕ませる機能はないし、そもそも、その、アレ、ないでしょ・・・?」 人形にチンコなんてない。メンテで何度も見てるが、股に棒はついてないことを何度も確認している 「ペルシカさんに手配してもらいました」 「えー・・・」 ・・・あのマッドはいつか痛い目を見た方がいいと思う。 逃避は長く持たなかった。戦術人形の、それもエリートの膂力にかなうはずもなく、脱ぐというより毟られるように布地が減っていく クルカイの手が、指が的確に弱い部分を弄って来る 「・・・十分そうですね」 「・・・その、経験少ないから優しくして・・・」 必死の懇願は無視され、数えられないほどクルカイに絶頂させられた 「指揮官、その、夜お邪魔してもいいですか・・・?」 「構わないよ」 徹夜続きの後は必ずメイリンのケアをしている。彼女もそれをわかってか、こうして自分から甘えてくる。まるで発情期の猫のようだ。そして、それを期待している自分も盛りの付いた猿のようだ ------ 「んっ・・・ちゅっ・・・♡はぁっ・・・♡」 「今日は随分積極的だね、メイリン」 一物を一心不乱に舐め回し、咥え、精を搾り取ろうとする 「だって・・・最近は、んっ♡・・・ミシュティさんやヴェクターさんとばかり、ちゅっ♡・・・んっ・・・私だって・・・♡」 なるほど、どうやら人形とばかり致しているから、妬いているらしい。 「悪かった。今日はメイリンとだけするか、うおっ!」 言い終わる前に陰茎を喉の奥まで咥え込む。突然のディープスロートに、思わず腰が浮く。一日では足りないらしい 「んっ!♡・・・んっ!♡・・・」 あっさり我慢の限界を迎えた。メイリンの頭を掴み、胃袋に叩きつけるように精を吐き出す 「んっ!♡・・・ぷはっ!いっぱい出ましたね・・・♡」 そうして、ごくりっと精液を飲み干す。その淫靡な姿にまた陰茎は硬度を取り戻した >>最近は指揮メイ、メイ指揮もいいなって >お話して。 夜のエンジンルームは死角だ。デールであろうと、404であろうと、この部屋の鍵は渡していない。何せエルモ号の心臓なのだから 「んふっ・・・♡指揮官、くすぐったいです♡ひゃんっ!♡あっ♡・・・んっ♡・・・ダメッ♡・・・」 生意気を言うメイリンの淫核を軽く弾く。それだけで嬌声を上げる。少し楽しい 「メイリンは本当にここ弱いね。何回イった?」 「5回ですっ・・・んんっ♡・・・」 6度目の絶頂を迎えたようだ。感度がいい彼女は、どこを触ってもいい声で啼く 「はぁっ、はぁっ、もう無理ですぅ・・・」 ぐったりとメイリンが脱力する。少々やり過ぎたか。お世辞にも発育がいいとは言えない身体が紅潮し、中々倒錯的だ 「そう?こっちはまだ一回もイってないんだけど」 それはそれとして、メイリンばかり気持ちよくなるのはフェアではないのでは? 自分の分身を取り出し、メイリンの口の奥まで突き込む。熱さすら感じる口内は、ずるりと抵抗なく陰茎を迎えた 「んぶっ!・・・じゅるっ♡・・・」 無意識か、慣れか、舌で剛直を愛撫してくる。時計はまだ22時を指していた 緊張している。パラデウスと対峙したときよりも、ネイトと対峙したときよりも、この一枚の紙に緊張している 「・・・お久しぶりです!クルーガーさん!」 思わず立ち上がり、敬礼までしてしまう 「・・・まぁ座れ。それと、もう君の上司でも何でもない。敬礼は止めろ、新兵」 新兵。昔、遠い昔の、私の呼称。彼なりのジョークなのだろう。 「カリーナから聞いている。話があると」 「・・・はい」 話が早い。相変わらずの御仁だ。 「これを」 1枚の紙を取り出し、彼の前に出す。あの時、結局は言葉だけで終わった約束を 「・・・養子縁組届か」 懐かしむような、苦いものを見るような顔だ。この人のこんな表情を、私は後何度させればいいのだろう 「・・・悪いがこれは書けん。あの時とは事情が変わったんだ、新兵。わかっているだろう」 「そう、ですね・・・」 約束は、終には果たされなかった。 「指揮官様~!朝ですわ、起きてください」 「カリン・・・後、5、いや50分寝かせて・・・」 「もう!ミシュティさんみたいなこと言わないでください!」 枕を取られ、毛布を剥ぎ取られ、ベッドから叩き落されては流石に起きざるを得ない。寝不足の原因は、カリンが寝かせてくれなかったのが一番大きいのだが 「新しい人形の皆さんも来てるんですから、もっとシャキッとしてくださいね」 「また増えたの・・・?昨日のP22もうち預かりしてたよね・・・?」 「仕方ありませんよ、皆さん元の職場が忘れられないんですよ」 非軍事勢力管理局に入社してからというもの、ドンパチは減ったが書類が増えた。今は『元』グリフィンの人形達の仕事斡旋なんかしてる。・・・結局、ここで働く人形が増えてるのだが 「はぁ・・・クルーガーさん怒ると思う?」 「きっと笑いますわ。新兵、ここはグリフィンじゃないぞ、って」 パラデウスはあれから姿を見せてない。ウィリアムも始末した。なべて世は事も無し。いいことだ いい加減慣れたスーツに腕を通す。護身用のマカロフとトカレフも 「今日も早く帰ってきてくださいね。あ・な・た♡」 「同じ職場でしょ・・・」 出勤時のキスも忘れずに 「指揮官~💙定期健診のお時間ですよ~💙」 猫撫で声が聞こえる コルフェンが来てから衛生環境は劇的に改善した。・・・以前が酷過ぎたというのもあるが 人間の乗組員は月一でこうして健診を受けている。文明的だ・・・ 「う~ん、毎回言ってますけど、ちゃんと寝てくださいね?目の下真っ黒ですよ。後、性行為もほどほどにしてくださいね。腎虚したい、って言うんなら止めはしませんが」 「・・・面目ない」 最近はクルカイとヴェクターとメイリンに絞られたからな・・・ 特にメイリンとは、会ったばかりの頃のように目合っている。おそらく彼女も似たようなことを言われただろう 「後は食生活を見直してください。毎日、ビールに餃子に中華料理じゃ不健康ですよ。ビールは一日一杯。野菜をもっと食べてくださいね」 「・・・善処します」 こんな環境で野菜を食べること自体難しいが、センタウレイシーの家庭菜園のおかげで多少はマシだ。彼女に頼るほかない 「それじゃぁ、コルフェンの『健診』もしてくれますよね?💙」 「・・・コルフェン・・・」 「硬いことは言いっこなしですよ💙硬いのは指揮官のモノだけでいいんですから」 やかましいわ 「では指揮官、資料のためにこちらの女物服に着替えてください。下着もです。… 今回は女装モノでいくのでぇ…」 夏。あるグリーンエリアでは同人イベントなるものが催されるらしい。灼熱の熱さにも、極寒の寒さもものともしない強者が集い、希少な戦利品を手にすると語っていたのは四式だったか? 「なぁ、メイリン。本当に着なきゃダメか?デールでいい・・・」「僕は絶対嫌だからね!」 断固として拒否された。隣ではクルカイとヴェクターが恐ろしい形相で睨みつけている 真新しい純白のパンツとブラ。ご丁寧にシリコンバストまで用意している。しかも滅茶苦茶デカイ 「・・・デカくない?Eって書いてあるよ?」 「このくらいは普通ですよ?」 そうなんだ・・・よくわからない世界だ・・・ 「今回のテーマはメイドです!ミニスカだのハミチチだの邪道ではなく、超王道クラシックメイドです!」 メイリンの目が怖い。いつもそのくらいのやる気だったら嬉しいんだけど 「会場には指揮官を知っている人形がきっといるはずです。昔仕えていた指揮官が、今では逆の立場に・・・そのギャップがさらに魅力を高めるんです!」 「・・・そう」 何かもうどうでもよくなってきた 「わお・・・」 部屋でぶらんぶらんと揺れる体を見た 人形でも咄嗟のことになると思考が止まるんだなぁ。頭が真っ白になるってこういうこというんだ。 「とりあえず、下ろす?先に警察?」 変に冷静なのはあんな世界にいたからか、それともとうに自分がおかしいのか 先に下ろすことに決めたのは、単純にぶら下がっている身体をこれ以上見たくないからだ 「ふぃ~、結構重いなぁ」 次に電話。短い発信音がして、相手がすぐに出た 「あー、カリーナさん?指揮官がまた首つってて・・・うん、新しい指揮官人形頂戴?」 「チッ!今日もこの弁当かよ・・・」 「文句垂れんな。食えるだけありがたいと思え」 グリーンエリア外周部。都市内の掃き溜めのさらに下。こんなところにも人はいる 「このご時世に肉なんざ何使ってんだか」 「一昨日、この弁当食ってたバルザの爺さん死んだとよ」 「元から死にそうだったじゃねぇか、あのジジイ」 窃盗、恐喝、強盗、凡そ悪行と呼べるものすべてを網羅し、荒れ果てた地にしがみつく様に生きている 「今日の、お弁当。汝らに幸あらんことを。アドパルリタス。」 黒い服に白い肌。こんな場末未満の地に毎日来て日雇いを雇っている。男も行ったことがある。対価は十分すぎるほどの飯だった 「ケッ!こんなチンケなところまできてご苦労なこった」 言葉と痰を吐き捨てる。奴らの下で働いたのは1度きり。何というか、不気味なのだ 「・・・施しなんてできる奴らだ。たんまり蓄えてるにちげぇねぇ。攫って身代金と行こうぜ。ついでに久々にお楽しみだ」 デカイシノギだ。ひょっとすればグリーンエリアのお偉方と繋がってるかもしれない。それに女の身体なんて何十年も抱いてない 慎重に、慎重に黒い装束の少女の後を追う そして、今日まで帰ってこない 「ビヨーカ!炒飯まだ出来ないの!?」 「もう味付けだけ!」 「アンドリス!杏仁豆腐もう出来たの!?」 「まだ固まってません。後1時間くらいです」 昼前の厨房は戦場だ。何せ昼には腹をすかせた客が大量に押し寄せるのだ ここは完璧飯店。味にも量にも一切の妥協を許さない中華料理と、手ごろな値段が売りの超人気店 全てにおいて完璧、というのはもはやグリーンエリアを超え、ホワイトエリアからも訪れる客がいるほどだ 銃弾飛び交う激戦のような厨房を尻目に、机に頬杖をつく人形が一人 「暑いしやる気でないから寝てていい?」 「暇なら外で呼び込みでもしてきなさい!この!」 今日のメニュー表が描かれたプラカードを手にする人形が一人 「しゃっせー・・・」 外気温30℃、湿度60%。灼熱の地で死にそうな顔で呼び込みするミシュティの姿がそこにはあった 「寂しいぃ・・・寂しいよぉ・・・」 何と言うことでしょう。出番のなさと実装されなさに、とうとうレナが泣き出してしまいました 「どうしたの、レナ?何か出来ることはある?」 見かねた指揮官がついに声を掛けました。 「実装されないんだよぉ・・・」 「あー・・・レナはリヴァとWPUがあるから」 何とも慰めをかけづらい悩みですね。セット売りされている人形はこうして「姉妹機と一緒に実装されるから」と逃げましょう 「本当に?指揮官もリヴァだけ引いて撤退とかしない?」 「・・・しないしない!そんなことするわけないじゃないか!家族、だろ?」 レナには取り敢えず家族という単語を使っておけば機嫌が取れます。乱用は禁物ですが、効果は高いですね 「本当!?嬉しいな!」 レナが晴れやかな笑顔を浮かべました。これでもう安心ですね 「じゃ、そろそろ行く・・・」「ダメだよ指揮官」 レナさんががっしりと指揮官様の腕を掴んでいますね。これは手遅れです。2時間くらい置いてまた見に来ましょう。本日の「未実装人形観察TV」はこのくらいで 明日のこの時間は「激闘!ロベラ仮面ウーマンvsヴァリャーグじゃいあんと」をお届けします 「しくしく・・・しくしく・・・」 何と言うことでしょう。出番のなさとBB・・・お姉さん呼びに、とうとうスプリングフィールドが泣き出してしまいました 「どうしたの、スプリングフィールド?何か出来ることはある?」 見かねた指揮官がついに声を掛けました。 「私の実装はいつでしょうか・・・」 「あー・・・スプリングフィールドは水パの核だから温存してるんだよ」 何とも慰めをかけづらい悩みですね。こういう人形には〇〇の核と言って逃げましょう 「本当ですか?指揮官もmake great commander againしてくれますか?」 「・・・何それ・・・よくわからないけど、協力するよ」 「まぁ!本当ですか!」 スプリングフィールドが晴れやかな笑顔を浮かべました。これでもう安心ですね 「じゃ、そろそろ行く・・・」「ダメですよ、指揮官」 スプリングフィールドさんがと指揮官様の腕に手錠をかけましたね。これは手遅れです。2時間くらい置いてまた見に来ましょう。本日の「未実装人形観察TV」はこのくらいで 明日のこの時間は「決戦!ロベラ仮面ウーマンvsサイキックミシュティ!-さらば、ジュニアよ永遠に-」をお届けします 宴会は盛大に、というのは私のモットーだ 「やり過ぎた・・・」 飛び交う酒瓶、運ばれた端から貪られる料理、椅子は3本脚になり、机は天地が逆になっている 立って飲み、踊って飲み、撃って飲み・・・死屍累々、屍山血河、奈落の底 最初はクルカイだったか。グローザだったか。その後キャロリックが混ざってネメシスが煽り・・・ 明日はアルコール研修をしよう。幸い、今のエルモ号にいる人形達は聞き分けのいい方だ それにしても、 「人形の酒癖悪すぎだろ・・・」 「愚痴っても終わらないよ、指揮官」 ヴェクターは優しいな・・・こんな地獄の光景を目の当たりにしても、黙々と掃除をしてくれる 人形を転がし、机をひっくり返し、壊れた椅子を投げ捨て、床と壁を磨く 「これが終わったら何かしてあげるよ」 ぐい、と襟を掴まれ、唇を塞がれる。 「なら、この後指揮官が欲しいな」 口付けの後味は、甘い酒の味がした 「ふっ!ここまでよヴァリャーグ!」 「き、貴様は!ロベラ仮面ウーマン!」 悪事は全て露見し、這う這うの体で無人の荒野まで逃げたヴァリャーグ。掛け声とともにロベラ仮面ウーマンが崖から3回転宙返りを決め、カッコよく着地する。いわゆるヒーロー着地というやつだ 「貴様の悪事もここまでよ!」 ビシっ!と指を突き付ける。しかしこの仮面の人形は一体・・・? 「か、かくなる上は・・・ぐぉおおおおおお!!!!」 おぞましい声と共にヴァリャーグが見る見るうちに巨大化する。見よ!これがヴァリャーグ最終奥義、ヴァリャーグじゃいあんと! 「小賢しい!とう!」 掛け声とともにロベラ仮面ウーマンもあっという間に見上げるほどの巨体になってゆく。 「はぁあああ!!!」「おぉぉおおおお!!!」 両者が激しくぶつかる。地が裂け、空が割れ、雷を呼ぶ! 「正義は負けない!!」「ぐぉおおおおおお!!!!」 ウルトラロベラ仮面ウーマンの飛び蹴りが決まった! 「お、おのれぇええええ!!」 今日の「ロベラ仮面ウーマン」はここまで!明日のこの時間は「未実装人形観察TV」をお楽しみに! 「何故です!サイキックミシュティ!」「む~・・・」 彼女は何も答えない。いつものように無表情に佇むだけだ。そして、その静寂も長くはなかった 「はっ!」「くぅっ!」 強烈なサイコキネシス。すんでのところで回避する。目標を失ったサイキックが地面が爆ぜさせ、暴風がぶちまける 「・・・残念です・・・」「む~・・・」 ロベラ仮面ウーマンのベルトが黄色に光る。忽ちライダースーツを身に着けたロベラ仮面ウーマンXXXが現れる 「・・・行きますよ、サイキックミシュティ!」「・・・来るがいい、ロベラ仮面ウーマンXXX!」 仲間同士の悲しい戦いが幕を開けた (速攻しかない!) サイコキネシスの力は強大で、掠っただけでも大ダメージだろう。僅かな隙をついて倒すしか・・・。だが、彼女にそんな隙なんてない そんな時、ジュニアがサイキックミシュティに突撃を敢行する! 「うわぁっ!」 そして、その隙を見逃すロベラ仮面ウーマンではない!渾身の飛び蹴りが炸裂し、そして、何も残らなかった・・・ 「・・・さよなら、ジュニア、サイキックミシュティ・・・」 今日の「ロベラ仮面ウーマン」はここまで!明日のこの時間は「未実装人形観察TV」をお楽しみに! 「しきかぁん?」 「どうしたの?リヴァ」 暇そうなリヴァさんが指揮官に近づいてきました。危険ですね。大変危険です。UMP族は一度身内認定すると対象に執着するという報告がグリフィン基地から報告が上がっています 「別に?二人きりなんだし、ちょっとくらい甘えてもいいんじゃない?」 「リヴァが甘えたいだけじゃないの?」 あー!いけませんいけません!指揮官がリヴァさんを膝に乗せて!これは甘やかしモードです!いけませんいけません!あー!リヴァさんがどこかに行かないよう手まで回しましたよ!うらや・・・んんっ、失礼 「リヴァ、くすぐったいよ・・・」 「何?このくらいは許してよ。最近は私に構ってくれないじゃない」 振り向いたリヴァさんが指揮官の胸をなぞってます!対面座位ですよ!エッチすぎます!というか指揮官の胸だしていいんですか!?胸板厚くありませんか!?月刊誌ですか? 「リヴァ・・・」 はい!本日の「エルモ号観察TV」無料版はこれまで!有料版はこの後も引き続きお楽しみください!有料版のお申し込みはここから!各種クレジット、引き落としも出来ます! 明日のこの時間は「どたばた☆アイドル日記♡」をお届けします! 脂ぎった太い指が尻に食い込む。不快な感触で肌が泡立ち、背筋がぞっとする 「クソッ・・・」 「ん?何か言ったかね?指揮官」 調子に乗ってますます揉みしだくのは、今回の依頼主。金で首が回らなければこんな依頼受けていない 「ほれ、今日も『お仕事』頼むよ」 そう言って陰茎を取り出す男。しゃぶれ、ということか。こいつは仕事、と称しては性奉仕を求めてくる。 男の前に跪き、汚い一物を口に含む。屹立するそれを全て口内に収めることができない 「んっ・・・ふっ・・・」 「ふぅむ、指揮官殿はフェラの仕方をまだ覚えていないのか?」 そういうと私の頭を掴み無理矢理喉の奥まで陰茎が侵入してくる。吐き気が込み上げ、男の腿を叩くが力は緩まない 「おっ・・・ぶっ・・・ごっ・・・ぶはっ!はぁっ!はぁっ!」 「うむ、奥まで咥えるのが礼儀というものだ」 適当なことを。悪態をつく前に再度のイラマチオ。気道が狭まり、徐々に酸素が足りなくなってくるのがわかってしまう。その間にも面白半分で胸を捏ね繰り回され、乳首を引っ張られる 「そろそろいいかな。指揮官、いつものおねだりをしてもらおう」 「・・・はい、私のFランマンコ、どうぞお使いください」 ゴリアテサッカー。それは賭博の場。優勝すれば指揮官が何でも言うことを聞いてくれる夢の舞台 連戦連勝の404第1部隊、高いチームプレーが魅力の404第2部隊、アクロバティックなそよ風、大型新人『軍用ヘリ』を擁するズッケロ、バーリトゥードならチームエルモ号と、個性豊かなチームが勢ぞろいだ 「さぁ!第四試合はズッケロvs第1部隊!実況は私カリーナでお送りします!解説はお馴染み、ダンデライオンさん!」 「よろしく。クルカイのワンマンがどこまで通用するかしらね」 「そうですね。今期の得点王と目されますからね。しかし、軍用ヘリの得点力も侮れませんよ」 「人形は地面に這い蹲ってるものね。クルカイの苦い顔がここからでもよく見えるわ」 バタバタと空気を叩く音が実況席まで届いてくる。操縦席には勿論シャークリー選手 「それにしても第二試合のチームエルモ号には驚かされましたね」 「ゴール前をエルモ号で塞ぐなんて、指揮官らしいわね。潜水艦基地を思い出すわ」 Take Off!烈風が吹き荒れ、大歓声でスタジアムが沸く。 「さぁ!キックオフの時間です!オッズ比は3-5!まだだ購入可能です!今すぐ『トトカリーナ』へ!」 夜。指揮官の部屋は淫靡な匂いが充満していた 「あはっ💙指揮官ってばおしゃぶり上手ですね~💙よしよ~し💙」 人形の名はコルフェン。エルモ号に所属する医療人形だ。股間部分には小柄な身体とは正反対の巨大な男根が装着されていた その股座に跪く人間が一人。エルモ号の指揮官だ。いつものタクティカルな服はハンガーにかけられ、人形達とお揃いのラフな服を着用している。普段の服では中々わかりにくいが相当な巨乳が、薄い布地に透けて見える 「もっと喉の奥まで咥えてくださいよ💙」 さらに剛直を侵入させる。気道が狭まり、指揮官の手が抗議するようにコルフェンの脚をタップする。 「ダメですよ~💙我慢我慢💙」 が、それを無視して挿入を続行する。 部屋からは水音と苦し気な呼吸音、時折えずくような声、それだけだった 何分経っただろうか。満足したのか、口から腰が離れると、股間部のペルシカ研究所から貰った男性器パーツは涎と噛み跡でボロボロだった 「ありゃ?悪い子には、お仕置きが必要ですよね~💙」 予備の男性器パーツを装着する。指揮官の顔が引きつり、コルフェンの口角が上がる 「指揮官!指揮官!」 「うわっ!レナ、急に抱き着くのは止めてくれ」 眠そう指揮官様にレナさんがタックルしてますね。これは危険ですよ危険。頭をぶつけたら死んじゃいますからね。ベッドの上じゃなかったら大変危険ですよ 「えへへ、ゴメンなさい」 あー!どさくさに紛れて胸押し付けてますよ!胸!卑しい!あのデカパイ押し付けて指揮官様困ってるじゃないですか!私だってしたか・・・んんっ、このようにUMP族は大変卑しいことで有名です 「ん~・・・」 見てくださいよ!匂い嗅いでますよ匂い!いいなー羨ましい・・・ 「レナ、ちょっと寝かせて・・・7連勤は流石に堪える・・・」 「ミシュティみたい。うーん、じゃあ私も寝よっかな」 あー!添い寝ですよ!添い寝!もう半分くらいセックスじゃないですか! 「Zzz・・・」 「ホントに寝ちゃった・・・イヒヒ!」 レナさんがほっぺにキスして・・・え?ちょっと!何してるんですか!? はい!本日の「エルモ号観察TV」無料版はこれまで!有料版はこの後も引き続きお楽しみください!有料版のお申し込みはここから! 明日のこの時間は「老兵ナガンの生き方」をお届けします! 「あら!ヴァリさん!相変わらずいい男ね!どう?うちの娘は?」 「カレンちゃんはまだ16でしょう?それに、自分はまだ結婚は・・・」 「そう?あの娘も懐いてるし、いい歳だし・・・」 「はっはっは。では、自分はこれで・・・」 人当たりのいい笑顔を浮かべ男は再び歩き出す。長身に見合った筋肉、刈り上げられた髪に精悍な顔つき。金に困った様子もなく、人当たりも良く、この辺りでは優良物件と称される男だ 男の名はヴァリ。そう名乗っているが、真偽は不明だ。まぁこの時世に偽名などそう珍しいものではない 「また、ヴァリャーグが出たんですって」「ロ連は何をやってるのかしら」 男の脚は止まらない。尾行がいないか何度もチェック。 郊外のさらに端。イエローエリアに隣接する廃棄工場。そこで足を止めた 男のガレージには先客がいた。ガスマスクに粗末な防護服。イエローエリアでヴァリャーグと呼ばれるゴロツキ達だ 「アニキィ!でっけぇ得物が来ましたぜぇええええ!!!」 「煩いぞ。・・・行くぞクソ野郎どもぉおおお!!!」 エンジンを吹かし、男たちは荒野を行く 「指揮官・・・」 言葉と同じくらい遠慮がちな手が私の胸に触れる。暖かな手はいつも焼夷グレネードを触っているからだろうか。益体もない考えが脳裏を過る 「・・・変なこと考えてる?」 「何でもないわ、ヴェクター」 悲観主義のヴェクターと肌を重ねたのは何が原因だっただろうか。クルカイと比較する彼女を慰めるため?欲求不満だった私の捌け口にするため? 「やっぱり変なこと考えてる」 顔をぐいと持ち上げられ、黄金色の瞳が私を捉えた。謝罪の言葉は口から出る前に、唇で塞がれた 「・・・今日は気分じゃない?」 「まさか。ヴェクターこそ嫌だった?」 彼女と肌を重ねたのは何回目だろうか。夜な夜な行為にふけり、朝を迎えるたびに自分の欲の深さに眩暈する 彼女たちにも逢瀬を重ねる相手を選びたいだろうに 「んっ・・・ちょっとくすぐったいわ」 胸に触れるか触れないかのフェザータッチ。性感帯は既に知りつくされてしまった 「指揮官・・・」 ヴェクターの呟きは部屋に溶けて消えていった 春。生き物が活性化する季節 「コルフェン!見て!」 「なんですか隊長・・・?あ!これって!」 エルモ号観察池。そこに新たな命が芽吹いていた! 「うおあじよ!去年の子が子供を産んだのよ!」 「へぇ~!コルフェン、初めて見ました!」 うおあじ。淡水海水どころか、陸上にすら生息し、魚のような何か。単為生殖にも関わらずパートナーを求めて求愛を行うのが特徴 「でも、増え過ぎたら観察池の生態系狂っちゃいますよね・・・?」 「そうね。今日はうおあじで何品か作りましょうか」 そのまま手を突っ込み丸々太ったうおあじを捕獲するグローザ隊長。うおあじは基本的に自分より強いものに対して反抗することがありません。イエローエリアでは優秀なたんぱく源として重宝される 「うおっ!」「へぇ~、何だかアホっぽい顔してますね!」 「危険よコルフェン。うおあじは弱いと判断したものに対しては凶悪よ。ポイントは骨の間に包丁を躊躇いなく振り下ろすこと」 ダンッ 本日の「剛腕!エルモ号DASH!」はこれまで!過去の放送は有料版からお楽しみください!有料版のお申し込みはここから! 明日のこの時間は「メイドの生き方 -夜のご奉仕編-」をお届けします! 「誰だか知らないけどこれ取ってくれない?」 目隠しされてると気づいたのは、仮眠から起きても目の前に闇しか広がっていないからだった。ご丁寧に後ろ手でしっかり縛られてる 「指揮官、私が誰か当てられたら取ってあげますよ」 合成声なのか、誰か判別できない。文脈からネメシスとチータ、ナガン、リッタラは除外 「何かヒントくれない?」「・・・そうですね」 そう言って頬に手を当てられる。質感からデールとダンデライオンは除外。声の位置的にHGのような小柄な人形でもない 柔らかな手が首から胸に降りてくる。慈しむように、愛でるかのように 「お酒は好き?」「嫌いじゃないです」 「グリフィンに所属していた?」「はい」 「武器種はARもしくはRF?」「はい」 吟味するように質問を重ねる。その間にも下手人の手は、身体を愛撫するように撫でまわす 「トロロ?」 沈黙が怖い。外してしまっただろうか。声をかけるべきか悩んでいると、不意に視界が明るくなる 「正解です、指揮官。流石ですね」 柔らかな笑みを浮かべる彼女がそこにいた 昔は通帳の桁が増えるのが楽しみだった 昔は人形の皆さんと指揮官様に囲まれていて幸せだった 「カリーナ、クルカイから定時連絡。異常なしって」 「リヴァさん、ありがとうございます。引き続きエルモ号の追跡監視をお願いします」 「了解」 今は通帳の桁の増える速度が上がった 買いたいものはいつでも好きなだけ買える。欲しければショーケースから倉庫の中まで買い占めることができる。 「はぁ・・・」 「カリン姉、ため息ばっかりしてると幸せ逃げちゃうよ?」 今は人形の皆さんは傍にいる。 望めばペルシカ博士や他のルートからでも最新の人形を調達できるし、ヘリアンさんから元グリフィン人形の皆さんにも会いに行ける 「カリーナ、指揮官に何か伝言はある?」 「・・・くれぐれもお大事に、と」 今はただ一人の、愛しい人が手に入らない 『人食い人形!反社は出ていけ!』 ガラスに大きく描かれた文字がズッケロの景観を見事に破壊している 「またですか・・・」 「これで14度目です、店長」 どこからか元グリフィン所属が漏れたようだ。今はまだ嫌がらせで留まっているが、エスカレートするかもしれないし、因縁のある相手の耳に届くかもしれない 「そろそろ対処しないといけませんね」 「プランCにしますか?今ならプランGも実行可能ですが・・・」 こういう事態に備えてズッケロ側も対処プランをいくつか用意している。それこそあらゆる手段を 「今回は穏便にプランEにしましょう」 「E・・・ですか・・・」 こともなげに言うスプリングフィールドと対照的に、センタウレイシーが眉を顰める 「マキアートさん、『お仕事』を依頼できますか?」 「いいわよ。監視カメラのデータ回して」 決まってしまってはセンタウレイに反論の余地はない。落書きを消しながら、マキアートのデータ解析に余剰メモリを割り当てる プランE、Execution メラニーはむくれていた。別に晩御飯に嫌いな茄子とトマトが出てきたことに怒ってなどいないし、健康診断で注射をぶすぶす刺されたことに怒っていないし、中々帰ってこない主の部屋で過ごすほかない状況にも起こっていない 怒っていないったら怒っていないのだ 「悪かったわ。本当にゴメンなさい」 「・・・怒ってないもん・・・」 言葉と裏腹にむすっとした表情。そのくせ、服の端をぎゅっと掴んで、どこにも行かないでと言っているようだ 「あー、ほら!ゲームでもしましょ!メイリンも呼んで!」 「嫌」 「あー・・・」 たった一言で指揮官の拙い戦術は無に帰した。子供は何とも御しがたい 「えーっと、メラニーは何かしたいことある?」 この際何でも構わない。お飯事でも塗り絵でも、何なら歌って踊って見せてもいい 当の彼女は何も言わず、そっと抱き着いてくる。すんすんという音は鼻を啜っている音だろうか 「・・・どこにもいかないで・・・」 何も言わず静かに頭を撫でると、抱き着く力がさらに強くなった 「MDR・・・」 「何さ指揮官。何さ何さ何さ!」 腕の中のMDRが鬱陶しい。エルモ号に合流してからというもの、彼女がべったりと引っ付いて離れない。朝起きてまず見るのは彼女の顔だし、夜寝る時もずっと隣だ。トイレにすら付いてくる あまりに引っ付くので着替えすらままならない。今だって肌着一枚なのだ そしてMDRは何が面白いのか腕やら脚やら、身体の至る所をべたべたと触って来る 「悪かったわよ・・・今度は黙って何処にも逃げない。約束するから」 「へぇ~、自覚あったんだ~ふぅ~ん」 鬱陶しい・・・ 「MDR、せめて離れてくるかしら?息が詰まっちゃう」 「やだ!目を離したらどっか行っちゃうじゃん!」 この調子だ。マグラシアのクロが見たら笑い死にするだろう。・・・今も元気に配信してるのだろうか 「ご飯は一人で食べれるし、寝る時も一人でいいの。トイレくらい一人で行かせて。あと胸から手を離せ!」 「えー!」 えーじゃないんだよセクハラ人形! 「飼育員ってさー、ポールダンス出来る?」 「藪から棒ね・・・出来ないことはないけど」 え゛っという顔のチータを尻目に、ちょうどよさげな棒を掴む 流石に服では難しいのか、ストッキングも下もそこらに脱ぎ捨てる 「結局のところ腿とかの摩擦でポールにしがみつく感じよ」 ほら、そう言ってくるくるとスピンしだす。 「へぇ~、飼育員ってそういう仕事してたの?」 「変なこと言わないでくれる?ただの一発芸みたいなものよ。本当は年末のかくし芸で披露するつもりだったんだけど」 そうはいうが、割とサマになっている。少なくとも一朝一夕で身につくような技術ではないはずだ 「いいこと考えた!もうちょっとポールダンスしてみてよ!飼育員!」 「え?別にいいけれど・・・」 『エルモ号飼育員の生足ポールダンス』、12000サルディスゴールドで本日発売! 「店長、朝の仕込みは終わりました」「店長~♡今日もライブしていいんだよね~?」 「ありがとうございますセンタウレイシーさん。シャークリーさん、クラッカーの量は抑えてくださいね」 開店前は忙しい。それこそ、ピーちゃんすら手伝わさせるくらいには。・・・マキアートさんは所在なさげにしているが 仕入れ、仕込み、清掃、催し物。少しでも居心地の良い場所を提供するために、妥協は一切許さない 「ふぅ・・・」 ズッケロは大きくなった。グリーンエリアでも有数のカフェに育ち、元グリフィン人形の皆さんの情報共有の場にもなった それでも、思い返すのはズッケロよりずっとこじんまりとしていて、設備も不十分なグリフィンのカフェ 瞼に映るのは銃弾と砲火、聞こえるのはあの人の指揮と銃声 「さ、今日も頑張りましょうか。皆さん」 それらすべてを呑み込む。今はまだ、その時ではない。今は、まだ ざあざあ、と雨が降りしきっている。まるで自分の今の心境のようだ。と、まるで思春期のような思考に思わず笑ってしまう 「カリーナ?風邪ひくわよ。そうでなくとも雨は危険よ」 「リヴァさん。すいません、もうちょっとだけ・・・」 再び壁の外に視線を投げる。リヴァさんが呆れたように隣に立ってくれた 「何?また指揮官絡み?」 「あはは・・・わかっちゃいます?」 バレバレだったらしい。そんなにわかりやすい表情をしていたのだろうか。顔をむにむに触ってみるが、自分ではわからない 「クルカイもミシュティもヴェクターもついてるから安全は保障されてるようなものよ?」 「指揮官様が手を出さないか心配なんですよ。人形とみるやすぐに口説くんですから・・・」 昔からIOPに新人形提供の知らせがあれば、資源を大量にぶち込んで要請してたあの人だ。きっとその辺のコミュニティの人形を引っかけてるに違いない ・・・指揮官様に会いたい。ただそれだけなのだ。だが、立場がそれを許さない 「今度会ったら鼻を殴ってやればいいのよ」 「・・・そうですね」 会ったらまず一発引っ叩こう。そして思いっきり泣きついてやる。そして、今度こそ離れてやるものか ダンッ!勢いよくショットグラスがテーブルに叩きつけれらる 「「もう一杯!」」 「はーい☆ヴェプリー了解☆」 また並々と注がれる透明な液体。度数98%を誇るスピリタスだ 今、エルモ号では『誰が一番呑めるか!』というかなり低俗な大会が開かれているのだ! 優勝候補のメイリンが早々に潰れたせいで、優勝争いは混沌を極めていた。ついでに大会自体もぐだぐだで混沌だった 「エリートだかなんだか知らないけど、アイツの隣は私のものよ!」「ふん!殺ししか出来ない(笑)の人形に完璧な私が負けるわけないじゃない!」 いつの間にか指揮官が優勝賞品になっていたが、当の本人は飲み過ぎでペーペーシャの膝枕でぐったりしていた 「ふん、この程度の酒、ミシュティでも飲んでるわ」「ふん、スピリタスなんて四捨五入すればノンアルなのよ!」 大変だね・・・。そちらも・・・。銀髪と金髪の人形が後ろでお互い慰め合っていた 「アンタなんかに!」「私が!」「「負けるわけにはいかないのよ!!」」 再びテーブルが揺れ、グラスが叩きつけられた 戦いはまだ始まったばかりなのだ! ----- 1時間後、そこには涼しい顔でグラスを傾けるネメシスだけがいた 「指揮官~、朝だよ~。ふぁぁ・・・」 朝に弱い指揮官を起こす業務が加わったのは、エルモ号に乗って割とすぐだった 何を使ってもいいから起こしてこい、とはグローザからのお達しだ。・・・かくいう彼女も朝にはめっぽう弱いのだが 「・・・あたしに任せるの、おかしくない?」 呼んでもゆすってもびくともしない指揮官に、ミシュティは半ば諦めていた そもそもミシュティ自身、昨日は10時間しか寝れていないのだ。そして目の前にはあったかベッド 「5分したら起こすからさ。・・・クルカイには一緒に怒られてよ」 モゾモゾと指揮官の隣に寝転ぶ。すぐに二人分の寝息が聞こえてきた ----- 「起きろ!!!この!!!ねぼすけども!!!!!」 2分後、部屋にスタングレネードが投入され、クルカイ、キャロリック、マキアートによる奇襲が行われた 「出ていけ!」 「痛いよ、ペルシカ・・・」 尻にゲシゲシとペルシカのキックが着弾する 昨日までご満悦だった彼女の顔は、今や般若の形相だ 「いいから!出ていけ!」 「悪かったって、まさかそんなに経験がないなんぶっ!」 枕が顔面にヒットして、言葉は途中で消えてしまった 「出て行かなくていいわ。今から記憶と人格消去してやる!」 「ぎゃぁ!マッドサイエンティスト!」 ドタバタドタバタ。毛布やら印刷した紙が散乱した、乱雑な部屋で暴れまわるいい歳の大人が二人 「ゴメンってペルシカ!許してくれ!」 「いーや!ダメよ!あんたも昨日の私と同じ目に会いなさいよ!」 理不尽な!真っ赤な顔で鬼神もかくやという表情で追いかけてくる 「昨日のペルシカは可愛かったって!『初めてだから優しくして・・・』って辺りは特に!」「殺す!!」 カリンが迎えに来るまで乱痴気騒ぎは収まることはなかった 「離してくれクルカイ!クソッ!」 力をいくら込めても荒縄はぎしぎしとなるだけでほどける気配はない 「ダメよ指揮官。これは罰なの」 弱まることのない火力。灼熱の湯気が恐怖心を煽り、私の心をすり減らす 煮えたぎる地獄の釜から取り出されたのは巾着 「クルカイ~まずは卵じゃない?」「王道的にはここは大根でしょう?」「私は牛スジたべたいな~!リヴァ姉は?」 好きかって言う404のメンツ 「止めろ・・・止めてくれ・・・」 「ふふふ・・・」 そして、巾着が頬に触れた 「あっつ!あっついんだって!アツゥイ!」 「おぬし・・・」 上目遣いで肉棒を舐める小柄な人形。子供と見紛う童顔はカウパーでべとべとになっており、背徳感を高める 「もちっと小さく出来んか?・・・全部入らんぞ・・・」 それでも健気に口へ、さらに喉の奥へ肉棒を迎え入れる。嘔吐反射か、カリ首がただでさえキツイ口内でさらに締め付ける。 「おっ・・・ぶっ・・・」 苦しそうな彼女を無視して欲望のまま頭を押さえる。何か言いたげな表情をするが、すぐに承知したように舌で愛撫し、喉、というより食道まで剛直を迎えた。人形に食道なんて器官があるか知らないが。 頭を押さえる力を抜くと、ナガンはようやくといった顔で肉竿から口を離そうとし、 「ぶっ!」 再び頭を抑えつける。 馬鹿みたいな声と顔、それを無視して髪を掴み乱暴にイラマチオ。ゾクゾクと嗜虐心が満たされていく あっという間に限界が来た。精を口内にぶちまける 「はぁーっ!はぁーっ!おぬし、よくもやってくれたの・・・」 ぜーぜーと息も絶え絶えだが、文句を言う気力は残っているようだ 「・・・待て!待つのじゃおぬし!もう少し休ませて・・・あっ♡」 軽い身体をひっくり返す。すっかり濡れたソコは今か今かと待ちわびているようだ 「・・・指揮官、楽しいですか?」 むにゅりと、メラニーに慎ましくも柔らかな胸が、掌の上で形を変える。ちょっと楽しい 時折、喘ぎ声ともため息ともつかない声が漏れる。心なしか艶がかっているように聞こえる 「んっ・・・もう、十分楽しんだんじゃないですか?・・・んっ!」 有り体に「もう止めろ」という声を無視して、少し乱暴に力を籠める。まだ楽しんでいる最中なのだ 「あっ、乳首、そんな風にしないで・・・んんっ!」 爪でカリカリと乳首を攻めてやると、快楽から逃げるように体を丸める。随分とここが弱いらしい そして、みすみす弱点を逃すほどクソボケではない 「ダ、メですっ!はっ!・・・んんっ!」 暫くそうしていると、メラニーの身体が小さく揺れる。どうやら絶頂したらしい 「はぁー・・・はぁー・・・♡待って!まだ・・・あっ!♡」 余韻の抜けきっていない彼女の胸を再度嬲る。やはりいい声で啼いてくれる。今度メイリンと3Pも楽しそうだ 物思いにふけりながらメラニーを弄っていると、ずっとイキっぱなしだったのか、すっかり大人しく快楽を貪っていた 脱力した未成熟な身体に肉棒が天を向く 「「「「「王様だーれだ!」」」」」 「完璧な王です」「げっ・・・」「完璧な王様っていないわよね~」「リヴァ姉が王様なら粛清されてもいいよ♪」 先端に☆が記載された棒を高々と掲げるクルカイ王。棒の先っぽは無駄に小型ピクセルディスプレイになっている 視線を落とすと私の棒には1の記載が。 「ふふん、王様の命令は絶対なのよね?じゃあ1番は私と射撃訓練3時間」 「・・・OK」 ・・・明日は筋肉痛で死んでるかもしれないな。残ってる仕事はグローザとメイリンに押し付けてしまおう 豪快にグラスの酒を一気するクルカイ。命令後の王様はグラスの酒を飲み干す決まりだ。しかも、度数が高いやつ 「ぷは~・・・さぁ~、次行くわよぉ~・・・指揮官のグラス空じゃない。ほら~飲んで飲んで」 完璧な人形が完璧に酔ってる。しかも絡み酒・・・ 「「「「「王様だーれだ!」」」」」 ここまで王様になったのは初めの一回だけ。運はいい方だと思っていないが、ここまでとは・・・ 実際のところ、札は指揮官以外が王になる様になっていて、誰が王になるかは電子戦で決まっていた セカンダリレベルでは次の王になるための、熾烈なハッキング戦が行われていた 「指揮官、気持ちいい?」 股座の一物を健気に舐め上げるのはアデリン。パラデウスの黒いネイトと呼ばれる個体だ。色々あってグリフィンに移籍した子だ 肯定するように頭を撫でると、愛おし気に口の奥まで愚息を迎え入れた 「ぷはっ!アデリン、早く終わらせて。次は私。それと、指揮官も早く出して。次は私なんだから。」 そして、キスでお預けされているのがアリーナ。パラデウスの白いネイトと呼ばれる個体だ。こちらも色々あってグリフィンに移籍した子だ 生意気を言う彼女の乳首を軽く摘まむと、それだけで短い喘ぎ声しか出せなくなってしまったようだ 暫く部屋にはぴちゃぴちゃという水音と、時折甲高い喘ぎ声で満たされた 「指揮官・・・ちょっといい・・・?」 夜もまだ早い時間にリンドが姿を現した。いつもならば部屋でラジオを聞いているか、チータたちと一緒にいることが多いのだが 「ちょっとね・・・」 なるほど、口に出すことを憚られる事情があるらしい。手招きをして部屋に誘う。こういうことをしてるから人形に襲われるんですよ!とはカリンの言だったか 「で、どうしたの?」 「指揮官は、教授だった時を覚えてる?」 単刀直入だ。ドアブリーチングの如き破壊力の質問に思わず目を逸らす。覚えてないわけじゃないが・・・ 「あー・・・」「あ、違う違う。そのさ、変な質問じゃないて・・・」 実験のこと、自分のこと、末宵のこと、そして、あの出来事のこと・・・ 「うん、またちゃんと話せてよかった」 全て話し終わり、彼女が身体を寄せる。目のクマはグリフィン時代からすっかり薄くなった。 「リンド?」 「今は指揮官が、一番大事な人だから・・・」 そっと近づく彼女の唇からは、飴の甘い香りがした 「指揮官、コーヒーを」 「悪いね、RO」 グリフィン時代からの副官からコーヒーを受け取る。スプリングフィールドのコーヒーも美味しいが、やはりROは私が好きな味のコーヒーを淹れてくれる。もはや彼女がいない生活は考えられない 「作戦報告書は既に送りました。メイリンさんからの補給リストもこちらに」 「悪いね」 副官ですから、と微笑する彼女。何と頼れる副官か。思えば彼女、彼女たちには大いに助けられた 「そうだ、RO。いつものお礼に何かしてほしいことはない?何でもいいよ」 私に出来る範囲なら、と付け加える。言わずとも彼女ならばわかっているだろうが。 「・・・そうですね・・・では、ディナーを1回」 「そんなものでいいのか?もっと欲張ってもいいんだよ?」 彼女らしい慎ましいお願いだが、あまり遠慮してほしくないというのも本心だ 「・・・いいお店を見つけたので。その、二人きりではダメですか?」 「はっ!はっ!」 逃げている。ただひたすらに逃げている。誰から?決まっている、人形からだ。どうして? 「飼育員!待ってよ!ちょっとこの紙にサインして指輪をするだけでいいからさ!あんだけ愛し合ったんだしさ!」 「クソッ!今度はチータか!」 人形が結婚という名の首輪を嵌めようとするからだ!こんなことならメイリンに適当な指輪でも送っておけばよかった 「指揮官、こっちこっち」 横を見ればミシュティが手招きしている。なるほど、彼女がいる物陰ならば多少は時間が稼げる。迷わずミシュティの元に飛び込む 「あれ?飼育員が消えた!」 どうやら見失ってくれたようだ。足音が徐々に遠ざかっていく 「危機一髪だね~、指揮官」 「助かったよミシュティ」 えへへ、と微笑むミシュティ。今はエナドリをキメているらしくシャンとしている 「ところでさ、指揮官。これを受け取ってもらえる?」 そう言って取り出したのは、薄暗い物陰でも散々と輝く指輪 「あっ!どこ行くのさ指揮官!クルカイ!指揮官が逃げた!4F第2ブロック!」 「しししし指揮官っ!ちょちょちょっといいかっ!?」 「どうしたの、緋?」 CZ75もとい、緋。元グリフィンの人形で今はそよ風小隊の人形の一人は、私がメイリンに追加の仕事を投げた後、部屋の前で律儀に待っていたらしい 「とりあえず、入る?珈琲くらい出すわよ」 「お、おう・・・お邪魔、します・・・」 紅い髪よりなお赤い顔をする彼女がベッドに腰掛けるが、その姿は落ち着きなくソワソワとしている。まるで思春期の男の子が、意中の女の子の部屋に招待されたようだ。・・・そんな経験はないのだが・・・ コーヒーに息を吹きかけ冷まし、一口飲んで口を顰めて砂糖をボトボトと落とす。可愛い 「あん時はゴタゴタしてたけど、ちゃんと指揮官と話しとかないとな」 「そうね、歓迎会でもしましょうか?」 公演の時はヴァリャーグだの朝暉とのコミュニケーションだので話す時間がなかったのは事実だ 「また頼りにしてるわ、緋」 「おう!指揮官の敵はアタシが全部ぶっ飛ばしてやるよ!」 朱い夕日に照らされた彼女の笑顔は、何よりも輝いていた 欲しいものは全て手に入る。今の私に、手に入らないものなど只の一つも存在しない。手に入らないものがあるというのならば 「はぁ・・・」 「ため息をつくと幸せが逃げるらしいわよ、カリーナ」 後ろからリヴァさんの声がかかる。人払いして、誰もいないはずだったのだが。相変わらず神出鬼没な人形だ 「幸せの絶頂なんですから、多少逃げても構いませんよ」 「ちっともそんな顔してないけれど?」 クスクス笑う彼女の声が煩わしい。人と人形の神経を逆なですることが一番の楽しみのような人形だ 「で、指揮官は?」 「クルカイから連絡来てるでしょう?またトラブルに巻き込まれて人助けしてたわ」 ちょっと目を離したらこれだ。何のために戦闘兼連絡兼監視役を置いたのかわからない。どうせ人助けして、物資を放出した上に人形を引っかけてるのだ 「心配?」「ちっとも」 あの人が簡単にくたばるようなことはないだろう。グローザさんも404小隊もいるのだから。・・・自分を囮にする作戦くらいはしそうだが そう、と言い残してリヴァさんが部屋を後にする。ドアの向こうのレナさんが妙な笑いが、また鼻につく 「はぁ・・・」 あの人との再会はいつになるのだろうか 「指揮官はどこ!?指揮官の馬鹿は何処に行ったの!?」 「指揮官ならデールさんの所に行きましたけど…」 クルカイは激怒した。必ずやあのクソボケ指揮官を一発ぶん殴ると決意した。クルカイには性欲がわからぬ。しかし、勝手に胸部増量パーツをつけられMカップにされ怒髪天を衝く思いであった バルンバルンとアホのように揺れる胸を腹立たしく思いながら、廊下を練り歩いていた。周りの人形は「うおっ!それはデカすぎ…」という目がさらに苛立ちを増幅させる 「指揮官!デール!」 ドアを壊さんばかり、というか実際レールとドアを一部変形させて整備室に怒鳴り込むが、 「チッ!どこ行った!」 もぬけの殻であった。隠れそうな場所はなく、別のところに逃げたのかと部屋を後にした 「行った?」「行った行った」 天井。ダクト部分に大の大人2人が張り付くように隠れていた 「やはりデカパイはいいな」「いい趣味してるぜ。指揮官」 見つかればバイクに括りつけられ引き廻されそうだが、その程度のスリルではデカパイの魅力の前には些末事だ 「次は?」「リヴァだろ」 「指揮かぁん?」 冷たい声が、何処からか聞こえてきた 「う~・・・頭痛い・・・」 完全に二日酔いだ。昨日は・・・確かペルシカに呼ばれて、何故か酒盛りになって・・・ダメだ、記憶がそこで途切れてる ガンガンと痛む頭を押さえる。しょぼしょぼと目を開けると蛍光灯の明かりが容赦なく突き刺さる。どうやら明かりも消さずそのまま寝てしまっていたらしい 「グローザ?・・・誰かいないの?」 付き添いの人形の名を呼ぶが、返事はない。 何故か上着1枚だし、パンツ一丁の姿。着ていたであろう服は遥か遠くに脱ぎ散らかされている マットレスは引いていたらしいが、身体を起こすとバキバキと悲鳴を上げる 「んん・・・」 手の付近から声が聞こえてきた ふと横を見ると、使い古しの毛布に誰かいるようだ。というか、部屋の主を考えると該当人物が一人しかいない 「ペルシカ・・・?」 そっと毛布を剥ぐと一糸まとわぬ彼女の姿が現れる 「あの、ペルシカさん?そのお姿は一体・・・?」 「責任、とってくれるんでしょ?指揮官」 悪戯っぽく、妖艶に嗤った 「ミシュティ!何処に行った!クソッ!」 地響きを立てるほど足音を立てながらクルカイがエルモ号を練り歩く。訓練をサボタージュしたあの寝坊助クソメイドミシュティを必ず見つけてメンタルを破壊して素体を鋳つぶしてやる! どうせアイツのことだから指揮官の部屋で惰眠を貪ってるか、ゲームをしてるか漫画を読んでるに決まっている 「指揮官!ミシュティは何処にいますか!」 「しーっ!今寝てるところなの」 ドアが悲鳴を上げるほど乱暴にブチ開けると、静かに、と人差し指を立てられる 彼女の膝の上で愚鈍で愚劣でやる気も覇気もないぐーたら人形がすぅすぅと寝息を立てていた。 「指揮官、失礼します」「ぎゃぁ!!」 一言謝ってミシュティの頬の摘まむ。よく伸びるそれは餅のようだ 「さっさと!訓練!するわよ!サボった罰として10倍で許してあげるわ!」「死んじゃうよぉ!」 頬を摘まんだまま部屋を去る前に指揮官に振り返る 「指揮官、後で私も膝枕をしてくださいね」 「・・・えー・・・」 「し・て・く・だ・さ・い・ね!」 真っ赤な顔でそう念を押すエリート戦術人形がそこにいた 「指揮官!こんな時間に寝てるなんて雑魚のすることだ・・・よ・・・?」 いつものように騒がしく部屋に入ってきたMDRの声が尻すぼみになるのは、ベッドの上で寝息を立てている指揮官を見てしまったからだ 「・・・指揮官~、寝てる~?」 足音を立てないよう慎重に枕元に近づき、そっと耳元で囁く。少し身じろぎしただけで、再び夢に戻ったようだ 「・・・ちょっとだけ、ちょっとだけね。他の人形だってシてるんだし・・・」 MDRの唇が重なる。その寸前、指揮官の陰で見えていなかった人形の口が開いた 「・・・何してるの?MDR」 「うひゃぁ!吃驚した!ミシュティ!?」 煩い、とばかりに耳を塞ぎ、眉をひそめる。クルカイと訓練から逃げる先は決まって指揮官の部屋であり、もはや彼女の第二の自室と化していた 「い、いや~、ちょっとスレのネタをね!そう!スレのネタ探しだったの!」 実際、キスの写真でスレ立てしてやろうという思いも少しあったので嘘ではない。 「ふぅん・・・まぁいいや。あたしはここで寝るけど、MDRはどうする?」 「へ?・・・それじゃ、お邪魔します・・・」 ベッドに入り込んだ2人の戦術人形に、指揮官が甲高い悲鳴を上げるまで、後3時間 「あっつ・・・メイリン、クーラー直りそう?」 「ヴァリャーグの襲撃のせいで無理ですよぉ・・・」 先日のヴァリャーグの襲撃、もとい窃盗は見事なものだった。彼らは力によって略奪するのではなく、盗みによってこちらの力を削ぎに来た。具体的にはこの真夏のクソ熱い時期に室外機を持っていかれた。次に会ったら鏖だ 「溶ける・・・」 恥も外聞もなく水着出勤だ。よくもまぁ昔のやつを着れるものだと我ながら感心する 「あの、指揮官?」 「スオミ!ちょうどよかった」 こういうときのための氷編成だ。マキアートは・・・攻撃系しか持ってないから呼んでない 「S4撃ってくれない?暑くて仕方ないの」 「え!?ここで、ですか?」 首を縦にブンブンと振る。彼女のスキルならあっという間に涼しくなるだろう。電気代も節約できて一石二鳥というやつだ 「マキアートさんほど威力はないですけど、一応攻撃入りますよ・・・?」 「FFはないんでしょ?早く早く」 少し悩んだ末、スオミがえい!という掛け声と同時にランタンが揺れる 「おぉ!これは!涼し・・・いや、なんだか・・・さ、寒・・・早く止めて!凍死する!」 『暑い時はセカンダリレベルでまったりするのが一番だよね~』 ここ最近の猛暑日のせいでエルモ号のサーバは人形のたまり場になっていた。意識だけサーバにあげて、素体は保管室に置く 人形にも対応限界温度というものがあるのだ 『うへ、セカンダリで訓練なんてしないよ』 クルカイに見つからないようすぐに隠れる。ついでにエルモ号の監視カメラもハッキングする。伊達に404はやってないのだ 『う~ん、あんまり面白いのないなぁ』 高速で映像をチェックしていく。指令室、整備室、キッチン・・・ 『あ、デールだ。そんな装備勝手につけたらクルカイに怒られるぞぉ・・・メイリンさんは、またお酒飲んでる・・・』 切り替えていくと、水音と白い靄。微かに声も聞こえる。カメラは『指揮官室 -シャワー-』というラベル 『ん~?』 「・・・本当に大丈夫なんですか・・・?」「・・・人形は皆保管室にいるし、こんなところ誰も見ないよ、メラニー」 ぼんやりと輪郭しか見えないが、声の主は分かりきっている 「じゃあ今日も頼むよ、メラニー」 「はぁ、本当にヘンタイですね、指揮官は・・・」 『クルカイ!大変だよぉ!いやマジなんだって!マジで大ごとだよぉ!』 「指揮官、ここにおいででしたか」 「黛煙?どうかした?」 彼女からカップを受け取る。中身は白湯らしい 「何やら思いつめたお顔をしていましたから」 「・・・そんなにわかりやすい?」 「とても」 10年前の選択がずっと頭を駆け巡る。朝暉との出来事で少し感傷的になっていたのかもしれない。 「教授?」 「うん?・・・あっ」 ・・・つい返事をしてしまった。バツが悪そうな私を黛煙はクスクスと笑う 「もう一度、貴方の証をくださいませんか?」 「・・・一度でいいの?」 そういうと黛煙が少し驚いた顔をする。珍しいものを見れた 「お望みならば夜が明け日が昇り、日が沈むまでお付き合いしますよ?」 「夏と言えばひぐらしだよね~。大昔のホラーってのも乙なもんだよ」 「あれはホラーって言っていいのか・・・?」 出題偏を一気見した二人が各々感想を言い合う。やれ、鬼隠しは今でも無理だの、綿流しは双子トリックだったのか?だの、祟殺しは詩音豹変しすぎだろだの ボリボリ。毎年とまではいかないが、夏と言えばひぐらしの声だ。・・・ホワイトエリアでも絶滅した種ではあるが 「指揮官がどの話が好き?あたしは祭囃しのB級感好きだなぁ」 「皆殺しかなぁ。詰めは甘いが滅菌作戦は悪くない作戦だと思う」 ボリボリ。テーブルにはチョコにポテチにコーラ。ヘレナから何とか隠し通せた数少ない甘味だ 「ちょっと痒いな・・・蚊にでも刺されたかな?・・・痒い・・・」 「ちょっと?指揮官?大丈夫なの?」 ガリガリ。両手で首筋を掻きむしる。目は焦点を失い、掻くことだけに集中しているようだ 「何てね」 「・・・もー!驚かさないでよ!」 ガリガリ。おどけたような指揮官にミシュティも胸をなでおろす。やはり指揮官は意地悪だ ガリガリ。首筋にある幾本もの鮮血は見ないことにした 「♪~・・・ねね☆どうだった?指揮官☆」 結わえた銀糸が踊る様な軌跡を描き、青いリボンがそれに追従する。陽光を反射しキラキラと輝く髪。彼女の気質も相まって太陽の神のようだ。目を離すことを許さず、けれど触れることを許さない 「最高ね。ヴェプリーのソロを一人占めできるなんて」 満足したのか、彼女が私の隣に腰掛ける 「・・・さっきの曲ね。指揮官のことを考えて作ってみたの・・・」 蒼天のような瞳が私を捉える。細く白い指が私の手を包む 「ヴェプリー?」 「あのね?指揮官。もっとヴェプリーの隣に、いてくれる?」 蒼い双眸が微かに揺れる。口元が不安げに歪む 「勿論」 一言で断じる。それでも足りないだろうと、彼女を抱き寄せる 「・・・じゃあ、もっとヴェプリーのこと知って?☆そして、指揮官のことももっともっと教えて☆?」 不穏な言葉と同時に回る視界と背中に軽い衝撃。押し倒されたと理解するまでに、たっぷり十秒かかった 「へっへ~☆スエゼン?ってやつ?」 太陽に近づきすぎたものの末路など、堕ちるしかないのだ 「あつい・・・」 寝苦しさでとうとう目を覚ます。下着は寝汗でぐしょぐしょで、シーツは汗を大量に含んで気持ち悪い クーラーは動いているから、それ以上の熱源があるのだろう 「ヘレナ・・・メラニー・・・」 両脇にしがみつく様に寝入る2人。寝苦しさは子供特有の高い体温のせいだろう 追い出すわけにもいかず、かといってこんな時間に人形やメイリンを呼ぶのも憚られる。仕方なく、クーラーの温度を下げ再び横になる ---- 「しきかん、ねた?」「ヘレナ、声が少し大きい・・・」 頬を突くヘレナと、慌ててそれを止めるメラニー。指揮官は呻くだけで起きる気配はない 「私だけでよかったのに…」「しきかん、ひとりじめ、ずるい!」 声を荒げるヘレナに人差し指を立て、黙れのジェスチャー。不承不承と口を閉ざすヘレナを確認し、そろそろと指揮官の下着を降ろしていく 「・・・おおきい・・・?」「寝てるからまだ勃ってもいませんよ」 そう言ってメラニーが率先して、ふにゃふにゃの陰茎を手に持ち、 暑いからこれ以上書く気力がなくなった。 月光の降りしきる中、エルモ号は荒野を駆ける。そんな中、ふと歌声が聞こえてくる。悲しげで、寂しいげな、そんな鎮魂歌のような歌 「♪~♪~・・・指揮官?」 「ヴェプリー」 普段は賑やかな遊戯室だが、今日は珍しいことに誰もいない。出窓に腰掛けていた彼女以外は。銀の髪と青いリボンのアイドル人形は私を見るとその歌を止めてしまった。 「どうしたの?あっ☆ヴェプリーのパフォーマンスが見たいの?☆」 歌とは正反対のテンションに少々面食らう。彼女らしいと言えばそれまでなのだが 「歌声が聞こえてね。なんて曲なの?」 「ん~?さっきの曲?そういえば名前つけてなかった☆」 あっけらかんとした声に、思わず苦笑してしまう。 彼女が手招きするので、同じように出窓の縁に腰掛ける。 「へっへ~☆着地成功☆」「きゃっ!」 待ってましたと言わんばかりに膝の上を占拠するヴェプリー。酷くご機嫌なようで、左へ右へと頭と髪が揺れている 「♪~♬~」 胸元辺りから響く歌声は、先ほどよりもずっと幸福で暖かなものだ 月明りに照らされ、エルモ号の一室で小夜曲が静かに響いていた 「てんちょ~、マキアートがサボってる~♡」 「うっさいわね・・・」 射殺さんばかりの視線を投げると、うひひっ♡と馬鹿にしたような声が返ってくる。エルモ号のズッケロの客など、見知った人形か、あのバカしかいないのだ、多少のサボリがどうした 「というか、あんたのその恰好も何なのよ」 形こそメイド服に似せているが、ピンク基調に大量のフリル。胸元はざっくり空いていて胸が零れそうだし、スカートは短い上に透けている。娼婦顔負けだ 「期間限定の新衣装~♡歌と踊りだけじゃ弱い!トレンドは歌って踊れて殺せるアイドル♡」 あっそ、と興味なさげに『マキアート大好き』を喉に流し込む。甘ったるいキャラメルが口いっぱいに広がる 「え~?指揮官も『よく似合ってるよ、シャークリー♡』って言ってくれたよ~♡」 何かを思い出したのか顔を赤らめるシャークリーに椅子を蹴倒すように立ち上がり掴みかかる 「その服は何処!?」 「えっ、指揮官がシャークリーのために買ってくれたからな・・・」 「今!すぐ!その服を!よこせ!」 「きゃー!てんちょー!指揮官ー!助けて―!」 ドタバタ騒ぐ二人が止められるまで後30分 ♪~♬~・・・ 寒暖差の激しい地帯に入り、朝のエルモ号はけぶるような霧に覆われていた そんな中、何処からか横笛の音色が聞こえる。柔らかなその音は、最近エルモ号に乗車した朝暉のものだろう 「・・・おはよう、指揮官」 雲海のような霞の中に立つ人形は、まるで伝説の中にいる仙女のようだ。音の主はいつも通り、表情の変わらない表情を浮かべていた 「早いのね」 「そう?指揮官こそ、まだベッド使っててよかったのに」 軽口を叩ける程度には関係はよくなった、と言ってもいいだろう。 以前は何を考えているかいまいちわからない能面のような顔も、よくよく観察すると声色や視線で感情がわかる様になってきた。この辺はヴェクターと似ているかもしれない 「・・・別の人形のこと考えてる?」 「まさか」 ジーッと見つめられ、思わず顔を背ける。表情が変わらない分、怖さが増すように感じる 「あー・・・あのね、朝暉、」 「私たちに言葉は不要、でしょ?指揮官」 何かを言う前に口は唇で塞がれた 「なにをー!」「なんだとー!」 エルモ号一室。掴みかからんばかりの勢いで二人の戦術人形が胸を突き合わせていた。普段の和やかな雰囲気は霧散している 「ビヨーカ!何をはしゃいでいるの!?」「絳雨、あまり大声を出すと皆さんに迷惑ですよ」 「「だってお姉ちゃん!こいつが!」」 姉二人に諫められてなお、妹二人の機嫌が収まることはない。むしろヒートアップすらしている 「ビヨーカ!この騒ぎは何!?」「絳雨?一体どうしたの?」 言葉と態度は違えど、問い詰める姉二人に妹がそれぞれ語りだす 「だって!指揮官は『ビヨーカのパイズリが一番だ』って言ったの!」「私だって指揮官から『絳雨のパイズリが最高に気持ちいいよ』って言われたの!」 互いの言葉でさらに再燃したらしく、またも両者は鋭く睨み合う そんな二人を尻目に姉二人が静かに、だが幽鬼を思わせる形相で立ち上がる 「指揮官は何処!?」「・・・少々用事を思い出しました。席を外します」 「「・・・お姉ちゃん?」」 「じゃ~ん☆新衣装~☆」 眩しい白いビキニに眩しい笑顔の彼女。真夏の太陽よりなお眩しい彼女に引っ張られ、エルモ号の仮設プールにダイブする 「うぉっ!?」 「着水成功☆」 成人男性と戦術人形の衝撃に、ドッパーン!と派手に水しぶきが上がる 「ぷはっ!ヴェプリー!やるなら一言、ぶはっ」 「へっへ~☆スキあり!」 小言を言う口に水の弾丸が着弾する。手にはいつの間にやら水鉄砲、それも彼女らしく吐き散らすタイプのやつだ 「やったな!この!」 「きゃっ☆ヴェプリーも負けないよ☆」 それからは童心に戻ったように、浮かれる恋人達のように水をかけ、かけられた 「ね、指揮官☆ヴェプリー、ちょっと疲れちゃったな。その、何処か休憩できるところに行かない?」 そう言って微笑む彼女の瞳は、だが捕食者の目をしていた エルモ号はいいところだと思う 前までは歌えないし踊れないしでもどかしい思いをしていたが、ここでは好きな時に歌えるし、コルフェンちゃんやシャークリーと一緒に踊れる。それに、指揮官がいつだって褒めてくれる。 「うーん・・・今日はちょっとセクシー系?でも、やっぱりガーリッシュ系も・・・」 最近はユヒってアイドル人形も乗ってきて、このままなら皆でユニットも目指せるかも?でも暫くはソロがいいな~☆偶像は一つがいいのだから☆ 「あっ!指揮官だ☆」 「ヴェプ、あだだだ!力強いって!」 後ろからドーン!そして、ギューッ!抱きしめる。ついでに顔もぐりぐりと押し付けてしまえ☆ 指揮官から何か聞こえるがちょっとだけ無視する。一秒だってこの人から離れたくないのだ。とは言え、ちょっとだけ力を緩める。あんまり力込めちゃダメなんだって☆ 「で、どうしたの?ヴェプリー?」 指揮官が優しく頭を撫でてくれる。密着した聴覚モジュールからは指揮官の心音が聞こえる 「え?ううん、何でもないよ☆」 いつかこの人のこの気持ちを伝えよう 自分のすべてを歌と踊りに載せて 「・・・き官。起きてください、指揮官」 肩を叩かれる衝撃に微睡から目を覚ますと、緑のメッシュを入れた栗色の髪の少女が優しく微笑んでいた。部屋の時計はとうに23時を回っている。仮眠のつもりが熟睡していたようだ 「おはようございます、指揮官」 「・・・おはよう、M4」 M4と呼ばれた少女が珈琲を持ってくる。香ばしい香りに意識が覚醒していく 「珈琲をどうぞ。スプリングフィールドさんほどうまく淹れれたかはわかりませんが・・・」 「ありがたくいただくよ」 一口啜る。酸味と苦味が丁度よい具合に調和しているそれは、普段スプリングフィールドが淹れる珈琲とほぼ同じ味わいだった 「美味しいよM4」 「あ、ありがとう、ございます・・・」 顔を上気させ、モジモジと指を交差させる様子は人形ではなく、一人の少女のように見える 「あの、その、今日はこのまま指揮官の部屋にいても、いいですか?」 「勿論、好きなだけいるといい」 そう答えると彼女は顔を綻ばせる。 それにしても、M4A1がエルモ号にいただろうか? 「それでは、また来ます・・・絶対!また来ますから!」 「待ってるよ、9A91」 情事が終わった後、決して離そうとしない彼女の頭を撫でる。タイマーは先ほどから煩いくらい鳴り響いているし、電話のコールも止まることがない 『指揮官様~、もうとっくにお時間過ぎてますよ~!』 「わかってるよ。9A91、外まで送ろうか」 「は、はい!」 グリフィン時代に比べて随分と真面な服を着るようになったんだなぁ、と馬鹿みたいな感想が頭を過る 「その、次はエルモ号の外で指揮官と・・・」 「悪いね、9A91。もうちょっとプロトコルが緩くなったらね」 名残惜しそうな彼女にせめてもの口付けを。先ほどまでの情熱的なものではなく、軽いタッチ程度で 「・・・せめてこれを受け取っていただけませんか?」 差し出されたチョーカーを受け取る。この手の贈り物で部屋が溢れかえっているが、拒否も出来ない・・・中にGPSとか入ってないよな? 『指揮官様!、もう御予約のお客様がいらっしゃってますよ!次はネゲヴさんですよ!』 「わかったよ・・・」 移動型人形向け特殊浴場・エルモ号。御予約は非軍事管理局のカリーナまで! 雨は嫌い。お外でライブ出来ないし、セットした髪もぐしゃぐしゃになっちゃうし、イイコトなんて一つもない 「ヴェプリー憂鬱・・・」 窓に見えるのは落ちてきそうな曇天と、ヴェールのような雨とガラスに張り付く水滴。こんな気分じゃ暗い曲しか出来そうにない。・・・ダウナー系ってのもアリかな? 「はぁ~あ・・・」 もう何度目かの溜息。ユヒちゃんもシャークリーも今日は任務でいないし・・・ 曇りガラスにとりとめのない落書きをする。完成したそれは、水滴ですぐにホラー風味に変わってしまった 「はぁ~あ・・・」 人形のメンタルって天気にも影響を受けるんだろうか?それとも、いてほしい人がいないから?ヴェプリー、わかんないや あの人の代わりにピザ君をギュッと抱きしめる 「ヴェプリー?いる?」 「あっ☆指揮官」 今日はもう不貞腐れてセカンダリレベルで一日ソロライブしてしまおうと思った矢先だった。少し、いや、とてもラッキー☆ 「最近雨続きで憂鬱でね。ヴェプリーに元気を貰おうと思って」 「へっへ~☆任せて、指揮官☆」 窓の外は暗雲が立ち込めているが、ヴェプリーのメンタルは快晴のごとく晴れ渡っていた 「指揮官、タイが曲がっていますよ?」 そう言うと彼はバツの悪そうに頭を掻いた。畏まった服なんてもう久しく着ていないんだよ・・・、と言う彼のネクタイを直す 「はい。苦しくはありませんか?」 頭が左右に揺れる。問題なさそうだ。とは言え、いつもと勝手が違う服はやや窮屈そうだ。私も少し胸とお尻のあたりが・・・ 不安そうな顔に見えたのだろうか、彼が優しく頬を撫でる。そして不意打ちのようなキス 「もうっ、まだ宣誓していませんよ!」 意地の悪い彼の胸を叩くが、大して堪えたように見えない そうこうしているうちに時間が来てしまった 「エスコートお願いできますか?旦那様」 勿論、そう言う彼と腕を組む。鐘が鳴り響くチャペルはすぐそこだ 「ふふっ」 「ご機嫌ねスプリングフィールドは」「最近の店長はずっとあんな感じですよ」 「指揮かぁん?」 部屋で資金繰りについてうんうん唸っているとリヴァが入ってきた。・・・鍵は掛かっていたと思うが 「人形相手に本気で籠城したいなら、鋼鉄の箱に入ったほうがいいわよ」 電子錠をハッキングして、物理錠は破壊されたらしい。侵入者を食い止められなかった哀れで無口な番人に心の中で敬礼。メイリンに後で交換してもらおう 「エルモ号の武装はもっと増やした方がいいわよ。ただの棺桶じゃない」 ごもっともな意見だが、襲撃が頻発している現状だと大砲を付けてもデッドウェイトにしかならない。それならばいっそ人形たちの装備を優先した方がいい 「ふぅん、相変わらず人形を過労死させたいってわけね」 皮肉気に言う彼女だが、トゲトゲしたような感じではない。グリフィンの時もカリンの元でもこの程度の仕事は重荷にすらならないだろう 「これは?走行ルート?へぇ、人形の指揮以外は、全部グローザがしてるかと思っていたけれど」 そう言うと、ここが定位置と言わんばかりに膝の上にひょいと乗る。 「何?いいでしょ、たまには」 猫が甘えるように胸にすり寄るリヴァを撫でて、午後の業務は終わりを迎えた ヴェプリー部屋。いつもは発声練習や歌で騒がしい一室は、くぐもった、甘く切ない声が小さく響いていた。 「んっ・・・あっ・・・♡」 ピザ君の代わりにシャツを抱き寄せ、空いた手は下腹部に伸びていた。指先からは隠し切れない水音と、シーツを濡らすほどの疑似愛液が垂れていた エルモ号に合流するずっと昔から、『そういった』用途向けに機構は搭載されていたが終ぞ使われることのなかったソレを、今では毎日のように使っている 「指揮官・・・☆」 最初は抱き着くだけで満足だった。その欲望は留まることを知らず、私物を持ち出すまで時間はかからなかった 勿論、素直に『そういう』お願いをすれば指揮官は応えてくれるだろう。実際、そういう人形は沢山見た 嫉妬か、そういう癖か、指の動きが速くなる。力が入りシャツに皺が寄る 「んんっ♡・・・あっ♡・・・ぅ~♡・・・」 無意識に脚が痙攣する。快楽から逃げるように腰が引ける。息が上がり、思考は真っ白だ 暫くして身体を起こすが、欲求は収まることを知らないらしい 「そうだっ☆」 まだ指揮官は起きているだろう。目一杯、あの人を堪能しよう。ステップを踏む軽やかさで指揮官の部屋へ突撃する 「あの・・・ヴェプリー?離してくれないかしら・・・」 先ほどまでじゃれついていたヴェプリーに突如タックルされたかと思えば腕を封じ込められてしまった。何か新しいパフォーマンスだろうか 「・・・」 無言が怖い。いつも笑顔で口が閉じる暇がないほど喋り、歌っている彼女が無表情でじっと見つめている。普段のギャップと相まって何をするのか、何をされるのかわからない 「あの・・・ヴェプリー?・・・ひゃっ!」 「スキあり!」 防御力の薄い部屋着の裾からわき腹に手が伸び、そのまま胸に伝う。突然の襲撃に変な声が出てしまった 「ちょっとヴェプリー!?変なところ、んっ!」 「へっへ~☆」 服に侵入した手は止まることなく、慎ましいとは言い難い胸を蹂躙していく。その感触に身悶えしている間にも服はどんどん剥かれていく 「あっ・・・んっ!・・・はぁ・・・はぁ・・・」 何分、何十分。永遠のようにも、一瞬のようにも感じる愛撫が続く ふと見上げれば、爛々と輝くヴェプリーの目。その瞳には散々身体を弄られ息も絶え絶えな私が映っていた 「ヴェプリーが本気出したら、すごいよ?」 「や、優しくして・・・」 「エルモ号に武装を付けたい~?」 「頼むよペルシカ」 朝から叩き起こされ胡乱なことを言い出す珍客に面倒くさげな視線を投げる。時計は13時をとっくに回って朝ではないし、事前にアポは取っていたし、寝起きの珈琲風味の砂糖水も用意したのに 「適当に戦車とACから武装引っぺがせばいいじゃない」 「とっくに回収されてるよ」 譲渡される前にそれらはパーツも残さず回収されている。 「ちっ、面倒臭いわね・・・」 今舌打ちしなかったか?とは言わない。この話、来る前にも下よね、とも言わない。地雷は何処に埋まっているのかわからないのだから 「今うちにあるといえば・・・大型グレネードキャノン、5連レーザーキャノン、後は・・・コンテナミサイルくらいよ」 物騒なものしか作らないのかこのイカレ科学者は。というか倉庫の奥で変に緑色に光る物体は何だ 「あっ!面白いものがあったわ!これはいいわよ、これにしないさいよ!」 「えー・・・」 倉庫の最奥。一際大きなそれは複数の砲身が束ねられたガトリング砲のようだ 「ガトリンググレネード!どんな敵の木端微塵よ!」 「土木工事したいんじゃないんだけど・・・」 「着地成功☆」 部屋でせっせと書類を捌いていると背中に重みを感じた。柔らかな感触を楽しむ間もなく、どんどん重みは増していく 「ヴェプリー・・・重いよ・・・」 「あ~☆女の子に『重い』は禁句だよ☆」 えいっ☆軽い掛け声とともに前かがみになる速度が上がる。つぶれ饅頭にしたいのか! 「私が!潰れるの!」 「えー☆でも、コルフェンちゃんは後ろから飛びついてるよ?」 「貴方の体重とトルク考えてよ・・・普通に前でいいでしょ・・・」 「ヴェプリー了解☆」 本当に分かっているのか、この人形は・・・。即座に飛びのき、膝の上に対面座位の格好で飛び乗る。 これなら今日のヒヤリハット報告は提出せずに済みそうだ。そう思っていたのだが、 「・・・ヴェプリー、嗅がないで。舐めないで。服に手を突っ込まないで。・・・ちょっと待て!どこ触って、やめ、マジで、誰かー!」 抱き着いたヴェプリーを引き剝がすのに、たっぷり2時間かかった 「う~ん・・・」 スオミは悩んでいた。戦闘では呼ばれない日はないし、指揮官からも重宝されているというのは感じる。だが、ことエルモ号ではあまり声がかかることがない 要するにもっと指揮官に構ってほしいのだ 「う~ん・・・」 ウルリドお姉様やミシュティさんやヴェプリーさんのように指揮官の部屋に入り浸るのがいいのだろうか センタウレイシーさんのようにメイドというのも捨てがたい クルカイさんやマキアートさんのようにツンデレ、というのも悪くないように感じる 言わばサバイバルなのだ。弱者にはおこぼれすら与えられない 「悪いねスオミ。今ちょっといいかい?部屋で」 「きゃっ!し、指揮官!」 突然声を掛けられ、スオミの肩が跳ね上がる。 それ以上に、指揮官の部屋に、今から。つまり、『そういう』お誘いということだろう スオミの思考が高速化する。経験はないが『ご奉仕』のモジュールはこっそり入手済みだし、そういうデータだってある。下着だって、いつ声をかけられていいように新品だ 「最近暑くてね。ちょっと部屋を涼しくしてほしいんだ」 スオミの顔から表情が抜け落ちる。轟ッ!という吹雪の音と共に部屋は凍てついた 「ふん☆ふん☆ふ~ん☆」 歌うような足取りで、ステップを踏むように歌声を。指先はドアを捕え、勢いよく開かれる。・・・バキメキと何かが歪み軋む音は一切合切無視する 「指揮官☆、あれ?」 部屋は暗く物音一つしない。呼ばれた人物はベッドで寝ているようだ 「う~ん・・・寝てる?」 残念、起きているときに可愛がって欲しかったが、寝ているのであれば可愛がる方向にシフトしよう 起こさないよう、そっと隣に寝転がる。それだけでないはずの心臓が跳ね上がるようだ 「ん~っ☆」 思わず頭を胸に擦り付けてしまう。 駄作。 蒸し暑い夜に、胸元の熱源に目が覚めた 「・・・なんだ・・・?」 またミシュティが潜り込んだか?それとも寝ぼけたメイリンが部屋を間違えたか 「・・・ヘレナ?」 長い銀の河がシーツに流れている。熱の正体は未成熟な彼女の身体だった。薄い服は、ベッドのヘリに引っかかっていて、無地の飾り気のないパンツと、必要がどうかわからないブラはさらに遠くの床にかすかに見えた 「何で?」 眠気が徐々に霧散する。思考がフル回転する。何とかしなければ明日からエルモ号にガサ入れが入るだろう 「・・・とにかくコル、はダメだ。メイリンは」 ゆっくりと、全神経を使って彼女の肩を掴む。ビクリと反応する彼女に、心臓が止まりそうになる。脳内に『ペド野郎』の称号が256万色に輝いている 「あの・・・ヘレナ・・・何してるの?」 「いつものお礼です・・・」 暑苦しくて寝苦しい夜だから変な夢を見ているんだ。肌に感じる柔らかな感触も、手に頬ずりし、指を舐める彼女もきっと夢に違いない そうと決まればヤることは決まっている。折角の据え膳なのだ、頂かない方が無粋というもの 「その、指揮官。初めてなので・・・んっ♡」 陽は沈んだが、月は上ったばかりだ 「食料泥棒?」 「はい・・・」 エルモ号の食料は厳密に決まっている。補給は安定しないし補給所があるとも限らないイエローエリアでは厳正な管理が必要なのだ 水と食料はその最たるものである 「ネズミが出た?」 「いえ・・・そういったのは事前に殲滅済みです・・・」 小動物や虫とは考えずらいということは、誰かが盗み食いということになるが・・・ 「いやいや!そこで僕を見ないでよ!」 「必死に否定する当たり怪しいぞ、デール」 デールが手をバタバタと振り、首をブンブンと左右に振る。まぁ、一応彼だってイエローエリアの事情は知っているはずだ 「・・・激辛ソースでも混ぜるか」 これならば犯人はすぐわかるだろう。虫や小動物なら毒になる 「ふおおおおおおお!!!!水!!!!!!!」 翌日、キッチンで転がりまわるヘレナが発見された 「うぅ~・・・」 眠れない。性格には熟睡に至れないというべきか 暑いし熱い。申し訳程度の冷風は部屋全体を冷やすに至らない。というか下半身当たりに熱源があるようだ 「猫を飼った覚えはないんだけど・・・」 透けているのかと見紛うほど薄いブランケットを剥ぎ取る。冷感と謳っていたが、単純に薄いだけではないのか? 「・・・何してるのメイリン・・・」 「へ!?し、指揮官!起きて、いたんですか・・・?」 駄作。 「うぅ~・・・」 眠れない。厳密には熟睡に至れないというべきか 暑いし熱い。申し訳程度の冷風は部屋全体を冷やすに至らない。というか下半身当たりに熱源があるようだ 「猫を飼った覚えはないんだけど・・・」 透けているのかと見紛うほど薄いブランケットを剥ぎ取る。冷感と謳っていたが、単純に薄いだけではないのか? 「・・・何してるのメイリン・・・」 「へ!?し、指揮官!起きて、いたんですか・・・?」 薄暗い部屋でもわかるくらい真っ赤な顔で陰茎を弄るメイリンがそこにいた。半勃ちのソレは透明な液体でぬらぬらとしていた。カウパー以外にも口淫していたのだろう 元より霧散しかけていた眠気が完全に飛んでいく。悪戯心が陰茎と共にムクムクと膨らむ 「へぇ、じゃあ勝手に部屋に忍び込んだ猫ちゃんは何処かな~?」 「にゃ、にゃ~ん・・・なんて・・・あっ、ちょっと指揮官っ!ダメですって!んっ♡」 猫は飼っていないが、ネコは見つかったようだ 「あっ☆シャークリー!」 「げっ、ヴェプリー・・・」 対照的な二人は今やエルモ号の同居人だ。はしゃぐように抱き着くヴェプリーを何とか引きはがそうとするシャークリーはもはや恒例行事となっていた 「何してるの?」 「・・・ヘリで周辺地域の走査」 バツの悪そうな顔をするのは、これがアイドルとはかけ離れた任務だからか、それともなまじ操縦技術があってしまった故か 「ねね☆私もヘリ操縦できないかな?」 「・・・ヴェプリーが?大人しくフォークリフトだけ操縦しなさいよ・・・」 開いた口が塞がらないとはこのことか。嫌な予感しかしない。こんな暴走トラックみたいな人形を指揮官はよく御していると思う 「・・・はぁ、マニュアル貸したげる」 だからそんなに暗い顔をしないでほしい 10分後・・・ 「いっくよ~☆しっかり掴まっててね☆」 「ちょっと!本当にマニュアルインストールしたの!?ねぇ、ヴェプリー!!??」 ローターが唸りを上げ見る見るヘリポートが小さくなる。エルモ号にメーデー信号が送信されたのはそれから20分後であった そろそろ寝るか、という時間に部屋のドアが叩かれた。メイリンかグローザか?ミシュティならクルカイに迎えに来てもらおう。 「・・・メラニー?」 珍しい来客に首を傾げる。常であればヘレナと共同部屋で寝ている時間なのだが 「どうかした?申し訳ないけど、おやつはあげれないよ」 冗談めかして言ってみたが、彼女の表情は少しも変わらない。ただ部屋の中を睥睨し、ベッドの一点で止まる 「あー・・・」 「ヘレナが来たんですか?」 確かに寝苦しいあの夜にヘレナが来たし、ベッドでそういうことをした 「ヘレナから聞かされましたから」 誰にも言ってませんよ、という言葉に安心する自分がいる。そして、安心している自分に反吐が出る 「自己追放したい・・・」 「その前に指揮官にお願いがあります」 スルリ、と服が床に滑り降りる。凹凸の少ない未発達な身体が露わになる 「私も、お礼をさせてください・・・」 少女はそういって私の手を取った 「あっ!指揮官!」「あっ☆指揮官!」 「ぎゃぁっ!!」 前と後ろから人形にタックルをされ、内臓と口から悲鳴が上がる。 「レナ!ヴェプリー!タックルは止めろ!」 「えへへ♪」「へっへ~☆」 抱き着いたまま離れようとしない人形二人に、何度目かとわからない注意をする。『指揮官にタックルしないこと』と馬鹿みたいな命令をターシャリレベルで記憶してほしい 「レナ、胸に顔を押し付けるな。ヴェプリー、首筋を嗅ぐな」 あっちを離せばこっちがくっつき、こっちを離せばあっちがくっつき。姉妹でもないのに何故こんなにも連携してるのか 「ね、指揮官。ちょっとお話があるんだ!」「指揮官☆私の新曲聞いてくれるよね☆」 刹那、二人の間に火花が散り、ガシッと両者がそれぞれ腕を掴む 「痛い痛い!腕がちぎれるって!!誰か!リヴァ!グローザ!」 カフェ・ズッケロ、イエローエリア出張店の営業時間外。 「悪いね、スプリングフィールド」 「いいえ、何でも仰ってください」 カップからはグリフィン時代と変わらない香りが漂ってくる。ズッケロで飲んだ珈琲と比べれば、あの時の豆は恐ろしく安いものだったのだろう 「あの時はカリーナさんも苦労してたんですよ?」 口元を抑え、彼女が控えめに微笑する ズッケロがエルモ号でも憩いの場になっていた。美味しい飲食を提供し、情報共有の場は変わっていない。今の時間は指揮官しかいないが 店内BGMは止まり、最低限の明かりしか点いていない部屋は静寂が支配している 「スプリングフィールド・・・」 「あなたのためなら何でもできますよ」 手が重なり、影が一つになる 「エルモ号では来客に珈琲の一杯も出さないんですか?」 「No,Sir!センタウレイシー!今すぐ非軍事勢力管理局のカリーナさんに珈琲を!」 「それに、空調弱くありませんか?エルモ号は私を蒸し焼きにしたいんですか?」 「No,Sir!メイリン!今すぐクーラーの温度を10℃に設定して!」 「・・・隊長、あれ誰ですか?それに、さっきから指揮官がずっと変なんですけど・・・」「・・・指揮官の古い馴染みよ。くれぐれも粗相のないように」 「あー、なんか肩が凝っちゃいました~。誰か肩を揉んでくれませんかね~」 「Yes,Sir!コルフェン!非軍事勢力管理局のカリーナさんの肩をお揉みして!」 「・・・また、人形増やしたんですか・・・さて、そろそろ査察と行きましょう。まずは指揮官の部屋を3時間くらい」 「Yes,Sir!部屋はこちらです!」 「ここまで来るのに疲れちゃいました。運んでくれませんか?お姫様抱っこで」 「Yes,Sir!喜んで!」 「隊長!」「ここで声を荒げても指揮官が不利になるだけだわ。いったん引くべきと言っているの」「あれを許していいんですか!?隊゛長゛!」