ルスカ/Lusca ・廃棄された施設に残されていた手記の抜粋 ※施設はヨロシサン関係の研究施設と思われているがヨロシサン・インターナショナルはこれを否定している 〜1〜  『研究は暗礁に乗り上げてしまった。バイオサメの遺伝子を使ったバイオニンジャは非常にコントロールが難しい。IRCのシミュレーション上でも明らかだ。  バイオサメは著しい凶暴性を持ち、それを上手く扱えることが出来るならば多大な戦果への貢献に繋がることは間違いない。  しかし、ただでさえ凶暴なバイオサメがニンジャ化してしまえば、ほぼ間違いなく暴走してしまう。  ならば戦闘衝動増幅因子をカットするか?抑制遺伝子を植え付けるか?  それこそナンセンスだ。戦闘衝動が無いならばそれはサメで無くて良い。  凶暴かつ圧倒的な戦闘力をもった究極生命体、それこそがサメなのだ。サメには可能性がある。  …そう意気込んだものの、このままでは正式な承認も降りない。私の才能も認められない。そんなことはあってはならない。  だからといって私はヤケを起こしたりはしない。そういった研究者もいるようだが、私は彼らとは違う。知能指数が高いのだ。』 〜2〜 『知能指数が高く視野の広い私は名案を思いついた。  共同研究だ。私は他所の分野のスペシャリストを招くことにした。  相手は大学の同期だったオクタ。頭足類に可能性を見いだした変わり者だ。  彼もまた、研究が上手くいっていなかったようだ。曰く、バイオタコの持つ高い知能指数を上手く活かせる術を探していた、と。  知能指数の高い私はすぐにピンときた。そして提案した。  つまりこうだ。サメとタコの融合。  タコの知能指数をサメに移植させることによってサメの凶暴性はそのままにより高い知能を持たせるのだ。これにより、制御は格段に安定するだろう。するはずだ。サメには可能性がある。  オクタとしても貧弱なタコにサメの力が合わさることで可能性を見いだしたようだ。  私はその日のうちにプレゼンの資料を纏めた。  作り出すバイオニンジャの名前はルスカ。サメとタコの合わさった伝説のUMAの名前だ。上層部のウケもいいだろう。』 〜3〜 『ルスカは私の想定を超える成長をしている。  並のバイオニンジャを超える凶暴性と高い知能指数の融合という当初の目標は4643%クリアしている。当然だ。サメには可能性がある。  今は成長を観察しつつその時によって必要な改良を施している。  このルスカを作り出すまでに多くの犠牲が出た。だが、それも完全にペイできる。私の出世ももはや確約されたようなものだ。  オクタはと言えば、ルスカの下へ足繁く通ってはデータを取って、改良に精を出している。良く働く男だ。私が本社役員になったらあいつを秘書にしてやってもいいかもしれない。  明日はルスカの水中試験だ。サメの機動性により水中を縦横無尽に駆け巡り、タコの触手で標的を捕まえ、強靭な顎で噛み砕く。ルスカの勇姿が今から楽しみだ。』 〜4〜 『失敗。やつのせいだ。』 ・施設に残されていたボイステープ (激しくもつれ合う音) (紙の束が落ちる音) 『アイエエエ!落ち着けヒレフカ=サン!』 『落ち着け!?落ち着けだとオクタ=サン!良くも言えたな貴様!私の、私の才能を!私の才能の結晶を滅茶苦茶にしておいて!』 『確かに!確かにルスカに水泳能力がまるきり無かったのは私としても想定外ではあった!だが!』 『水中を泳げないサメがいるかー!』 (何かが割れる音) 『貴様が!タコの触腕をあんなに増やすから!そもそもサメの尾ビレを取っ払うなど!』 『待て待て!尾ビレを無くす事には君も承認したはずだぞ!』 『バカハドッチダー!』 (何かが割れる音) 『いいか!サメは完全生命体だ!海を泳ぎ!陸を泳ぎ!空を泳ぐ!そしていずれは宇宙に飛び出す!それを貴様は!分かっているのかーッ!』 『アイエエエ…。お、落ち着けヒレフカ=サン!そもそも!君は大きな間違いを犯している!』 『間違いだと!』 『そうだ!』 『何が間違いだ!』 『ルスカはタコだ!』 『………ハッ?』 『ルスカはタコなんだヒレフカ=サン。あれはサメの頭を持ったタコ!』 『…いやいや、ルスカはサメだ!タコの脚を持ったサメ!』 『ハッ?』 『ハッ?』 (数秒間無音) 『ファックオフ!』 『ファックオフ!』 (銃声) (何かが割れる音) (銃声) (銃声) (銃声) (何かが割れる音) (銃声) (何かの装置が作動する音) 『アッ!ルスカの檻が…』 (銃声) 『アバーッ!?』 『ハァーッ!ハァーッ!…ハァーッ…全く愚かな男だ…。頭足類の可能性に気付きもしていなかったとは…。私が本社役員になった暁には秘書ぐらいにはしてやろうと思っていたのに…』 (何かが蠢く音) (何かの唸り声) 『…ン?』 『アバーッ!』 『アイエエエ!?ルスカ!?ルスカナンデ!?』 『アバーッ!』 (何かを締め付ける音) 『ヤメロー!ヤメロー!』 『アババーッ!』 (何かを引き千切る音) 『アバーッ!?』 (何かが壁に叩きつけられる音) (何かが床に叩きつけられる音) 『アバーッ…』 (何かが蠢く音) ※ヨロシサン・インターナショナルはこれらの記録を全て敵対企業の悪質なフェイクだとしている。