しくじった、というのが今の自分を端的に表す言葉だろう。 ヘイワースは魔力の枷によって身動きの取れない状態を冷静に、客観的に判断した。 薄ぼんやりとした光を放つ縄が筋肉質な脚に絡みついてその動きを封じている。 この分だと自然に抜け出すにはかなりの時間が必要だろう。 決して駆け出しの冒険家などではない、むしろベテランとすら呼べる経験のある彼がなぜこのような窮地に陥っているのか。 話の始まりは3日ほど遡る。 「隠し財宝?本当にあるのかね、そんな物」 「ああ、何でも貴族様の家のから見つかった地図だって話だぜ」 賑わいのある街の酒場で、体格の良い男が掲示板に張り出された奇妙な依頼について店主と話している。 「情報源は確実、報酬も上々、おまけにダンジョンはとっくに踏破されてると来たもんだ。強いて言うならとんでもねぇお宝が出ても報酬は事前に決められただけって事ぐらいだが…この分なら損するって事ぁ無いんじゃねえか?」 「……どうだろうな。地図を見せてもらえるかい?」 「あいよ。持ち逃げ厳禁だぜ。」 男、ヘイワースは念入りにダンジョンの地図を眺める。 何か致命的な見落としは無いか、誤った情報で作られた箇所は無いか。 長年の経験と勘で細心の注意を払って確認したが、不自然な点は見受けられなかった。 店主が退屈そうに腕組みをして見せ、更にしばらくしてからようやくヘイワースは依頼を受ける事に決めた。 可能な限りリスクは避ける、彼が熟練の冒険者になるために最も役立った心掛けである。 やると決まってからの彼の行動は早かった。 その日のうちに準備を終え、翌早朝にはダンジョンに向けて旅立った。 想定外の事もなく予定通りに旅は進み、ヘイワースは森の奥深くにて大きく口を開けた人工物、ダンジョンの入口へとたどり着いたのだ。 だがここで彼をある一つの、この冒険で最初の異変が襲う事になる。 (酷い臭いだな……肉食獣でも住み着いているのか……?) それは臭いだった。 つんと鼻をつく強烈な糞便臭、新鮮な獣の痕跡だ。 危険な罠や魔物の脅威が去ったダンジョンであろうと野生動物の侵入は常に警戒しなければならない。 今回は事前に気付けただけ運が良かった方だ、と思いながらヘイワースは警戒度の順位を頭の中で整理して探索に臨む。 ───後にして思えばその「警告」を軽視して探索を続けたのが全ての始まりだっただろうか。 石造りの門をくぐった先は相変わらずの臭気だったが、生き物の気配は感じられなかった。 しかし決して警戒は怠らず、一歩一歩に神経を張り巡らせながら進む。 今ヘイワースが二番目に警戒しているのはダンジョンのトラップ、特に物理的なものについてだ。 ダンジョンがその役目を終えてからも確実に残り続け、比較的経年劣化にも強い。 感圧式の床や壁、張り巡らされたワイヤーなどが無いか気を付けながら進む。 (もう少しで地図に書いてあった仕掛け扉のある所だな) ほんの少し、まさに僅かな気の緩みが起こったその瞬間だった。 踏み出した足を置き、体重を掛けるよりも早く足元が不自然な光に包まれた。 魔法式のトラップだ。 まずい、と思った時には既に遅く、魔力の糸が両の足を捉えて巻き付き枷へと姿を変えた。 ごく僅かの油断に、意識の死角からのアクシデント。 かくして物語は冒頭の場面へと移る。 (魔法式のトラップは手入れをされなければすぐに魔力が尽きるはず……何者かがこのダンジョンに今も出入りしているのか) 住み着いた獣を狙ってか、あるいは別の目的か。 とうの昔に踏破された人の出入りのない古びたダンジョン、あるはずのない魔法トラップ、地図の調査という簡単な依頼故の単独行動。 状況は悪いが悲観的になるほど絶望的ではない。 何にせよ「拘束型」の「魔法」という事はある程度の魔法を扱う知性があり、直接的な殺意が無い者の仕業なのは確かだ。 まずは焦らず解呪の呪文書を使おうと不自由な体をよじり荷物を探るヘイワースの元に、罠の動きを感知したのかペタリペタリと奇妙な足音が近付いてきた。 靴の足音でも、獣の足音でもない。 この罠を仕掛けた知性ある者にしては不自然な、裸足の人間のような足音だった。 まともな人間が相手であるば交渉如何で罠を外させる事も出来ただろうが、どうやらそのようには行かなさそうだ。 危険を感じたヘイワースは身を隠すのが先かと辺りの様子を伺うが、足音の主が彼の元にたどり着く方が早かった。 ペタリ、と目の前に振り下ろされたのは分厚く曲がった爪をしたガサガサした質感の緑色の足、亜人のものだ。 首を上に向けるとそこに見えたのは想定よりも幾分低い背丈に大きく尖った耳のシルエット。 この状況で考えうる限り最悪の相手、低い知性と野蛮な気性を持つ亜人種の最底辺、ゴブリンだ。 「ギギ……ギィ……?」 ゴブリンは唸り声を上げながら興味深そうにヘイワースを見つめる。 おそらくまだ幼いメスのゴブリンシャーマンだろうか。 ゴブリンシャーマンとはゴブリンが妖精種の末裔である証左でもあるとされる時折生まれる魔術の才を持ったゴブリンの事である。 このダンジョンに仕掛けられていた魔法トラップを見よう見真似で動かしでもしたのだろう。全く末恐ろしい才能だ。 単独相手ならこの状態でも追い払う程度はできるだろうか、それとも仲間が居るのだとしたら下手に刺激しない方が良いかと考え始めたまさにその瞬間だった。 「ギィッ!」 注意が逸れたのを見抜いたゴブリンに荷物を奪い取られてしまった。 強さの程はともかく何より狡猾なのがゴブリンの厄介なところだ。 身動きさえ取れれば鼻歌を歌いながらでも対処できる相手だが動けずして対峙するとなると全く手間のかかる相手である。 いっそ清々しいほどの不運の連鎖、しかも今度は明確な対処方法の存在しない相手だ。 なんとかして奴の意識を荷物から引き離すか、気まぐれに興味を失ってくれる事に祈るほかない。 「ギギ……ニンゲン……ナンだこれ?」 次なる行動を考えていたヘイワースは突如として虚を突かれた。 会話の通じない異種族への対処を思案していた矢先、ゴブリンが人語を話し出したのだ。 ひとまず意思の疎通を図る事を、最低でも解呪の呪文書を奪われないよう興味をそらす事を目標に再設定し再び思考を巡らせる。 驚きに一瞬遅れてそいつが荷物から取り出した物を見ると、なんとそれはまさに解呪の呪文書ではないか。 不運とは重なるものだ、と思いかけて様子がおかしい事に気付く。 母語や文化の壁を越えてあからさまに伝わるほど、そのゴブリンの表情は小馬鹿にするようないやらしい笑みであったのだ。 (こいつ、予想以上に賢い……!) 魔道具の存在まで初見で看破したというのか、いや、おそらく罠の扱いと共に人間の……「獲物」の取る行動を把握しているという事なのだろう。 やるなら相手が勝ち誇って油断している今しかない、と決断し男は不自由な足でゴブリンに飛び掛かる。 しかしそれすらもお見通しだと言うように、ゴブリンは眉一つ動かさず指を振り魔力の枷の力を強めた。 「ぐあっ!」 ヘイワースは無様に地面に叩き付けられる。 ゴブリンはさらに魔力を操りヘイワースの全身を縛り上げると、足の先を掴んでどこかへと引きずり始める。 「ギギギ……バカなニンゲン……ドレイにしてやる」 ゴブリンの不吉な呟きにこの先待ち構える屈辱を予感しながらも、彼は決して希望を捨てる事はない。 その視線はゴブリンでも不気味に広がるダンジョンの暗闇でもなく、奪い取られた荷物に向けられていた。 荷袋の底に仕込んでいた追跡の護符に、予定通りに帰らなかった場合に来るよう依頼済みの救助要請。 ざっと考えて救助が来るまで7日ほど…それまで耐える事が今度の勝利条件だ。 ヘイワースは決して焦ることはない。 冷静に、次なる危険を回避する術だけを考える。 たとえどんな脅威が待ち受けていようと、生き残ることはできるはずだと信じて。 救助まで残り7日 連れていかれた先はダンジョンの片隅の狭い一室だった。 扉が開いた途端、ダンジョンの入り口から感じていた糞便臭を更に獣臭と混ぜ合わせ煮詰めたかのような濃厚な臭気がとめどなく溢れ出る。 漂っていた悪臭の正体はこのゴブリンの生活臭だったのだ。 ゴブリンは部屋の真ん中にヘイワースを転がしたまま、物陰へと消える。 元は宝物庫だったのか部屋には棚や箱が堆く積み上げられており、とっくの昔に中身の失われたはずのそれらには代わりに奴が集めたであろうガラクタが詰め込まれていた。 周囲の様子を見ていると、テーブルの上の蝋燭に照らされた壁の色が部屋の外のものと違う事に気が付いた。 一体何が塗られているのか本能的に忌避感を覚えるような薄汚れた色の、細かな凹凸のある層の堆積した壁に不穏なものを感じながら男はゴブリンの習性に思いを馳せる。 ゴブリンは知力が低く筋力も弱い貧弱な種族だ。 ただ例外として稀に(ゴブリンにしては)強力な個体が生まれる事があり、強靭な肉体を持つ者はゴブリンキング、魔力を持つ者はゴブリンシャーマンと呼ばれている。 ゴブリンシャーマンの使う魔法は人間のそれとは違う特異なもので、未だその全ては解明されていないという。 先ほどの魔力の枷を操る魔法もその一種だろう、捕らえてからさらに形を変える魔法罠など聞いたこともない。 思えば引きずられている時もほとんど摩擦を感じなかった。 本能で物を運ぶための技術を身に着けたというのか、それともゴブリンシャーマンに生まれたゴブリンは知力も高いのだろうか。 人間の言葉も理解しているようだし後者かもしれないな、と考えていた所にそのゴブリンが宝玉のようなものがはめ込まれた杖を持って現れた。 「ギギィ……アタシはブブ、オマエの、ゴシュジンサマのナマエだ。ちゃんとキオク、しろ」 たどたどしくもゴブリンは人語を話し、自身の名を名乗って見せた。 ヘイワースは好機だと思いコミュニケーションを図る。 「さっきは襲い掛かったりしてすまなかった、ブブ。荷物を奪われるんじゃないかと心配だったんだ。お詫びに気に入ったものがあれば何でも一つ持って行って構わないから、他の物は返してくれないか?」 「ギギッ!クチゴタエ、するな!ワナにかかったエモノは、ゼンブ、アタシのものだ!オマエも、オマエのモノも、アタシのスキにする!」 ブブはひどく苛立った様子で遮るように答えた。 そういえばゴブリンは非常に欲深く、特に強い所有欲のようなものを持っていると聞いた事がある。 ひ弱なゴブリンが広い範囲に生息できているのも、その妄執的な性質で他の野生動物を駆逐しているためだという。 彼女にとっては罠にかかった時点で自身の所有物であると同然の認識なのだろう。 ヘイワースはここは早期解決を諦め、当初の予定通り7日間やり過ごして救助を待つ作戦をとる事に決めた。 「ギギ……オマエ、ナマエをイえ。ゴシュジンサマが、ナマエを、オボえてやる」 「……ヘイワースだ」 「ヘイワース!イマからオマエの、チューセーシン?をタシカめる。ツエをよくミてろ!」 ブブは杖の先をヘイワースの体に押し付け、ブツブツと人間には聞き取れない発音で呪文を唱える。 すると持ち手側の宝玉が僅かに光を湛え、すぐに輝きを失って行く。 どうやらその反応が良くないものである事は、他でもない彼自身が一番理解するところだった。 「ギギギッ!オマエ、ゼンゼン、ワかってない!チューセー、してない!ギギ……ハンコウテキ、だ!」 確かにヘイワースには脱出の計画があり忠誠など以ての外ではあるのだが、奴隷になれと言われただけで忠誠しろというのも土台無茶な話である。 半分は自身の未熟さが招いた愚かで自明な失敗であったが、幼く傲慢な支配者は決してそれを許さない。 ブブは怒りながら自身の股間を覆っていたぼろ切れのようなふんどしを脱ぎ始めた。 茶色い布地に一層色濃く染みついた股との密着部分と、その下に隠されていたつるつるプニプニの素肌が露わになる。 突如として繰り広げられる痴態と惜しげもなく晒される人間の少女同然の幼い秘裂に動揺を隠せないヘイワースだが、一先ず何とか反抗心が無い事を伝えようとする。 「ま、待ってくれ!別に逆らおうなんて思ってるわけじゃ……むぐっ!?」 人肌の温度と不快な湿り気を纏った布が口を塞いだ。 糞尿や汗、それに垢の染み付いた汚物同然のふんどしを口枷のようにねじ込まれたのだ。 ヘイワースはそれでも最初は何とか言葉を伝えようとモゴモゴと口を動かしていたが、その度に染み出す舌を刺す強烈な味と臭気に抵抗を諦めざるを得なかった。 「ギギギ……アタシ、オマエ、シツケる!ダレのモノなのか、オシえてやる!」 ブブは今度はヘイワースに背を向け、腰を落としながらジリジリとにじり寄って来る。 小柄なゴブリンの、それも少女の小さな尻が、横たわるヘイワースからはひどく圧迫感を伴って見えた。 粘度の高い汗がぬたり、とブブの背から臀部に伝い落ちる。 そういえばブブがぼろ切れのような胸当てとふんどししか身に着けていなかったように、ゴブリンには着衣の文化があまり発達していない。 毛の少ないむき出しの表皮の半裸で野山に暮らすために、かわりに硬い皮膚とべたつく汗が発達しているのだそうだ。 体表をコーティングするため常日頃分泌され続けているという汗は皮膚を守るためだけではなく、マーキングにも使われている。 例えばこの部屋の壁のように縄張りを示すため、あるいは愛用の道具や武器に個人の所有を示すために塗りたくられるものなのだ。 そこまで思い至って、ふと今ブブが何をしようとしているのか気付く。 誰の物なのか、教える。 それはつまり、これから彼女は奴隷となる男にマーキングを行うという事を意味するのではないか。 汗はちょうど、腰から尻割れの中に吸い込まれて行くところだった。 きっとあの谷間はおぞましい悪臭の坩堝と化している事だろう。 今この口を埋めている臭い布の塊の、汚れの源なのだから。 「むぐぅっ!むーっ!むううううぅーっ!」 吐き気を催す汚濁による蹂躙が、まさに目の前まで迫っている。 ヘイワースは必死で訴える。 止めてくれ、それだけは。 しかしブブはヘイワースの様子を見て、彼の反抗心が砕かれつつある事を知り満足気に笑う。 「ギギギギギッ!ココがイチバン、ニオイがツヨいんだ……❤オマエもスグに、ダレがゴシュジンサマか、ワかるようになる……❤」 薄汚れた尻は、男の顔に向かって真っすぐ振り降ろされていた。 ブブは未発達ながら程よい肉付きのプリンとした尻を両手でこじ開け、蒸れた肛門を露出させる。 熟成された汗のコーティングがにちゃり、と谷間に糸を引き、それが人間のそれとは似て非なる獣の肢体である事を不快に示す。 獲物を前に大口を開けた蟒蛇のような緑色の尻割れに恐怖し藻掻くヘイワースだったが、刻一刻と迫りくる尻と顔の隙間は遂に一寸の身じろぎも許さない間近へとなる。 昔まだ未熟だった頃、コボルドの群れに襲われた時のような、あるいは底の見えない落とし穴に落ちた時のような、時間の感覚の狂いを感じた。 それはまさしく死の危機に瀕して見る走馬灯のようなものであり、この先に待ち受けるのが死よりも恐ろしいプライドを深く傷付ける行為だという予感でもあった。 起死回生を願って男は最後に僅かむぅ、と声を上げるが、それも途中で遮られた。 ぶっっっっちゅぅぅぅぅぅぅ~~~!!!べちょべちゃぐちゅぬちょ~っ!!! 無慈悲にも生暖かく粘つく粘液が最初に触れ、ほどなくしてガサガサの表皮に覆われた柔らかい脂肪の塊が押し付けられる。 腰を左右に揺り動かしているのか両の臀部は交互に頬を蹂躙し、その中心、肛門はぬちゃぬちゃと音を立てながら眉間から鼻筋にかけてを這い回る。 皮膚を伝う猛烈な汚染の感覚に本能的な忌避感による痒みの錯覚、あるいは未知の汚染物質による本物の拒否反応がヘイワースの顔を覆い尽くす。 鼻腔に糞を塗りたくられているかのような強烈な臭いに侵されるが、決して歯を食いしばりその苦痛に耐える事は許されない。 口枷となったふんどしから染み出す汚濁の味が新鮮な汚臭との相乗効果でその威力を増し、猛烈な吐き気と頭痛となって襲い掛かるからだ。 「ギギッ❤どうだぁ、ヘイワース❤ゴシュジンサマのニオイ、ちゃんとオボえたか❤」 「むううううぅーっ!ぐむううううううぅーっ!!!」 幼く無邪気な蹂躙は、加虐本能による快楽を以て少女を高揚させる。 哀れな奴隷に許されるのはただ無為に喉を震えさせるばかりだ。 品性下劣で臭くて汚い、下等なゴブリンの尻だけが、今の彼にとっては世界の全てだった。 ねちねち、ぐりぐり、ねちねち、ぐりぐりと、ブブは執拗に顔の上から下に、右から左にと満遍なく臭いを刷り込んで行く。 呼吸を制限され、汚辱の限りを尽くされ、ヘイワースは満身創痍だった。 そんなある時、ぬぷり、と不吉な音を立てて、顔の上で蠢く尻はその動きを止める。 少女の身を打ち震わせる快感と、何より物理的な抵抗がその原因。 それはその中心の窄まりに、男の顔の突起を捉えた音だった。 「ギャフッ❤オマエのハナ、アタシのコーモンにハイっちゃったぞ……❤」 「む……むぐぅ……」 だが意外にもそれは、ヘイワースに更なる苦痛をもたらす事は無かった。 異種族の少女の幼い臀部に蹂躙され、あまつさえその肛門に体の一部を汚されるなど耐え難い屈辱である事は間違いないのだが、粘液に包まれた彼の鼻と、興奮によってか緩んだブブの肛門の密着した状態は完全に呼吸を塞いでいたのだ。 「ヒュー……ゴフッ……ヒュー……ゴホッ……」 残されたのは口からの僅かな呼吸のみ、それも先ほどの絶叫によって唾液をたっぷり含んだ、自然に汚れが染み出してくる状態の口枷越しにだ。 ヘイワースは苦しみ噎せながらも命を繋ぐために必死で呼吸をする。 このまま少女がヘイワースの鼻を解放すれば傷付けられたのは彼のプライドだけで済んだのだろうが、狡猾で残忍な蛮族の末裔である彼女の血がそれを許すはずが無かった。 「オマエに、トッテオキのニオイをアジわわせてやるぞ……❤ゴシュジンサマのガス、たっぷりカげよ……❤」 「むうっ!?むうぅ……!」 必死の抵抗は、もはや小さなうめき声にしかならなかった。 たとえそれが耳に入っていたとしても、ブブは自身の行為を止めようとはしなかっただろう。 下品で、下劣で、自分を世界の中心とでも考えているような、醜悪な下等生物がゴブリンなのだ。 その幼い好奇心と支配欲の加速を止めるにはほんの少しの武力さえあれば十分なのだが、生憎今この場にはそれを持ち合わせている者など居ない。 苦痛と制限された呼吸に薄れる意識の中、ヘイワースは呼吸を止めて最後の抵抗を試みた。 「ギィッ❤」 ブリブリビチビチビチビチブシュゥゥゥッ!!! (うッ……!?鼻の中に……入り込んで来る……!) 腹を下した時の排泄音のような、肌が泡立ち怖気立つほどの汚らしい放屁。 鼻腔に収まりきらないガスが肛門と鼻との隙間を吹き抜け、震える粘膜が細かく皮膚に叩き付けられる音。 糞便、腐肉、腐った卵。 それらを混ぜ合わせて煮詰めたような、生命を侵すほどの危険な激臭ガスが放たれている。 抵抗虚しく、強烈なガスは激しい圧力を伴って浅い呼吸で半ばほどしか満たされていなかった肺に充満して行く。 当然その道中、ヘイワースの嗅覚をも猛烈に刺激しているはずなのだが、なぜか彼の反応は薄い。なぜなら───。 「ギャフフフッ❤」 ビリビリビリブズブブッシュゥゥッ!!! 「うぅ……!うぅ……!」 気道がガス圧に支配されて絞り出すような声はもはや出すことすら叶わないのだ。 容赦のない無邪気な責め苦は止まる所を知らずとめどなく放たれる。 一発一発で体格の良い成人男性の肺を一杯に満たすほどのそれは、まさに膨大な質量の暴力でもあった。 「グギギギギィッ❤」 ブリブリブブブズゥゥゥゥゥゥッ!!! 「うぅ……!う、うぅ……!」 ヘイワースは放屁と放屁の合間を縫うように高まった気圧を吐き出すだけの存在と化していた。 縛り上げられた全身を僅かに震わせて苦痛に耐える姿は、まるで子供の遊びで踏みつぶされて死にかけの芋虫のように哀れでちっぽけだった。 あまりの刺激にビリビリと鼻腔が痺れ、頭は金床に打ち付けられたかのように痛む。 「グギャギャギャギャギャッ❤」 ブボッズスゥゥゥ~~~ブブブブブブゥッ!!! 「むうっ……!」 ぐぎゅぅ~~~っ…… 一体どのようにしてその小さな体に大量のガスを蓄えているというのか、幾度もの大放屁を経て彼女の腸は次弾の装填を高らかに告げるおぞましい音を奏でて見せるのだ。 だが限界を迎えつつあるヘイワースには、更なる地獄を伝えるその音すらもはや聞こえていなかった事だろう。 彼は肺に溜まったガスを、できるだけ鼻腔を刺激しないよう排出することで精一杯だったのだ。 「ギギ……❤キョウは、これで、サイゴにしてやる……❤」 ブブは肛門に感じる熱いガスに「トドメ」に相応しい出来栄えを予想し、フィナーレを飾るべく宣言する。 か弱い劣等種にあるまじき堂々たる女王の宣告は、男にとって救いの一声のように脳裏にこだました事だろう。 その直後に襲う、最大の苦痛の存在すらも忘れて。 「クタバれ❤ザコニンゲン❤」 ビビビィィッ!ブッブシュゥゥブビィィッ!!! 「むぅっ……!!!っ……!!!」 脳の回路が衝撃で焼き切れるような感覚。 汚染の波が肺を満たし、暴力的な圧力によって強制的に浸透し全身の神経を狂わせる。 ヘイワースの体は不規則にバタバタと激しく痙攣し、ガスの噴出が収まるにつれてその動きを止めた。 意識の糸が苦痛によって断ち切られ急速に現実感を手放していく。 だが落ちていくのは安らかな眠りなどではない、鼻の奥に染み付いた悪臭に塗れた悪夢であることだろう。 「ギヒヒヒヒッ!」 苦しみ歪んだその顔を見てブブは満足そうに笑うと、口に突っ込んでいたふんどしを取り出し、洗いもせずにまた着用する。 ヘイワースが意識を保っていれば糾弾したであろう蛮行をさも当然のようにやってのけ、疲れたのかくぁ、と小さくあくびをして部屋の隅に設えられた寝床に倒れこんだ。 どうやらおぞましき異種族の少女の下での生活は、かつてない困難を極めそうだった。 救助まで残り六日 「ギギギッ!オきろ!オきろ!」 ヘイワースが目を覚ましたのは、おそらく翌日の事だった。 耳障りな甲高い声と共にドスドスと脇腹に硬く小さな質量が乱暴に押し付けられる。 未だ風化しないこべりついた悪臭とそれに由来する頭痛に苛まれながら、ヘイワースはゆっくりと目を開ける。 ブブは横たわるヘイワースの腹の横の辺りに立っており、多分先ほど押し付けられたのは彼女の足のつま先だろうと思われた。 全身を覆っていた魔力の枷は解かれていたが、代わりに手足は本物の縄で縛り上げられているようだった。 疲労は無いが、硬い床に転がされていたせいか背筋に違和感がある。 ずいぶん長いこと眠っていたようだ、とヘイワースは分析する。 「ギギャッ!オマエ、ヨワすぎ。ブブのオナラで、イチニチも、ネてた。」 救助まではあと六日だ、とヘイワースは脳内でタイムリミットのカウントを進める。 暗いダンジョンの中では日付けの感覚が狂う事が懸念点の一つだったが、どうやらそれはブブが時間の概念を持っている事に助けられる事になりそうだった。 ブブは手に持っていた杖の先端をヘイワースの体に押し付けまた呪文の詠唱を始める。 ヘイワースはしまった、と思った。 そういえばあの地獄の責めですっかり忘れていたが、彼女の手には忠誠心を測る魔道具があったのだ。 そしてまさに今、ヘイワースの脳裏には自身を救う希望がよぎっていた。 どうか昨日の責めで傷ついた自尊心が、それを上回ってくれ、と祈りながら杖の宝玉を見るが、その反応は前回と変わらない様子だった。 「ギギッ……オマエ、まだチューセー、してナいな?またシツケが、ヒツヨウみたいだな」 ブブの瞳に嗜虐的な光が灯る。 ブブがふんどしの腰紐に手をかけようとしたところで、ヘイワースは慌てて彼女を制止する。 「待ってくれ。確かに忠誠はできてないが、逆らうつもりがあるわけじゃないんだ」 嘘は言っていない。 ヘイワースは杖が見抜いている救助隊という救いの存在を必死で押し隠すように、ブブの目を欺くために言葉を紡ぐ。 「君の言う事なら何でも従う。だから頼むから、躾だけはもう止めてくれないか」 従属の宣言と、心の底からの訴え。 人間がゴブリン相手にするには実に滑稽な、必死の交渉であった。 「ギギ……でも、シショーはニンゲンのドレイはちゃんとツエがハンノウするまでシツけろって……ギギギ……」 幼いブブの心は揺れる。 ヘイワースの見せた従属という態度は、欲深く短絡的なゴブリンである彼女にとっては抗い難く魅力的だったのだ。 ブブの師匠、おそらく熟練のシャーマンであろうゴブリンは心の底からの隷属をさせるよう言いつけているようだったが、彼女がまだ未熟で助かった、とヘイワースは思った。 「何でも命令してみてくれ、言う通りにしよう。信頼できないなら拘束はしたままで構わない」 もう一押しだ、とヘイワースは更に続ける。 「ギギ……それじゃあ……」 ブブは悩み抜いた末、答えを出したようだった。 ヘイワースの頭の方に歩み寄り、顔の上に右足を差し出して言う。 「アタシのアシ、オマエのシタでソウジしてみろ」 賢い蛮族の少女が出した答えは、屈辱的な行動を以てして従属を確かめるという行為だった。 もちろんヘイワースに取ってもそれは予想の範囲内の事だ。 まさかいきなり縄を解いて奴隷ごっこの相手に身を窶すだけで済まされるようになるなどとは思っていない。 あの地獄のような顔面騎乗ガス責めに比べれば他の事など気楽なものだ。 ただ一つ誤算があったとしたら───。 むっわぁぁぁっ…… (うっ……!?酷い臭いだ……!) 彼女の足が、あまりにも汚すぎた事だろう。 ブーツなどは履いていないため尻割れのような蒸れた悪臭といった事は無いのだが、とにかく汚いのだ。 厚く角質化した足の皮の指紋には泥のようなものが深く沈着しており、何より臭うのはその爪先だ。 指の谷間一つ一つに汚れやゴブリンのべたつく汗が浅黒い塊となって層を作っており、切り揃えられることのない伸びっぱなしの爪の裏には真っ黒な爪垢が強烈な発酵臭を放って堆積しているのだ。 ヘイワースが顔をしかめて躊躇っているのを見て、ブブは顔を険しくする。 まずい、と思いヘイワースは爪先を嫌悪している事を悟られないよう、敢えて無作為に見えるよう口の前にあった土踏まずの辺りを、気持ち踵寄りに舌を伸ばして舐め始めた。 「ギャフフフッ❤クスグったいぞ❤これがアシナめドレイさせるキブンか、ワルくナいな❤」 小さな女王はご満悦な様子で必死な様子のヘイワースを眺める。 時折くすぐったさに身を震わせて足裏が顔に押し付けられる事もあったが、あのおぞましい爪先に比べればこの程度何てことないはずだ、とヘイワースは自分に言い聞かせて堪えた。 ぺちゃり、ぺちゃり、ちゅぱ、ちゅぱと、静かな二人だけの空間に小さな舐め音が響く。 舌が疲れ、もう十分だろうとヘイワースは思ったが、それを決めるのは彼ではない。 遥か頭上に見えるブブの瞳が冷酷に、品定めするように自分の顔を見つめ続けているのを見て、ヘイワースはまだ決して休む訳には行かないのだと悟った。 「おい、オマエ。ずっとオナじトコロだけナめてるな。ちゃんとゼンブ、キレイにしろ」 「はい……ブブ、様……」 ヘイワースは迷った。 彼女はどうやら忠誠を確かめるためだけに足を舐めろというのではなく、その全体を本当に舐めて綺麗にさせるつもりなのだ。 全く碌に体も洗わないような不衛生なゴブリンの癖して、と心の中で沸々と不平が湧き上がってくるが、今はそれどころではない。 諦めてさっさと汚い爪先を舐めてしまうか、それとも誤魔化しきれると信じて後回しにするか。 迷った挙句彼は首を傾け、ブブの硬い踵を舐め始めた。 それは万が一を考えての希望を捨てないヘイワースらしい選択でもあり、自らの意思であの汚物を舐めるなどという選択はしたくないという人間としての最後の尊厳でもあった。 「もっとツヨくナめろ、ヘイワース。ゼンゼン、キモちヨくナいぞ」 厚い踵の皮越しには感覚が鈍るためか、ブブは舐め方の催促をする。 ヘイワースは言われるがままに、さらに強く、全力で彼女の足を舐める。 ガサガサとした表面の感触の奥に、舌で押す圧力に反発するぷにぷにと柔らかい幼い肉体の感触が応えた。 今自分を支配しているのが未成熟な少女であるという事を嫌が応でも認識させるその感触に、ヘイワースの心はひどく傷ついた。 「ギギャッ❤そのチョーシだ❤もっとアタシのコト、キモチヨくさせろ❤」 そんな男の苦しみを余所に、ブブは感じていた。 雌の快楽などまだ知らない彼女にとってそれは本能的な支配の悦び、あるいは今まさに芽生えようとしている性の目覚めだったかもしれない。 倒錯的な彼女の様子に、ヘイワースは眩暈がする。 自分は今、なんと屈辱的な事をしているのか。 ブブが冷酷な支配者として振る舞う事を身に着けていれば、まだマシだっただろう。 目の前の少女が生々しく反応を見せるたび、まさにそれが残酷な現実感を伴って彼の心に突き刺さるのだ。 男は目を瞑り、この地獄が一刻でも早く終わるように祈りながら必死に舌を動かした。 「ギギギ……❤もう、イいぞ……❤オマエのチューセーシン、よーくタシカめた……❤」 解放を告げる声にヘイワースは安堵し目を開ける。 だがその言葉とは裏腹に、ブブはヘイワースの視界を遮るように足を押しつけ、ぐいと顔を突き出したのだ。 悦楽に歪んだ三日月の目が数センチの距離で顔に近付けられる。 「なんてイうとオモったか、バーカ❤オマエ、アタシのツマサキ、ナめたくナいんだろ❤」 彼女には、全てお見通しだったのだ。 まずい、と思った時にはもう遅く、疲労で半開きだった口をこじ開けて汚れた爪先がねじ込まれていた。 「むぐぅーーーっ!!!」 昨日の尻責めに勝るとも劣らない、強烈な不快感がヘイワースを襲う。 粘着質な苦みと酸味が口内を駆け巡り、ぐりぐりと押し付けられるたび爪垢は剥がれ汚染を広げて行く。 硬く長い爪の感触が舌の根本まで届き、喉奥にまでおぞましい穢れが押し込まれている事を知らせる。 一頻り蹂躙した後満足したように小さな足を引き抜いたブブは、顔の前に足を浮かせたまま言った。 「オマエが、アシのツメ、ゼンブをナめてソウジデキたら、ユルしてやってもイいぞ。ギギギッ!」 悪夢のような宣告。 あれほど嫌悪していた臭く汚いブブの爪を、全て舐め尽くせと言うのだ。 だが、いくらそれが忌まわしい行為であろうとヘイワースにそれをやらないという選択肢はない。 ブブにはとっておきの、尻責めを上回る屁責めという必殺技があるからだ。 それを避けるためなら、今どれだけの屈辱と苦痛を味わおうとも構わないと自分を奮起させ、決死の覚悟で男は少女の爪先にしゃぶり付いた。 「ギャヒヒヒヒッ❤イいコだぞ、ヘイワース❤しっかり、おソウジしろよ❤」 べたつく汗に覆われた足指の周りを舐め取り、爪の隙間にもしっかり舌を這わせる。 何度もえずいて吐き戻しそうになるが、ブブの鋭い視線がそれを許さない。 途中で辞めたら、彼女の躾が待っている。 ようやく厚い爪垢の層を削り切り、次の指へと移る。 か細く小さな子供の指が、今のヘイワースにとってはとてつもなく膨大な質量に感じられた。 「ガンバれ、ヘイワース❤ハいたらオシオキだぞ❤」 心にもない声援を受けながら、男は一本、また一本と満身創痍で指を舐め上げて行く。 そして残り二本、人差し指の掃除にかかった、その時だった。 「うっ……!?おえぇぇぇぇぇっ!!!」 突如としてヘイワースは激しく嘔吐した。 昨日のあの放屁に比べればまだ耐えきれないほどの臭いではないはず、と思ったヘイワースは、ふと強烈な腹の痛みに気付く。 胃袋が汚染の限界を迎えたのだ。 昨日から何も口にしていないために胃液ばかりの吐き戻しを、喉を詰まらせまいと顔を横に向けて零す。 肩で息をしながら恐る恐るブブの様子を見ると、彼女は苦しむ男の様子がおかしくて仕方ないかのようにゲラゲラと笑い転げていた。 「ギャギギギギギギギッ!ウソつき!ウソつき!ウソつきヘイワースには、ゴシュジンサマがシツケしてあげなきゃ!」 ヘイワースは気が気ではなかった。 これから先の五日間、毎日気絶するほどの、あるいはそれ以上の苦痛が待ち受けているかもしれないのだ。 助けが来る前に精神崩壊してしまうかもしれない、と思わせるほどに、ブブは不潔で臭く汚い猛烈な汚物少女だった。 「はぁ…はぁ…!頼む、もう一度だけチャンスをくれ!」 残り二本、これさえなんとか耐え抜けば五日間の安寧を手にすることが出来ると諦めきれないヘイワースは必死に頼み込む。 「チャンス?ギギギ……じゃあイいぞ。でも……」 だが少女が提示したのは、絶望的な条件だった。 「ヒダリアシのユビもゼーンブ、キレイにデキたら、だぞ❤」 そう、まだ彼が舐めているのは片足だけだったのだ。 ヘイワースは唖然とする。 折り返しは過ぎたと思っていた苦痛は、まだ半分にも満たなかったのだ。 ブブはその絶望を知ってか知らずか、当然のように男の眼前にもう片方の足を差し出した。 限界を迎えた胃でこれ以上の汚染を受け止めるのは無理だと思いつつも、有無を言わせぬ少女の態度にヘイワースはそれを言い出せなかった。 ご主人様に与えられた慈悲をふいにする愚かな奴隷が一体どのような仕打ちを受けるか、考えただけでも恐ろしい。 「ハヤくしろ、ヘイワース❤ゴシュジンサマはマちクタビれたぞ❤」 結局ヘイワースは何度も何度も嘔吐し、苦痛に吠えながら足舐めを続けた。 ・・案1 下痢おなら責め 緩い肛門から染み出す腸液に汚れるパンツに嫌悪感を覚える ・案2 寝具責め 疲弊した様子を見かねてベッドに寝かされるが強烈な悪臭の沁みついた毛布に苦しめられる ・・中間 悪食責め 汚物のようなゴブリンシチューとそこから生まれる下痢ガスの恐怖 ・案4 唾液ゲップ責め ・・最終日+屁 完全敗北、物品化