「ねえねえ、実はさ‥‥恋愛相談の話なんだけど、聞いてくれる?」 「恋愛相談? 恋バナ? それって‥‥」 「あ!いや、ううん。違う違う、私じゃなくってさ」 シーエンジェルが唐突に話して来た言葉に、驚くブルースラッグ。 しかし、シーエンジェルは何故か慌てて首を横に振り、否定する。 「実は、さ。私達海晶乙女に恋人出来た人が居るー、って話、聞いちゃったんだ」 「何々、詳しく聞かせてっ!」 シーエンジェルの話に、ブルースラッグが食い付く。 そんなブルースラッグに、シーエンジェルは頬を赤らめながら話し始めた。 「いやー、ほら、私もスリーピーメイデンさんから聞いただけなんだよ?あの人も寝ぼけてて誰が言ってたのかは分からないけど、デートの事を話してたんだって!」 「デートかぁ‥‥良いなぁ。私も好きな人とデートしたいなぁ」 「ふふ、ブルースラッグは好きな人いるの?」 「んー、別に今は居ないというか‥‥というか、私達って出会い少ないじゃん。デッキ女の子ばっかだしさ」 「あら、どうしたの?」 「あっ、アルゴノートさん!」 ブルースラッグとシーエンジェルが話していると、そこにアクア・アルゴノートがやって来る。 そんな彼女に、ブルースラッグは相談を持ちかけた。 「ねえねえ、アルゴノートさんは好きな人いる?」 「え? 私? いや‥‥居ないけど」 「えー? 本当に?」 「本当よ、っていうか唐突にどうしたのよ」 「いや、実は‥‥かくかくしかじか」 シーエンジェルがアルゴノートに事情を説明する。 説明を聞く度に、アルゴノートの顔はどんどん赤くなっていく。 「な、なるほどね‥‥それは確かに‥‥気になるかも」 「でしょー!? 一体誰なんだろうね?私達の知らない間にデートなんてしてさ!」 「本当にそうよね‥‥出会いなんて全然無いのに‥‥」 ブルースラッグとシーエンジェルが話していると、アルゴノートが顎に手を当てながら呟く。 そんなアルゴノートに、ブルースラッグはポンっと手を叩いて言った。 「あ!もしかして、もしかしてだよ?女の子同士‥‥なんて可能性も‥‥」 「‥‥は、はぁ!? な、ななな何言ってるのよ!」 ブルースラッグの言葉に、アルゴノートが顔を真っ赤にする。 「いやほら、私達って基本テーマで固まるじゃん?だから男の人との出会い少ないし、それならそういうのもあるのかなー、って」 「だ、だとしてもそんな‥‥」 ブルースラッグの言葉に、アルゴノートは頭の中で想像してしまう。 女の子同士で手を繋いでいたり、恋人繋ぎで歩いていたりする光景を。 真っ赤な顔でおどおどとするアルゴノートを見て、シーエンジェルとブルースラッグは少し微笑ましく感じた。 頼れるお姉さんだけどこういう初心な所があるから、話しやすいんだよなー、と。 「あら、その理論はあってるかもだけど、一人だけ例外が居るわよ?」 そう言って話に入って来たのは、コーラルトライアングル。 「あ、トライアングルさん! どういう事ですか?」 シーエンジェルが聞くと、コーラルトライアングルはニコニコと笑みを浮かべながらアルゴノートへと近付いていく。 「私達には一人だけ、出会いが沢山ある子がいるでしょ?」 トライアングルの言葉に、全員が一人の顔を思い浮かべる。 「「「コーラルアネモネ!」」」 ブルースラッグとシーエンジェル、アルゴノートがそう言うと、コーラルトライアングルは頷きながら、会話の輪に入る。 「そうでしょ?アネモネちゃんは色んな水属性デッキに出張してるでしょ?」 「確かに‥‥」 「それに、アネモネちゃんって結構人気あるのよ?」 コーラルトライアングルの言葉に、シーエンジェルとブルースラッグは納得する。 確かに、水属性デッキのEXに入っている様子を見た事は沢山ある。 「え、それじゃあそれじゃあ、”どのテーマ”なのかな!?」 シーエンジェルが目を輝かせながら聞く。 全員で考え始める。 ゴーティス?氷結界?海皇?リチュア?氷水?影霊衣?或いは海の皆さん? 「まあ、無難な所だと海皇とか氷結界の人達だよね‥‥?」 「うん、割とイケメンが居るし‥‥」 色々と考えが出て来るが、決まり手が浮かばない。 「氷魔師さんを蘇生してる所、凄い見てる気がするし、やっぱり氷結界なのかな?」 「んー、でも‥‥そうなのかなぁ?」 「どうなのかしら‥‥」 「う~ん?」 アネモネの相手は誰なのか、一同が考え込む。 「でもさ、ネプトアビスさんを吊り上げた後、一緒にリンク3になってる所も見た事あるよ!」 「あー、確かに!」 「それが本当なら、ネプトアビスさん?」 考えても考えても、答えは出ない。 ならいっそ、本人に聞いてみようという結論に至る。 「じゃあ、聞きに行ってみる?」 ブルースラッグの一言に、全員が頷く。 「あれ、皆揃ってどうしたの?」 アネモネがデッキを組みながら首を傾げていると、皆がやって来る。 「ねえねえアネモネちゃん!一つ聞きたい事があるんだけど!」 「ん?」 シーエンジェルの言葉に、アネモネが顔を上げる。 「あのさー‥‥アネモネちゃんは‥‥その、恋人と付き合ってるの?」 直球ストレートな質問に、ブルースラッグとアルゴノートはぐっと気を引き締め、トライアングルも興味津々と言った所だった。 「恋人?ええっと‥‥付き合ってるよ?」 アネモネは少し頬を赤くしながら答える。 「え!?誰々!?どんな人なの!」 「素敵な人だし、私よりも色んな所を知ってるのが魅力的なのに、相性バッチシなのが素敵って言うか~?」「へぇ、そうなんだぁ…….」 ブルースラッグがそう言うと、アネモネは更に顔を赤くしながら続ける。 「デートしてる時とかもエスコートしてくれるし~、デートの邪魔は許さないんだよ~」 「そ、それって誰なの?」 アルゴノートが聞く。 するとアネモネはふにゃっとした笑みを浮かべて言った。 「皆知ってる相手だよ?あ、来た来た!」 「え?」 アネモネが指差した方向を見ると、そこには巨大な影が。 「私の彼ピ!ジーランティスっち!」 「皆々様、平素は格別のご厚情を賜り、忝く存じ奉ります。これよりも一層励み、末永くお付き合い賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げまする」 その時、アネモネの彼氏が巨大な龍である事の衝撃と、ジーランティスがやたらと丁重な口調で話しだした事の衝撃の、どちらが大きい物だったのか。 それは、誰にも分からない。