クトゥルフ神話T&T (ver1.10 2023/1/10修正版) ◆目次 0.イントロダクション 1.探索者(PC)の作成 2.装備 3.行為判定(セービング・ロール) 4.恐怖判定(恐怖セービング・ロール) 5.エネミー 6.戦闘 7.チェイス 8.経験値と成長 9.休息と治療 10.魔術 11.魔導書 12.忌まわしき契約(神話生物の使役) 13.アーティファクト 14.ゲームをプレイする上でのTips 15.サンプルシナリオ『奇跡の村』 ◆0.イントロダクション 人類が繫栄する遥か昔のこと、地球は旧き大いなるものどもに支配されていた。 彼らは突然姿を消した。しかし、滅びたのではない。人知れずどこかで眠り続けている。 星辰正しき時、彼らは悠久のまどろみから覚め、再び万物の頂上に君臨する…… プレイヤーは探索者となり、暗黒の淵に引き込まれるように数々の怪事件に巻き込まれる。 そして知ることになるだろう。人が知るべきではない、恐るべき真実を…… ◆1.探索者(PC)の作成 (1)主能力値の決定 ダイスを振り探索者の主能力値を決定する。 主能力値は「体力」「耐久」「器用」「速度」「知性」「魔力」「幸運」「魅力」の8つだ。 3Dを10回振り、うち8つの出目を任意の主能力値に割り振る。 何らかの理由で能力値が0を下回ると探索者は気絶する。 疲労や魔術の行使により下がった主能力値はその原因が取り除かれているなら10分に1点回復する。 負傷により低下した主能力値(主に耐久)は1日に1点のペースで回復する。 (※)選択ルール:【経験値で成長させるタイプの主能力値決定】 キャラクターの作成に平等性を持たせたい時は全能力値を「10」とし経験値を使い成長させる。 経験値と能力値の成長については7.経験値と成長の項目にて説明する。 標準的な探索者であれば初期値を決めるために使える経験値は2500点である。 もちろん、最初から強力な探索者を作成したい場合はそれ以上の経験値を与えてもよい。 この時に限り、探索者は能力値を逆に成長させて経験値を得ることもできる。 即ち、10の能力値を9に減らせば180点、9の能力値を8に減らせば160点の経験値を獲得できる。 この選択ルールを使用した時の能力値は最大で15、最低で8である。 ただ何事にも例外はある。2500点を超える経験値を与える場合は最大値の上限は取り除かれる。 (2)副能力値の決定 探索者の主能力値を決定したら主能力値から副能力値を算出する。 副能力値は「個人修正」「精神安定度」「隠密度」「資産度」の4つだ。 計算式は次のとおりになる。生じた端数はすべて切り上げる。 主能力値の負傷や疲労による一時的な減少や魔術等による一時的な増加は副能力値に影響しない。 なお、精神安定度が0を下回った場合、探索者は狂気に陥ってしまいロストとなる。 精神安定度はゲーム中に減少する可能性があるが基本的にはシナリオ終了時まで回復しない。 ただし能力値(「耐久」及び「魔力」)の上昇に伴い最大値の増加と同時に現在値も上昇する。 「個人修正」=「体力」「器用」「速度」「幸運」の4つの能力値につき12を超える毎に+1 (例:体力13,器用10,速度14,幸運8であれば+1+0+2+0=+3である) 「精神安定度」= (「耐久」+「魔力」)÷2(初期値であり同時に最大値となる) 「隠密度」= (「器用」+「幸運」)÷2 「資産度」= (「知性」+「魅力」)÷2 (3)探索者レベル(TL)の決定 探索者レベルは探索者の最も高い主能力値がどの水準に達しているかで決まる。 負傷や疲労による一時的な減少や魔術等による一時的な増加は探索者レベルに影響しない。           レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 レベル6 以降 最も高い主能力値  01-15  16-20  21-25  26-30  31-35 36-40  +5 (4)職業とタレントの決定 探索者に相応しい職業とタレント(特技)を決定する。 職業は探索者のイメージに沿うように自由に定めてよい(例:探偵、教授、ディレッタント)。 タレントは職業で必要となる技能・知識から自由に定め2つ取得する(例:目星、図書館)。 具体的にイメージを膨らませてもらえるよう、職業とタレントについてサンプルを示す。 これはあくまで一例である。刑事が聞き耳を取得しても必要性・妥当性があるので認めてよいだろう。  職業の例     タレントの例 ・探偵       格闘、鍵開け、聞き耳、交渉、写真、追跡、変装、目星 ・教授       専門分野(ex医学、化学、心理学、生物学、歴史、法律)、ひらめき、文献調査 ・ディレッタント  オカルト、音楽、芸術、雑学、乗馬、ダンス、フェンシング、魅惑 ・刑事       運転、威圧、組みつき、射撃、説得、地域知識、犯罪知識、法律 ・古物研究者    鑑定、芸術、古文書、古物商、制作、伝承、文化人類学、歴史 ・ジャーナリスト  言いくるめ、噂話、記憶術、写真、心理学、地域知識、犯罪知識、文献調査 ・探検家      応急処置、航海術、サバイバル、水泳、登攀、跳躍、地理、罠 ・医師       医学、応急処置、解剖、手術、精神分析、生物学、毒、薬物 ・アーティスト   演劇、音楽、絵画、軽業、彫刻、投擲、変装、魅惑 (5)背景の決定 探索者がクトゥルフ神話の世界に足を踏み入れるきっかけとなる背景を次の中から1つ選ぶ。 1 悪夢の誘い 探索者は決まって悪夢を見る。それは次第に現実味を帯びてゆき、いつしか現実となって現れる。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【真実の眼】/探索者よりも[魔力](またはMR)が低い霊や魔術で不可視になった存在を目視できる。 ・【思念対話】/対象1体の意図や感情を知ることができる。この能力は1日に3回まで使用できる。 ・【予知夢】 /シナリオ中に起きる出来事について夢で暗示を受ける。 2 真実の探求 探索者は秘密のヴェールに覆われた真実を知ろうとしている。それが破滅への道とも知らずに…… この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【人脈】  /何かを調べようとする時、とっかかりとなるコネクションを持っている。 ・【万物に通ず】/取得可能なタレントの上限数が[探索者レベル×3]になる。 ・【魔術の才能】/魔術の発動ロールに[探索者レベル]のボーナスを得る。 3 呪われた血筋 探索者は忌まわしき者の血を引いている。体内を流れる血は同胞が待つ還るべき場所へと誘う。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【再生】  /怪我により減少した耐久が1時間に1点のペースで回復する。 ・【血の絆】 /自ら敵対行為を働かない限り祖先と同じ種類の怪物から好意的な反応を得られる。 ・【破壊衝動】/接近戦闘に[探索者レベル]Dのヒットボーナスを得る。 4 破滅に抗うもの 探索者はこの世ならざる存在に命を脅かされている。生き延びるために戦わなくてはならない。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【戦闘訓練】/[個人修正]と[防御点]が[探索者レベル×2]分増加する。 ・【鋼の心臓】/失敗した恐怖SRを振り直せる。この能力は1日に1回だけ使用できる。 ・【闇商人】 /闇マーケットを通じてトンプソンなどの非合法な品を購入できる。 5 風変わりな遺産 探索者は身におぼえのない相続を受けた。受け継いだのは暗黒の領域に属する物品であった。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【遺産継承】/アーティファクト1つまたは魔術書1冊を所持している。 ・【古の記憶】/【遺産継承】で取得した品にまつわる過去の出来事が記憶の中に現れる。 ・【追加資産】/[資産度]に[探索者レベル×5]のボーナスを得る。 6 不運と踊る 探索者は不運にも事件に巻き込まれる。その日から身の回りで不気味な出来事が起きる。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【隠れ身】 /[隠密度]に[探索者レベル×2]のボーナスを得る。 ・【危機一髪】/目の前の危険から逃れるために行うSRに[探索者レベル×2]のボーナスを得る。 ・【目撃者】 /身近な場所で事件が起きた時、偶然、その現場に居合わせることができる。 7 魔の寵愛 探索者には怪異を惹きつける何かがある。望まずとも彼等は押しつけがましく力を貸してくる。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【神々の恩寵】 /魔術を行使する際、消費魔力度が[探索者レベル×2]少なくなる。 ・【幽世の感覚】 /半径10m以内の神話生物または魔術の存在を感知することができる。 ・【魔を統べる者】/[探索者レベル]体までの神話生物と契約を結び、使役することができる。 8 善き夢見人 探索者は夢の世界の住人として相応しい人物だ。いつかの日か夢の世界へ旅立つことになるだろう。 この背景を選択した探索者は次の特典を得る。 ・【幻想知識】  /ドリームランドの地理や所縁のある怪物についてある程度の知識を持っている。 ・【創造する想像】/ドリームランド用の魔術を現実の世界でも行使することができる。 ・【夢見る人】  /夢の中で自由にドリームランドへ行くことができる。生身の肉体はそのままだ。 (6)言語の選択 作成時に知性が12以上の探索者は母国語の他に外国語を修得している。 知性が12以上であれば1つ、知性が14以上であれば2つ、知性が16以上であれば3つ修得できる。 どの外国語を修得しているのかはプレイヤーが自由に決めてよい。 (7)パーソナルデータの決定 探索者の名前、性別、年齢、出身地、家族構成、交友関係などを自由に決定してリアリティを与える。 思いつかない時は生まれた時から探索者になるまでの出来事についていくつか考えてみるといいだろう。 ~キャラクター・シート~ 名前: 背景:          出身:         職業:         年齢:   性別:   身長:   体重: [主能力値] 探索者レベル: 体力:   /     知性:   /   耐久:  /   魔力:   / 器用: / 幸運: / 速度:   / 魅力: / [副能力値] 個人修正: 精神安定度:   /    隠密度: / 資産度: / [言語] ・母国語 [タレント] ・ [所持品] ・ [魔術] ・ [パートナー(忌まわしき契約を結んだ神話生物)] ・ [設定など] ◆2.装備 (1)装備品の扱い 探索者の財産力は「資産度」で表される。「価格」の合計が「資産度」を越えなければ装備品を購入できる。 こうして購入した装備品は探索者が常備している物となり、シナリオの途中で紛失したり破壊されたりなどの 出来事が起こった場合でも、次のシナリオが始まるまでの間に買い直すなどして調達しているものとする。 また、シナリオとシナリオの間に装備品を見直してもよい。 もし探索の途中で必要な品が生じた場合は「資産度」でSRを行い一時的にアイテムを調達できる。 SRの難易度レベルは[必要なアイテムの価格÷5](もちろん端数切り上げ)である。 こうして手に入れたアイテムはシナリオ終了時に失われる。 (2)武器 ヒットは武器の殺傷力や制圧力を総合的に表したもので、戦闘時にはこれと同じヒットを発生させる。 武器を持たない素手のヒットは1D+0だ(ただし魔術や特別な能力によって変わることもある)。 武器を扱うために探索者には一定の体力と器用がなくてはならない。それが要体力と要器用だ。 要器用が1/10のように記載されてる武器は2通りの使い方がある。右は投げて使う時の数字だ。 射程は文字どおり武器の射程を表し「0」(接近)~「4」(超遠距離)までの5段階が設定されている。 目立つ大きな武器は威力がある代わりに「隠密度」にペナルティを受ける。 音量は使用時に発生する音の大きさで「1」(近距離)~「4+」(超遠以上)までの5段階が設定されている。    名称      価格  ヒット  要体力  要器用  射程  隠密  音量  合法 ・リボルバー      2 4D+0    8 10 1 0 3 〇 ・大口径リボルバー   5 6D+0    12 12 1 -1 4 〇 ・ハンドガン      3 4D+2    8 10 1 0 3 〇 ・大型ハンドガン 6 6D+2    12 12 1 -1 4 〇 ・ショットガン 4 7D+0 9 10 2 -3 4   〇 ・軍用ショットガン 8 9D+0    12 13 2 -4 4+   × ・狩猟用ライフル    3 6D+2    10 10 4 -4 3 〇 ・軍用ライフル 7 9D+2 12 13 4 -5 4+ ×   ・トンプソン      20 12D+2    13 13 1 -2 4+ × ・スナイパーライフル  10 10D+0 10 15 4 -5 2 × ・ボウガン       2 3D+1 9 9 3 -2 2 〇 ・クロスボウ      7 4D+1 13 13 4 -2 2 〇 ・ブラスナックル    1 2D+1 3 6 0 0 1 〇 ・ダガー        1 2D+0 1 1/12 0/1 0 1 〇 ・グルカナイフ     3 2D+3    5 7/20 0/1 -1 1 〇 ・仕込み杖       5 3D+0 8 7 0 -1 1 〇 ・フォイル       6 4D+0 12 12 0 -1 1 〇 ・ブロードソード    6 4D+1 13 11 0 -1 1 〇 ・軍用サーベル     7 5D+0 16 16 0 -1 1 × ・野太刀        10 7D+0 21 18 0 -2 1 × ・棍棒         1 3D+0 8 5 0 -2 1 〇 ・戦闘用ハンマー    5 6D+0 18 10 0 -3 1 〇 ・アックス       4 5D+1 13 9/15 0/1 -3 1 〇 ・処刑用アックス    9 10D+1 27 10 0 -5 1 × (3)防具 防御点はその防具が探索者がダメージを減らしてくれる量である。射撃、接近戦にそれぞれ効果がある。 防御点が5/10のように記載されている防具は対銃器とそれ以外で効果が異なる。右が対銃器の防御点だ。 防具を扱うために探索者には一定の体力が要求される。これが要体力である。 動きやすさを阻害する防具は「器用」及び「隠密度」にペナルティを受ける。 金属は金属製かそうでないかだ。金属は古来より魔術の行使を妨げると伝えられている。    名称          価格  防御点  要体力  器用減  隠密  金属  合法 ・ローブ            1 1 1 0 0 ×   〇 ・革製のコート         2 3 2 0 0 ×   〇 ・メイルシャツ         4 5 4 -1 -2 〇   〇 ・キュイラス          6 6 2 0 -1 〇   〇 ・胸甲             7 7 3 0 -1 〇   〇 ・木綿製のボディアーマー    8 6/12 5 -1 -2 ×   〇 ・絹製のボディアーマー     16 7/14 3 0 -1 ×   〇 ・金属製のボディアーマー    12 8/16 7 -2 -3 〇   × ・スケイルメイル        14 10 11 -3 -5 〇   〇 ・ハーフプレート        20 13 11 -3 -5 〇   〇 ・プレートアーマー 30 16 10 -3 -7 〇   〇 ・ブルームスター防護服     35 15/30 16 -5 -9 〇   × ・マクシミリアン甲冑      45 20 13 -5 -10 〇   〇 (4)一般的な所持品 武器や防具の他にも探索に有用な品はある。照明器具、工具箱、キャンプ用品や辞書などだ。 このリストは一例であり、他に必要な品があればGMは自由に追加してよい。    名称          価格  説明 ・応急処置キット        2   戦闘終了時などケガをした直後に使用。耐久を1D回復。使い捨て ・二次治療キット        3 応急処置キットと同時に使用。耐久をさらに2D回復。使い捨て ・中和剤            1 バッドステータス[猛毒]を解除する。使い捨て ・霊水             3 憑依している霊を体内から追い出す。使い捨て ・向精神薬           5   シナリオ中1度だけ精神安定度を1D回復。使い捨て。シナリオ終了時に精神安定度-1 ・工具箱            1 ハンマー、のこぎり、ペンチなどの工具一式。 ・たいまつ(×3)         1 照明器具。10m先までをぼんやりとした明かりで照らす。使い捨て ・ランタン           1 照明器具。10m先までをぼんやりとした明かりで照らす。 ・懐中電灯           2 照明器具。20m先までを明かりで照らす。 ・虫眼鏡            1 手元にあるものを詳しく観察するために便利。 ・双眼鏡            3 遠くにあるものを詳しく観察するために便利。 ・ずた袋(×3)          1   雑多なものを放り込むのに便利な収納用具 ・ポーチ           1   小物を入れておくのに便利な収納用具 ・背負い袋           2   様々な品を入れて行動するのに便利な収納用具。 ・ロープ(20m)         1   麻で編んだ丈夫なロープ。 ・ひっかけ鉤          1   ロープの先端につけて使用する。 ・携帯用寝具          1 いわゆる寝袋。夏用と冬用がある。 ・テント(4人用) 3 テントとペグとピトンの一式セット。夏用と冬用がある。 ・筆記用具           1   万年筆とインクまたはボールペンと鉛筆数本。 ・白紙の本   1   何も書かれていない本。日記や研究成果を記すメモとして使用する。 ・百科事典           4   さまざまな事柄について網羅的に記した書物。 ・外国語辞典          4   母国語と外国語を対応させた辞典。調達時に1つの言語を指定する。 ・画材             1   筆、絵具、カンバスなどの絵を描くための道具一式。 ・カメラ 1   携帯しやすいコンパクトカメラ。望むならボックス型でも一眼でも。      ・携帯型ラジオ 6   それなりに大きいが持ち運びできるサイズのラジオ。 ・発煙筒            2 事故などにより救助を求める際に使用する。使い捨て。 ・金属探知機          5   金属を探すための道具。地球外の金属に対しても反応はある。 ・オートバイ          8   インディアン・スカウト。速くて信頼性に優れ操作しやすい。 ・乗用車 10   T型フォード。一般的な大衆車モデル。 (※)選択ルール:【相当品】 上記の装備品はいずれもラブクラフト小説の舞台となった1920~1930年代のアメリカを想定して設定している。 もし装備品がシナリオの舞台や探索者の所持品としてそぐわなければ名称と形状を自由に変更してもよい。 例えば軍用サーベルであれば日本刀にしてもいいし、ファルシオンにしてもいい。性能や機能に変わりはない。 ◆3.行為判定(セービング・ロール) (1)基本 セービング・ロール(SR)は探索者が試みようとしている行為の成否を判断するために行う。 GMは判定に使用する能力値と難易度レベルを設定する。難易度レベルと目標値は下記のとおりである。 探索者は2Dを振り指定された能力値を足す。これが目標値を越えていれば成功である。 SRの難易度レベル  1 2 3 4 5 6 7 8 9 以降+1 2D+能力の目標値 20  25 30 35 40 45 50 55 60 +5 (2)ゾロ目による振り足しと自動的失敗 SRで振った2Dがゾロ目であればさらに2Dを振り足すことができる。これはゾロ目が出る限り続く。 最初に振った2Dの出目が「1」と「2」の組み合わせであった場合、SRは自動的に失敗となる。 (3)タレントを使用したSR 探索者が試みようとする行為に有益と認められるタレントを有している場合は、結果に+3のボーナスを得る。 また、タレントを使用できる際には2度SRを行い、結果が有利な方を採用する。 (4)対抗判定(対抗セービング・ロール) ある行為とそれに対する行為が相反する場合は難易度レベルを定めずSRを行い、どのレベルの目標値まで達成できたのかを図る。 (例:2D+10の結果が22であれば1レベルとなる) 高いレベルに到達できた方が勝者となる。同じレベルであった場合は引き分けか探索者側の勝利とする。 (※)選択ルール:【広義のタレントと狭義のタレント】 +3のボーナスと振り直しの組み合わせが強力すぎると感じる人はタレントが判定にどこまで深く関与できるかで差をつけてよい。 例えば[武器術]のタレントは武器の取り扱いについて幅広く応用でき、飛び道具を使うのにも利用できるだろう(広義のタレント)。 一方、[射撃]のタレントは使用できる状況が限定的だが、[武器術]よりも深く研ぎ澄まされた専門的なものになるだろう(狭義のタレント)。 タレントが広義のタレントに当てはまるなら+3のボーナスのみを、狭義のタレントなら+3のボーナスと振り直しの権利をそれぞれ与える。 ◆4.恐怖判定(恐怖セービング・ロール) 怪異と遭遇した時や目の前で親しい人物が殺害された時など、恐怖の場面では精神安定度でセービング・ロールを行う(恐怖SR)。 恐怖SRに失敗すると精神安定度が減少する。1回の減少量は1~難易度レベル分で恐怖の度合いによってGMが決定する。 (ポルターガイストなどの怪現象であれば1、怪物や神話生物との遭遇であれば難易度レベルの1/2~難易度レベル分を目安とする) 強い恐怖を味わった場合は精神安定度を減少させた上でさらに2Dを振り、6以下が出た時は次の「恐怖リアクション表」を振る。 表を振った結果が好ましくないと感じた探索者は、さらに精神安定度を1減少して効果の適用をまぬがれることもできる。 なお、精神安定度が0を下回った時は完全な狂気の世界に陥ってしまう。こうなると復帰までには長い時間が必要だろう…… [恐怖リアクション表] 出目 効果 1  足がすくみその場から動けなくなる。1D分間、[硬直]状態となる。 2  パニック状態に陥りありもしない幻影を見始める。1D分間、[幻惑]状態となる。 3  恐怖のあまり口がきけなくなる。1D分間、[沈黙]状態となる。 4  気絶してしまう。意識を取り戻すのは1D分後である。 5  絶叫しながらその場から逃走して[行方不明]状態になる。叫びながら走り回るため、音量は「4+」として扱う。 6 近くの者を敵だと思い攻撃を仕掛ける(攻撃された者は身を護るための行動をとることができる)。 状態異常の詳細については6.戦闘-(8)状態異常の項目にて説明する。 ◆5.エネミー カルトの狂信者、動く死体、ミ=ゴなど探索者と敵対する存在をエネミーと称する。 一般的なエネミーは主にモンスター・レート(MR)とモンスター・レベル(ML)で表現する。 (1)モンスター・レート(MR) エネミーがダメージを受けるとMRが減少し0になると破壊される。エネミーが発生させるヒットは[⦅MR÷10⦆(端数切捨て)+1]D+MR÷2だ。 例えば、MR50のエネミーは50までのダメージに耐えることができ、毎戦闘ラウンドに6D+25のヒットを発生させる。 (2)モンスター・レベル(ML) エネミーが探索者と対抗SRを行う場合、エネミー・レベル(ML)をSRの難易度レベルの基準とする。 (3)特殊能力 エネミーの中には飛行能力を持つものや再生能力を持つものもいる。 特に決まりきったテンプレートはないのためGMはエネミーの性質を踏まえながら相応しいものを設定してよい。 次にサンプル特殊能力とその効果を紹介する。 [特殊能力] ・【強打(n)】/ nは2以上。エネミーが接近攻撃で発生させる悪意ダメージは6の目1つあたりn点である。 ・【恐怖(n)】/エネミーと遭遇した者は難易度nレベルの恐怖SRを行う。この恐怖SRに失敗した時の減少量はnである。 ・【巨体】  /体力、耐久に関してMLが2倍高いものとする。このエネミーを対象とした射撃判定は難易度レベルが1/2になる。 ・【拘束】  /触手による拘束。1点でもダメージを受けた者は体力で難易度MLのSRを行う。失敗すると[硬直]状態となる。 ・【小型】  /速度に関してMLが2倍高いものとする。このエネミーを対象とした射撃判定は難易度レベルが×2倍になる。 ・【再生(n)】/エネミーは毎戦闘ラウンドの終わりにMRをn点回復する。 ・【水中】  /このエネミーは水中でも地上同様に行動できる。水中にいる探索者は接近攻撃と射撃のヒットが1/2になる。 ・【社交性】 /この特殊能力を持つエネミーは探索者と意思疎通を図ることができる。 ・【射撃】  /エネミーの攻撃は飛び道具によるもので1体を標的とする。エネミーの射撃判定の達成レベルは[ML]である。 ・【神格(n)】/このエネミーを直視した者は難易度nレベルの恐怖SRを行う。失敗すると即座に精神安定度が0になり発狂する。 ・【即死(n)】/このエネミーの接近攻撃でダメージを受けた者は[耐久]でnレベルのSRを行う。失敗すると即座に死亡する。 ・【転移】  /エネミーは視界内の場所に瞬時に移動することができる。 ・【飛行】  /エネミーは空を飛べる。高く飛びあがっている間は地上にいる者から接近攻撃のダメージを受けない。 ・【非実体】 /エネミーは物理的な手段から一切のダメージを受けない。 ・【憑依】 /1体に憑依する。対象は魔力で難易度MLのSRを行なう。失敗すると[幻惑]状態または[錯乱]状態となる。 ・【不滅】  /倒されても1D時間後に完全な状態で復活する。真に打ち負かすためにはGMが指定する条件を満たす必要がある。 ・【防御(n)】/nは1以上。エネミーにはn点の防御点を持つ筋肉や甲殻や皮膚がある。 ・【軟体】  /物理的な衝撃を和らげる。エネミーが射撃攻撃から受けるダメージは防御点の適用前に1/2になる。 ・【有毒(n)】/爪や牙や武器に毒がある。1点でもダメージを与えた者は[猛毒]状態となる。[猛毒]のダメージはn点である。 (4)能力値表記のエネミー 探索者と同様に能力値表記のエネミーがいてもよい。扱いは探索者に準ずる。 こうしたエネミーは主にボスとして使われるケースが多いだろう。 (5)サンプルエネミー サンプルエネミーの例を示す。GMは自身のシナリオに合わせて好きなように調整してよい。 知能が「高い」または「極めて高い」のエネミーは魔術を駆使することもできる。その際の達成レベルはMLと等しい。 知能が「低い」または「極めて低い」のエネミーであっても生来の能力により魔術と同じことができるとしてもよい。 なお、クトゥルフ、ヨグ=ソトース、アザトースといった神格は正面から挑んで倒せる存在ではないので特殊な処理を行うべきだろう。 もし探索者が挑戦したいと口にするのであれば少なくとも数千のMRがあると伝えて再考を求めるといい。    名称         カテゴリ  並(ML1-2)  強(ML3-4)  脅威(ML5-6)  知能       特殊能力 ・アリゲーター       動物    MR:33-66 MR:99-132 MR:166-199 低い       水中/防御(3-6) ・イエティ         怪物    MR:45-60 MR:75-105 MR:135-180 低い       巨体/強打(3-6) ・古のもの         神話生物  MR:50-90 MR:130-210 MR:280-400  高い       恐怖(2-6)/巨体/拘束 ・ヴァンパイア       不死者   MR:30-45 MR:60-90 MR:120-160 高い       恐怖(3-6)/社交性/不滅 ・ヴァンパイア(劣等)   不死者   MR:20-30 MR:40-65 MR:90-125   並        恐怖(1-3)/再生(1-3) ・宇宙からの色       神話生物  MR:10-40 MR:70-110 MR:150-200 高い       即死(1-3)/非実体/不滅/防御(100-300) ・狂信者          人間    MR:8-20 MR:32-48 MR:64-88 低い~並      社交性 ・巨大イカ         怪物    MR:70-100 MR:130-170 MR:210-260  極めて低い    巨体/拘束/水中/軟体 ・グール          神話生物  MR:20-30  MR:40-60  MR:80-110   低い~高い    恐怖(1-2)/社交性/軟体 ・黒い仔山羊        神話生物  MR:70-120 MR:170-245 MR:320-420  並        恐怖(2-6)/巨体/拘束/再生(10-30) ・ゴースト         不死者   MR:10-20 MR:30-50 MR:70-100 低い~高い    恐怖(1-2)/飛行/非実体/憑依 ・ゴリラ          動物    MR:30-55 MR:80-105 MR:140-165  低い~並     巨体 ・シャンタク鳥       神話生物 MR:40-80 MR:120-200 MR:280-440 低い       恐怖(1-2)/巨体/飛行 ・ジャイアントスネーク   動物    MR:20-35 MR:65-95 MR:140-185 低い       拘束/有毒(1-3) ・ショゴス         神話生物  MR:80-160 MR:240-400 MR:640-960 低い      恐怖(2-6)/巨体/軟体 ・ショゴスロード      神話生物  MR:16-32 MR:48-80 MR:128-180 高い       社交性 ・人造人間         怪物    MR:50-70 MR:90-120 MR:150-190 極めて低い    巨体/防御(5-15) ・人狼           怪物    MR:30-50 MR:70-100 MR:130-170 低い~波     強打(2-4)/恐怖(2-4)/再生(5) ・スライム         怪物    MR:16-32 MR:48-80 MR:112-176 極めて低い    水中/軟体/有毒(2-4) ・ゾンビ          不死者   MR:16-24  MR:32-48 MR:64-88 極めて低い    恐怖(1-2) ・ダゴンとハイドラ     神格    MR:200-400 MR:600-900 MR:1200-1600 高い       巨体/強打/水中/神格(2-4) ・ティンダロスの犬    神話生物  MR:60-100 MR:140-200 MR:260-280  並        恐怖(2-6)/転移/非実体/有毒(1-3) ・虎            動物    MR:35-70 MR:105-140 MR:175-210  低い       強打(2-6) ・ナイトゴーント      神話生物  MR:20-36 MR:52-76 MR:100-136  低い~並     恐怖(1-2)/飛行 ・ネズミ怪物        神話生物  MR:8-16 MR:24-36 MR:48-64 低い       小型/社交性 ・ニャルラトテップ(人型) 神格    MR:20-40 MR:80-240 MR:720-2880 極めて高い    神格(3-6)(真の姿を見せた時) ・灰色熊          動物    MR:50-80 MR:110-170 MR:200-290 低い       強打(2-6)/巨体 ・ビヤーキー   神話生物  MR:20-35 MR:50-70 MR:90-120   低い       恐怖(1-2)/飛行 ・深きもの         神話生物  MR:22-33 MR:44-66 MR:88-121 低い       恐怖(1-3)/水中 ・武装警官    人間    MR:18-30 MR:42-58 MR:74-98   低い~高い    射撃/社交性 ・蛇人間          神話生物  MR:15-35 MR:55-80 MR:105-135 並~高い     恐怖(1-2)/社交性/水中/有毒(1-3) ・暴徒           人間    MR:8-16 MR:24-40 MR:56-80    低い~並    社交性 ・星の精          神話生物  MR:36-60 MR:84-132 MR:180-240 並        恐怖(1-3)/飛行/非実体 ・魔女           人間    MR:10-16 MR:22-34 MR:46-64   高い~極めて高い 社交性/飛行 ・マフィア         人間    MR:10-20 MR:30-50 MR:70-100   低い~高い   射撃/社交性 ・マミー          不死者   MR:24-48 MR:80-120 MR:160-240  高い       恐怖(3-6)/防御(10-20) ・ミ=ゴ          神話生物  MR:16-20 MR:24-32  MR:40-56 並~高い     恐怖(1-2)/射撃/社交性/飛行 ・有毒コウモリ       動物    MR:12-24 MR:36-48 MR:60-72 低い       小型/飛行/有毒(1-3) ・ムーンビースト      神話生物  MR:33-48 MR:63-83 MR:103-128 低い       強打(2-6)/恐怖(1-3) ◆6.戦闘 探索の途中あるいは最後に戦いが発生することもある。ここでは戦闘の処理について解説する。 (1)用語解説 ・個人修正     /副能力値。武器のヒットに加算する。  ・武器のヒット   /武器によるヒットに個人修正を加えたもの ・魔術のヒット   /魔術によるヒット ・合計ヒット    /探索者側またはエネミー側のヒットの合計 ・ダメージヒット  /ヒットのうちダメージを与えるもの ・ノンダメージヒット/ヒットのうちダメージを与えないもの ・悪意ダメージ   /接近攻撃で発生する勝敗とは無関係に相手陣営に与えるダメージ ・戦闘ラウンド   /探索者とエネミーがそれぞれ1回行動する区切り。およそ1分 ・行動       /接近攻撃、射撃、魔術、早足、隠密などの中心となる動作 (2)接近戦 最もシンプルな戦闘は探索者とエネミーが素手や武器で行う接近戦である。 接近戦に参加する者は接近攻撃に用いる武器で武器のヒットを求める。 複数人が参加する場合はそれぞれ武器のヒットを合計して合計ヒットを求める。 探索者側とエネミー側の合計ヒットを比べて勝敗を決める。 合計ヒットの大きい側が小さい側に差分のダメージヒットを与える。 誰がどれだけのダメージヒットを受け持つのかは負けた側が自由に割り振る。 ダメージヒットから防御点を引いたものが実際のダメージとなり耐久またはMRを減少させる。 戦闘ラウンドの終わりに耐久が0以下になった場合は気絶する(※)。さらに-10以下になれば死亡する。 MR表記のエネミーの場合はMRが0以下になった時点で死亡する(状況によっては気絶させることもできる)。 (※)選択ルール:【死の淵に立つ】 銃撃戦を重視するスタイルでは探索者の脆さがネックになる場合もある。 そのような時は1回の戦闘につき1回だけ耐久が0以下になった時点で耐久1Dで踏みとどまることを許してもよい。 ただし精神で肉体を凌駕するには強い負荷がかかる。そのため、精神安定度が1D減少する。 (3)悪意ダメージ 接近攻撃において武器のヒットを求めた際、「6」の目が出た数だけ悪意ダメージを発生させる。 悪意ダメージは合計ヒットの勝敗とは無関係に最低でも悪意ダメージ分だけ相手陣営にダメージを与える。 この悪意ダメージは防御点で減らすことができない。したがって格下相手でも負傷するリスクはある。 (4)射撃 銃やボウガンなどの飛び道具を標的に命中させるためには器用でSRを行わなくてはならない。 SRの難易度レベルは基本的に距離によって決まる。 標的までの距離  0(接近) 1(近距離) 2(中距離) 3(遠距離) 4(超遠距離)   m換算(目安) 0m~5m 6m~50m 51m~100m 101m~200m 201m以上 SRの難易度レベル   1 2 3 4     6 命中させた飛び道具のヒットは合計ヒットに加える。また、勝敗に関わらず標的に直接ダメージヒットを与える。 1体のキャラクターに複数の飛び道具による攻撃がなされた場合、防御点はそれぞれのダメージヒットを減少させる。 もしSRに失敗してしまった場合でもノンダメージヒットとして味方陣営の合計ヒットに加えることができる。 接近攻撃と射撃を併用して勝利した場合、接近攻撃のダメージヒットは飛び道具によるヒットをすべて取り除いた分となる。 つまり、0以下になれば接近攻撃のダメージヒットはなかったことになる(ただし悪意ダメージは発生する)。 (5)回避または幸運によるダメージ半減 射撃が命中した標的は、1ラウンドに1回だけ、射撃のSRの達成レベルを目標として速度でSRを行うことができる。 これに成功すると飛び道具は命中直前でかわすことができ、その飛び道具のヒットは0になる。 なお、回避は外れた射撃に対しても試みることができる(援護射撃としての効果すら失わせる)。 一方で射撃を受けてしまった場合でも幸運が探索者の命を救うことがある。 射撃が命中した標的は、射撃のSRの達成レベルを目標として幸運でSRを行うことができる。 成功すると防御点を引く前にダメージが1/2になる。こちらは回避と異なりヒットそのものを減らす効果はない。 (6)魔術 接近攻撃、射撃の代わりに魔術を使うこともできる。詳しくは魔術の項目で説明する。 (7)移動、武器の持ち替え 1ラウンドの間、探索者は100m移動できる。早足で移動するならその倍移動できるが回避はできなくなる。 足下がぬかるんでいたり、高低差が激しい場合は移動距離が1/2~1/4まで短くなる(具体的にはGMが決める)。 武器の持ち替えはいつでもでき、行動を消費しない。 (8)状態異常 戦闘では物理的なダメージの他に様々な影響を受けることがある。以下、各種状態異常を記す。 ・気絶   /怪我や精神的なショックにより気を失っている。一切の行動をとることができない。 ・幻惑  /幻に包まれてしまい標的を特定できなくなる。射撃が行えなくなる。接近攻撃は行えるがヒットは1/2になる。 ・硬直  /魔術で足が動かなくなる、敵に拘束されるなどにより移動と接近攻撃が行えなくなる。射撃は行えるがヒットは1/2になる。  ・死亡 /死んでいる。復活する手段がなければキャラクターの冥福を祈ろう。 ・石化(n) /体が徐々に石化していく。一切の行動をとることができずn×10分後に完全な石像になって死亡する。 ・沈黙   /話すことができない。魔術を行使できなくなる。 ・呪い(n) /呪いにより身体や精神の働きが阻害されている。呪いをかけた者が指定する能力値がn点低下する。 ・魅了   /精神的な支配を受け自分の意思で行動できなくなる。魅了している者は行動を消費して魅了状態にある者の行動を決めることができる。 ・猛毒(n) /体内に入った有毒な物質により体力が失われる。各戦闘ラウンドの終了時にn点のダメージを受ける。 ・行方不明 /探索者はいなくなる。行方不明になっている間は一切の行動をとれない。行方不明はGMが指定したタイミングで解除される。 (9)一般的な戦闘の処理 通常、戦闘は次のような流れで展開される。 各探索者、エネミーの行動は原則として同じタイミングで行われているものとみなす。 a.魔術の発動 b.射撃のSR、回避&幸運によるダメージ半減のSR c.移動 d.接近攻撃 e.ダメージの適用 f.まだ行動できる者が残っていれば次のラウンドとなりa.から処理を繰り返す (10)特殊な戦闘の処理 戦闘では様々な状況下で発生し得る。GMは定型的な処理に固執するのではなく柔軟な発想で戦闘を処理してよい。例を記す。 (10)-1 隠密と不意打ち 十分な遮蔽と身を隠すための空間が確保できる状況では、探索者は隠れてエネミーをやり過ごすことができる。 この場合は戦闘が始まる前にエネミーのMLを基準レベルとして隠密でSRを行う。SRに成功すれば1D戦闘ラウンドの間エネミーに見つからない。 他の探索者がエネミーに見つかってしまい戦闘が始まった場合でも、隠れている間はエネミーの攻撃の対象とならない。 隠れている探索者は戦闘ラウンド最後にダメージの適用が終わった後でエネミーに対して不意打ちを仕掛けることができる。 探索者の器用とエネミーのMLまたは速度で対抗判定を行う。これに探索者が勝利すれば次のような有利な条件でダメージを与えられる。 ・射撃による不意打ち   /SRとヒットに+5のボーナスを得た上で対象に射撃を行うことができる。 ・接近攻撃による不意打ち /ヒットに+10のボーナスを得た上で対象にダメージを与えることができる。この不意打ちに対しては対象のヒットは0とみなす。 不意打ちが成功するにせよ失敗するにせよ、隠れていた探索者はエネミーに発見される。隠れている間に魔術を行使した時も同様である。 (10)-2 射撃戦 探索者とエネミーの間に1戦闘ラウンドで接敵できない程の距離がある時は、1戦闘ラウンドの接近戦を行わないとしてよい。 この際、射程が長いものから短いものへと順に行動を処理し、ダメージと魔術の効果は即座に反映させる。 (10)-3 騒音と援軍 武器に設定されている音量は、その武器を用いて1戦闘ラウンド戦った際、同じ数値までの距離まで発砲音や剣戟の音が響くことを意味する。 これにより戦いの場所から離れた場所にいたエネミーが喧騒を聞きつけて援軍に現れる場合がある。 援軍は2ラウンド目以降、各戦闘ラウンドの始まりと同時に出現するものとする。 (10)-4 BOSSアクション シナリオ中で重要なポジションを占めるBOSSエネミーについては、各戦闘ラウンドが始まる前に特殊な行動を行わせてもよい。 まず、GMはBOSSエネミーの行動について描写し、被害を避けるために必要なSRと失敗した時の影響を説明する。 (例:「ショゴスは周囲の建物を手あたり次第破壊して瓦礫をまき散らす。幸運度で2レベルのSR。失敗すると3Dのダメージを受ける」) 続いて、BOSSエネミーの行動に対して探索者達はSRを行う。失敗すると宣言どおりの被害を即座に受けることになる。 その後、通常どおりの戦闘ラウンドを開始する。何度も繰り返すとテンポが悪くなるので1回の戦闘につき1,2回がいいだろう。 なお、特殊な行動は必ずしもSRを伴うものでなくてもよい。何らかの魔術を行使したり、耐久またはMRを回復するといったものでもよい。 ◆7.チェイス 探索者が怪異から逃走する、あるいは、誰かを追跡する時にチェイスが発生する。ここではチェイスの処理について解説する。 (1)用語解説 ・目標レベル  /敵味方双方の陣営が行うSRのレベル。任意で設定する。 ・経過ラウンド /チェイスが始まって経過したラウンドを表わす。 ・進行度    /チェイスの進行度を表わす。 ・ゴール    /チェイスの終わりとなる進行度を表わす。 ・ハプニング  /チェイス中、各ラウンドで発生するハプニングを表わす。 ・障害 /チェイス中、特定の進行度を通過した時点で発生する障害を表わす。 (2)チェイスのセッティング はじめに、GMはチェイスを行う状況とチェイスの勝利条件を明らかにする。例えば、次のような条件が考えられる。 ・経過ラウンドが特定ラウンドに到達するまで、進行度が相手側より常に上回っている(=追跡して来る何者かから逃げ切れる状況) ・逃走者の進行度がゴールに到達する前に、探索者側の進行度が相手側を上回る(=逃走している者を捕まえられる状況) ・相手側よりも先に探索者側の進行度がゴールを越える(=相手側と競争しており先に特定の地点に辿り着いた方が勝利する状況) 進行度はスタートからの距離を意味する。追跡から逃れる(また追跡される)状況なら、初めから進行度にいくらか差があるだろう。 (3)チェイスの進行 チェイスは戦闘と同様にラウンド毎に進行する。まず探索者側と相手側でそれぞれ1Dを振りハプニングの内容を決定する。 なお、ハプニング表はサンプルである。チェイスの内容にあわせて自作するとより雰囲気が出るだろう。 [ハプニング表] 出目 効果 1  非常に困ったトラブルが発生する。ラウンド中、SRの達成値に-6のペナルティを受ける。 2  進行先に邪魔な障害物(茂みであったり雑踏であってもよい)がある。ラウンド中、SRの達成値に-3のペナルティを受ける。 3  特に何もない 4  特に何もない 5  いくつかショートカットできそうなところを発見する。ラウンド中、SRの達成値に+3のボーナスを得る。 6 思いがけぬチャンスが到来する。ラウンド中、SRの達成値に+6のボーナスを得る。 次にもう一度1Dを振りこのラウンドのSRに使用する能力値を決定する。 使用する能力値が体力であれば険しいルートを通っているかもしれない。速度であれば純粋にスピード勝負なのかもしれない。 知性であれば迷いやすいルートかもしれない。隠密であれば身を隠しながら追跡を撒こうとしているのかもしれない。 [能力値] 出目 能力値 1  体力または器用のいずれか(任意で選択する) 2  器用または速度のいずれか(任意で選択する) 3  速度または体力のいずれか(任意で選択する) 4  知性または幸運のいずれか(任意で選択する) 5  幸運または隠密のいずれか(任意で選択する)  6 隠密または知性のいずれか(任意で選択する) 続いて探索者側と相手側でそれぞれ目標レベルを決める。これは進行度を増やすために行うSRのレベルでそれぞれが任意で設定する。 探索者側と相手側のそれぞれの陣営で全員が指定された能力値で目標レベルのSRを行う。チェイスに使用できそうなタレントがあれば使用してもいい。 誰か1人でも成功すると進行度が[目標レベル分]上昇する。もし目標レベルよりも1つ高いレベルで成功した場合は[目標レベル分+1]上昇する。 後はどちらかが勝利条件を満たすまでの間、上記の処理を繰り返すだけである。 なお、相手側がMR表記のエネミーで能力値を定めていない場合、全能力値は[10+ML×5]あるものと考える。 エネミーに特殊能力の【巨体】があれば体力を2倍にする。知性は知能が並よりも低いなら-10、高いなら+10の修正を加えるといいだろう。 (4)チェイスの終了 どちらかが勝利条件を満たしたらチェイスを終了する。GMはチェイスの結果どのような事態が生じたのかを演出する。 (※)選択ルール:【妨害行為】 GMが許すなら相手側の進行を妨害する行為を認めてもよい。PLにどのような行為を行わせるかを宣言させSRを行わせること。 成功すれば相手側のSRの達成値に-3のペナルティを与えることができる。このペナルティは3回まで重複する。 ◆8.経験値と成長 経験値は次の5つのタイミングで入手できる。 ・戦闘終了時に[エネミーの総MR÷戦闘に参加した探索者の数]点 ・SRを行った際に[振ったダイスの出目×SRのレベル]点 ・恐怖SRを行った際に[振ったダイスの出目の2倍×恐怖SRのレベル]点 ・シナリオの目標を達成した際の報酬として[目安は探索者レベル×300]点 ・そのほか、素晴らしいロールプレイを行った際などボーナスとして[100~150]点 経験値は(1)主能力値の成長と(2)タレントの取得に使用する。主能力値を1点成長させるには[成長させたい能力値×20]点の経験値がかかる。 タレントの取得には1個あたり150点が必要だ。タレント取得数の上限は[探索者レベル×2]個までである。 能力値の成長とタレントの取得はいつでも行える。 十分な時間と学習できる環境があれば新しい言語も取得できる。これには1種類の言語につき300点の経験値が必要になる。 (※)選択ルール:【タレントの強化】 探索者が望むなら既に取得しているタレントと同じものを取得してボーナスの強化を図ることもできる。 1つのタレントにつき3つまで重ねることができ、1つ重ねる毎にタレントのボーナスは+6、+9、+12と増加する。 ◆9.休息と治療 探索者はシナリオとシナリオの間に十分な休養をとり必要な治療を施しているものとする。具体的には次の処理を行う。 ・呪いや欠損などによる永続的な減少を除いて減少した主能力値を最大値まで回復させる。 ・減少した精神安定度を2D回復する。シナリオ中に何か特別な目的を達成した場合はGMがボーナスを与えてもよい。 ・失われた常備品があれば再調達する。あるいは、失われた常備品の価格と同じだけ財産点を得る。 ・一時的に入手していたアイテムをすべて失う。ただしGMが継続使用を許可したアイテムについてはこの限りではない。 ◆10.魔術 時に探索者は魔術を学ぶこともある。このゲームの魔術は正しい知識で正しい手順を踏めば誰もが行使できるものとする。 魔術をかけるには、発声でき、自由に手振りができ、目標を認識できる必要がある。 (1)魔術の取得 魔導書を読む、誰かから教わる、日記や碑文に記された一説を読み解くなどの方法によって探索者は魔術を取得できる。 ただ、使いこなせるまでに研究と練習の時間が必要だ。一度に取得できるのは1シナリオあたり3つまでである。 (2)魔術の行使 魔術を行使するには呪文ごとの「コスト」を「魔力」から減らした上で、「知性」で呪文の「階層」レベルのSRに成功しなくてはならない。 SRに成功すれば呪文は定められたとおりの効果を発揮する。魔術の行使は1戦闘ラウンドに1回である。 通常、魔術を行使と同時に射撃や接近攻撃などの行動はとれない。しかし、呪文の発動が「即時」であるものはその限りではない。 (3)魔術の強化 魔術は「コスト」を2倍消費して1段階高い「階層」でかけることで、持続時間や射程、威力などを強化できる。 「コスト」は1段階高い「階層」への強化で2倍、2段階高い「階層」への強化で3倍と等倍に増える。効果は2倍、4倍と倍々で強化される。 (4)ダメージの分配 ヒットを生じる魔術で対象が「範囲」や「全体」のものは全体のヒットを計算した後でそれぞれの相手に任意のダメージを振り分ける。 ヒットが20の《炎の嵐》(対象「範囲」)でエネミーAとエネミーBを攻撃した場合、AとBにそれぞれ10点づつダメージを与えてもよいし、 Aに15点、Bに5点という振り分け方もできる。 (5)呪文一覧 階層1~6までの呪文を記す。用語の意味は次のとおりだ。 ・学派 /呪文のカテゴリ。「空間」「元素」「呪詛」「召喚」「神秘」「代謝」「霊魂」「夢幻」の8つがある。 ・階層 /呪文の難易度。知性で要求されるSRの難易度レベルに等しい。 ・発動 /呪文の発動に必要な時間。「即時」は魔術を行使しつつ別の行動をとれる。「儀式」は10分の時間を要する。     「儀式」の魔術は2人まで補助者をつけられる。補助者は[魔力÷2]点まで術者に魔力を分け与えることができる。 ・コスト/呪文の発動に必要となる「魔力」。 ・持続 /呪文の持続時間。 ・射程 /呪文の射程距離。飛び道具の射程に等しい。 ・対象 /呪文の対象。自身は術者自身、単体は標的1体、範囲は標的と同じ射程にいる者を、全体は射程内にいる者全員を対象とする。      なお、呪文の影響を与えたい者については術者が自由に選ぶことができる。呪文によっては物体にかけることもできる。 ・強化 /呪文を強化してかけた際の効果。 ~呪文リスト~ 《妖しき囁き》 学派:夢幻   階層:2   発動:通常   コスト:12 持続:3分    射程:1   対象:単体 強化:持続時間×2倍 [効果] 対象を[魅了状態]にする。ただし術者の[知性+幸運+魅力]が対象の[知性+幸運+魅力]かMRを上回っていなければならない。 魔術の効果が失われた時、対象は魔術をかけられていたことを察知する。 《暗黒の淵より出でし神々の放逐》 学派:召喚   階層:6   発動:儀式   コスト:神格のMR50あたり1 持続:一瞬   射程:4    対象:単体 強化:なし [効果] 神格1柱を元の領域に送り返す。術者は対象となる神格の追い払い方について詳しく知っていなければならない。 GMは必要と認める時は、この魔術を行使するにあたって様々な触媒の用意や行使できるタイミング(例えば新月の夜)を指定してもよい。 《イシスの障壁》 学派:空間   階層:2   発動:通常   コスト:12 持続:10分    射程:0   対象:範囲 強化:持続時間×2倍 [効果] 悪意ある呪文から身を守る。術者とその周囲にいる者は魔術により受けるダメージが1/2になる。 この魔術により保護される領域は術者と共に移動する。 《偽りの記憶》 学派:夢幻  階層:4   発動:単体  コスト:25 持続:1D日 射程:1   対象:単体 強化:効果参照 [効果] 対象の記憶を術者が望むように操る。対象は知性で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると魔術の影響を受ける。 対象と深い関係を持つ者は1時間かけて誠意と言葉を尽くせば正気を取り戻させることができる。 《イブン=グハジの粉》 学派:神秘   階層:1   発動:儀式   コスト:4 持続:一瞬    射程:0   対象:自身 強化:製造できるイブン=グハジの粉+1人分 [効果] 1人分のイブン=グハジの粉を精製する。この粉末を服用すると、1晩の間、不可視の存在を目視できるようになる。 イブン=グハジの粉の精製に必要な材料についてはGMが指定するものとする。 《忌まわしき存在の召喚/送還》 学派:召喚   階層:2   発動:儀式   コスト:呼び出すor送り返す神話生物のMRの1/4 持続:一瞬   射程:0   対象:範囲 強化:コストを2倍にすることで発動を通常に変更。ただし対象は単体になる [効果] 術者が知っている神話生物を召喚または送還する。術者は召喚した存在と意思疎通を図ることもできる。 《癒しの聖油》 学派:代謝   階層:1   発動:儀式   コスト:5 持続:一瞬   射程:0   対象:自身 強化:なし [効果] 術者の掌に治療効果のある動物性の油を生じる。油は1人分で塗られた者は耐久を2D回復する。 《ヴールの印》 学派:神秘   階層:1   発動:効果参照 コスト:4 持続:一瞬    射程:0   対象:自身 強化:魔術を行使する際のSRへのボーナス+5 [効果] 魔術の働きを助ける印を結ぶ。他の魔術と同時に使用し、魔術を行使する際の知性でのSRに+5のボーナスを得る。 この呪文の行使については発動に知性のSRを要しない。 《虚ろな風景》 学派:夢幻   階層:2   発動:通常   コスト:10 持続:10分   射程:2   対象:範囲 強化:効果参照 [効果] 術者が指定した場所に動かない幻を作り出す。幻を見破るには知性度で[階層]レベルのSRに成功しなくてはならない。 《終わらぬ悪夢》 学派:夢幻   階層:6   発動:儀式   コスト:52 持続:1年     射程:4+  対象:全体 強化:なし [効果] 術者が顔と名前を知っている者に悪夢を見せる。対象となった者は毎晩、術者が想像力を駆使して創り上げた悪夢にうなされることになる。 この悪夢には必ず術者が登場する。術者は悪夢を通じて対象に何らかのメッセージを送ることもできる。 《隠形》 学派:空間   階層:1   発動:通常   コスト:8 持続:10分   射程:0   対象:範囲 強化:持続時間×2倍 [効果] 術者とその周囲にいる者を見えづらくする。その場から動かずにいる間は隠密度が2倍になる。 《解呪》 学派:神秘   階層:2   発動:儀式   コスト:8 持続:一瞬    射程:0   対象:単体 強化:効果参照 [効果] 人や物にかけられた呪い1つを解除する。呪いよりも高い[階層]でかけなければならない。 《回復の祈り》(ドリームランド) 学派:代謝   階層:1   発動:通常   コスト:回復させる耐久1あたり1 持続:一瞬    射程:3   対象:単体 強化:なし [効果] 対象の怪我を瞬時に癒す。一度に回復できる量は[術者の魅力度]までである。 回復量が20以上の場合、これを0にして病気や状態異常1つを治療することもできる。 《怪物の膂力》 学派:代謝   階層:2   発動:通常   コスト:8 持続:3分    射程:0   対象:単体 強化:持続時間×2倍 [効果] 筋力を劇的に強化する。対象の体力を2倍する。個人修正も上昇した体力の分だけ増加する。 また、素手のヒットが4D増加する。 《風のささやき》 学派:元素   階層:1   発動:即時   コスト:3 持続:1分    射程:4   対象:範囲 強化:射程2倍 [効果] 離れた場所にいるだけ者に声を届ける。声が届く距離は距離は4(250m)である。 《鎖の空間》(ドリームランド) 学派:召喚   階層:3   発動:即時   コスト:18 持続:1分    射程:1   対象:範囲 強化:効果参照 [効果] 地面から鎖を呼び出して対象の足を絡めとる。対象は体力で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると[硬直]状態となる。 《崩れゆく物》 学派:元素   階層:2   発動:通常   コスト:7 持続:一瞬   射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] 術者の掌に収まる物品1つを劣化させ破壊する。アーティファクトや魔術的な物品に対しては効果がない。 《口封じ》 学派:呪詛   階層:2   発動:通常   コスト:9 持続:10分    射程:1   対象:単体 強化:持続時間×2倍 [効果] 呪いをかけ一時的に口をきけなくする。対象は幸運で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると[沈黙]状態となる。 《苦悶の棘》 学派:呪詛   階層:1 発動:即時   コスト:4 持続:1分    射程:0   対象:自身 強化:生成する棘の数+1 [効果] 素手や接近戦用武器1つに黒く尖った棘を生やす。棘は接近攻撃において1本あたり3Dのヒットを追加で与える。 《黒き雷霆》 学派:元素   階層:4   発動:通常   コスト:50 持続:一瞬   射程:4   対象:全体 強化:ヒット×2倍 [効果] この魔術は屋外でなければ使用できない。雷を落とし範囲内の対象に合計[(術者の知性+術者の魅力)×5]のヒットを与える。 《穢れの霧》 学派:召喚   階層:3   発動:通常   コスト:20 持続:一瞬   射程:3   対象:範囲 強化:毒の強度×2倍 [効果] 有害な霧を生じる。範囲内の対象に合計[6D+術者の個人修正]のヒットを与えた上でそれぞれを毒状態にする。 毒の強度は[階層]と同じである。毒の影響は10分間継続する。 《降霊術》 学派:霊魂   階層:2   発動:儀式   コスト:8 持続:10分    射程:0   対象:自身 強化:なし [効果] 死者の霊を術者の体に降ろし話を聞くことができる。ただし、生前の知性と記憶が完全に残っている保証はない。 《虚空渡り》 学派:空間   階層:3   発動:通常   コスト:14 持続:一瞬   射程:0   対象:自身 強化:コストを倍にすることで発動を「即時」に変更できる。 [効果] 術者は最大で距離2(50m)までの足場が見えている場所に瞬間移動することができる。 この魔術は飛び道具をかわす用途でも利用でき、その場合は自動的に回避のためのSRに成功したものとする。 《再生》 学派:代謝   階層:2   発動:即時   コスト:10 持続:10分   射程:0   対象:単体 強化:回復量を決めるダイス×2倍 [効果] 治癒力を過剰なまでに強化する。対象は1分に1Dのペースで負傷等により減少した耐久を回復する。 《屍人使い》 学派:霊魂   階層:3   発動:儀式   コスト:1体あたり10 持続:1日    射程:0   対象:範囲 強化:なし [効果] 死体に穢れた魂を吹き込み術者の[魅力]と同じMRのゾンビを製造する。ゾンビの知性は3だが術者の簡単な命令に従う。 同時に複数のゾンビを製造できるが一度に動かせるのはMRの合計が術者の全能力値の合計以下までのゾンビである。 《邪眼》 学派:呪詛   階層:3   発動:通常   コスト:14 持続:3分    射程:0   対象:自身 強化:持続時間×2倍 [効果] 不運を招く邪眼を召喚する。1分に1度、術者は行動を消費せず視界中の1人が試みるSRに-10のペナルティを与える。 邪眼は術者から独立したものとし、術者は邪眼を使いながら他の魔術を行使することができる。 《祝福》(ドリームランド) 学派:神秘   階層:2   発動:通常   コスト:14 持続:10分   射程:1   対象:単体 強化:持続時間×2倍 [効果] 対象の能力値1つを2倍にする。この効果が失われた時、対象は持続時間と同じ時間だけ上昇させた能力値が1/2になる。 《呪文喰らい》 学派:神秘   階層:3   発動:通常   コスト:12 持続:一瞬   射程:4   対象:単体 強化:効果参照 [効果] 対象にかけられている魔術の影響を1つだけ取り除く。対象の魔術よりも高い[階層]でかけなければならない。 この魔術は術者やその仲間に向けられた敵対的な呪文に対して使い、その効果を打ち消すこともできる。 《除霊》 学派:霊魂   階層:1   発動:儀式   コスト:6 持続:一瞬    射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] 彷徨いまたは生物に憑依している霊を追い払う。ただし術者の[知性+幸運+魅力]が霊のMRを上回っていなければならない。 霊が能力値を持っている場合MRは霊の[知性+幸運+魅力]とみなす。 《衰弱の呪い》 学派:呪詛   階層:1   発動:通常   コスト:能力値1あたり2 持続:100年   射程:1   対象:単体 強化:なし [効果] 能力値1つを低下させる呪いをかける。対象は[呪い(n)]の状態異常を受ける。nはコストの1/2である。 この呪文によって能力値を0以下にはできない。 《聖域》 学派:神秘   階層:5   発動:通常   コスト:48 持続:30分    射程:0   対象:範囲 強化:持続時間×2倍 [効果] 術者とその周辺の者を護る魔法円を作り出す。この円の内側にいる間は、外側からの攻撃や魔術などの影響を一切受けない。 円の外側の者が内側に入ろうとすることもできない。ただ、円の内側から外側に向け敵意ある行動をとった瞬間、この魔術は解除される。 神格のような強大な存在に対してはあまり効果は期待できないが、それでも3分程度は探索者の命を永らえてくれるだろう。 《精気奪取》(ドリームランド) 学派:呪詛   階層:4   発動:儀式   コスト:50 持続:一瞬    射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] 術者と同じ生物であり術者よりも若い個体から若さと生命力を奪う。術者は1D年若返り対象は同じ年数だけ歳をとる。 あわせて術者の[体力][耐久][器用][速度]のいずれかが1つの能力値が1増加して対象の同じ能力値が1減少する。 一度この魔術の影響を受けた個体は二度とこの魔術の影響を受けることはない。 《精霊の支配者》 学派:元素   階層:5   発動:通常   コスト:48 持続:1時間   射程:0   対象:自身 強化:なし [効果] 術者の隣に火、水、風、土のいずれかの元素により構成された人工精霊を生み出す。精霊は術者の命令を可能な限り何でも聞く。 精霊のMRは術者の全能力値に等しい。能力値が必要な場合は術者の能力値と同じとする。また、精霊は物理的な攻撃の影響を受けない。 もし精霊が対立する属性(火に対する水、風に対する土)の精霊と接近戦を行った場合、双方ともに消滅する。 《旅の扉》 学派:空間  階層:4   発動:儀式  コスト:32 持続:一瞬   射程:0   対象:範囲 強化:なし [効果] 術者とその周囲にいる者は"門"を通じて術者の知っている場所に移動する。"門"は一方通行で転移が終わると消える。 《小さき従僕》 学派:召喚   階層:2   発動:儀式   コスト:13 持続:永続   射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] ネズミやカラスなどのMR5以下の小動物1体を使い魔として使役する。簡単な仕事を命じることができる。 別の小動物を新しい使い魔にする、または、術者あるいは使い魔が死亡した時は効果が失われる。 《致死の霧》 学派:呪詛   階層:6   発動:通常   コスト:49 持続:一瞬    射程:2   対象:全体 強化:なし [効果] 呪いの霧を招き哀れな犠牲者に死を与える。ただし術者の[知性+幸運+魅力]が対象の[知性+幸運+魅力]かMRを上回っていなければならない。 《遅滞する時》 学派:空間   階層:5   発動:即時   コスト:37 持続:10分間   射程:0   対象:自身 強化:持続時間×2倍 [効果] 術者の時間の流れを遅くして相対的に早く行動することができる。術者にとっては1分が3分となり常人の3倍の速さで動ける。 当然戦闘においても1戦闘ラウンドに3回行動できる。ただし、魔術に関しては通常どおり1戦闘ラウンドに1回しか行使できない。 《蔦絡み》 学派:召喚   階層:1   発動:即時   コスト:4 持続:1分    射程:1   対象:単体 強化:効果参照 [効果] 大地から蔦を生やして対象の足を絡めとる。対象は体力で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると[硬直]状態となる。 《転生の秘法》 学派:霊魂   階層:6   発動:儀式   コスト:99 持続:永続   射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] 死せる魂に新しい生を授ける。魂はその魂と縁のある者(多くの場合子孫や血縁者)の肉体に宿り徐々に肉体のコントロールを奪う。 この魔術の犠牲となった者の魂は消滅する。能力値は[知性][幸運][魔力]を除き乗っ取った肉体のものになる。 《肉体融合》 学派:代謝   階層:5   発動:通常   コスト:40 持続:永続    射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] 術者は死亡してまだ温もりが残っている体に融合して筋肉や神経を再利用できる。融合中は体が膨れ上がるため[隠密度]は10低下する。 融合している間、能力値は[体力][耐久][器用][速度]が死者のもの、それ以外は術者のものとなる。融合はいつでも解除できる。 耐久が0以下になった時は融合した体は破壊され、術者は強制的に元に戻される。 《肉を石へ》 学派:呪詛   階層:4   発動:通常   コスト:33 持続:n(1D)分  射程:1   対象:範囲 強化:効果参照 [効果] 強力な呪いで対象を石へ変えてしまう。対象は幸運で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると[石化(n)]状態となる。 nは術者が1Dを振って出した数であり、呪文の効果は対象が完全に石化してしまうまで続く。 《破滅を招く嘆願》 学派:召喚   階層:4   発動:儀式   コスト:42 持続:永続    射程:4+   対象:単体 強化:なし [効果] 術者が知っている神格に直接語り掛ける。多くの場合、この愚かな行為は術者の身の破滅を招くほかない。 ただ、時と場合によっては神格から気まぐれに恩寵を授かることもできるかもしれない……。 《万能語》 学派:神秘   階層:4   発動:儀式   コスト:27 持続:1時間   射程:0   対象:範囲 強化:持続時間×2倍 [効果] 術者とその周囲にいるものは互いに異なる言語を使ってもまるでその言葉を知っているかのように不自由なく意思疎通できる。 この魔術は言葉を持たない生物に対しても効果を発揮する。 《人払いの結界》(ドリームランド) 学派:空間   階層:1   発動:儀式 コスト:10 持続:1時間   射程:1   対象:全体 強化:持続時間×2倍 [効果] 周囲に術者が指定する1種類の生物を寄せつけない結界を展開する。指定された生物の[知性+幸運+魅力]もしくはMRが 術者の[知性+幸運+魅力]を下回っている場合、効果範囲内に入ることができない上に恐怖でその場から離れようとする。 《氷壁》 学派:元素   階層:3   発動:通常   コスト:18 持続:10分   射程:0   対象:範囲 強化:壁の耐久×2倍 [効果] 術者とその周囲にいる者を守るように体積1000立方フィート(3m×3m×3m)の氷の壁を作る。形状は自由に選べる。 この壁の耐久は50であり物理的なダメージを吸収する。 《不浄なる炎》 学派:元素   階層:2   発動:通常   コスト:9 持続:一瞬   射程:2   対象:範囲 強化:ヒットダイス×2倍 [効果] 汚れた炎の塊で敵を焙る。範囲内の対象に合計[4D+術者の個人修正]のヒットを与える。 この魔術の炎は半ば物理的であり、燃えやすい素材でなければ防御点は有効である。 《不滅の肉体》 学派:代謝   階層:4   発動:儀式   コスト:39 持続:永続    射程:0   対象:単体 強化:なし [効果] 対象を動く死体に変えて復活させる。既に死んでいる者はこの魔術で何度でも復活することができる。 動く死体となった者の能力値は生前と変わらない。ただし体に日光を浴びると1分あたり50のダメージを受ける。 また、死霊に対して効果を持つアーテクファクトや魔術の影響も受けるようになる。 《変幻自在》 学派:代謝   階層:3   発動:通常 コスト:27 持続:30分   射程:0   対象:自身 強化: [効果] 術者は自分の体を自由に変形させたり、よく知っている生物に変身することができる。ただ能力値には変わりがないものとする。 神話生物に変身する場合は全能力値の合計と同じMRの生物として扱う。変身中に受けたダメージは元に戻った時に耐久から減らす。 《惑いのプリズム》(ドリームランド) 学派:夢幻   階層:3   発動:即時   コスト:18 持続:1分    射程:1   対象:範囲 強化:効果参照 [効果] 七色の色彩で対象の視覚を狂わせる。対象は知性で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると[幻惑]状態となる。 《見えざる拳》 学派:空間   階層:1   発動:通常   コスト:6 持続:一瞬   射程:2   対象:単体 強化:ヒット×2倍 [効果] 目に見えない力の塊を対象にぶつける。術者の知性と同じだけのヒットを与える。 《目眩し》 学派:夢幻   階層:1   発動:即時   コスト:4 持続:1分    射程:1   対象:1体 強化:効果参照 [効果] 網膜に幻を映し出して対象を惑わす。対象は知性で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると[幻惑]状態となる。 《幽鬼の腕》(ドリームランド) 学派:霊魂   階層:2   発動:即時   コスト:8 持続:1分    射程:0   対象:自身 強化:腕の数+1本 [効果] 彷徨う霊を身体に纏わせ3本目(またはそれ以上)の腕にする。腕は術者から15m先まで離れたものを手にすることができる。 戦闘においては接近戦用の武器を使わせることもできる。この場合、体力と器用は術者と同じである。 《予知夢》 学派:幻惑   階層:3   発動:儀式 コスト:21 持続:一瞬   射程:0   対象:自身 強化:なし [効果] 近い将来(具体的にはシナリオが終わるまでの期間)について術者とその周辺で起こりうる出来事を夢で見ることができる。 PLはGMに3つまで「はい」か「いいえ」で回答できる質問をすることができる。 《四元素による武装》(ドリームランド) 学派:元素   階層:4   発動:即自 コスト:20 持続:1時間   射程:0   対象:自身 強化:持続時間×2倍 [効果] 火、水、風、土のいずれかの元素を術者の体に集めて接近戦用武器と防具を作成する。作成した武具は術者だけが使用できる。 接近戦用武器には[術者の探索者レベル×3]Dのヒットがあり、防具には[術者の探索者レベル×5]の防御点がある。 武具は非実体の存在にも有効にヒットを与えることができる。また、防具の防御点は相反する属性の魔術的攻撃にも有効である。 形状は術者が自由に決めてよい。一般的には古めかしい騎士の姿となる場合が多い。 《霊魂分離》 学派:霊魂  階層:4   発動:単体  コスト:30 持続:1時間 射程:1   対象:単体 強化:効果参照 [効果] 術者は肉体から魂を抜き出し半径8km以内の範囲を幽体で自由に移動することができる。この間は物理的な影響を受けない。 この魔術を他人にかける場合、対象が望まない場合は幸運で[階層]レベルのSRを行う。失敗すると魔術の影響を受ける。 1時間以内に魔術が打ち消されなければ対象はそのまま死亡する。なお、術者自身は望めばいつでも肉体に戻ることができる。 《霊的感知》 学派:霊魂   階層:1   発動:通常   コスト:2 持続:1分    射程:0   対象:自身 強化:感知できる距離2倍 [効果] 霊体、残留思念、呪いなどの超常的存在を感知する。術者は距離0(術者から半径5m以内)にあるそれらの存在を感知する。 (6)即興魔術 知性が25以上で魔術の心得がある探索者は呪文リストにない独自の魔術を即興で行使することができる。 探索者がピンチに陥った時、プレイヤーは呪文の学派、階層、発動、コスト、効果などを取り決めてGMに申請する。 GMは申請された内容を吟味した上で、承認または拒否、あるいは内容の一部分を調整して承認する。 即興の魔術は、通常、よく研究された呪文リストの呪文と比較すると精度やコストや効果の面で劣ってしまう。 即興魔術で《忌まわしき存在の召喚/送還》のような呪文を作っても特定の神話生物にしか効果がないかもしれない。 とはいえ、いざという時にはそれが探索者を危機から救い出す切り札となり得るだろう。 ◆10.魔導書 魔導書には恐るべき秘密や強力な魔術などの探索者にとって有益な(たとえ行く先が破滅であろうとも)知識が記されている。 その内容は精神の安定を損なうものだが、精読すれば探索者は必要な知識を得たり呪文を取得することができる。 魔導書は有益だが危険な側面も持つ。所持についてはよくよく検討すべきだろう。 (1)魔導書から知識を得る 探索者はシナリオ中に情報が必要となった時、魔導書に入手したい情報に係る内容があれば記述の中から1つだけ情報を入手できる。 これには十分な時間をかけた上でGMが指定する難易度レベルのSR(使用する能力値は知性や幸運となろう)に成功する必要がある。 また、代償として魔導書の[喪失度](/の左側)と同じだけ探索者の精神安定度が減少する。 (2)魔導書から呪文を取得する 探索者は魔導書に記されている呪文を取得できる。これには十分な時間が必要であり1シナリオに取得できる数は3つが限度になる。 代償として呪文1つあたり魔導書の[喪失度](/の右側)と同じだけ探索者の精神安定度が減少する。 ~魔導書リスト~ 用語の意味は次のとおりだ。 ・言語  /魔導書が書かれている言語。当然ながら取得していない言語の魔導書は読んでも理解できない。 ・喪失度 /魔導書を精読することで減少する精神安定度。/の左側が知識、右側が呪文取得時の減少量である。 ・知識  /魔導書に記されている様々な知識。[グール]などの大枠で記しており、必要な時は具体化してGMに要求する。 ・呪文  /魔導書に記されている呪文。学派(階層)で記す。呪詛1-3であれば学派:呪詛の階層:1-3までの呪文が記されている。 なお、ここに書かれているデータはあくまで一案である。GMは自分自身のクトゥルフ観を表現するために好きに弄ってよい。 写本であれば一部が欠落しているかもしれないし、異本であれば内容そのものが違っていてもおかしくないだろう。 『アル・アジフ』 言語:アラビア語          喪失度:3/6 知識:[クトゥルフ神話] 呪文:空間1-6/元素1-6/呪詛1-6/召喚1-6/神秘1-6/代謝1-6/霊魂1-6/夢幻1-6 ※ドリームランド限定の魔術を含む [解説] 狂える魔術師アブドゥル・アルハザード著。クトゥルフ神話のほぼすべての側面に触れており、まさに暗黒大全と言える。 『エイボンの書』 言語:ラテン語、英語、フランス語  喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[アザトース]、[ウボ=サスラ]、[前史時代]、[天体]、[魔術]、[ヨグ=ソトース]、[ツァトゥグァ] 呪文:空間2-4/元素3-6/召喚1-2/神秘2-4/夢幻1-2 [解説] ハイパーボリアの魔術師エイボンによって書かれたものを翻訳したもの。英語版は欠陥のある不完全な翻訳である。 『エルトダウン破片群』 言語:英語             喪失度(知識/呪文):1/2 知識:[イスの大いなる種族]、[時間旅行]、[はるかな未来]、[パンゲア大陸] 呪文:呪詛1-2/神秘1-2/霊魂1-4/夢幻1-4 [解説] イングランドで発見された粘土板に記された象形文字を翻訳したもの。他の生き物と精神を交換する種族について記されている。 『グハーン断章』 言語:英語             喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[古のもの]、[クトーニアン]、[グハーン]、[シュド=メル]、[旧き印] 呪文:空間2-4/召喚3-6/神秘2-4/代謝1-2/霊魂1-2 [解説] アフリカ北部で発見された点文字の翻訳と失われた都市グハーンの位置に関する考察を記したもの。1931年に著者の私費で出版された。 『グラーキの黙示録』 言語:英語             喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[アザトース]、[グラーキ]、[シュブ=ニグラス]、[ダオロス]、[不死者]、[夢引き] 呪文:元素1-2/呪詛2-4/召喚1-2/代謝2-4/夢幻3-6 [解説] 複数のカルティストによって書かれておりグラーキとそれに関連する存在やカルトの実践について説明がなされている。 『黒い石の書』(ドリームランド) 言語:月獣語            喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[カダス]、[拷問]、[ナイトゴーント]、[ニャルラトテップ] 呪文:元素1-4/呪詛1-4/代謝1-4/霊魂1-4 ※ドリームランド限定の魔術を含む [解説] 月棲獣の著者によって書かれたもので黒い石板をつなぎ合わせて本の形にしている。ニャルラトテップ信仰と拷問について取り扱っている。 『黄衣の王』 言語:英語、フランス語       喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[カルコサ]、[黄衣の王]、[退廃的芸術]、[ハスター]、[ハリ湖] 呪文:空間3-6/元素2-4/呪詛1-2/召喚2-4/神秘1-2 [解説] 美しくも恐ろしい言葉で綴られた夢のような詩劇で読者を狂気へと誘い込む。ヒアデス星団にあるカルコサと黄衣の王に関する記述がある。 『サセックス草稿(悪の祭祀)』 言語:英語             喪失度(知識/呪文):1/2 知識:[正確さが損なわれたクトゥルフ神話] 呪文:空間1/元素1/呪詛1/召喚1/神秘1/代謝1/霊魂1/夢幻1 [解説] 『ネクロノミコン』ラテン語版を翻訳したもの。しかし粗雑で不正確な翻訳によって間違いの多い内容となってしまった。 『屍食教典儀』 言語:フランス語          喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[異端信仰]、[グール]、[黒き仔山羊]、[シュブ=ニグラス]、[人肉食]、[霊との交流] 呪文:空間1-2/呪詛3-6/召喚2-4/代謝1-2/霊魂2-4 [解説] カニバリズムや死者を冒涜する背徳的な行為などについて書かれている。出版から間もなく教会から糾弾され発禁処分を受けていた。 『水妖クタアト』 言語:ラテン語、中世英語      喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[イブ=ツトゥル]、[クトゥルフ]、[ダゴンとハイドラ]、[深きもの]、[ルルイエ] 呪文:空間1-2/呪詛1-2/代謝3-6/霊魂2-4/夢幻2-4 [解説] 深きものとクトゥルフ信仰について総合的に記した書物。人皮で装丁され湿度が低下すると汗をかくと伝えられている。 『セラエノ断章』 言語:英語             喪失度(知識/呪文):1/2 知識:[クトゥグァ]、[セラエノ]、[ビヤーキー]、[プレアデス星団]、[旧き印] 呪文:元素1-2/召喚1-4/神秘1-4/霊魂1-2 [解説] ラバン・シュリズベリィ博士が研究成果をまとめ上げたもので失踪する直前にミスカトニック大学の図書館に預けてあった。 『ドジアンの書』 言語:センザール語         喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[アトランティス大陸]、[金星]、[旧支配者]、[霊的進化] 呪文:元素1-2/神秘3-6/代謝2-4/霊魂1-2/夢幻2-4 [解説] 19世紀の神智学者がしばしば言及した世界最古の写本。ミスカトニック大学や「星の知恵派」教会に所蔵されている。 『ネクロノミコン』 言語:ギリシャ語、ラテン語     喪失度(知識/呪文):3/6 知識:[クトゥルフ神話] 呪文:空間1-6/元素1-6/呪詛1-6/召喚1-6/神秘1-6/代謝1-6/霊魂1-6/夢幻1-6 [解説] 『アル・アジフ』を翻訳したもの。その冒涜的な内容ゆえに教会や当局から危険視され、数多くの写本が没収・処分されている。 『バルザイの書』(ドリームランド) 言語:ドリームランドの言語     喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[失われた古代信仰]、[大地の神々(大いなるもの)]、[ハテグ=クラ山]、[蕃神] 呪文:空間1-4/召喚1-4/神秘1-4/夢幻1-4 ※ドリームランド限定の魔術を含む [解説] 著者はドリームランドの賢人バルザイ。彼が破滅する原因となったハテグ=クラ山に住まう神々について記してある。 『フサンの謎の七書』 言語:中国語            喪失度(知識/呪文):1/2 知識:[結界]、[仙丹]、[ティンダロスの猟犬]、[ドリームランド]、[ニャルラトテップ]、[レン高原] 呪文:空間1-4/元素1-2/代謝1-4/夢幻1-2 [解説] 夢幻郷、仙丹、魔物から身を守る方法などが記された全7巻の巻物。かつては仙術について記した書と考えられていたが…… 『無名祭祀書』 言語:ドイツ語           喪失度(知識/呪文):2/4 知識:[ガタノソア]、[古代の邪教信仰]、[ピクト人]、[魔女の森]、[ムー大陸] 呪文:元素2-4/呪詛2-4/神秘1-2/霊魂3-6/夢幻1-2 [解説] フォン・ユンツトが残したオカルト研究の集大成。狂人の夢めいたうわごとが記され、魔術に通じる者でなければ真意を掴めない。 『妖蛆の秘密』 言語:ラテン語           喪失度(知識/呪文):1/2 知識:[アラブ世界]、[イグ]、[古代エジプト]、[ネフレン=カ王]、[星の精]、[魔術] 呪文:元素1-4/呪詛1-4/召喚1-2/代謝1-2 [解説] 中東・小アジア・エジプトにかつて存在した異端的信仰とそのカルトに属する者達が駆使していた忌まわしき魔術が記されている。 ◆11.忌まわしき契約(神話生物の使役) 意思疎通が可能な神話生物の中には探索者の味方となってくれる者もいる。 無論、彼等が人類の為に活動するはずもなく、彼等の利益を追求するために人類を利用しようといったものでしかない。 が、それは探索者にとっても同じである。決して信頼できない相手であるが、彼等の見識や能力は探索に役立つだろう。 (1)契約を結ぶ 《忌まわしき存在の召喚/送還》の魔術により召喚した神話生物は術者と意思疎通が可能であるため交渉相手となり得る。 利害関係が一致したならば魅力度で召喚した神話生物のMLレベルのSRを行う。成功すれば忌まわしき契約を結ぶことができる。 契約を結べる神話生物は通常1体だけであり、探索者の[知性+幸運+魅力]が神話生物のMRを上回っていなければならない。 魔の寵愛の背景を持つ探索者は【魔を統べる者】の特徴により複数の神話生物と契約を結ぶことができる。 忌まわしき契約を締結した相手方の神話生物はパートナーと称する。 (2)召喚・使役する パートナーは、通常、探索者から離れた場所にいる。呼び出すには1D分間意識を集中してパートナーに思念を送らなければならない。 呼び出されたパートナーは自身の命や彼等の利益に関して破滅的な結果をもたらさない限り、探索者の命令に従って行動する。 一方、パートナーの使役は強い精神的ストレスをもたらす。使役している間は探索者のあらゆるSRに-5のペナルティが加わる。 また、パートナーを10分間使役する毎に精神安定度が[パートナーのML]点減少してしまう(10分未満であっても1回は減少する)。 同時に複数体のパートナーを使役した場合、減少量は合計するがSRへのペナルティのままである。 探索者が用が済んだと伝えればパートナーは再びどこかへいなくなる。再び召喚する時はMRは最大値まで回復している。 (3)パートナーの逃走、死、叛逆 パートナーのMRが最大値の1/4以下に低下した時、通常、彼等は自己保存の為に何らかの手立てを講じようとする。 知性が低い個体は死ぬまで命令に従うが、知性のある個体は逃走を図ろうとするだろう(状況次第では裏切りもあり得る)。 パートナーが死亡した時は不浄な塊となって消え失せる。同時に忌まわしき契約も解除される。 何らかの理由で探索者の[知性+幸運+魅力]がパートナーのMRを下回った時、パートナーは契約から解放されて自由の身となる。 この際パートナーがどのような行動をとるのかはGM次第だが、粗末に扱ってきた探索者は必ず逆襲されるであろう。 パートナーが敵の魔術により送還された場合、契約は解除される。再びパートナーにするには再契約が必要である。 ◆12.アーティファクト 地球外の未知のテクノロジーや古代の高度な魔術によって製造された品をアーティファクトと称する。 これらの品は探索の手助けとなるが同時に厄介事を引き起こす危険性もある。 ~アーティファクトリスト~ 『アルハザードのランプ』 狂える魔術師アブドゥル・ハルハザードが所有していたランプ。外観は水差し型のオイルランプで魔法のランプを彷彿とさせる。 未知の文字が刻まれており、火をつけると歴代の所有者の記憶が映像となって浮かび上がる。 『古のものの水晶』 古のもの達がショゴスの従属に必要な魔力を蓄えておくために作り上げた貯蔵容器。水晶のような形状をしていて大きさは様々だ。 所有者は「魔力」の3倍までの魔力をこの水晶に蓄えておくことができ、必要な時にいつでも取り出せる。 『輝くトラペゾヘドロン』 黒光りして赤い線が走る多面結晶体で異形の生物を模った不均衡な小箱に収められている。凝視すると心に異界の風景が浮かび上がる。 これはニャルラトテップを呼び出すための品で「星の智慧派」などのカルトがご神体として取扱っている。 『銀の鍵』 奇妙なアラベスク模様で表面が覆われた大きさ5インチ(およそ18cm)ほどもある銀の鍵。ルルイエ語の呪文を記した羊皮紙で包まれている。 鍵と呪文の力で使用者は時空を超えて望む場所に移動することができる(ただしヨグ=ソトースに認められる必要があるだろう)。 『時間通信機』 イス人と通信するための装置。外見は赤い宝石が埋め込まれた精巧な彫刻で覆われた青銅製のオブジェで前衛芸術作品のようにも見える。 所有者が望むならこの装置を使いイス人と交信することができる。彼等はこれから起きる出来事について示唆してくれるかもしれない。 『停滞キューブ』 イス人が発明した時間の流れを操作する装置。時の流れを遅くしてキューブの中にいる生物や物体をそのままの状態で遥か未来まで保存できる。 この装置の応用で所有者は自分の周囲の時の流れだけを早くして一時的に周囲の者よりも早く行動するといった芸当もできる。 戦闘において所有者は10戦闘ラウンドが経過するまで1戦闘ラウンドに2回行動することができる。この効果は1日に1回だけ使用できる。 『電気銃』 電気の塊を撃ち出して犠牲者に激しい苦痛と電気ショックを与える銃。ミ=ゴが開発した銃とイス人が開発した銃でタイプが異なる。 この銃で撃たれた人間は「耐久」で難易度1DレベルのSRを行わなくてはならない。失敗すると1D分間「硬直」の状態異常を受ける。 武器のデータは次のとおりだ。    名称      価格  ヒット  要体力  要器用  射程  隠密  音量  合法 ・電気銃(ミ=ゴ)   - 5D+3 3 5 2 0 1 〇 ・電気銃(イス人) -   9D+1 10 10 1 -3 2 〇 『ド=マリニーの時計』 不可解な数字と4本の不規則に動く針がついた時計。時計としてはまったく用をなさず、誰が何のために作ったのかは謎に包まれている。 所有者は、1日に1回、この時計を用いて魔術《旅の扉》を発動のSRなし及びコストなしで行使することができる。 使用者の「知性」が25以上であれば上記の《旅の扉》で過去や未来への時間移動も可能となる。 『ニトクリスの鏡』 古代エジプトの王女ニトクリスが用いたとされる鏡。鏡を覗き込むと地獄のような光景とそこで蠢く怪物を見ることができる。 戦闘において所有者は[行動]を消費して射程1(50m)以内の対象1体に鏡を見せることができる。対象が人間であれば「幸運」で難易度1DレベルのSRを行う。 このSRに失敗すると、対象は鏡から飛び出て来た泥々の腕に掴まれて鏡の中に引きずり込まれて行方不明となる。成功すれば何も起こらない。 対象が行方不明となった場合、使用者も「幸運」で憐れな犠牲者と同じ難易度レベルのSRを行う。失敗すると使用者も鏡の中に引きずり込まれる。 『脳収容器』 生物から取り出した脳を良好な状態で保存できる容器。ユゴスの高度な技術が使用されているがドラム缶のようにも見える。 容器に保存できるのは1人分の脳だ。中に入れられている脳は感覚装置によっておぼろげながら外の様子を知ることができる。 『バルザイの新月刀』 青銅製のシミターでヨグ=ソトース召喚の儀式に用いる。所有者はヨグ=ソトースに限り魔術《破滅を招く嘆願》をコスト18で発動できる。 このシミターを武器として用いた場合のデータは下記のとおりだ。また、シミターの刃は神話生物の【非実体】と【防御(n)】の効果を無視する。    名称      価格  ヒット  要体力  要器用  射程  隠密  音量  合法 ・バルザイの新月刀   - 4D+0 12 12 0 -1 1 〇 『噴霧器』 ねじ曲がった金属製の管を集めて塊にしたような外見をした器具。凍てつく様な冷たさをした白い濃霧を管の先から噴出する。 戦闘において所有者は[行動]を消費して射程1(50m)以内の指定した射程にいるすべての生き物に4D点のダメージを与える。防御点は有効だ。 噴霧器による攻撃はヒットを発生させず、攻撃の処理とダメージの適用は戦闘ラウンドの最後に行う。 『ムナールの星石』 《エルダー・サイン》が刻まれた円盤型や星の形をした緑色の石でクトゥルフ神話に由来する存在から所有者を守ると言われている。 この石を持つ者は自身を対象とした階層3以下の魔術の効果を任意で打ち消すことができる。加えて魔術から受けるダメージも1/2になる。 また、[行動]を消費して石を掲げることで、0~4の任意の射程(0m~200m)にいる神話生物のあらゆるヒットを1/2にする。 ◆13.ゲームをプレイする上でのTips (1)プレイヤー向け ・能動的に行動しよう。多くの場合、探索者が動かなければ問題は解決しないし時間が経てば経つほど状況は不利になる。 ・気になった点があれば積極的にメモしていこう。情報量が多いと頭から抜け落ちてしまうものも少なくない。 ・背景やタレントをどう使うか思考力と想像力を働かせよう。1つの目的に対してそれを成し遂げる手段は複数あるものだ。 ・力だけでは対処できない相手がいることを心に留めておこう。時には策を弄したり逃げたりすることも必要だ。 ・GMはキミの敵ではないし他のPLもキミのライバルではない。探索者としてはどうあれ、PLとしては誠意ある言動を心がけよう。 ・探索者を動かしているのはキミだ。探索者は個性を持っているが振り回されないようにハンドルをしっかりと握っておこう。 ・何か困ったことがあれば遠慮なく相談しよう。GMもPLも普通の人なのでキミが考えていることは言葉にしないと伝わらない。 ・死や破滅が避けられない状況で時間的な余裕があるなら手記を残そう。新しい探索者が遺志を継いでくれるだろう。 (2)GM向け ・進行が『詰む』状況を避けよう。ヒントはシナリオの中ではもちろんのことGMとPLのメタレベルで出してもいい。 ・PLの提案によく耳を傾けよう。その理由がわからなければ遠慮なく意図を確認しよう。受け入れ難い提案は素直に却下してもいい。 ・神話生物は脅威であってよい。ただし一方的な虐殺にならないよう注意しよう。事前にヒットの期待値を計算しておくと調整に役立つ。 ・「行方不明」状態になっている探索者は早めに復帰させよう。一時的な逃走であって探索者が探索を諦めたわけではないのだから。 ・描写はできるだけ固有名詞を避けイメージを掻き立てるものにしよう。ストレートな表現は相手に伝わりやすいが恐怖感は損なわれる。 ・ルールの運用をミスっても巻き戻しはせずそのまま進行しよう。ルールの議論もセッションが終わってからにする方がベターだ。 ・1シナリオで減少するかもしれない精神安定度は5~10の間に設定するといい。極端な増減は避け適度な緊張感を保てるようにしよう。 ・セッションを楽しむ上で不都合なルールがあれば自由に変えていい。GM is always right。私の好きな言葉です。 ◆14.サンプルシナリオ『奇跡の村』 1.シナリオの概要 このシナリオは作成したばかりのキャラクター4人が挑戦する想定で作成している。戦闘はしなくてもいい。 舞台は1920年代のアメリカ、コネチカット州にある架空の村『ニュートピア』である(もちろん架空の村なので場所を変えてもいい)。 ある日、探索者達は共通の知人で『ニュートピア』で老いた祖父と暮らしているエドワード・モリスから手紙を受け取る。 ただの近況報告のような手紙に隠された『助けてくれ』というメッセージに気づいた探索者は無事を確かめるべく彼の住む村へと足を運ぶ。 この村は慈善事業家のオリバー・シモンズが建設した救貧村で食料と医療がタダで受けられるという触れ込みで知られていた。 だがオリバーの正体はシュブ=ニグラスを信奉するカルトの主催者で村を訪れる往く宛てのない人々を取り込み洗脳していたのだった。 エドワードと彼の祖父は村の真実を知ったため監禁されている。探索者たちは真相を突き止めて彼等を助け出さなくてはならない。 2.導入 数年前、観測史上最大級と言われたハリケーン『カタリーナ』がアメリカ東部を襲った。探索者達が暮らしていた村は一夜にして消え去った。 嵐が去った翌朝、廃墟と化した住まいからそれぞれ抜け出て来た探索者達は村の広場へと集められた。生存者はわずかに10数人を数えるだけだ。 村民たちの今後について村長は重い口を開きながら次のような内容の話をする。 ●村の再建は絶望的である。再建の準備が整うまでの間、生存者は近隣の街や村に新しく生活の拠点を設けてそこで暮らすべきだ。 ●この村の記憶が消えることのないよう村人同士の交流を続けてほしい。何か困ったことがあればできる限りの手助けをしてあげてほしい。 生存者は村長の話を受け入れ各々の行き先へと向かう。車椅子の祖父を連れた村の少年エドワード・モリスは探索者達に次のような話をする。 ●僕のうちは貧乏でお爺ちゃんの薬代もかかるから思い切ってつい最近新しくできた『ニュートピア』に移住してみようと思う。 ●『ニュートピア』では食料の配給があって医療も無料で受けられるらしい。そこでなら今よりはいい暮らしができるかもしれない。 それから時は流れて現在。探索者達はかつての村の住人達とモグリ酒場で久しぶりの再会を楽しんでいた。 成人しているエドワードと彼の祖父にもこの宴会の案内が送られていたが彼等の姿はない。代わりに1通の手紙が送られてくる。 不自然な文面の手紙には「たすけて、早く」というメッセージが仕込まれている。 ●たのしい宴がひらかれていることでしょう。諸事情あって同席できないのが残念です。私も祖父も元気にしています。  すでにご存じのように私達は『ニュートピア』で暮らしています。ここはとてもいいところです。理想郷とも言えます。  けんこうで文化的な生活を手に入れたためでしょうか。近頃は労働から解放されもっぱら創作活動に力を入れています。  てがみではお伝えできないことが多くあります。折を見て直接お会いできればと思っています。できれば健康な方がいいです。  早く再会できる日が来ないかと待ちわびながらペンを置きます。                                   エドワード・モリス(と祖父レイリー・モリス) ※もしPLがメッセージに気づかない場合は[知性]で1レベルのSRを行わせること。気づけば探索者が気づいたことにしてGMが教える。  全員が失敗した場合は酔っぱらった元村人が左から縦に1行づつ手紙を読んでメッセージが明らかになるものとする。 不穏な何かを察した探索者達は村人達からの後押しもありエドワードの元へ向かう。 3.ニュートピアへ 探索者が望むのであれば現地に向かう前に街で『ニュートピア』について情報収集したり物品を調達したりできる。 時間的な余裕はそうないので1人あたり1-2回情報収集か調達にチャレンジしたら次の場面へと移行する。 新聞から当時のニュースを調べるなら「知性」、街の住人に聞き込みして回るなら「魅力」あたりを基準にSRを行わせるとよい。 指定した能力値で1レベルのSRに成功すると次のようなことがわかる(1回の成功につき●1つの情報が判明する)。 [情報] ●ニュートピアは慈善事業家のオリバー・シモンズが建設した救貧村で食料と医療がタダという触れ込みで知られている。 ●オリバー・シモンズはキリスト教社会主義者でWW1で荒廃した欧州の姿とロシアでの革命に衝撃を受けてニュートピアの事業を始めたようだ。 ●ニュートピアから流れて来る話はいずれも村の成功とオリバーの功績を褒め称えるものである。負の情報は一切ない。 ●先日、人口の変動に違和感を覚えた州の役人が村に向かったらしいがそのまま帰ってこなかったという噂がある。 最後の情報が明らかになると失踪した役人の名前がアーサー・C・ウィルキンスで32歳であることがわかる。 4.奇跡の村 エドワード達が暮らす村まではバスを乗り継いで8時間もかかる。乗用車で移動してもゆうに6時間はかかる。 ニュートピアの入口に辿り着いた頃には既に日が傾きかけている。突然の来訪にも関わらず村人達は皆親切に接してくれる。 しかしエドワード達(あるいはアーサー)について尋ねてもはじめからそのような者はいないといった風に答える。 そして近頃村の周辺に灰色熊が出没するので一晩泊っていくように薦める。 [セリフ案] ●おや、見慣れない方々ですね。遠いところからようこそお越しくださいました。ここはニュートピアの村です。 ●ここは貧しき者、病める者、傷づいた者たちを救済する崇高な目的の為にオリバー・シモンズ様によって建てられた村です。 ●革命的な経営方針によって村人は皆誰もが平等で幸せに暮らしています。移住をお考えでしたらどうぞ隅々までご覧になってください。 ●(エドワード達について)ふぅむ……?そのような方は村にいないと思いますが……どなたかの悪戯ではないでしょうか? ●近頃この村の近辺に灰色熊が出没するようです。夜は危険ですので一晩泊っていかれるとよろしいでしょう。 次に探索者達の行動によって起こり得るイベントを示す。 4-1 村の様子を見て回る エドワード少年が手紙で理想郷と書いて寄越したように村は綺麗に清掃された上で牧歌的な光景が広がっている。 水道からは清潔な水が流れ、牧場には数多くの家畜が暮らし、畑にも作物が溢れんばかりに生い茂っている(※)。 村の様子を見て回ることで[宿泊所][共同広場][村長の家]の場所を把握できる。 また村人から[土牢]の話を聞いていない場合は「幸運」で1レベルのSRを行う。成功すると[土牢]の場所がわかる。 (※)もしアーサーから話を聞いているか『屍食教典儀』を読みシュブ=ニグラスの天恵によるものだと判っている場合、探索者はこの光景の意味に気づいてしまう。    1レベルの恐怖SRを行うこと。失敗すると精神安定度が1低下する。 4-2 村人から話を聞いて回る 村人はいずれも親切に接してくれるが村とオリバーを賛美する話ばかりだ。しかし退屈な話の中に次の新しい情報がある。 [情報] ●オリバー様が提唱された新しい生活様式を始めてから農作物や家畜の生産量が驚くほど増えた。 ●今夜、オリバー様が奇跡の力を示される。20時に村の広場に集合するよう村中に連絡が回っている。 ●この村の存在を好ましく思ってない不審な男が忍び込んできた。男は池近くの土牢に閉じ込めて心をキレイにしているところだ。 これにより[土牢]の場所が判明する。また宿泊所の場所について尋ねた場合は[宿泊所]の場所も教えてもらえる。 なお、村長の家の場所だけは「畏れ多い」として口にしようとしない。 4-3 宿泊所で一休みする(4-1または4-2で入手できる情報が必要) 宿泊所は修道院を思わせるデザインで意図的に古めかしい雰囲気を醸し出している。宿泊料は取られるがほんの数ドルである。 部屋に荷物を置き休んでいると村人がやってきて温かい山羊のミルクを薦めて来る。癖のある匂いがするが健康にすこぶるよいものらしい。 飲んだ探索者は「体力」または「耐久」の最大値が1上昇する。誰が飲んだのかはメモしておくこと。 4-4 村長(オリバー)に会いに行く(4-1で入手できる情報が必要) 村長の家を訪ねても門番は「村長は外出中である」と述べるだけである。脅迫や賄賂は通用しない。 粘っていると門番は「オリバー様に関心があるのなら今夜20時に広場に来なさい。奇跡の力を示して下さるだろう」と告げて追い返す。 もし探索者が戦おうとするなら門番は容赦しない。門番のMLは2でMRは90だ。騒音が3以上の武器を使用すると次のラウンドに援軍が1体現れる。 門番を倒して中に入ると村長の部屋から魔導書『屍食教典儀』と地下牢の鍵が見つかる。 4-5 共同広場を見に行く(4-1または4-2で入手できる情報が必要) 共同広場では催し物の準備が進められている。広場の中央にはオリバーの像がありその周囲では村人達がステージの設営に奔走している。 何があるのかと尋ねれば「20時からオリバー様が奇跡の力を示される」という回答が返ってくる。詳細を訊ねても村人達は知らないため答えられない。 村人達に不審がられないように広場を調査するにはまず[隠密]で1レベルのSRに成功しなくてはならない。 次に「知性」か「幸運」で1レベルのSRを行い、これに成功すると像の台座の裏に隠し扉がありそこから地下に降りる階段が伸びていることがわかる。 これにより[地下牢]の場所を把握できる。もし探索者達が無理にでも[地下牢]に向かうなら「人が大勢おり今はタイミングが悪い」と告げる。 それでも強行突破を図るのであれば村人20人と戦闘になる。村人のMLは1でMRは10だ。1ラウンドあたり戦う人数は20人のうち2D6人になる。 この場にいる村人を全滅させたなら安全に[地下牢]に行くことができる。 4-6 土牢に閉じ込められている男に会いに行く(4-1または4-2で入手できる情報が必要) 土牢にはボロをまとった男が閉じ込められている。格子にしがみつき太陽の光を少しでも多く浴びようと必死の努力をしている。 男は州政府役人のアーサー・C・ウィルキンスで村の秘密を探っていたところ察知されて牢に閉じ込められる破目になった。 下半身は異形化が進み地面に根を張るかのように潜り込んでいる。無理矢理見るなら1レベルの恐怖SRを行う。失敗すると精神安定度が1低下する。 アーサーと話をする前に探索者は彼から信用されなくてはならない。これには「知性」か「魅力」で1レベルのSRに成功する必要がある。 もしアーサーの素性を知っているならSRに+3のボーナスが加わる。SRに成功するとアーサーから次のような話を聞くことができる。 これにより[地下牢]の場所を把握できる。 [セリフ案] ●私の名はアーサー・C・ウィルキンスでコネチカット州政府の役人だ。この村の人口の変動と農作物の収穫量があまりに不自然だったため調査に来ていた。 ●農作物と家畜の収穫量は同じ規模の村と比較して4倍から5倍。村で生まれた子供はいずれも双子や三つ子……またはそれ以上だ。こんな事が起きるはずがない。 ●この村では認可されていない危険な薬品が使われているに違いない。その証拠を見つけるべく村中を探し回っていたところこうなってしまったのだ。 ●逃がしてほしいのは山々だが足が動かなくなってしまった。私以外に少年が1人囚われている。彼を連れて村を脱出してここの実態を政府に伝えてほしい。 ●広場の像の台座の裏から地下に降りる階段が隠されていてその先に地下牢がある。少し前まで私は彼とそこに閉じ込められていた。まだ無事でいるといいのだが……。 ●少年の名前はエドワード。詳しい事情は聞けなかったが村の秘密を知ってしまい牢に連れてこられた様子だった。彼と一緒にいた老人はどこかへ連れ去られ行方不明だ。 4-7 共同広場での集会に参加する(4-2または4-5で入手できる情報が必要) 夜の20時。共同広場に設営されたステージを取り囲むように村人達が集まっている。あちらこちらに松明が灯され宗教的儀式を彷彿とさせる雰囲気に包まれている。 突然、村人達が一斉にオリバー氏を称える歌を歌い始める。歌が終わると勿体ぶらせるようにオリバー、彼のボディガード、満身創痍の車椅子の男がステージに現れる。 ボディガードは車椅子の男をWW1の西部戦線で名誉の負傷をした傷痍兵であると紹介し、オリバーが彼の傷をすべて奇跡の力によって癒すのだと説明する。 オリバーはさながらキリストのように振る舞い、傷痍兵の罪を赦し、彼の口に濁った白色の液体を注ぎ込む。すると車椅子の男は立ち上がり呻きながら顔の包帯を外す。 包帯の下からは焼け爛れ表情を失った顔が現れる。この憐れな男のうめき声は次第に獣のような叫び声へと変わる。口元を見ると文字どおり泡をふいている。 断末魔のような絶叫とともに男は爛れた顔を爪で毟り始める。皮膚と血がボロボロと落ちてステージを汚す。細かった手足はいつの間にか筋肉がつき太くなっている。 おぞましい自傷行為が終わると男は歓喜と共に顔を上げる。そこには火傷の跡も爪の傷痕もなくかつての姿を取り戻した顔があった。あちらこちらから驚きの声と拍手がわく。 村人達は口々にこの奇跡を褒め称え、トランス状態に陥ったようにオリバーの名を連呼する。その光景は異様そのもので探索者達は吐き気と恐怖に襲われる。 この集会に参加している探索者達は全員レベル1の恐怖SRを行わなくてはならない。SRに失敗すると「精神安定度」が1低下する。 [セリフ案] ボディガード ●「今宵この場に集いし者達よ、汝等は祝福の中にいる。神の御心に叶った子、迷える子羊を導く御方が、1人の若者の罪を赦し、神の栄光を現わされる」 ●「ここに召されたる憐れな元兵士。先の大戦で国の為に銃をとり名誉の負傷をした。顔は醜く焼け爛れ、手足の筋は衰弱し、今は立つことすらままならん」 ●「医者は匙を投げ、十字架を負いし者達も不信心ゆえに癒すこと能わず。されどこちらにおわす方がたちまちのうちにあるべき姿へと戻したもう」 オリバー ●「若者よ、面を上げなさい。そなたの試練は多くの者の血を流したゆえに得た罪により生じたもの。されど今、そなたの罪は赦される」 ●「白き雫を口に含み天に祈りなさい。よろしい……そなたの信仰がそなたを滅びの縁から救った」 村人達 ●「奇跡だ!ああ!」 ●「オリバー様!我らが救い主!」 オリバーと彼のボディガード、元傷痍兵は興奮状態の村人達には目もくれずステージから消える(オリバーが《虚空渡り》を強化した独自の魔術を使ったため)。 村人達はオリバーが去っても口々に彼を賛美し続けているが、しばらくすると潮が引いたように熱気は去り、村人達はうつろな表情で一言も発さずに帰路につく。 探索者達は①「このまま地下牢へ向かう」、②「オリバーに会いに行く」、③「宿泊施設に戻り行動のチャンスをうかがう」のいずれかのルートを選ぶことになる。 5.選択へ進む。 5.選択 5-1 このまま地下牢へ向かう(4-7で①のルート) 最も安全なルートである。そうなる可能性は低いと思われるが[地下牢]の場所を把握してなければこのルートは選択できない。 広場の像の台座の裏にある隠し扉から地下に降りる階段が伸びている、その先に牢があり中に眠っているエドワードの姿がある。瘦せ細ってはいるが命に別状はない。 牢には鍵がかかっており、「器用」で1レベルのSRに成功するか地下牢の鍵がなければ開くことはできない。失敗すれば鍵が壊れてしまい力づくで開けるしかなくなる。 声をかけると感激した様子でお礼を述べるが、すぐに北の森に連れて行くように頼む。そこに彼の祖父が連れていかれたのだという。 [セリフ案] ●「俺は夢を見ているのか……?本当に助けに来てくれたんだ……!!」 ●「話したいことは山ほどあるけどそれは後で。お爺ちゃんが北の森に連れていかれてしまったんだ。早く助け出ないと命が危ない!」 地下牢を出てもう少しで村のはずれに到達しようという頃には背後から松明の明かりが見える。エドワードの逃亡に気づいた村人達が捜索を開始したためだ。 村のはずれから北の森へと抜ける道には見張りが4人いる。正面から殴り倒すか何らかの策を用いて彼等を排除しなくてはならない。 見張りのMLは1でMRは15だ。うち2人は投げナイフを装備しており【射撃】の特殊能力がある。周囲には松明が2本灯されていて視界の心配はないものとする。 もし地下牢からエドワードを救出する際に牢を力づくで壊していたならば、1戦闘ラウンド後にML1でMR10の村人が敵の増援として1D÷2体出現する。 探索者が松明を倒すなどの策に出るならその方法に応じて1レベルのSRを行わせる。その場合は全員が状態異常「幻惑」を受けたものとみなす。 逃走するなら戦闘ラウンドが終わったタイミングで「速度」または「幸運」で1レベルのSRを行う。成功した者は戦闘から離脱できる。 6.禁忌の森に進む。 5-2 オリバーに会いに行く(4-7で②のルート) 事件の真相には近づけるが危険が伴うルートである。オリバーの家に向かうと門番は「オリバー様はお疲れだ。立ち去るがよい」と探索者達を追い払おうとする。 もし4-4で門番を殺害している場合でも門番は復活している。その場合は烈火の如く怒り狂い襲ってくるだろう。戦闘する場合はMLは2でMRは150になる。 ここで探索者達が粘るか門番を戦闘で倒したなら玄関にオリバーが現れて探索者達を家の中へと招き入れる。そして探索者達に村の住人になるよう勧誘する。 門番を殺害してもオリバーは一切動じない。なぜなら後で蘇らせればいいと考えているからだ。 オリバーはエドワードと彼の祖父、アーサーについて尋ねても「知らない」としか答えない(探索者が嘘をついていると看破しても態度を変える事はない)。 オリバーは探索者達に好意的で味方に引き入れようとするが無理強いはしない。一方で敵対的な行動をとるようであれば迷うことなく銃を抜く。 [セリフ案] ●「何ですか騒がしい……おや?客人のようですね。私にご用でしたら中でお話を伺いましょう。どうぞいらして下さい」 ●「村長のオリバーです。どうです、ここは素晴らしい村でしょう?飢えも病もなく喜びに満ち溢れた日々を過ごすことができるのですから」 (エドワード、エドワードの祖父、アーサーのことについて尋ねる) ●「そのような者の名は聞いたことがありません。近頃、州政府はこの村に強い警戒心を抱いているようですから、そのような悪い噂が流されているのでしょう」 (村の目的は?) ●「崇高な目標を掲げながらもロバート・オーウェン氏がニューハーモニー村で失敗した理由……それは思想の不統一と生産力の乏しさによるものでした」 ●「私は幸運にもその2つの問題を打ち破る方法を見つけたのです。いえ、正しき神があるべき信仰を取り戻すようお導きなされたと言うべきでしょうか」 ●「正しい信仰を持つ者には豊穣の恵みが与えられます。奇跡を目の当たりにすれば人は信仰の正しさを確信します。そして揺るぐことなく同じ道を歩んでゆけるのです」 ●「いかがでしょう。貴方方もこの村の住民になりませんか?手と手を携え、共に理想郷を建設していこうではありませんか」 (肯定する) ●「貴方達に"黒山羊"の祝福を」 ※その直後、オリバーはシュブ=ニグラスを呼び出す。シュブ=ニグラスは仮初の姿でしかないがML5でMR2750の強敵である。  探索者は全員3レベルの恐怖SRを行なう。失敗すると即座に「精神安定度」が0になり精神を狂わされてしまう。その後は記憶を失ったまま幸せな村の住人になるだろう。  もし幸運に恵まれて成功できた探索者は気絶したフリをして、後日、隙を見て村を脱出することができる。GMは再チャレンジ用のシナリオを用意してあげよう。 (否定する) ●「ふむ、まだ迷いがあるようですね。構いませんよ。もう数日ここに逗留されてもう一度考えてみてください」 ※しつこく勧誘してくるが解放してくれる。この後は①「このまま地下牢へ向かう」か③「宿泊施設に戻り行動のチャンスをうかがう」のどちらかを選ぶ。 (4-4で『屍食教典儀』を奪っているなら) ●「……ところで"あの書"は読まれたのでしょう?誤魔化さなくてもいいですよ。今そうしたことができるのは貴方方の他にありませんから」 ●「"千の仔を孕みし森の黒山羊"……豊穣をもたらされる真のマリヤム。あの御方のお慈悲に授かることの意味はおわかりでしょう?」 ●「選びなさい。私と共に歩むか、それとも、神に背くのか」 ※この場合は肯定すればオリバーと共に村の支配者となる。拒否すればオリバーとの戦闘になる。オリバーのデータは次のとおりである。 オリバー・シモンズ 体力:10 耐久:20 器用:15 速度:18 知性:27 魔力:40 幸運:16 魅力:34 武器:リボルバー(ヒット:4D+10、射程:2) 防具:キュイラス(防御点:6) 魔術:空間1-2/呪詛3-6/召喚2-4/代謝1-2/霊魂2-4のすべての呪文 特殊:オリバー・シモンズは耐久が0になっても即座に耐久20で復活する。これはシュブ=ニグラスの加護によるもので2回まで発動する。    オリバーが復活する場面を初めて見た探索者は即座にレベル2の恐怖SRを行う。失敗する「精神安定度」が2下がる。    また、恐怖SRに失敗した探索者は恐怖リアクション表を振らなければならない。 オリバーを倒すと村人達は正気を取り戻す。エドワードとアーサーは解放される。しかしエドワードは北の森に祖父がいると言い、探索者達に同行を求める。 なお、オリバーを倒したことにより探索者達はそれぞれ経験値150点を得る。6.禁忌の森に進む。 5-3 宿泊施設に戻り行動のチャンスをうかがう(4-7で③のルート) 中間のルートである。宿泊施設で休息を取れるため後々楽になる。望むなら温かい山羊のミルク(詳細は4-3)を飲むこともできる。 探索者達が休んでいると部屋のドアをノックする音が聞こえる。これは探索者達のことをエドワードの仲間ではないかと疑っている村人達だ。 探索者達が無視するならドアの向こうから「エドワードの知り合いだと思うが……」「いや、しかし間違っていたらどうする?」などのひそひそ声が聞こえる。 それでも無視するなら「念のために地下牢に何人か置いておこう。場所はわかるな?」「ああ、オリバー様の像の台座からだろう?」という会話が耳に入る。 その後の展開は5-1と同じだが地下牢で村人3人と戦う羽目になる。村人のMLは1でMRは30だ。手にした手斧には毒が塗ってあり特殊能力【有毒(1)】がある。 ドアを開けると2人の村人のうち1人がエドワードの知り合いかと質問してくる。知らないと答えると何度も確認してくるがシラを切り続けると大人しく引き下がる。 その後の展開は5-1と同じだが見張りの人数が1人増える。 オリバーの知り合いだと答えると村人は「彼は村の掟に反したため閉じ込められている」と説明する。そして探索者達を連れて地下牢まで案内する。 地下牢につくとここで村人達は態度を豹変させて探索者達に襲い掛かる。全員「速度」で1レベルのSRを行う。失敗すると斬りつけられて1Dのダメージを受ける。 その後半ば怪物と化した村人2人との戦闘に入る。村人のMLは2でMRは45だ。倒した後の展開は5-1と同じである。 6.禁忌の森 村を脱出してエドワードの誘導に従って進む。道は森の奥深くへと続いていて視界に木々が増えると共に追手の叫び声と彼等が掲げる明かりは減っていく。 エドワードはこの森が村人にとって特別な意味を持つ場所であり、彼の祖父は何らかの秘密を知ってしまったため森に連れて行かれたのだという。 また、森には使われなくなった教会があり、おそらくレイリーはそこに監禁されているのだとも付け加える。 [セリフ案] ●「やっぱりそうだ。村人達はこの森に入りたがらない。お爺ちゃんが言っていたようにきっとこの森は彼等にとって特別な領域なんだ」 ●「お爺ちゃんは何か隠さなくてはいけないことを知ってしまった。だから村人から隔離しておく必要があったんだ」 ●「前に一度だけ道に迷ってこの森に入ったことがあるんだ。どこかにもう使われなくなった教会がある。お爺ちゃんはそこに監禁されてるのかもしれない」 森のしっとりと湿った冷たい空気は探索者達の体力を奪っていく。 休憩をせずにここまで辿り着いた場合(つまり基本的にはルート5-3以外になる)は全員「耐久」で1レベルのSRを行う。失敗すると疲労の為に3ダメージを受ける。 鋪装されていない道は森の奥へ奥へと続いていく。その途中で人の足跡らしきものと何かが這いずったような跡がある。それらは道を外れて茂みの方へと続いている。 茂みの方へ進むなら幸運度で2レベルのSRを行う。失敗するとどこからともなく飛んできた黒い蔦のようなもので打たれて1Dのダメージを受ける。 茂みの先は沼地になっていて足跡と這いずったような跡はそこで消えている。泳ごうという探索者がいたら命は投げ捨てるものではないとアドバイスするといい。 森の奥へと進んで行くと道の真ん中に灰色熊の死体が見つかる。死体を詳しく調べると灰色熊の死因は絞殺だとわかる(必要なら「知性」でSRを行わせてもいい)。 この事実に気づいてしまった探索者は「知性」で1レベルのSRを行う。成功すると1レベルの恐怖SRを行わなくてはならない。恐怖SRに失敗すると「精神安定度」が1下がる。 続いてしばらく先に進むと古ぼけた教会の跡地が見つかる。外見を見る限り手入れはされておらず朽ちるに任せているが中に入ると誰かが利用しているような痕跡が見られる。 礼拝堂の壇上には聖書の代わりに魔導書「サセックス草稿(悪の祭祀)」が置かれている。探索者が望むならここで魔術を取得することもできる。 教会の懺悔室にはビリビリに破られた紙が散らばっている。これはレイリーが村の秘密を記したメモでオリバーが彼を尋問した後に破いてしまったものだ。 残った紙片をかき集めてつなぎ合わせると意味の通じる文章が出来上がる。エドワードは祖父の書き置きを見て慟哭する。 [レイリーのメモ] ●見てしまった。この村に豊穣をもたらしている者の正体を。オリバー氏は"真のマリヤム"が如何なる存在なのかを知っていて我々に隠しているのだ。 ●なるほど、この村に来て確かに健康は手に入れられた。だが理性や良心が失われつつある事実は告白せねばならない。あの山羊の乳は本当に山羊の乳なのだろうか(※)。 ●私はもう助からぬ。せめてエドワードだけは機を見て脱出させねばなるまい。あの子は私の為によく尽くしてくれた。これからは自らの人生を歩んでほしい。 (※)シナリオ中に山羊の乳を飲んだ探索者はここで2レベルの恐怖SRを行わなくてはならない。失敗すると「精神安定度]」が2低下する。 メモを読み終わるタイミングで建物がミシミシと音を立て始める。探索者達の視点では割れた窓からわずかに黒い仔山羊の黒く伸びた腕が見える。 探索者の全員が建物から出ると建物は押し潰される。そして黒い仔山羊との対面を果たす。全員が2レベルの恐怖SRを行わなくてはならない(エドワードは自動的に成功する)。 黒い仔山羊のMLは1でMRは100しかないが【恐怖(2)】【巨体】【拘束】【再生(10)】の特殊能力を持っている。3戦闘ターンに1度同じ能力値の黒い仔山羊が援軍として登場する。 戦闘する場合は黒い仔山羊を3体倒せば探索者達が安全な場所に辿り着くまで襲い掛かられることはない。7.生還へ進むこと。 逃走する場合は森の外に向かって駆け出すことになる。安全な場所に辿り着くまで「体力」「速度」「幸運」のいずれの能力値で3回1レベルのSRに成功しなければならない。 失敗するその度に黒い仔山羊の攻撃で1Dのダメージを受けてしまう。このダメージは防具で減少させられるが最低でも1点のダメージは受ける。 この時、勇敢な探索者は囮になることで他の探索者1人のSRに+3のボーナスを与えることができる。囮になった探索者は無条件で1Dのダメージを受けることになる。 全員が逃走に成功すると、森を抜けて広い川へと辿り着く。川辺には8人まで乗れる大型のボートが放置してあり、探索者達はそれに乗って危険なエリアを脱出する。 ボートを漕ぎ川の半ばまで到達したところで黒い仔山羊の群れが川を渡ろうと押し寄せて来る。しかしそのうちの1匹が突然近くにいた黒い仔山羊に襲い掛かり同士討ちが始まる。 この個体はレイリーが変異したものだが、GMは真相を知らせてもいいし知らせなくてもいい。その隙に探索者達は川岸の向こう側へと渡ることができる。 7.生還 朝日が昇る頃、探索者達とエドワードは広い道路へと辿り着く。そこで通りすがったバスに乗せてもらうことができる。 生き延びた探索者達はそれぞれ経験値400点を得て「精神安定度」を2D回復する。 後日エドワードの告発によって警察が動きニュートピアは解体されることになる。 だが、探索者達は心安らかに過ごすことはできなくなるだろう。あの森にはまだあの恐ろしい生き物が潜んでいるのだから……