﻿崩壊6


──────────




「いつまで寝てるつもりや影ちゃん！」


一つの声が沈みかけた彼等の意識を引っ張り上げた


「ぐっ……蒼いザンバモンだと……タツミか、どうやってここに！」
「ウチかてホウライオブジェクトのお溢れもろたからな！そんでFEしかりBVしかりぎょーさん無茶やらされて死んできたんや、こんな赤い地獄くらい屁でも無いで………と言いたいけど、アカンキッツイな気ィ抜くとバラバラになりそうや…！！」
骸鎖をラグナロードモンに食い込ませ、背に火線を爆発させながらザンバモンが加速して、自らを盾に嵐を切り裂いて引っ張り上げたラグナロードモンごと押し通る
「こなくそ…だぁああらぁあああっ！！」
雲を抜けた先、蒼月の如く天を支配し神の矛を飲み込まんとするゲートが広がる。その真ん中に揺蕩う魔狼の姿
「ひとつ貸しやでみんなァ！」
「ガハッ、ゲホゲホ……い、生きてんのか俺たち。ルドモンズバモンラグナロードモンお前たちも…！」
「───ああ、彼等がいなければ我々は」
「「助かったぁーっ！」」
「……オマエにしては気が効くな、タツミ」
「泣きべそかいてる思うて急いで来たんやけど強がり言うて影ちゃんも元気そうやなぁ！」


ゲートの引力が明らかに増している。接近する天沼矛と赤い嵐のみならずダークエリアの地形そのものが隆起・剥離しゲートへと向かい始めていた。今頃市街地には落石被害が出始めているだろう
先の脱出までに激しく消耗したラグナロードモンX-proud、ましてやザンバモン朧巻ノ装すらホウライオブジェクトの権能の残滓を預かる身ながらデータストームに受けたダメージは軽くなかった


「泣き言など言ってられるかそんなもの、言える立場じゃないだろう僕らは……！」
「お前は特にそうだよなぁ影太郎ォ……まあ俺もピーピー泣くのはカッコ悪りぃから性に合わねえ。そんで───"泣いてるヤツ"放っておくのも好きじゃねえ、あのデジモン……マーナガルルモンってのみてえにな」
「また兄さんの受け売りを律儀にやるのか、不良崩れのお人よしにはいつまでも慣れんが───そうか、きっとヤツもクオン・I・比良坂たちが理をねじ曲げてでも変えようとしたきっかけの"被害者だった"のかもしれん……か」
「2人の言う通りアイツは泣いとる」
肯定する
「あのデジモンは優里っちゅー子が死ぬ運命から助けたくて仲間を裏切ってでも孤独に戦っとった。戦って、死んで、結局ユウちゃんを護りきれんかった───その時の悲しみに囚われとる。
一度死んだとき大事な大事なパートナーの未来を奪ったバグラモンたちも、パートナーのこと護りきれへんかった己自身の弱さも許せへんかったのや」
「……」
「……」
怨嗟の中に渦巻く孤独と後悔と恐怖
怪物を突き動かし破滅の権化へと染め上げた負の感情。そんなものに支配されることの愚かさと醜さ、そして悲しみも彼らは知っている
「助けたってくれ、あれもウチらの大事なダチやねん」
タツミの願いにデュランダモンの声がおずおずと訴える
「……ねえブリウエルドラモン」
「わかってるデュランダモン。オレたちはそんな無力さと苦しみをよく知ってるもんな……アイツはもう1人じゃ止まれないんだ」
「うん。だからボクらはタツミの言う通り、あの子を助けなきゃ……そう思うんだエータロー」
そしてこの二体もまた運命に翻弄され茨の道を歩む苦悩を辿った者たちなのだ
「運命に翻弄されもはや止まれない、か……どうやらアイツの癇癪に最後まで付き合ってやれるのは僕たちだけが適任のようだな」
「デジモン相手には甘ぇなーオメーは」
「なんとでも言え」
「この俺が褒めてやんよ」
「虫唾が走るな」
「おおきに2人とも」
ゆえに彼らは迷いなく身構える
不死の怪物という姿に押し込められた、助けを乞うという小さな命を見上げて






「───待て、コイツを受け取れLegend-Armsのテイマー！」


突如、彼方から赤いサイバードラモンが舞い戻る。そこに立つ金髪の女性が投げつけた『あるもの』がラグナロードモンのテイマーたちへ到達する
「な、なんだそりゃ…？」
「FE社で研究していたデジモンを強化/進化させるための【試製増強剤】……もっともこれは私のようなスピリットエボリューションなどの進化に作用する人間側向けに調整された代物、つまりお前たちのようなデジソウル保有者用にも効果があるはずだ」
声の主はジャスティナ。彼女のよこした掌サイズのアンプルイジェクター(注射装置)、その片割れを躊躇なくクロウに投げつけた影太郎がこともなげに言う
「ほう、こんな物を用意してまで僕らを倒そうとしたのか」
本来そのアンプルは天沼矛での戦いに敗れ戦闘不能にされた後、命を賭してでもクオンへの防衛ラインを死守するためにジャスティナとルーナが用意していた保険にすぎなかった
結果として戦い受けたダメージは想定を大きく上回り、気絶から目覚めクオンの元へたどり着いた頃には……あの凄惨な光景を目の当たりにし、完全に戦意すら心折られてしまっていた自分の体たらくにジャスティナは歯噛みする
「結局使い損ねたままだったがタツミを見て思い出した……"とっておき"という奴は然るべきタイミングで用いられるべきだろう」
無論、そんな話を敵の餞別とともに聞かされたアカネたちは気が気ではなかった
「影さん危ないです無茶しないで！？」
「エータロー、アカネの言う通りだ危険すぎる！」
「赤い嵐でダメージを負い消耗したその身体で、さらに"バーストチャージ"などを重ねて命をしぼり取る真似をするよりは遥かにマシかもしれんぞ……リスクは飲んでもらおうか」
沈黙は即座に切り捨てられた
「……いいだろうジャスティナ・T・ロード。貴様ら『世界的製薬企業のお墨付き』、お手並み拝見といこうじゃないか」
異論と驚愕を正論で黙らせるジャスティナ
それを皮肉めいて受けて立つ影太郎は、どのみちここでやらねばアカネたちも死ぬかもしれないのだという焦りを隠しながらセットしたシリンダーを構え、もう1人を待つ
「ジュデッカプリズン！！───間に合った、秋月さーん！」
「って今度はなんだよっ！」
「結愛か！？」
頭上に声。副社長派の残存勢力を撤退させ疲弊した様子のカオスデュークモンが赤い嵐を盾のビームで切り裂き現れる。直後タイムリミットが訪れたのかマトリックスエボリューションが解け……
「あっ！？」
「結愛さーーん！こっちも間に合った…ご無事ですか」
結愛を受け止めたアカネとジャスティナが安堵し結愛が感謝を述べ、改めて影太郎に叫ぶ


「全部聞いてました、せめて私たちも力添えします。───クルモンの『デジエンテレケイア』の力もあわされば一時的にラグナロードモンを強く……秋月さんの言っていた"あのチカラ"を呼び起こすことができるかもしれません！」
結愛の提案により増強剤とデジエンテレケイアという外部からの強化を盤石とする。無論それはぶっつけ本番であり、この土壇場でのギャンブルが始まる
「了解だ、僕たちの合図を待て。"あの力"……ラグナロードモンの潜在能力を引き出させるためとはいえ当然見込まれる反動もかなりのものだろうなコレは」
それを受け入れる理由は意外にもシンプルだった
「だがなタツミ───命懸けで戦ったお前に免じて応えてやる。こちらも命懸けでな」
ライバルの貫いた奮起に抱いた覚悟を見届け、ジャスティナは黙りこくっていたもう1人へと向き直る
「お前はどうだ、鉄塚ク」
「ああ、やってやんよ」
「……随分と安請け合いしてくれる」
「アンタらがイレイザーと手組んでやってきた悪事は憎むべきモンだと思うぜ、俺の仲間にもちょっかい出してくれたしな。けどな……今この瞬間いろんなモノを助けるために立ち向かわなきゃいけねえもんくらい俺にもわかる。
本当はアンタが一番コイツ(増強剤)を護りたいモンのために使ってどうにかしてえんだろ。そんな大事なモンを敵の俺たちに託してまでくれるってんだ───引き下がったら男が廃るぜ」
「……それだけで、か。やはりお前はそこの秋月影太郎より遥かにロジカルさに欠ける人間だな」
「ああ、クロウのパートナーのオレはよーく知ってるぜ。だからこそオレは救われた」
「エータローもボクもね」
ブリウエルドラモンが凛とした声で頷き、影太郎に聞こえぬようひっそりとデュランダモンが付け足して微笑む
「……羨ましいよ、その勇気」
クロウもまたアンプルを身構え深呼吸。双方の準備が整う
「しっかし見た目ゲームとかで見るヤベー注射器じゃねーか……かぁーっお前だけケロっとしてたら承知しねーかんな影太郎ォ…！」
「お前には恨まれ慣れている。覚悟を決めろ鉄塚クロウ」
「ハァ……よっしゃあいくぜ！！」
「頼んだぞ、Legend-Arms…！」
声を合図に引き金を絞る
バシュッ
首筋に増強剤アンプルが打ち込まれた間もなく、異変
「「ぐ…ぉああああああっ！！！」」
苦痛を噛み殺しながら握り込んだ2人の拳に、ラグナロードモンへ注ぎ込んだ以上の2色のデジソウルが煌々と闇の空に瞬いて
「やれぇ、結愛ー！！」
「おねがいクルモン……進化の光よ、どうかより良い結末を切り拓く力をあの人たちに！」
「クルクル……クルーーーっ！！」


「「うおおおおおおおおお！！！」」
「「限界を超えろ……ラグナロードモン！！！」」


その全てを今一度デジヴァイスバーストに叩き込み、進化の光を開放させる
背輪に宿るプログラムコード───それは遠き異世界にて【ディスラプター・コード】と呼ばれた神託の光
秋月影太郎がFE社採掘跡地にホウライオブジェクトの記された遺跡に見た異世界の碑文。そしてかつて【DW:ヘパイストス】に迷い込んだ鉄塚クロウとルドモンが見た神滅のチカラ……"別世界のLegend-Arms"がその身に刻んだとされる『世界を滅ぼす不死の怪物を討つ権能』を彼らは不完全ながらも力尽くで呼び起こした
駆け巡るデジソウルの輝きは彼らの金とも紫とも違う力の奔流に臨界点の稲光と"太陽の緋色"に染まり、灰吹に研ぎ澄まされ輝きを増しゆくようにラグナロードモンの身体が白と黒の狭間の色をさらなる高みへ───"白銀の執行者"へと昇華してゆく






「ラグナロードモンX-proud───【エグゼクター・プライム】！！！！」
　







──────────


蒼き死神と銀の執行者が征く


「「「くらえええっ！！！」」」


もはや血塗れの魔狼の振りかざす刃渡りはゆうにラグナロードモンの躯体を超えており、空間断裂エネルギーを収束し、さらなる長大な黒い大剣(ワームブレイド)と化したそれを一撃一撃に全身全霊で鍔迫り合い凌ぎ合いを繰り広げながら懐へ飛ぶ2体の究極体デジモン
「荒療治になるでぇ、その食うたモン吐いてユウちゃんトコに帰るんや！」
ザンバモン朧巻ノ装がひらりと躱わした腕へ八艘に飛びつきながら刀を突き立て疾駆、そのまま再び千刃の竜巻となりマーナガルルモン・ゴスペルの右腕をすれ違いざまに裂き千切る。千切った側から再生する右腕へダメ押しに背負う蒼炎を破裂させ焼き縫い一撃離脱
「今ならば我が白き力・黒き力、共に振るってみせよう───デュランダルエッジ/ブリウエルガーダー……ゆけぇッ！！」
よろめいた魔狼へ銀のラグナロードモンの両翼からデュランダモンのソード・ブリウエルドラモンのシールドビットが飛び立ち、乱れ狂い咲くトロンメッサーとイグニッションプロミネンスという完全火力をもって飽和する空間断裂の泡を根絶し、そのままマーナガルルモン・ゴスペルの躯体を穿き払う


「「「ウォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーー！！！！」」」


不死殺しの力が怪物を蝕み、しかし不死の遺物がもたらすチカラは怪物の躯体を拮抗させながら突き動かし、ぶつかり合い切り結ぶ。何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も数えきれぬほど！
闇の空の彼方に赤い嵐と空間の断裂を轟く剣たちが幾度と薙ぎ伏せ、天地を揺るがすような剣圧が支配する戦場で彼等はそれぞれの尊厳と意地と存亡をかけて激突する！


「ウガアァアアアァァアアアアア！！！！！」」


斬られた身体は再生し、膨張し、痛みを伴いながら魔狼の躯体を創り改めてゆく遺物の力。それは不老不死の伝承というにはあまりに歪な権能だ
理性は削がれ、戦いに命を幾度も削がれ、魂の尊厳は削がれ、その果てに待つ森羅万象を呑み込み駆逐する存在への変貌
壊れゆく厄災の心は復讐のため狙い定め殺したバグラモンという怨敵の"パートナーの少女"の面影を探し荒れ狂ってゆく
「どこだァァァ！！どこにいるクオン！！！！」
その怒号は遠く彼らの耳にも届いていた
「ガブモンがクオンをさがしてる……」
「空間断裂で一気に消し飛ばせば済むものを、わざわざワームスフィアで手当たり次第手繰り寄せるか……どうやらヤツはなんとしてでもクオン・I・比良坂を探し出し"その手で直接"殺したいらしいな！」
「イロージョン・ラプチャァァアアアアア！！！」
「避けろメタルグレイモン！」
「このままではヤツに捕まるぞルーナ！」
天沼矛から離脱したルーナらを追い縋るマーナガルルモンの魔の手は着実に彼女らを包囲し追い詰めてゆく
小回りの効きにくいメタルグレイモンXWの巨体を必死に反転させ推力任せに退きちぎるが先の戦いで負傷消耗したエネルギー、そして背中に寄せた重傷のクオンを庇うルーナ・優里の存在が機動力を削いでいる
「ふせて！サイバードラモン、イレイズクロー！」
追い縋る空間断裂の泡へ、メタルグレイモンの直衛に到達したアカネとジャスティナと結愛を乗せたサイバードラモンが空間ごと裂くイレイズクローで相殺を試みる
……が、同じ空間操作の力が激しく反発し合い、サイバードラモンが大きく弾き飛ばされてしまう
「きゃあああっ！？」
「ア、アカネ大丈夫カ…！」
「くそ、たった一つ退けるのも容易く無いか……！」
クオンの安全のためあとどれほど遠くへ逃げれば良いか誰にもわからない。今は囮になってくれるラグナロードモンとザンバモンの二体がいるが、あの二体の猛攻を受け滅することのできない不死の怪物がいずれ襲いくる恐怖が拭えない
マーナガルルモンがソイツらを出し抜きいつ自身をワープさせ追いすがってくるかもわからない
どうすればいい。どうすればいい───誰もが絶望を目の当たりにしかけていた


「お願いがあります」
クオンの手を今一度強く握った小さな手が離れ、立ち上がる
「次の攻撃のタイミングでギリギリまで引きつけた空間断裂に───"ぼくを放り投げて"ください。あの泡に飛び込めばきっとガブモンの元へいける……もしかしたら説得できるかもしれない」
その馬鹿げた提案に、思い詰めていたルーナが取り乱す
「バカな…あの中に飛び込んで無事でいられる保証はないんだぞ！？」
本来のマーナガルルモンが使役する空間断裂イロージョン・ラプチャーに巻き込まれれば、天沼矛を容易く穴だらけにする力場にねじ切れ押し潰され塵も残らないのかもしれない───だが、途中から彼が見せたイロージョン・ラプチャーは周辺空間ごと削り遠方にワープする際にマーナガルルモン自身にそのダメージは見受けられなかった
そして今、マーナガルルモンが手繰り寄せる瓦礫たちも綺麗な球状に削り取られたままのカタチで……つまりクオンを『生け捕り』にすべく力をコントロールしてるのだ
そこに紛れることができればマーナガルルモンに取り付き声を届けられると優里は睨んだ
「それでも行かせてください、ぼくのパートナーを止めるために」
ルーナがバツの悪そうなままクオンへ視線を落とす
この少年との再会には彼女にとってどれほどの軋轢が生まれたのだとして、それでもようやく蘇らせた大切な人間を再び死地に送り出す真似を知った時どう思うだろうか
意識を手放し二度と戻らぬかもしれないクオンへ迷い……
「すみません社長、この状況を打開するためには……お許しください。メタルグレイモン！」
「了解！」
メタルグレイモンが天沼矛の影を周り、マーナガルルモンの射程範囲へと一気に加速してゆく
「泡の外壁から手足が僅かでも露出すれば、収束消滅時にそこは千切れ飛ぶだろう───次の空間断裂飽和爆撃のタイミング、付近の最も大きい泡の中心部へお前を届ける！」
「お願いします……！！」










──────────




「クオン、クオンクオンクオンクオンクオンクオンめぇぇええ！！死ねえええええ！！！！」　
地平の彼方まで飽和するかのように爆ぜるイロージョン・ラプチャー
「躱せラグナロードモン！！」
「アカン、また大岩とガラクタがぎょうさん傾れ込んで邪魔してきよる！」
「クソがぁ隕石ごっこなんて愛媛でゴリゴリなんだよこっちは！！」
マーナガルルモンの眼前には手繰り寄せた瓦礫と残骸とガラクタがひしめき、力場に弾き出された全てが流星のように降り阻む
それらを蹴散らしながらも動きが鈍ったラグナロードモンとザンバモンへさらに瓦礫を収束させ……───蠢く人間の気配
魔狼の嗅覚が命の気配を見つける
見つけた、クオン・I・比良坂に違いない
「そこかァァアアアアア！！！！！」
一切合切一片残らず消滅を望む
怨敵クオンを
邪魔する者たちを
何もかもをこの一撃の元終わらせてやる


勝鬨の遠吠え
掲げた剣に全てのエネルギーを乗せ、黒い大剣が折り重なって天を貫く。必殺の───








「ガブモーーーン！！」








「優、里…！！？」
だが……そこに現れたのは怨敵ではなく、宙に放り出された『護るべき主人』の姿
声が届く。目線がまみえる。たとえ落ちゆく身体でもよじりもがいてマーナガルルモンへと手を伸ばす
だが気がついた時には時既に遅し。最高出力に滾り天へと貫き昇る闇の柱となったワームブレイドが優里へ───マーナガルルモンが唯一護るべく者へと落とされてゆく
「止まらナイ…イヤダ……やめろォおおォオオーーー！！！」


「───そうか、きっとその子がお前のパートナーなんだな？」


「！？」
稲光、正面に突喊するシルエット
ライジルドモンBMと同じ"雷速"と化し、巨壁のように圧倒するワームブレイドを牙に喰い止め、噛み砕く
ブリウエルドラモンの盾を今一度大きく振り翳しながら躍り出た銀の終極騎士が轟く
「マーナガルルモン、オマエがそうまでして戦う理由の全部は今日会ったばかりのオレにはわかんねえよ。だが……だがなァ、オマエに"パートナー殺し"なんて真似───この"オレ"がさせるかよォオオオオオ！！」
「！！？」
「歯ァ食いしばれェえ！！イグニッション……プロミネンスーーーッッ！！！」
竜盾の主が叩きつける鉄拳制裁。ゼロ距離に瞬いた白日の焔に焼かれ、惑う魔狼が致命的に揺らぐ
そして今、決着の刻










「千首！！獄門───！！！！」


「「デュエルエッジィイイ！！エクスフロォォオージョンッッ────！！！！！」」










マーナガルルモン・ゴスペルへ解放せし交錯する最大必殺。竜盾の焔纏いし旭日の神剣が十字架に折り重なって魔狼の胴を灰燼へ帰して断滅する
戦いの終局を告げるように、深々と刻まれた獣の躯体の内より白い光が突き破った
「ホウライオブジェクトが分離した！！」
「逃すかぁ！！」
蒼いザンバモンがすかさず遺物と優里を握り掴み、血の色が消え完全に力をなくした魔狼の亡骸をラグナロードモンが受け止める
「ア゛…ァ゛、あ……」
「ガブモンっ！！」
ザンバモンから飛び降りてラグナロードモンの上を転げるように走り、ようやく小さな身体がマーナガルルモンを抱きしめる
「ガブモン……やっとキミに声が届いた」
「……ユ…ゥ……リ。《ヤクタタズ》……デ、ゴメン…ネ」
「！？」


───『ぼくはずっと、他のガブモンたちと違ってのろまで《役立たず》だって言われてきたから。でもね……』


その謝罪の言葉はかつて優里が共に旅立ちを決めた日の、ガブモンの弱音と決意を記憶の奥底から連れ戻す
一族から落ちこぼれと揶揄され、爪弾きにされ、戦うことも本当は怖くて苦手で、そのくせ困ってる誰かを助けるために我先に動いてしまう
孤独に苛まれながら居場所を探していたガブモンが、記憶を無くし孤独に彷徨う優里と出会い変わろうと決意した日
「そんな事言うなよ。今更そんなこと言うなよ約束しただろキミと最初に出会った時に、二度と自分をそんな風に責めないでくれって……！」
「……オボエテテ、くれタんダ……」


───『……でもね、優里のために頑張りたいって思ったらなんだか何でも出来そうな気がしてきたんだ。臆病さを超えてがんばれるって予感がしてるんだ』


「でモ……優リは、ボクが負ケタせいデ、ずっト……ずっと寂シクテ辛クテ……苦シンだかラ……約束、マモレナカッタ…カラ……」
「もういいんだ。ぼくだって父さんたちにまた逢いたかったけど、全部知ったとき確かに寂しくて辛くて……だからあんな偽物の希望に縋ってキミに果たせない約束を押し付けてしまった。……そんな姿になってまで戦おうとしてくれたキミの友情を利用してずっと苦しめて、ぼくらの大切な仲間やみんなを裏切って傷つけさせてしまっていたのは全部ぼくの弱さのせいだ」
「ユウ…り」
「神様にとってぼくは孤独のまま消えればよかった最低な人間なのかもしれない………でも、でもねガブモン」
嗚咽し零れ落ちた涙が、額に押し付けたマーナガルルモンの頭兜に滲んだ血の涙をにじませて流していく
「ぼくはあの時クオンたちやオボロモンや……何よりぼくを見つけてパートナーになってくれたキミに出会えたことが嬉しかっただけで救われてた───はずなのに……！それを否定したくないのにどうしてこうなっちゃったんだろう……ごめん、ごめんよみんな」
「クオンとバグラモン……ボクハ許せナイ。ケド、仕方なかったンダ……よね。優里と一緒ニ、皆ト一緒ニ、モット良い答エを探せたカモシレナイノニ……本当はワカッテタ…のに……ソレヲ選べ無かッタ───怖かった。ボクも……弱イデジモンだ」
「……同じ、弱虫だねボクら」
「ウン…弱虫ダカラ、支えあって、強クなれた……気ガしたンダ優里」
ごめんね。ありがとう。贖罪と感謝の間に時はただ進み、マーナガルルモンの身体が分解されていく
「ボク、モ……最期に、優里とまた会えて…話せて嬉しかった。コレカラ、モ……ドウカ、生きて……」
それ以上、優里は何も言えず言葉を詰まらせて蹲った
「オボロモン、優里を…頼ンデ、イイカナ」
「『───御意』」
「ありが、トウ……」
マーナガルルモンがデジタマへと回帰する
その行手、未だ広がる空の奈落へと優里の差し伸ばす手を置き去りに遠ざかる
「ガブモン……ガブモーーーンっ！！！」
「『ユウリ』」
「……オボロモン、タツミさん」
ザンバモン朧巻ノ装の内より響くオボロモンとタツミの声。彼らもまた共にガブモンの消えた空を見上げていた
「クオンとガブモンを助けてくれてありがとう……」
「『さらばだガブモン……我が友の相棒よ』」
「みんな大事なモン守りたいだけやのに神様っちゅーのは時々残酷な真似しよるな……オマエの気持ち少しくらいは理解するでバグラモン。けどな───」


「こんなもんのために、オマエの大事なモンにまで余計な悲しみを撒き散らしながら創った世界に、正しさとこの子たちの幸せが何処かにあると決めつけるなんて烏滸がましい思わんか」


「さぁ、オマエを見るんは何百年ぶりやろな───全部終わったらこの落とし前はつけてもらうで。ホウライオブジェクト/蓬莱ノ輝塊」


──────────
崩壊:7→