嵐の酷い夜。 一人の少年、ドロールが森の中を彷徨っていた。 「はあっ‥‥はあっ‥‥」 服もぐちゃぐちゃに濡れ、鉛のように重く肌に纏わりつく。 一人旅の途中、路銀を稼ぐ為に薬草を取りに行ったのは良いが、 突然の嵐に遭遇してしまった彼は、どうにかして森を抜けて、近隣の村に戻りたかった。 「わあっ!」 木の根に足を取られ、派手に転んでしまう。 結果として、道に出られた事は幸運だった、だけど。 突然道に飛び出た彼に、馬車がきしんだ音を立てて急停止した。 何かの割れる音がし、御者の男が慌てて馬車を降りる。 「おいっ! 何やってるんだ!」 怒鳴り声にびくりと肩を震わせる。 明らかに何かを運んでいた馬車。その何かを壊してしまったのだと、ドロールは顔を青くした。 「ご、ごめ‥‥ごめんなさい」 「このガキ! 何してくれてんだ!」 「ひっ!」 馬車の荷台に乗っていた男が、ドロールに掴みかかった。 「ご、ごめんなさい! ごめんなさいっ!」 「どれだけ高値の物を運んでると‥‥」 「おい」 「は、はいっ!」 馬車の奥から、主人に呼ばれ、御者の男が慌てて返事をする。 「そのガキを、俺の前に連れてこい」 「え?」 どういう事か分からないまま、ドロールは彼の元に連れて行かれた。 「あ、あの‥‥」 「良いから乗れ。お前にはきっちり落とし前を付けて貰わないとな」 ドロールは震えながらも、馬車の荷台に乗り込んだ。 後ろには、滅茶苦茶になった積荷が転がっている。 壺に入った薬品や、木製の樽に入れられた食料品。 どれだけの損失かは見当も付かないが、相当な額になるだろう。 少なくとも、一人旅の途中、日々その日暮らしの為の日銭を稼ぐ事で精一杯のドロールには、到底払える額では無い。 「あ、あの‥‥」 ドロールは恐る恐る、荷台に乗っていた男に声をかけた。 男は、ドロールを値踏みする様に眺めながら、にやりと笑った。 「金貨で‥‥ざっと30枚ってとこだな、弁償できるのか?」 「無理、です。ごめんなさい‥‥」 本当に、お金なんてほとんど持ってない。ただの一人旅の身だ。 「そうか。なら、体で払って貰おうか」 「え‥‥?」 ドロールは男の言葉に、思わず後ずさる。 男はそんなドロールに、下卑た笑いを浮かべながら近づいた。 「俺の“情婦”になれ。拒否権が無いのは、分かってるだろ?」 ドロールは男の言葉に、ごくりと喉を鳴らした。 男が何を言っているのか、それがどんな意味を持つのか。そういう事に疎いドロールでも分かった。 断って逃げ出そうにも、いつの間にか馬車は走り出してしまっている。 逃がすつもりはない、そういう無言の圧。 結局、逃げる事も出来ず、男の屋敷へと連れて行かれてしまった。 「あ、あの、僕‥‥」 「良いから来い。お前は今日から俺の“情婦”だ」 屋敷に付くと、男は出迎えに来た従者に、荷物がダメになった事、ドロールを情婦として迎える事を話す。 従者は、男の言葉に頷き、ドロールを屋敷の中に連れて行った。 屋敷の中には、数人の使用人が居て、ドロールに値踏みするような視線を送る。 「あの‥‥僕‥‥」 「旦那様のご命令です」 「あ‥‥」 使用人はそれだけ言うと、ドロールの服を剥ぎ取る。 「や、やめて!」 使用人は表情一つ動かさず、ドロールの服を脱がしていく。 上着を取られ、ズボンも脱がされ、あっという間に裸にされてしまった。 そのまま身体を洗われると、女性用のネグリジェを着せられる。 それを行うのが、可愛らしいメイドだったせいで、ドロールの”雄”が反応してしまう。 「あの、僕‥‥!」 何かを言いかけても、全部無視される。 そうして連れ込まれた寝室で。 「ほう、中々似合うじゃないか」 「う、うう‥‥」 ドロールは男に言われるがまま、彼の前に座る。 男は満足そうに笑うと、ドロールのネグリジェの上から、彼を愛撫し始める。。 「一丁前に硬くして、ま、世話用のメイドも上玉選んでるからな、反応するのも無理無いか」 「い、嫌っ!」 「お前に拒否権があると思うか? お前は俺の“情婦”だと言っただろ?」 男はそう言って笑うと、ドロールの身体をベッドに押し倒した。 余りの力の差に、ドロールは抵抗も出来ずに組み敷かれてしまう。 脚を開かされ、尻を撫で回され、ドロールは恐怖に顔を歪ませる。 ベッドにうつ伏せで抑えつけられ、尻の谷間に指が差し込まれる。 「やだ、やだやだやだ!」 男の指は、そのままドロールの谷間をなぞり、その奥にある窄まりに辿り着く。 そこに男の指先が触れると、ドロールの身体がびくんと跳ねた。 男が何をしようとしているのかを察したドロールが、顔を青くする。 そんな彼の恐怖を楽しむように、男はゆっくりと指を挿入していく。 「い、痛いっ!」 「暴れるなよ」 男はそう言ってドロールを背後から抱きすくめ、耳たぶを舐めながら囁く。 男の指先が何度も出し入れされ、少しずつそこが解されていくのを感じる。 そして、覆いかぶされて、何をされるのか察してしまうドロール。 「やだ、やめてください‥‥僕、男なのに‥‥!」 必死に抵抗しても、男はそれを無視するように行為を始める。 ドロールは、自分の中に何かが押し入ってくるのを感じ、思わず目を瞑った。 「い、痛‥‥!」 「大丈夫だ、力抜け。最初は痛いかもしれないが、すぐ慣れるさ」 この行為が、今の1度だけではない事を暗に示され、ドロールは恐怖に顔を歪ませる。 男はそのままゆっくりと腰を動かし始めた。 「や、やだ! 抜いてっ!」 ドロールがそう叫ぶと、男は彼の尻を叩きながら言う。 「お前は俺の“情婦”だと言っただろう? お前に拒否権は無いんだ」 そんな男の身勝手な言葉を聞きながらも、彼は必死に痛みに耐える。 だけど、徐々に徐々に、痛みとは別の感覚を感じ始めた。 「や、やだ‥‥ぁ」 声が震える。 でも、その声は、暗い部屋の中に吸い込まれるだけだった。 僕は男なのに、なのに、なのに―― そんな抵抗の思考も、抜き差しの度に薄れていく。 そんな訳ない。僕は男だし、好きなのは女の子だし、 なのにどうして、こんなに―― 「あ、あっ‥‥」 男の腰の動きが、少しずつ早まっていく。 それが何を意味しているのかは、ドロールでも分かった。 「やだ‥‥やだぁ!」 「ほら、いくぞ」 男が呻くと、腹の中に温かいモノが放たれるのを感じた。 「い、いやあああっ!!」 悲鳴を上げるドロール。男は最後の一滴まで吐き出すように腰を動かし続ける。 もう嫌だ。こんな事されるなら死んだ方がマシ、そう思っている筈なのに、お尻は彼の物に絡んで。 ベッドには、情けなく吐き出した自分の精液の染みが広がっていた。 「あ‥‥ぉ‥‥」 ドロールは、自分の中に出された物を感じながら、呆然としていた。 それに合わせて、自分も射精してしまった事実に、彼は絶望する。 「これからよろしくな」 「う‥‥うう‥‥」 男はそう言いつつドロールの中から引き抜くと、身なりを整えて部屋から出て行く。 部屋に一人残されたドロールは、暫くその場から動く事が出来なかった。 それからは、ドロールにとって地獄のような日々だった。 女の子の恰好をさせられ、毎日男に抱かれた。 抵抗は無駄だと悟った彼は、只々人形のように、男の命令に従う事しか出来なかった。 だけど、地獄というのは間違いだったのかもしれない。 煉獄‥‥そう呼ぶのが、最も正しいのかもしれない。 毎日毎日受け入れていれば、当然痛みは麻痺する。 それどころか、次第に快楽すら感じるようになっていった。 「あ、ああっ!」 男が腰を打ち付ける度に、ドロールは甘い声を漏らす。 だけど、それを求めない心が悲鳴を上げる。 ベッドにうつ伏せにされると、犯されやすいように脚を情けなく広げるのを拒否したい のに、それも出来なかった。 「や、やだ‥‥こんなの‥‥」 顔を赤くしながらドロールは呻くも、腰を打ち付けられた瞬間にそれすらも出来なくなる。 男に突かれる度に、思考がぐずぐずに溶けていくような錯覚を覚える。 もう自分は男じゃないのかもしれない、その懸念が生まれたのは、朝の勃起が無くなった時だった。