FEAST独立のご挨拶 FiveElements Agricultural&Stockraising Technologies、略してFEAST社は、ファイブエレメンツ社再生医療事業部と同農畜産事業部を母体とし、ファイブエレメンツ社の完全子会社として発足しました。 しかしこの度株式の100%を取得し、晴れてファイブエレメンツ社から完全独立を果たし、一企業として再スタートを切ることになりました。 これもひとえにたくさんのご支持をくださったクライアントの皆様方と、粉骨砕身してきたスタッフたちのおかげです。 昨今、デジタルモンスターのリアルワールド流入に伴う食糧危機が叫ばれる中、我々FEAST社はセルフクローニング再生医療技術を応用した画期的な農業と牧畜による食糧生産の向上で世界の明日に貢献したいと願っています。 『誰もが食で満たされる理想の世界』を社是とし、FEAST社はデジ家畜の開発とデジタルワールド農業開拓事業に邁進していく所存です。 これからも皆様のご愛顧のほどをよろしくお願いいたします。 FEAST代表 神馳 悟 「粉骨砕身が文字通りだとか誰か気づけるのかな、デジタマモン?」 #FE社崩壊後の神馳悟 『ひと屋の新入り』神馳悟は、幹部と共に選ばれし子供達と交戦。幹部を庇った悟は重症を負います。 その時、悟はデジタマモンをクロノモンに進化させ幹部を連れて撤退、応急処置としてクロノモンの能力を自身の肉体に使用します。 その影響で悟はクロノモンが認識してる『時空・事象の改変』を認識し、彼の中には改変前の記憶と改変後の記憶という二重の記憶が存在する状態になります。 異なる二つの記憶を比較検討した悟は、改変前のFE社の残滓を使えば自分の望む世界が作れるのではないかと画策します。 クロノモンはオリジンではなく再現した個体であり、その力はまだ不完全かつ不安定。 そのため悟は過去に遡っての改変ではなく、現状からの変革を選択します。 悟は愛甲真由美に自身の認識しうる限りの世界の改変を話し、「一緒に世界を変えませんか?」と持ちかけます。 そして、かつて天沼矛があったエリアの確保と占拠を依頼します。 悟はリアルワールドに帰還、新生ファイブエレメンツ社に入社すると改変前のFE社で得たクローン技術を用いてセルフクローニングによる再生医療を実用化。 同様にデジモン改造技術を応用したバイオテクノロジーで農薬や家畜用医療も躍進させます。 このままFE社内で勢力を伸ばし続けると社内政治で脚を引っ張られかねないと危惧した悟は再生医療事業部と農畜産事業部の子会社化を打ち出します。 FE社の完全子会社として発足したFEAST社は改変前FE社の旧施設があった場所を次々と買収、ついにはダークエリアへの直通ルートを手に入れます。 『デジモンのリアルワールド進出に伴う食糧危機の解決』をお題目に、家畜化した食用デジモン開発事業とデジタルワールドでの農業と畜産を目的とした開拓事業を開始。 その真の目的は世に知られぬまま、ダークエリアの『天沼矛跡地』に「ヴィンゴールヴ技研」、通称V技研が建設されます。 そこでは、ある目的のために日夜デジモンと人間の研究開発が行われています。 しかし、多重の侵入防止策と厳重な警戒態勢により、その真相はまだ誰にも知られていません。 神馳悟とデジタマモンは、果たして彼らが理想とする世界、「人が人を食しても咎められない、食人が当たり前の世界」を作ることができるのでしょうか? 開発中のデジモン アンブロモン 成長期 家畜型 フリー種 「食用であること」を目的に開発されたデジモン。シープモンをベースとしている。非常に成長が早く、とてもおとなしい性格。 食用であるために一切の攻撃技が削除されている。美味。意外と食欲旺盛。 ゼフリムモン 成熟期 家畜型 フリー種 ボアモンをベースとした食用デジモン。アンブロモンが進化する。 特徴として、殺して肉にしても残った部分がデジタマとなり、翌日には元のゼフリムモンに戻ることが挙げられる。 その代償か、このゼフリムモンは非常に食欲が旺盛である。 ただし、何の役にも立たないような廃データや到底生物が消化できないような物質でも食べることができる。 これらの能力は、とある「死んでも蘇る黒いアグニモン」の研究データが活かされているという。 食用としてはこれ以上の進化は不要なため、進化できないようにデータ総量が閾値を超えると自死するようになっている。 そのためこのデジモンはこれ以上進化することはないとされている。 パリアモン テリアモンをベースにした完全新種のデジモンとプレスリリースには記されている。 詳細の好評はまだ先だとのことだが、今までになく大変に美味な食用デジモンであると代表は語っている。 隠されている事実 アンブロモンとゼフリムモンには、デジタマモンから抽出した「食人衝動因子」が含まれている。 数回食べた程度ではせいぜいスキンシップが増える程度だが、日常的に食べていると「人間を食べたい」という欲望が芽生えてくる。 更に進行すると、欲求を抑えきれなくなって人間を好んで食べるようになってしまう。 この食人衝動因子はデジモン側にも影響を与えているが、アンブロモンの段階では食欲旺盛になる程度で済んでいる。 ゼフリムモンになると集団で人間を襲うようになるため、普段は制御プログラムで行動をコントロールしている。 自死のための閾値の設定を変更して黒いアグニモンに似た完全体に進化しても、この制御プログラムは現時点でまだ有効である。 パリアモンに含まれているデジモンの因子は0.1%にも満たない。 その正体は人間のクローンであり、既に獲得したカニバリズムの顧客向け商品である。 識別のためにテリアモンのデータを使って髪型が強制的にテリアモンの耳を模した形状になるよう調整されている。 元となった遺伝子データはDr.ポタラの実娘ヒマ=ワリ・ポタラのものである。 「改変前世界のFE社クローン製造部門」は改変後の世界では「Dr.ポタラが違法なクローン研究を行って摘発・放棄された研究所」に改変されていた。 そこで悟は司法機関が見つけられなかった隠されたデータ群を発見。そこに収められていたのが彼の亡き愛娘の遺伝子データであった。 興味本位でそれを使ってクローンを作成・調理・試食してみた彼はその美味に驚愕。早速これを使って理想の食用クローン人間の開発に着手した。 事実を隠蔽するためと商品であると識別するためにデジモンを少しだけ混ぜて「食用デジモンの開発と量産」という名目を立てた。 基本は雌型で生産されるが、一部の需要に応えて雄型もわずかに生産されている。 ただし二次性徴を迎え繁殖するとデジモンでないことが露見してしまうため、原則として外見年齢9歳まで促成すると処理・出荷される。 コピー元の人間はテイマーの素質が高かったようで、これらパリアモンもテイマーとしてかなり優秀な性能を持っている。 デジヴァイスなしでも成熟期、デジヴァイスありなら完全体への進化をパートナーになったその日のうちには実行可能になる。 そのため、いざという時は「ひと屋」に戦力として貸し出すことも可能で、その際は正体を隠すために仮面をかぶせることになる。 ふざけるな。 ふざけるなふざけるなふざけるな! 冗談じゃない、なんで私の顔をした子供がたくさんいるんだ!なんでその子達が解体され調理され食に供されているんだ! その怒りが、私を微睡みから引き剥がす。狂気を怒りに塗りつぶして、私をあるべき姿に引き戻す。 私の知覚したオルタナティブの消失、あるべき未来の喪失、それらは怒りの炎に焚べられて私自身を焼き続ける。 『世界』から五行の覇者を放逐したことで逆算された世界、そこに生えた新たなる枝。 その枝からさらに逆算を重ねたことで枝分かれした先。 そこでは、テロに巻き込まれて死ぬはずだった私の代わりに父チャーパが死んだ。 父のパートナーだったクロックモンは私をテイマーとした。 記憶遺伝の研究者だった父と違ってまだ何者でもなかった私にはテイマーとしての高い素質が眠っていた。 クロックモンがピッコロモンを経てクオンタモンに進化するのに然程時間は掛からなかった。そしてその時、クオンタモンの中に仕込まれていた『毒』が発動した。 テイマーに感染、その精神を汚染して『デジモンイレイザー』にしてしまう『イレイザー因子』。 才能あるテイマーやデジモンを感染型かつクラウド型の『イレイザー・ネットワーク』に組み込むウイルスとも呼べる存在。 本来なら私はそのままデジモンイレイザーの一人として取り込まれるはずだった。 しかしクオンタモンの次元を超えて見通す能力で私は並行世界の自分を観測した。してしまった。 私が死んだ世界。私のクローンが作られた世界。そのクローンが消失した世界。 そして、クローンのデータを使って『食用の私』が量産され、消費されている世界。 瞬く間に私は怒りに満ちた。その怒りは、私にイレイザー化を拒絶させる大きな力となった。 だって、『デジモンイレイザー』は消費される私、利用される私がいる世界を良しとし、利用しようとしていたのだから。 イレイザー化に抵抗を続けた私は、やがてイレイザー因子に対する抗体……『イレイザー抗体』と呼ぶべきワクチンプログラムを獲得した。 それには私と直結したクオンタモン、彼が観測した並行世界での自身の行いと運命、それに対する強い嫌悪感情も助力になった。 クオンタモンは自身の性自認と言語ライブラリの書き換えまで行って並行世界の自身と決別、さらにイレイザー抗体もインストールした。 もはや私も、クオンタモンも、デジモンイレイザーになることは無い。 ヒマ=ワリ・ポタラの名は置いてきた。 これからの私は、スマン・ホーマ、向日葵の名を持つあの子を忘れないために、生贄となったあの子達を忘れないために。 元凶たるあの食人鬼の所在と対抗する力を探して、私はいくつもの世界をさまよい続ける。 解説 クオン・I・比良坂と彼女の率いるファイブエレメンツ社の所業は『最初から存在しない』ことになった。 それに伴ってDr.ポタラことチャーパ・ポタラの所業も別の事象へと書き換えられた。 世界は遡って逆算され、『Dr.ポタラがテロに巻き込まれ死亡し、娘のヒマ=ワリ・ポタラが生存した』世界線が分岐発生した。 基底世界線において海津真弓こと初幡魁をデジモンイレイザーへと変じさせた感染源、時間のデジメンタルの基となったクロックモンがヒマ=ワリのパートナーとなった。 テイマーの高い才能を持つ彼女は瞬く間にクロックモンを究極体に進化させ、イレイザー感染のトリガー発動条件を満たしてしまう。 同時に並行世界の自身を観測してしまったヒマ=ワリは自身のクローンが食用に大量生産されていることを認識。 激しい怒りでイレイザー化を防いだ彼女はイレイザー抗体を獲得してクオンタモンもそれを獲得した。 そして彼女は名を捨て放浪者となった。 自身の目的が果たされた時、『デジモンイレイザーになった自分』が存在する世界線が分岐することを承知の上で。 そうして生まれたデジモンイレイザーを全て駆逐するという決意を秘めて。