〔25〕「トラジャ・ファーストクロップ」 ーーーーーーーーーー 〜土曜日 午後〜 「では行ってまいりますわ。もう…毎回そんな顔をしないでくださいまし。終わったらすぐ帰りますから」 ……うん。 気をつけて行ってらっしゃい。早く帰ってきてね? ──さきちゃん行っちゃった。 作曲のためにちょっと外出するってだけなんだけど…たくさん荷物を持ってお出掛けするさきちゃんを見送る時はなんだか不安になっちゃうんだよね。 おうちだとなかなか作業が進まないことがあるみたいで、そういう時は大抵カラオケボックスに篭ってお仕事するんだって。気分転換に歌ったりとかするの?って訊いてみたことがあるんだけど、答え辛そうに「秘密ですわ」って返されちゃった。絶対歌ってるよ…さきちゃんが熱唱してるところ見てみたいなあ。 まあね、二人暮らしだからこそ一人の時間が欲しくなるだろうし、そういうの大事だよね。うんうん…私は理解のある女!ちょっと寂しいけど、大人しくお留守番できるもんね。 ん…宅配ボックスになにか届いたみたい。なんだろう?あっひょっとして!? むふー!来た来た!! HARIOの“V60ドリッパーNEO”(02)!トライタン製の黒いボディと高級感のあるデザインが格好良い!この72本のスパイラルリブが果たしてどんな仕事をしてくれるのか…さきちゃんが居ない間にこれで遊ぼうっと。 まず試したかったのがV60(ガラス)との比較。HARIO公式の説明によると、NEOのウリはお湯が澱みなくスムーズに抜ける事…みたい。さっそくベース部分をスイッチと交換して“NEOッチ”に組み替え。いいね…テンション上がってきた!とりあえずフィルターだけセットしてお湯の落下速度を測ってみようかな。 〜 すごい…! お湯だけ通した時の比較だけど、V60(ガラス)よりもNEOの方がおよそ30%も早く下に落ちる(※1)。特に終盤のスムーズさが目に見えて違うね。同じフィルターを使ってるのにここまで変わるなんて…おみそれ致しました。今回は普通のV60フィルターだったけど、新しく出たメテオフィルターを使ったらもっと早くなるのかな?う〜ん試したくなってきちゃった。でもメテオ高いからなぁ…また今度ね! 実験はここまでにしてとりあえず何か淹れてみようっと。冷凍庫冷凍庫…あっそうだ、トアルコトラジャのファーストクロップ!KEY COFFEEのオンラインショップで6月に予約して10月に届いたこれは、今年収穫されたパダマラン農園産のトアルコトラジャ…いわゆるニュークロップの豆だね。200gのパッケージが立派な化粧箱入りで3つ届いたんだけど、どれも同じ焙煎度合みたいだったから1つは立希ちゃんにあげちゃった。同じくKEY COFFEEのオンラインショップで夏に限定販売してたアイス用のトラジャと違ってこっちは浅めのハイロースト(L値23〜24くらい)で、これがなかなかの曲者。届いてすぐ何回か淹れてみたんだけど、かなり酸味に寄った独特なテイストで自分好みの味わいに持っていくのが難しかったんだよね〜。諦めて深めのブラジルとかエチオピアとブレンドして飲んだりして…いやそれで十分楽しめるだけのポテンシャルはあるんだけど、今日はこれをストレートで淹れてみようっと。 ハイローストの豆ってカリタの台型3穴で淹れると中挽きでも詰まりがちだったんだけど、今回はV60NEOの性能を信じて思い切った中細挽きに。そういえばトアルコトラジャ(パダマラン農園産)ってインドネシアアラビカだけど、精製方法はスマトラ式じゃなくてウォッシュドなんだよね。苦味とアーシーさが控えめなのはそれが理由なのかな? おっと脱線しちゃった。それではペーパーをしっかりリンスして20g分をレッツドリップ。目標は湯温95℃で2分30秒以内に落とすこと。上手くいけば狙い通りアロマを立てつつ酸味と苦味のバランスがとれた味わいに仕上がるはず。 蒸らしから2投目序盤までの落ち方は普通のV60(ガラス)とほぼ変わらず。ここから…うん…いいね!3投目から終盤まで澱みなく落ちてくれる。抽出を長引かせたくない時にこのスムーズさは調整が効いて気持ちいいや。きっちり2分半で抽出完了!さて飲んでみよう。 ──焼き芋のような特徴的なアロマ。これがけっこう酸を思わせる香りなんだけど…ん!前淹れた時よりバランスの取れた口当たりになってる!コーヒーらしい苦味が程よく感じられて、同時にヨーグルトのようなまろやかな酸味がじわりと広がる。抜ける香りに柑橘っぽさとシナモンのようなスパイシーさがあるのがトラジャならでは。フレッシュでクリアな印象を持ちつつも余韻はしっかり残る味わい…この豆の良いところだけを上手く引き出せた、かな? よ〜し次はスイッチで淹れてみよう。もう誰も私を止められない!まあ…誰もいないし暇だからね。 〜 浸漬式でもNEOの落下スピードは存分に発揮されて、ガラスと比べるとおよそ36%早く落ち切るという結果に(※2)。素晴らしいね…淹れ慣れてない豆でも過抽出を防げるし、今までより細めに挽いて濃度感をアップさせる、なんて工夫もできそう。フィルター自体は同じなのにこれだけ早く落ちるっていうのは…どういう理屈なんだろう?難しいことはわかんないけど。普通にドリップするにしろ浸漬式で使うにしろ、挽き目の自由度が広がるっていうのは嬉しいね。これは抽出レシピの研究が捗りそう。 えっ?器具はカリタ党じゃなかったのかって?そうだけど…いろいろ使ってみて最後はカリタの台型3穴に戻ればいいじゃない。ね、さきちゃん。 さきちゃん…さきちゃんまだ帰ってこないの!?遅いよ〜寂しいよ〜!!ごはん炊いてお風呂も洗っておくから早く帰ってきてー!!! ーーーーーーーーーー 「〽︎呼びとめた声さえつくり〜もの〜♪」 「さき…シブい。最高」 「あ〜楽しい!あらもうこんな時間?そろそろ帰らないと…睦、伝票取ってくださいな」 ※1 90℃の湯を240ml溜め、スイッチを開放してから落ち切るまでの時間を計測しました。 V60(ガラス)は40.9秒 V60 NEOは31.3秒 数値は試行3回の平均値で、試行毎にフィルターは交換しました。 ※2 ハイローストのトアルコトラジャ(中細挽き)を湯温93℃、湯量240mlで抽出。湯投入から150秒で10回攪拌してからスイッチを解放し、落ち切るまでの時間を計測しました。 V60(ガラス)は83秒 V60 NEOは61秒 こちらの試行は1回ずつなので参考程度に。 NEO    リシオL-17.5中 60s    雲南中細 44s    湯 平均 31.3s    トラジャ中細 61s ガラス  リシオL-17.5 中71s    湯 平均 40.9s    トラジャ中細 83s