失われたシャマシュの寺院 冒険の背景 かつて、ウィンドクレスト・パスはハイロード街道を行き交う旅人にとって欠かせぬ憩いの地だった。 峠の上からは海風が吹き抜け、素朴ながら温かい人々が旅人を迎え入れ、パンの香りと焚き火の煙がいつも漂っていた。 だが、いつの頃からか 狼の毛皮をまとった獰猛なゴブリン部族がこの地を支配し、住民は散り散りになってしまった。 旅人たちは徐々に峠を避けるようになり、今では往時の賑わいは影も形もない。 旅の途上で、君たちはこの峠についてさまざまな噂を耳にしていた。 「かつての聖域は汚され、聖なる者たちの遺物はゴブリンどもに奪われた」 「奴らは盗んだ財宝を地下にため込み、異様な儀式を行っている」 「黄金の羊をさらったという話もある」 そして君たちは義憤に駆られ、あるいは財宝を求め、 あるいは単に消えゆく伝承への興味から── 荒れ果てたウィンドクレスト・パスの石畳を踏みしめた。 スタート 街道を進むPCたちの前方で、不気味な角笛が響き渡る。その直後、丘の上から甲高い叫び声が響き、粗末な鎧をまとったゴブリン2体が姿を見せる。そして、正面からは茂みを突き破ってウルフに騎乗したゴブリンが飛び出す。彼らは皆、ウルフの毛皮をマントのように羽織っている。 敵: ゴブリン(射撃手) ×2 ゴブリン・ウルフライダー ×1 ウルフ ×1(騎乗扱い) 戦闘が終わると、どこかで かすれた鳴き声 が聞こえてくる。「……メェ……メェェ……!」 声のする方を見ると、近くの木の枝に、網で吊り下げられた黄金の羊 がもがいている。 PCたちが網を切り、羊を助けると羊の体がやわらかな金光に包まれ、毛が風に舞って散り、帽子を被った金髪の少年 の姿へと変わっていく。 「助けてくれてありがとう……! 僕の農場がゴブリンに襲われて、家族はみんな連れていかれたんだ。お願い、助けてほしいんだ」 「助けてくれたら、この“魔法の帽子”をあげる。僕は先に農場に戻ってる。急がないと……みんな、きっと怖い思いをしてる……!」 そう言って、少年は踵を返し、金色の髪を揺らしながら森の奥へ駆けていく。 オベリスクの門 険しい崖の裂け目に、黒い石で造られた古代の門が立っている。表面にはかすれたルーン文字が幾重にも刻まれている。 門の両脇には巨人像の残骸が残り、膝から下だけが佇んでいる。門の前には、雑草と苔に覆われた石畳の広場が広がり、中央には濁った水がたまった浅い泉がある。 敵 ゴブリン(cr1/4、遊撃役)x2 クレンシャー(cr1/2、暴れ役、3.5e47)x1 10分に1回、ゴブリンx2+ジャイアント・ラットx2がパトロールに巡回している。 羊の談話室 壁一面のアルコーブには、羊の頭部を持つローブ姿の男性の像が等間隔に並んでいる(DC12の<宗教>判定に成功すると、羊飼いの神シャマシュという地元の下級神だと明らかになる。彼は農耕の女神チョーンティーアに仕え、羊飼いたちを導き、守るのだとされている)。 どの像もひどく埃をかぶっており、足元には燃え尽きたろうそくの残骸が散らばっている。 石のベンチとテーブルがそのまま残っているが、黒いペンキで禍々しいルーン文字が落書きされている。 ベンチの横には、崩れかけた石造りのかまどがある。 DC13 の<捜査>判定に成功すると、かまどの中からルーンが刻まれた銀製の指輪(25gp)を見つける。 (1回だけ《サンクチュアリ》/使用後は灰となる) 骨壷を調べるたびに、ワンダリングモンスターのチェックを行う。 沈んだ昇降機の間 瓦礫と巨大な歯車が折り重なって散乱し、床には濁った水が深くたまっている。 部屋は塔のように縦に伸び、高さ約12m(40ft)の位置にアーチ状の窓がある。 窓には、曲がった姿勢のまま挟まっている骸骨が引っかかっており、その腰には見事な細工の剣が吊るされている。 水の中には アリゲーター ×2(DDDI207) が潜んでいる。 受動知覚13以上でその姿に気づける。 骸骨が持つ剣は魔法ではないが高品質で、75gpの価値がある。 菌糸の大聖堂 天井まで伸びる巨大な白い菌糸の柱が森のように林立し、光を帯びた胞子が雪のように静かに舞い落ちている広間。菌糸の根元には古びた石棺が点々と並び、墓地であった痕跡が残っている。 ヒューマンの成人女性(40歳前後)と少女(12歳ほど)が、背中に籠を負い、黙々とキノコを摘み取り続けている。 彼女たちは捕らわれた農民であり、疲労と恐怖で極度に弱っている。 見張りのゴブリン ×2 が彼女らを監視し、暗がりにはジャイアント・ファイアビートル ×2 が歩き回り、その橙色の光が胞子を照らして幻想的な景色を生み出している。 DC13 の〈捜査〉判定に成功すると、石棺のひとつに隠された金の燭台(50gp)が見つかる。 この燭台にろうそくを灯し、ここで小休憩を取った場合に限り、一度だけ大休憩と同等の効果を得られる。 死者の守衛の詰所 この部屋は元々、地下墓地を守る修道士や墓守たちの詰所だった。 崩れた石ベッドや古い木製の棚が散乱し、壁には消えかけた祈祷文が残っている。 今はゴブリンたちの獣舎として使われており、 中央の篝火からは獣脂の臭いと焦げた肉の匂いが立ちこめている。 20代ほどの若者2名が捕らわれ、ウルフの世話を強制されている。 部屋の奥には粗末な檻があり、ウルフ ×2 が押し込まれている。 周囲では ゴブリン ×3 が世話をしており、そのうち1体は小柄なリーダー格らしい。 * 檻は 1回のアクションで開けられる。 * リーダー・ゴブリン(HP13)は、号令(再チャージ5–6) を使い、ウルフにリアクションで1回攻撃をさせることができる。 パトロール隊のゴブリンを倒していない場合、 戦闘の1ラウンド終了時に背後から駆けつけてくる。 DC13 の<捜査>判定に成功すると、石棚の裏から<キュア・ウーンズ>の巻物を一つ見つける。また、ガラクタの中から木箱を見つける。この箱にはDC13の<捜査>判定に成功すると罠が仕掛けられていると気付く。DC13の盗賊道具判定で無力化。DC12 のアシッドスプラッシュが発動。中には20gp分の小銭と宝飾品が入っている。 誰かが部屋の調査を行う場合、ワンダリングモンスターのチェックを行う。 朽ちた経典の間 天井まで届く巨大な書架が崩れ、傷んだ経典や破られた羊皮紙が床に散乱している。 壁面には黒曜石で造られた石板が掛けられ、 そこには消えかけた古代語で次の碑文が刻まれている。 ◆石板の碑文 “He who lays down the sword may hear the sacred word. Cast aside the steel, and the seal shall break.” 剣を捨てし者のみ、聖なる言葉を聞くことができる。 鋼を退けよ──封印は解ける。 ◆パズル:sword の “S” に触れよ 石板には“SWORD”という文字が浮かび上がっている。 プレイヤーが文字に触れると淡く光るが── “S” に触れれば成功。 石板の端がひび割れ、重い破砕音とともに中央が崩れ落ちる。 その他の文字に触れると罠が発動する。 ◆罠:ショッキング・グラスプ(誤答時) 誤った文字を触れた瞬間、 碑文のルーンが青白く閃光を放ち、電撃が走る。 効果:ショッキング・グラスプ(1d8 電撃) 【敏捷力】セーヴ DC11 ◆宝物:ワンド・オブ・マジックミサイル(電撃属性) 石板が砕けると、小さなアルコーブに布でくるまれた杖が収められている。 〈ワンド・オブ・マジックミサイル(改変版)〉 * 1日 3回、1レベルのマジック・ミサイルを発動できる * 与えるダメージは [力場]ではなく[電撃] レイヴンクイーンの聖域 天井は高く、アーチ状になっている。壁面のアルコーブには、羊の頭を持ち、ローブをまとい、杖を構えた巨人の石像が鎮座している。 石像の前にはもともとシャマシュの供物を捧げるための祭壇があるが、いまは カラスの骨で組まれた不吉なトーテムが据えられ、その周囲を囲むように 黒いろうそくが4本、青白い炎を揺らめかせている。 地下だというのに、カラスの羽根がひとひら、またひとひらと漂い落ちてくる。 礼拝堂を支える 4本の柱は黒い染みがこびりついている。 部屋の奥では、2人の奴隷(捕らえられた村人や冒険者)が縄で繋がれ、レイブンクイーンの賛美歌を無理やり歌わされている。声はかすれ、恐怖に震えている。ゴブリンのブラックブレードx1、ゴブリンのボディガードx1、ゴブリンx2がいる。 ■刃の罠 発見DC∶捜査DC13 柱に隣接すると刃が飛び出す。DC12の【敏捷力】セーブに失敗すると1d6[斬撃]ダメージ ■祭壇(トーテム)の効果 ・敵側の呪文セーヴDC +1 ・敵側のすべてのセーヴィングスローに有利 ●破壊方法 AC10、HP10 〈宗教〉 or 〈呪文学〉DC13 成功で“浄化の言葉”が放たれ、10点の[光輝]ダメージ扱いで破壊 物理攻撃でも破壊可能 ■財宝 祭壇を調べると、隠しスペースが見つかる。中には木箱が入っている。バーニングハンズの罠が仕掛けられている(DC12の【敏捷力】セーブ、捜査DC15で発見、DC15の盗賊道具判定で無力化)。 * 120gp分の貨幣と宝飾品 * 大ガラスの薄羽∶ジャイアントレイブンの羽根に魔力を込めたダガー。2d4[力場]ダメージを与える。妙技特性。アンコモン * 黒曜石のドクロ∶黒曜石で作られたドクロ。3回だけスピーク・ウィズ・デッドが使える。使うと粉々に砕け散る。 エピローグ 解放された人々は、PCたちを深く感謝しながら農場へ案内する。長い木のテーブルと素朴なベンチが軒先に並べられ、暗くなるにつれ、燃えるかがり火が赤く揺らぎ始める。 七面鳥のロースト、 香草を利かせた温かいシチュー、 焼き立てのパン、甘い煮込み野菜。 救われた家族と、近くの農場の人々が次々と集まり、誰からともなく笛や太鼓を奏で始め、宴は高まっていく。 しかしその輪の中に、冒険を依頼したあの少年の姿だけがない。 不思議に思い、農場の母親に少年のことを尋ねると、母親は少し不思議そうに首を傾げる。 「黄金の髪の少年……? うちの子どもたちに、そんな子はいませんよ?」 そう言って、彼女はPCたちを玄関の方へ案内する。壁には古びた絵画が飾られていた。 そこには、黄金に光る羊の群れを先導する帽子をかぶった少年が描かれている。その顔はまさしく、あの少年と瓜二つだった。 母親は、絵を見つめながら静かに言う。 「この子は、羊飼いの神様、シャマシュ様の化身だと伝えられています。羊飼いが困難に直面すると、黄金の羊を送って導いてくださる、と……」 そして彼女は奥から、丁寧に布に包まれた帽子を持ってくる。金の刺繍で羊の意匠が縫い込まれた、美しい帽子だ。 「これは、私たちの先祖がシャマシュ様から賜った品だと聞いています。どうか、お礼に受け取ってください。あなた方こそ、シャマシュ様が導いた“良き羊飼い”なのですから。」 かがり火が揺れ、 夜空には無数の星が瞬く。 黄金の羊の微かな鈴の音が、風のどこかで響いた気がした。 ■シャマシュの帽子(アンコモン) 金の刺繍で羊の意匠が縫い込まれた美しい帽子。かつてシャマシュが迷える者を導くために与えたとされる。 3回のチャージを持ち、消費することで次の魔法が使える。チャージは夜明けに回復する。 また、常に北の方角が分かる。 チャージ1∶スピーク・ウィズ・アニマルズ、アニマル・フレンドシップ チャージ2∶パス・ウィズアウト・トレース チャージ3∶ポリモーフ(羊のみ)