〔27〕「北欧諸国のコーヒー文化」 ーーーーーーーーーー さきちゃーん!!平茸の石突ってどれくらい切ればいいのーー!!?? 「そんなものてきとうでいいですわ〜〜」 だめだこりゃ。すっかり堕天してる。 どうしよう…さきちゃんがこたつむりになっちゃったよ〜!! 〜 我が家では私の喉を気遣ってエアコン暖房の温度が控えめ。それだとどうしても底冷えしたり肌寒くなったりするから、リビングにこたつを導入したんだけど…さきちゃんの方がどハマりして出てこなくなっちゃった。 そんなテンプレお嬢様仕草しちゃうほどこたつに縁の無い生活だったっけ?豊川家にだってこたつくらい…う〜ん、あそこ洋式建築だから無いかもね。 というわけで今夜は久々に私がごはんの支度をしてるってわけ。まあいつも任せっきりだったし、たまにはね。 あっテレビで北欧の冬の暮らしを特集してる。ほら見てさきちゃん、めちゃめちゃ雪降ってて寒そうだけど綺麗な景色だね。 「いやですわ…さむいのは…うぅぅ」 あぁ…さきちゃんがこたつに首まで呑まれてる。これ大丈夫かな?春になって片付けるときに泣いたりしないでね? テレビの映像は冬景色から飲食文化の紹介に移って…あっ、コーヒーだ!! へぇ〜向こうは浅煎り文化なんだ。1人あたりの消費量は日本の2倍以上、だって。すごいね。1日の中でコーヒータイムを設けることを法律で義務付ける国もあったりして…なんだかゆったりしててうらやましい。 淹れ方はフレンチプレスやエアロプレスが主流なんだね。あとはキャンプ中に挽豆を直接やかんに入れて煮出すなんてこともしてる。お湯は焚火で沸かすんだ…寒そうだけどワイルドで雰囲気あっていいな〜。 私も北欧式のコーヒーやってみたーい!せっかくだから食後に試してみようっと。 〜 夕食のお片付けも済んだし、さっそく北欧式のコーヒーをば…ちょっとさきちゃん!食べてすぐゴロンしたらミノタウロスになっちゃうよ!! 「ふぃ〜〜〜ンフフフ♪」 神は死んだ。 そういえば私フレンチプレスもエアロプレスも持ってないや。何故かパーコレーターはあるのにね。 あっそうだ!たまにさきちゃんが紅茶淹れるのに使ってるフレンチプレスがこの辺に……あったあった。ねぇねぇさきちゃん、これ貸して〜。 「嫌ですわ!!!!!」 うわっ急に…そんなに嫌がることある? 使ったらちゃんと洗うからさ、ね? 「いやーーーーー😡!!!!!」 なんでよ〜!ふふん、いいもんね。コーヒー用のは自分で買うから! じゃあ今回は煮出す方の淹れ方“フィールドコーヒー”を試してみようっと。焚火じゃなくてガス火だけど。 普段使いのやかんでやるのはアレだから…それこそパーコレーターでいいかな、バスケット部分外せばただのケトルだし。 あとは豆だね。浅煎りの豆ならいくつか……困ったな、浅煎りはシャレにならないお値段の貴重なスペシャリティしか残ってない。この子たちを粗挽きにしてグツグツ煮るのはちょっっっと…無理。 ハイローストくらいの豆でもいいよね?私基準だと浅めだし。これは確かマンデリンとケニアとペルーのアフターミックス…だったはず。これで行こう。 テレビでやってたワイルドなおじさんはワイルドに目分量だったから私もそうしようっと。湯量はだいたい500cc、豆は20gスプーンに山盛り2杯くらいでいいかな?我が家のミルの限界の粗挽きにして…っと。 やかんを火に掛けてお湯が沸く直前に粉を入れてよくかき混ぜる。沸いたら火を弱めて1分くらい煮て…ん〜いい香り♪この淹れ方ならではだね、これは。火を止めて2分くらい蒸らして抽出はおわり。 ワイルドおじさんは「粉が沈むのを待ってから飲むんだ」って言ってたけど、待てないから何かで濾そうかな。ペーパーフィルターはなんか違う気がするから茶漉しとか…さきちゃんのをこっそり借りちゃおう。よく洗って返しておけばバレないよね? 漉した液は茶褐色で濁ってる。香りは立ってていい感じだけどすごく熱そう…せっかくだから保温ボトルに入れてお外で飲もうっと。 あとはお供のお菓子として残り物のシュトーレンを持って…っと。 さきちゃ〜んお外でコーヒー飲m…視線で返事しないでよ。わかったわかったからみかん食べ過ぎないでね? ダウンジャケットだけ羽織ってひとりベランダへ。うおっ寒!!東京の夜は冷えるな〜。 どれどれフィールドコーヒーのお味は…アチチ…ん?あれだけ煮出したからもっとガツンと来るかと思ったんだけど、口当たりは結構軽めだね。アラビカ100%だからかな?アロマはマキネッタで淹れたものにかなり似ていて、甘くビターな香りの中に若干の焦げっぽさがある。 それにしても…見事に酸味が消し飛んでるね。ペーパードリップで淹れると明瞭な酸味が特徴的なブレンドなんだけど、煮出すとこうなるんだ…。 軽いのは口当たりだけで、含んでから時間が経つとコーヒーらしい苦味が口の中に広がっていく。オイルをしっかり感じるし、抜けていく香りは複雑で濃厚。 余韻は…ちょっと粉っぽいのと、カフェインが強いのか渋味が舌に残るのが気になるかな。良くも悪くも目が覚めるような香りと味だね。これ何かに似てる…あっアレだ、缶コーヒー。 正直言うと雑味も渋味も出てるからすごくおいしい!ってわけじゃないんだけど、寒い屋外で飲むとこのパンチのある力強い味わいが頼もしく思えちゃう。そもそもミルクとお砂糖をたくさん入れて飲むべきなのかも。 いつも飲んでるドリップコーヒーって本当に豆の成分の上澄みだけを抽出してるんだね。でも私はこのコーヒーのすべてが溶け込んだような味も好きだな。うまく説明できないけど、これがコーヒー本来の姿なのかもって思えてしまうような、説得力のある味。 今回は見よう見まねの手探りだったけど、レシピを工夫すればもっと美味しく淹れられるような気がする。ハイローストでこれだけ苦味に寄るんだったら、次はそれこそ北欧スタイル、“ノルディックロースト”の豆で試してみようかな。 ──夜空の暗さに目が慣れてきた。冬で晴天なら都心でもちゃんと星が観られるんだね。 あれは木星、その上がポルックスとカストル…。あの方角に木星があるってことは、ロフトの窓からぎりぎり月が見える、かな? 明日からまた忙しくなるし、さきちゃんがこたつと一体化する前に引っ張り出してお布団まで運ばなきゃ。 うぅっ…寒ぅ〜!!早く部屋に戻ろうっと。 あ〜も〜さきちゃんそこで寝ちゃダメだってば!! うわっ!みかん全部食べちゃったの!?10個くらいあったのに…さきちゃんはしばらくこたつみかん禁止!! ほらもう寝るよ?よっこいしょ… 「ん〜〜〜いゃぁあああぁ〜〜……ひいっ冷たいですわ!初音の手が!腕が…!!」 ーーーーーーーーーー こたつからさきちゃんをずるずるっと。さきちゃんの身体はあったかいね! ……あったかくて、部屋着が緩くて。 こたつで蒸されてちょっとしっとりして…いい匂いで、なんだか…艶っぽい。 ──ねえさきちゃん、今から…… 「えっちょっ待…今から!?あなたおとといも…」 おとといのは軽めだったから…ね? 金曜日だしいいよね。ごめんもう我慢できないから💛💛💛 「あぅ…やめっ…あッ🩵せめてタオルを───」 ……… …