─身繕いの初めに傷を消毒する
本当ならケアするべき傷はたくさんあるが全てに手を回す時間はない
「手当した印」として買置きの酒精綿を首筋の不連続な傷に押し付けると
染みわたる痛みが眠気を散らし同じくして夜の名残が目を覚ます
「ケダモノの唸り」「胎の奥で潰れる肉と肉」「膚を破る犬歯」
「背を搔きむしる爪」「小刻みに戦慄く脚」「爪先で滑る液体」
手当には不相応な強さで傷を拭った綿は何かを糾すように僅かな血を含んでいた
飴を舐めるように私は綿を口に含む
半分は愛しい人である私の血の味と私のものでは無い口から流れた唾液の臭いが
アルコールの奥に見つかる
耳に谺する荒い息遣いは誰のものだろうか？
ややあって新しいシャツを纏う
…遠からず私の首筋は─いや背中は人目に晒せるものでは無くなるのだろう
洗面所の鏡に映る口元が不格好に歪んだ
それは笑顔に見えなくもなかった


