「アイヤーお客さん！ランチ安いヨーウチで食べてってヨ！」
カタコトと言うにはあまりにも胡乱な呼び込みに振り向いてしまった瞬間
私の負けと相成りました。目が合うまでもなく両腕を引かれた私は
あれよという間に席についてお品書きを渡されます。
「青椒肉絲！麻婆豆腐！五目炒飯！何でもアルヨ！」
…やけに漢字と！が多い菜譜ですが中身はおおむね町中華です。

とりあえず頼んだ麺飯甜点心セット(半ラーメン半チャーハンとゴマ団子)を
食べながら眺めた店内はいささか妙なインテリアのように見えました。
建築の雰囲気はやや本格を感じさせる調度でありながら木彫りのパンダや
ビキニのお姉さんが尻尾をなびかせてジョッキを掲げたビールのポスター。
壁には野球選手と思しき写真やサイン。統一感が見出せません。

味は至って予想通り。「外で食べる中華屋さん」を上にも下にも外れません。
食後にサービスされたほうじ茶を飲み終わると会計を済ませにレジへ向かいます。
そういえば、あの娘は調理が済んだらずっと外で客呼びをしているのに
一向にお客さんは捕まっていないようです。
「謝謝！また来てネ………ン。」
レジを閉じて挨拶をしたかと思うと不意に店主の姿が消えました。
次の瞬間。
「やっぱりお客さんずいぶん遊んでるネ。もうちょっとよく洗った方がイイアルヨー。」
一瞬で背後に回った上に私のお尻に鼻を埋めた挙句とんでもない発言です。
「わっ！？」ドッ…ガァン！
「ｳｯ！」

思わず後ろ足を振り抜くと盛大に吹き飛ばされた体が椅子を薙ぎました。
慌てて駆け寄ると華麗な身のこなしで立ち上がった店主が
私の手に何かを握らせました。
【郷之春薬！（激増大性欲的効果）】
「謝謝！また来てネ！」
さっきと同じ言葉のはずなのに目の前の娘からどこか妖しい雰囲気が漂います。
右耳にあしらった銀の宝冠がギラリと光ったように見えました。

その日の夜。何があったのか記憶があいまいです。
ほんのお遊びのつもりで半分こしたら2人とも見事に盛りを付けられてしまいました。
この古く薄い壁では私達の食い合いを遮るには役に立っていなかったことでしょう。
牙をむいた猛獣のような顔とギラついた瞳だけは覚えているんですけどね。
今は隣で薄目を開けてぐったりと寝息を立てています。これは完全にオフモードです。
クセになったらどうしよう…粘ついた手で顔を拭いながら
レシートについてきたクーポンの使い時を考えていました。
