ぼんやりと、SNSをチェックしていると、一つの投稿が目に付いた。 東雲‥‥知り合いの、神社の巫女だ。 『今日も無事に、お務め終わりました。  今日の一枚です。(いつになってもちょっと照れますね‥‥)』 その文と一緒に、一枚の写真が添えられている。 写真の中で、彼女は両手を顔の前に持ち上げて、左右に真っ直ぐ伸ばした白い細長い布を持っている。 その布は、ごく普通の白布で、特に模様や装飾はない。 何を意味する写真か分からなかったから、リプライに答えを求めてみたけれど、 写真の意味について聞く質問には、一律で『ひみつです』という返信が、顔文字付きで返されていた。 いつになっても、という単語が気になって、東雲のアカウントを見てみると。 毎日夕方ごろ、彼女の巫女としてのお務めが終わる頃に、白い布を顔の前に持った写真が投稿されている。 どこか気になって、なんとなく指が動いて、「フォローする」を押してしまった。 通知音が鳴り、画面に小さな「フォロー中」の文字が現れる。 それだけのことなのに、妙に心がざわついた。 知り合いだから、SNSをフォローするのだっておかしくない。 なのに、何か覗きをしているようなバツの悪さ。 その日から、翌日も、またその次の日も。 夜になる前、ふとスマホを開くたびに、東雲の写真がタイムラインに現れるようになった。 社殿の前、参道、石段の上──背景は少しずつ変わるが、構図は同じ。 白布を広げる両手と、微かに俯いた表情。 写真の中身は、ただそれだけ。 そんなある日。 春が近づいてきた、季節外れの暑さが襲ったある日。 東雲のアカウントから、一枚の写真が投稿された。 ほんの少し、光の反射がいつもより鈍い。 よく見ると、表面に細かな影が散っていた。 まるでうっすらと湿っているように見える。 どこか胸の奥がざわついた。 だから、東雲のアカウントを見て。 毎日の投稿をスクロールして夏の投稿を振り返ってみた。 真夏のある日の写真。 光を受けて、中央にだけ少し濃い影が浮かぶ。 布がまるで水を含んだようにぐっしょりと重たく垂れている。 布の淵からぽたりと落ちた雫が見える。 不自然なほどに、布の中心だけが深く濡れていることに気づいた瞬間、 息を飲んでしまった。 その濡れ方は、単なる汗染みのようでもあり、 しかし、ただ顔を拭いたり手を清めたりしただけでは到底つかない形だった。 それが何を意味するのかを考えた瞬間、思考が凍りつく。 ──あの布は、ふんどしだ。 思い当たった途端、今までの投稿の意味が変わった。 解いてしまえば、ただの一本の布に過ぎない。 だが、はたしていた役割は彼女の下着。 それを毎日、その日の務めが終わった後に広げていた。 一度気づいてしまえば、もう「ただの白布」には見えない。 写真の中で、東雲がそれを両手で広げるたび、胸の奥で心臓が跳ねる。 彼女が、あの神聖な巫女服のまま、 日々の務めを終えたあとに、自らの下着を掲げているのだと思うと、息が浅くなる。 上目遣いで恥ずかしそうにしている表情も、 まるで「気づきましたか?」と静かに問いかけているかのようで、心臓に悪い。 気が付いてしまって、確かめる勇気もないのに、柄にもなく、神社に向かう。 そこで東雲が、巫女としてお勤めを果たしているのを眺めていると、 こちらに気付いたのか、語りかけて来る。 和やかで、明るく丁寧なその口調。 SNSの投稿について、聞く事は出来なかった。 夜、自慰を使ったのは、その日に投稿された東雲の写真だった。