タイトル:ネオ・オーサカの夜に咲く 設定概要 舞台は2047年のネオ・オーサカ。通天閣は高さ1985mのネオ通天閣へと生まれ変わり、夜空を毒々しく照らし続ける。空にはクイダオレ・タローやグリコ・マン、巨大なランディ・バースのホログラムが浮かび、街はネオンと粉もんの匂いに満ちている。 主人公・双葉トシアキ(28歳)は、ネオ・オーサカの裏通りで小さなバー「粉もんブルース」を営む男。軽く飲むのが好きで、客が帰ったあとのカウンターで一人グラスを傾けるのが日課だ。 ヒロイン・佐伯アカリ(外見年齢22歳)は、トラ型の半獣半人。耳と尻尾は鮮やかな橙と黒の縞模様で、白い毛先が特徴的。身長163cm、細身だが胸は豊かで、動きやすい黒のライダースジャケットとショートパンツを愛用。大阪弁が抜けない明るい性格だが、裏社会の情報屋として生きているため、人間に対してやや距離を置く警戒心がある。 二人の出会いは、ネオ通天閣の基部で起きた「ホログラム広告ハック事件」の余波。アカリがハッキングの片棒を担いだ嫌疑をかけられ、追われる身となったところを、偶然通りかかったトシアキが助ける形になる。 第一章 ネオ通天閣の雨 俺はカウンターの端で、琥珀色のウイスキーを軽く回しながら、窓の外を眺めていた。 ネオ・オーサカの夜は相変わらずうるさい。ネオ通天閣が紫と緑のネオンで空を切り裂き、クイダオレ・タローの巨大ホログラムが「くいだおれやで~!」って叫びながら回転してる。雨が降り始めて、路面に映る光が歪んで見えた。 「……今日も客足少のうて、えらい寂しいな」 グラスを置いたとき、店のドアが乱暴に開いた。 「すんません! ちょっと雨、しのぎさせてくれへん?」 入ってきたのは、びしょ濡れの女だった。 黒のライダースジャケットが体に張り付き、橙と黒の縞模様の耳がぴくりと震えてる。尻尾も濡れて重そうに垂れ下がっていた。トラ型半獣……珍しくないけど、こんな時間にこんな場所で会うのは初めてだ。 俺は一瞬、眉をひそめた。 最近、ネオ通天閣のホロ広告がハックされて、佐藤輝明監督の顔が「タイガース負けたで~!」って叫びながら爆発する映像が流れた事件があった。あれに関わった連中は、裏社会も警察も血眼で探してる。 「……雨宿りだけやったらええけど、変なことせんといてな」 「あんた、えらい警戒心強いなあ。わて、ただの情報屋やねんけど?」 彼女——佐伯アカリ、と後で名乗った——はカウンターに腰掛けて、濡れた髪を指でかきあげた。水滴が首筋を伝って、ジャケットの襟元に消えていく。 「情報屋さんか。ほな、ネオ通天閣のハック事件、知ってる?」 俺が探るように聞くと、アカリの耳がぴくっと動いた。 「知らんわけないやん。あれ、わての知り合いが絡んでたみたいやし……って、ちょっと待って! あんた、まさか警察の回し者ちゃうやろな!?」 「違うわ。俺はただのバーテンダーや。双葉トシアキやけど」 アカリは俺をじろじろと見て、それからふっと息を吐いた。 「ほな、ええわ。一杯だけ奢ってくれへん? 雨、止むまで付き合ってあげる」 俺は苦笑いしながら、棚から日本酒を取り出した。 アカリはグラスを受け取ると、小さく「かんぱい」と呟いて、一気に飲み干した。 「……うまいわ。これ、どこの?」 「淡路島の蔵や。ネオ淡路島やけどな」 「へぇ……あんた、ええ趣味しとるやん」 雨音が強くなる中、アカリの尻尾がゆっくりと左右に揺れ始めた。 警戒はまだ解けてない。でも、少しだけ距離が縮まった気がした。 俺はもう一杯注ぎながら、思った。 ——この女、放っておいたら危なっかしいな。 選択肢 1.「もう遅いし、店閉めるわ。泊まっていってもええで」と提案する 2.「雨止んだら帰れよ。俺は巻き込まれたくないねん」と突き放す 3.「ハック事件の話、もっと聞かせてくれ」と深く探りを入れる 4.黙って、もう一杯酒を注いでやる(何も言わず、様子を見る) 3 ネオ・オーサカの夜に咲く 第二章 ハックの匂い 俺はカウンターに肘をつき、アカリの顔をまっすぐ見つめた。 「ハック事件の話、もっと聞かせてくれ。俺は巻き込まれたくないけど、知っとくだけでも損やないやろ」 アカリの橙と黒の耳が、ぴくりと後ろに倒れた。尻尾の先がカウンターの下でゆっくりと左右に揺れ、警戒のサインだ。それでも彼女はグラスを手に取り、残りの日本酒を一口含んでから、ゆっくりと息を吐いた。 「……あんた、ほんまにただのバーテンダーか? えらい食いつきいいな」 「好奇心や。ネオ通天閣の広告があんなふざけたことになるん、街中ざわついてるしな。クイダオレ・タローが『タイガース負けそうやで~』って泣き顔で回転してた日、覚えてるわ」 アカリはくすっと笑った。笑うと、牙がちらりと見えて、トラらしい野性味が滲む。 「ほんまおもろかったやろ。あれ、わての知り合いのハッカーがやったんやけど……目的はただのイタズラちゃうで。ネオ通天閣のホロシステムのセキュリティホール探して、もっとデカいこと企んでる連中がおるんや」 「デカいこと?」 「せや。ネオなんばグランド花月の公演データ丸ごと乗っ取って、吉本の新喜劇全部を『佐藤輝明監督の采配批判コント』に差し替えるとか……ちゃうわ、そんな可愛いもんやない」 彼女は声を落とした。 「ネオ大阪城の防衛システムにアクセスするバックドア作るのが本命やて。甲子園の聖地を守るためのセキュリティ網、全部ネオ大阪城のAIが管理しとるやろ? あれをハックできたら……タイガースの試合どころか、街全体のエネルギー供給まで握れる」 俺は思わず息を呑んだ。 ネオ・オーサカのエネルギー、ほとんどが甲子園球場地下の核融合炉から来てる。聖地を守るための防衛システムは、タイガースファン全員の信仰みたいなもんや。 「そんなん、成功したら大惨事やんけ」 「せやから、わて逃げてるんや。片棒担いだ嫌疑かけられて、裏の連中にも警察にも追われて……」 アカリは濡れた髪を指で梳きながら、俺を上目遣いで見た。 「あんた、ええ奴そうやし……ちょっとだけ、隠れ家貸してくれへん? 一晩だけでええねん」 雨はまだ強く降り続いていた。ネオ通天閣のネオンが窓ガラスに反射して、アカリの横顔を毒々しく照らしている。尻尾の濡れた毛が、カウンターの脚に絡まるように垂れていた。 俺は少し考えて、ため息をついた。 「……上に部屋あるけど、散らかってるで」 「あんたの部屋?」 「せや。店の上や」 アカリの耳がぴんと立った。表情が少し緩んだ気がした。 「ほな、お言葉に甘えさせてもらうわ。……双葉さん、て言うんやろ? よろしくな」 彼女が立ち上がると、ライダースジャケットの裾から水滴がぽたぽたと落ちた。細い腰、豊かな胸のラインが濡れた布地に浮き彫りになって、俺は慌てて視線を逸らした。 ——こいつ、ほんまに危なっかしい。 俺は店のシャッターを下ろし、鍵をかけた。 階段を上りながら、アカリが後ろから小声で言った。 「なあ、双葉さん。タイガース、今年の日本シリーズ……勝てると思う?」 「さあな。佐藤監督の采配次第やろ」 「わてもそう思うわ。……でも、もし聖地が守られへんかったら、もう試合どころちゃうかもな」 その言葉が、妙に胸に引っかかった。 選択肢 1.「部屋は一つしかないけど、ベッドは俺が寝るからソファで我慢してくれ」と距離を保つ 2.「風呂先に入れ。濡れたまんまじゃ風邪ひくで」と気遣いを見せる 3.「隠れ家貸す代わりに、もっと詳しい話聞かせろ」と条件をつける 4.黙って部屋の鍵を渡し、自分のベッドを譲る(何も言わず、彼女を優先する) 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第三章 一つ屋根の下 俺は階段を上りきって、部屋のドアを開けた。 狭いワンルーム。ベッドはダブルサイズが一つだけ、後はソファと小さなテーブル、あとバーの在庫を置いてる棚があるだけだ。散らかってるのは本当で、床の上に脱ぎ散らかしたシャツや空のウイスキーボトルが転がってる。 「部屋は一つしかないけど、ベッドは俺が寝るからソファで我慢してくれ」 アカリは部屋を見回して、鼻をひくつかせた。トラの嗅覚で、俺の匂いや酒の香りを嗅ぎ分けているんだろう。 「ええよ、ソファで十分や。……でも、ほんまにええの? わて、知らん男の部屋に泊まるん初めてやで」 「知らん男言うな。もう名前知ってるやろ」 俺は苦笑いしながら、クローゼットからタオルと新しいTシャツを取り出した。 「風呂はあっち。濡れた服、脱いで干しといて。俺のシャツ貸すから、それ着て寝ぇ」 アカリはタオルを受け取ると、耳を少し伏せて「ありがと」と小さく言った。 それから、ライダースジャケットのジッパーを下ろし始めた。 俺は慌てて背を向けた。 「お、おい! 着替えるんやったら風呂場でやれよ!」 「ははっ、あんた照れ屋さんやな。トラのわてからしたら、人間の男が恥ずかしがるんおもろいわ」 彼女は笑いながら、ジャケットを脱いで床に放り投げた。濡れた布地が重い音を立てる。 その下は黒のタンクトップで、豊かな胸の谷間がはっきり浮かんでいた。俺は必死で視線を天井に向けた。 ——落ち着け、双葉トシアキ。こいつはただの雨宿りや。 アカリは尻尾を軽く振って、風呂場へ消えた。 シャワーの音が聞こえ始めて、俺はベッドに腰下ろして深呼吸した。 数分後、ドアが開いてアカリが出てきた。 俺の白いTシャツを着て、裾が太もも半ばまで隠してる。濡れた髪をタオルで拭きながら、橙と黒の耳がぴょこぴょこ動いている。尻尾の毛はまだ少し湿ってるけど、ふさふさと揺れてる。 「気持ちよかったわ~。あんたのシャンプー、ええ匂いするな」 「……そうか。ほな、ソファはあっちや」 俺は立ち上がって、ソファに毛布を掛けた。 アカリはソファに座ると、膝を抱えて俺を見上げた。 「なあ、双葉さん。さっきの話の続きやけど……わて、ほんまに巻き込まれただけやねん。ハッカーの知り合いが『ちょっと手伝って』言うから、情報流しただけやのに……」 「信じていいんか?」 「信じてほしいわ。……だって、あんたに嘘ついたら、わての尻尾がピクピク動くんバレるやろ?」 確かに、今のアカリの尻尾は落ち着いてゆっくり揺れてる。嘘ついてる時は先端が震えるって、トラ型の半獣はよく言われる。 俺はため息をついて、ベッドに座り直した。 「分かった。とりあえず今夜は寝よう。明日の朝、もっと詳しく聞くわ」 アカリは小さく頷いて、ソファに横になった。 毛布を顎まで引き上げて、橙の耳だけがちょこんと出てる。 「おやすみ、双葉さん」 「おやすみ、佐伯」 部屋の電気を消すと、窓からネオ通天閣のネオンが差し込んで、薄紫の光がアカリの横顔を照らした。 寝息が聞こえ始めるまで、俺はしばらく天井を見つめていた。 ——この女、ほんまにただの情報屋なんか? 外では雨がまだ降り続いている。 遠くで、グリコ・マンが「ゴールイン!」と叫ぶホログラムの声が、夜のネオ・オーサカに響いていた。 選択肢 1.夜中、俺がトイレに起きたついでに、アカリに毛布をかけ直す 2.朝まで距離を保ち、何もせず普通に寝る 3.アカリが寝ている間に、彼女の端末をこっそり調べてみる 4.寝付けなくて、結局ウイスキーを少し飲む(アカリを起こさないよう静かに) 4 ネオ・オーサカの夜に咲く 第四章 寝酒の匂い 寝付けへん。 アカリの寝息は規則正しくて、時々小さく「ん……」ってうめくような声が聞こえる。トラの耳が夢の中でぴくぴく動いてるのが、ネオ通天閣のネオン越しに薄っすら見えた。 俺はそっとベッドから起き上がり、足音を忍ばせて棚からウイスキーボトルを取り出した。 琥珀色の液体をグラスに少しだけ注ぎ、香りを確かめてから一口含む。 アルコールの温かさが喉を通って、胸の奥に広がる。 ——これで少しは眠れるやろ。 俺はベッドの端に腰掛けたまま、グラスを傾け続けた。 窓の外では雨がまだ降り続いていて、ネオ通天閣の光が水滴を伝って歪んでいる。グリコ・マンが「ゴールイン!」って叫ぶ声が、遠くで繰り返されていた。 ふと、ソファの方から布ずれの音がした。 「……双葉さん?」 アカリが目を覚ましたらしい。 毛布を肩まで引き上げたまま、上半身を起こして俺を見ている。橙の耳がぴんと立って、暗闇の中で瞳がネオンの反射で金色に光った。 「寝られへんかったん?」 「……ああ、少しな。酒、飲んでるだけや」 俺はグラスを軽く振って見せた。 アカリはしばらく黙って俺を見つめていたが、ソファから降りてゆっくり近づいてきた。俺のTシャツの裾が太ももを隠すか隠さんかの長さで、素足が床を踏む音が小さく響く。 「わても……ちょっとだけ、もらえへん?」 「酒、飲むんか?」 「たまにはええやん。今日はえらい疲れたし」 俺はため息をついて、もう一つグラスを取り出し、少しだけ注いでやった。 アカリはベッドの端に腰を下ろし、俺の隣でグラスを受け取った。尻尾がゆっくりと左右に揺れて、時々俺の足に軽く触れる。 「ん……うまいわ。これ、どこの?」 「同じく淡路島のやつや。バーの在庫から持ってきた」 二人はしばらく無言でグラスを傾けた。 雨音と、遠くのホログラムの喧騒だけが部屋に満ちている。 アカリがふと呟いた。 「なあ、双葉さん。あんた、なんでわてを助けたん? 普通やったら、警察に突き出すか、追い返すやろ」 「……さあな。雨に濡れてるトラが可哀想やったんか、単に面倒くさかったんか」 「ほんまは優しいくせに」 アカリはくすっと笑って、グラスを空けた。 それから、俺の肩に軽く頭を寄せてきた。橙と黒の耳が俺の首筋に触れて、温かい。尻尾が俺の腰の後ろに回って、ふわっと絡まる。 「ちょっとだけ……こうしててもええ? すぐ寝るから」 俺は答えず、ただウイスキーをもう一口飲んだ。 アルコールのせいか、体温が上がってる気がした。アカリの髪から、俺のシャンプーの匂いと、彼女自身の少し野性的な香りが混じって漂ってくる。 ——こいつ、ほんまに危なっかしい。 でも、今はそれが心地よかった。 選択肢 1.「もう遅いし、寝よう」とアカリをソファに戻す 2.そのまま肩を貸したまま、黙ってウイスキーを飲み続ける 3.「お前、酔ったらどうなるんや?」と軽くからかってみる 4.アカリの頭を軽く撫でて、髪の感触を確かめる 2 ネオ・オーサカの夜に咲く 第五章 肩と尻尾の距離 俺は何も言わず、ただウイスキーをゆっくりと傾け続けた。 アカリの頭が肩に預けられたまま、彼女の体温がじんわりと伝わってくる。橙と黒の耳が俺の首筋に軽く触れて、時々ぴくりと動くのがわかる。長い尻尾は俺の腰の後ろにゆるく巻きついたままで、先端がふさふさと俺の背中をくすぐるように揺れている。 「……ん、あったかいな」 アカリが小さく呟いて、もっと深く俺にもたれかかってきた。 俺のTシャツ越しに、彼女の胸の柔らかい感触が肩に当たる。息が少し酒の匂いを帯びて、俺の耳にかかる。 俺はグラスをテーブルに置き、空いた手でそっと彼女の髪に触れた。 濡れていた髪はもう乾いていて、さらさらとした感触。トラの耳の付け根のあたりを指先で軽く撫でると、アカリの喉の奥から「ごろ……」という低い鳴るような音が漏れた。 「ん……そこ、気持ちええわ……」 彼女の声が少し甘く掠れている。 尻尾の巻きつきが強くなって、俺の腰をぎゅっと締めつける。俺は慌てて息を整えたが、心臓の音が自分でもうるさいくらいに響いていた。 「佐伯……酔ってるんか?」 「ちょっとだけ……でも、ええ気分や」 アカリは顔を上げて、俺を間近で見つめた。 暗闇の中で、金色の瞳がネオンの反射で妖しく光っている。唇が少し開いていて、尖った牙がちらりと見えた。 俺は無言でグラスをもう一口。 アルコールが体を巡り、理性の端が少しずつ溶けていく気がした。 アカリは俺の肩にまた頭を戻し、今度はゆっくりと体を寄せてきた。 Tシャツの裾が少し捲れ上がって、素肌の腰が俺の腕に触れる。温かくて、柔らかくて、ほんの少し湿っている。 「……双葉さん、ええ匂いするな。酒と、シャンプーと……あんた自身の匂い」 「変なこと言うな」 俺は苦笑いしたが、声が少し低くなっていた。 アカリの尻尾が俺の太ももの上を這うように動き、先端の毛が内腿をくすぐる。ぞくりとした感覚が背筋を走った。 二人はそのまま、雨音とネオ通天閣の遠い喧騒だけを聞きながら、肩を寄せ合っていた。 時間はゆっくりと過ぎ、ウイスキーのボトルが半分近く空になるまで、誰も何も言わなかった。 選択肢 1.「もう寝よう」と優しく言って、彼女をソファに連れていく 2.そのまま朝まで肩を貸し続け、何もせず時間を過ごす 3.アカリの耳や尻尾をもう少し撫でて、彼女の反応を見る 4.「お前、ほんまにトラやな」と笑って、軽くキスをしてみる 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第六章 境界線 俺はグラスをテーブルに置き、静かに息を吐いた。 「……もう遅いし、寝よう」 アカリの体が少しびくりと震えた。 肩に預けていた頭をゆっくり離し、金色の瞳で俺を見上げる。尻尾の巻きつきもゆるゆると解け、先端が名残惜しそうに俺の太ももを撫でてから離れた。 「……せやな。ごめん、わて、調子に乗ってたわ」 声は少し寂しげだったが、すぐにいつもの明るい大阪弁に戻った。 「ありがと、双葉さん。肩、貸してくれて」 アカリは立ち上がり、ソファに戻って毛布にくるまった。 橙と黒の耳がぴょこんと毛布の上に出て、尻尾はソファの端から垂れ下がったまま、ゆっくり左右に揺れている。 俺はベッドに横になり、天井を見つめた。 ウイスキーの余韻がまだ体に残っていて、心臓の鼓動が少し速い。 アカリの体温が肩に残り、シャンプーと彼女自身の匂いが鼻の奥に残っている。 数分後、ソファの方から小さな寝息が聞こえ始めた。 俺も目を閉じたが、眠りは浅かった。 ——境界線は、まだ引いたままや。 外では雨が小降りになり、ネオ通天閣のネオンが少しずつ朝の気配に薄められていく。 遠くで、ミスター・ビリケンが「福きたる!」と叫ぶホログラムの声が、夜明け前のネオ・オーサカに響いていた。 翌朝、俺が目を覚ますと、アカリはもう起きていた。 俺のTシャツを着たまま、窓辺に立って外を眺めている。尻尾がゆっくりと揺れ、朝の光に橙と黒の縞が鮮やかに浮かんでいた。 「おはよう、双葉さん。……雨、上がったみたいやな」 「ああ。おはよう。コーヒー、淹れるわ」 俺はベッドから起き上がり、キッチンに向かった。 アカリは振り返って、軽く微笑んだ。 「昨日は、ありがとな。ほんまに助かったわ」 「別にええよ。……ただ、今日からどうするんや? 追われてるんやろ?」 アカリの耳が少し伏せられた。 「……せやな。ちょっと、外の様子見てくるわ。情報集めなあかんし」 「一人で?」 「慣れてるから大丈夫や。でも……また戻ってええか?」 俺はコーヒーを淹れながら、ため息をついた。 「……勝手にしろ」 アカリはくすっと笑って、ライダースジャケットを羽織った。 濡れていた服はもう乾いていて、黒のタンクトップとショートパンツの姿に戻っている。 「ほな、行ってくるわ。夕方までには戻るから」 ドアが閉まる音がして、部屋に静けさが戻った。 俺はコーヒーを一口飲んで、窓の外を見た。 ネオ通天閣が朝の光に輝き、クイダオレ・タローが「おはようさん!」と叫んでいる。 今日もネオ・オーサカは、騒がしく動き始めていた。 選択肢 1.アカリが出て行った後、店を開けずに彼女の帰りを待つ 2.いつも通り店を開けて、普段の日常に戻る 3.アカリの後を追って、こっそり様子を見る 4.知り合いの情報屋に連絡して、アカリの噂を聞いてみる 4 ネオ・オーサカの夜に咲く 第七章 裏の匂い アカリが出て行った後、俺はコーヒーを飲み干して、スマホを手に取った。 いつも通り店を開ける気にはなれへん。頭の中にアカリの尻尾の感触と、昨夜の酒の匂いが残ってる。 ——あの女、本当にただの情報屋か? 俺は古い知り合いに連絡した。 名前は「ジロー」——ネオ・オーサカの裏社会で情報を売り買いしてる、半獣のキツネ男だ。昔、店に通ってた常連で、借金取りに追われてたときに俺が少し助けた縁がある。 暗号化されたチャットで短くメッセージを送った。 『トラ型の女、佐伯アカリって知ってるか? ネオ通天閣のハック事件に関わってるらしい』 返信はすぐに来た。 『おう、知ってるで。アカリちゃんは確かに情報屋やけど、最近ヤバい連中と絡んでる噂あるわ。 "ネオ大阪城のバックドア"狙ってるハッカー集団の末端に名前上がってる。 でも本人は直接ハックしたわけちゃうみたいやな。 ただ、逃げてるのは本当や。警察より、裏の組織の方が血眼やで。 報酬かけてるらしいわ——生け捕りで高額』 俺は眉をひそめた。 『どんな組織?』 『"ブラックタイガー"って名乗ってる新興のサイバーテロ集団や。 タイガースを神聖視してる過激派の逆で、聖地を金に変えようとしてる連中。 甲子園の核融合炉を人質に、街に脅しをかけるのが目的やって』 ブラックタイガー……聞いたことない名前やない。 最近、ネオ・オーサカの暗部で噂になってたグループだ。佐藤輝明監督の采配を批判する匿名投稿も、こいつらの仕業だって言われてる。 『アカリは危ないんか?』 『危ないどころか、餌や。 連中はアカリちゃん使って、もっとデカい魚釣ろうとしてるみたいやで。 お前、巻き込まれるんちゃうか?』 俺はスマホをテーブルに置いて、ため息をついた。 ——やっぱり、ただの雨宿りやなかったか。 窓の外では、ネオ通天閣が朝の陽光を浴びて輝いてる。 かに道楽の巨大ホロ蟹が、ゆっくりとハサミを動かしていた。 夕方まで、まだ時間がある。 アカリが戻ってきたら、どう話すか——考えなあかん。 俺はもう一杯コーヒーを淹れ直して、カウンターに座った。 店のシャッターはまだ下ろしたまま。 今日は開けられそうにない。 選択肢 1.アカリが戻ってきたら、ジローから聞いた話を全部正直に伝える 2.ブラックタイガーのことを黙って、自分で少し調べてみる 3.アカリが戻る前に、店を閉めてどこか安全な場所へ移動させる準備をする 4.何もせず、いつも通り店を開けてアカリの帰りを自然に待つ 2 ネオ・オーサカの夜に咲く 第八章 ブラックタイガーの影 アカリが戻る前に、俺は自分で少し調べてみることにした。 ジローの話だけじゃ不安や。もっと確かな情報を掴まなあかん。 俺は店の奥の端末を起動して、ダークウェブの裏ルートに入った。 昔、常連のハッカーに教えてもらったアクセスポイントだ。普段は使わへんが、こういう時は役に立つ。 検索キーワードは「ブラックタイガー」「ネオ大阪城 バックドア」「甲子園 核融合炉」。 すぐにいくつかスレッドがヒットした。 『ブラックタイガーの目的は聖地の乗っ取りや。 核融合炉の制御権取ったら、ネオ・オーサカ全域の電力握れる。 身代金要求か、街の支配か……どっちにしろヤバい』 『佐伯アカリってトラの情報屋、最近目撃情報多いで。 ブラックタイガーの下請けやってるって噂やけど、本人は逃げてるらしい』 『報酬出てたわ。生け捕りで5000万クレジット。 死体でも2000万。半獣の身体パーツは闇市場で高値つくからな』 俺は画面を睨みながら、拳を握った。 アカリがただの巻き込まれ型やとしても、こいつらは容赦せえへん。 さらに深く潜ると、ブラックタイガーのリーダーらしき人物の影が浮かび上がってきた。 コードネームは「シャドウ・バース」。 ランディ・バースのホログラムを逆手に取ったような名前で、タイガースを侮辱する意図が丸出しや。 『次なるターゲットはネオなんばグランド花月のセキュリティ網らしい。 そこを突破したら、甲子園の予備回線にアクセスできる』 今日がその日かもしれへん。 俺は端末を閉じて、時計を見た。 夕方近く。アカリがそろそろ戻ってくる時間や。 ——どうする、双葉トシアキ。 アカリをこのまま置いとくのは危ない。 でも、俺が首を突っ込むのもリスクが高い。 外では、ネオ通天閣のネオンが夕暮れの空に毒々しく灯り始めていた。 ランディ・バースの巨大ホログラムが、拳を振り上げて「ホームラン!」と叫んでいる。 その時、ドアがノックされた。 「……双葉さん? 戻ったで」 アカリの声や。 俺は深呼吸して、ドアを開けた。 アカリは少し疲れた顔をして立っていた。 ライダースジャケットの袖が破れて、橙と黒の尻尾が警戒したようにぴんと立っている。 「ただいま。……ちょっと、ヤバいことになってるみたいや」 選択肢 1.「全部知ってる。ブラックタイガーのこと、報酬のこと」と正直に切り出す 2.「疲れてるやろ。先に飯食おう」と一旦落ち着かせてから話す 3.「今すぐここ出よう。安全な場所に移る」と急いで逃げる準備をする 4.「お前、一人でどうするつもりやったん?」と少し怒った調子で聞く 2 ネオ・オーサカの夜に咲く 第九章 粉もんの匂い 「疲れてるやろ。先に飯食おう」 俺はそう言って、アカリをカウンターに座らせた。 彼女の耳が少し驚いたようにぴくりと動いたが、すぐに小さく頷いた。 「……ありがと。ほんま、お腹ペコペコやわ」 俺は店のキッチンに回り、冷蔵庫から材料を取り出した。 ネオ・オーサカの粉もんは、どんな時代になっても変わらへん。お好み焼きとたこ焼き——今日はお好み焼きにしよう。 鉄板を熱して、キャベツを山盛りに刻む。豚バラ、卵、天かす、紅生姜。 ソースとマヨネーズの匂いが店内に広がり始めると、アカリの尻尾がゆっくり左右に揺れ始めた。 「ええ匂いやなあ……双葉さん、料理上手なん?」 「バーテンダーやからな。腹減った客に何か出すくらいはできる」 俺は生地を鉄板に流し、具を乗せて丁寧に返した。 ジュージューという音が心地よく響く。 アカリはカウンターに頰杖をついて、俺の手元をじっと見つめていた。 橙と黒の耳が時々ぴくぴく動いて、疲れが少しずつ抜けていくのがわかった。 「わて、昔は実家でお好み焼き屋やってたんや。親がな」 「へぇ、そうなんか」 「せやけど、ネオ・オーサカの再開発で店取られて……それから情報屋やってる」 俺は黙って聞きながら、焼き上がったお好み焼きを皿に盛った。 ソースをたっぷり塗って、マヨネーズで格子を描き、青のりと鰹節を振りかける。 「ほら、食え。熱いうちに」 アカリは両手で皿を受け取ると、目を輝かせた。 「うわあ、めっちゃ本格的やん! ありがと、双葉さん!」 彼女は早速ヘラで切り分けて、大きな一口を頬張った。 「んっ……! うまいわ、これ! キャベツ甘いし、豚バラの脂がええ感じに染みてる……」 尻尾が嬉しそうに左右に大きく振られて、カウンターの脚に軽く当たる音がする。 俺も自分の分を焼きながら、隣に座った。 二人はしばらく無言で食べ続けた。 外ではネオ通天閣のネオンが夕闇を切り裂き、ランディ・バースのホログラムがホームランを打ち続ける。 アカリがふと呟いた。 「こんな普通の飯、久しぶりやわ。……追われてるん忘れそうになる」 俺はソースの瓶を置き、静かに言った。 「佐伯」 「ん?」 「……ゆっくり食ってええけど、食った後で話そう。全部、聞かせてくれ」 アカリの耳が少し伏せられた。 でも、彼女は小さく頷いた。 「わかった。……約束するわ」 お好み焼きの熱が、二人を包むように立ち上っていた。 選択肢 1.食事が終わったら、すぐにブラックタイガーの話を切り出す 2.「もう一枚焼くか?」と食事を続けて、もっとリラックスさせてから話す 3.アカリの過去(実家のお好み焼き屋のこと)をもう少し聞いてみる 4.食後、酒を少し出して、昨夜のような雰囲気で自然に話を引き出す 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十章 告白のソース お好み焼きを食べ終わると、皿を片付けてカウンターに並んで座った。 俺はウイスキーを少しだけ注ぎ、アカリにもグラスを滑らせた。 彼女は小さく「ありがと」と呟いて、グラスを手に取ったが、すぐに置いて深呼吸した。 「……全部、話すわ」 俺は黙って頷いた。 アカリは橙と黒の耳を少し伏せ、尻尾をカウンターの下でゆっくりと左右に揺らしながら始めた。 「わて、確かにブラックタイガーの末端に情報流してた。 最初はただの金稼ぎやったんや。ネオ通天閣のホロシステムの脆弱性データ、ちょっと売っただけやと思ってた。 でも、気づいたらあいつらの本当の目的を知ってしもて……ネオ大阪城のバックドア作って、甲子園の核融合炉を人質にするって計画や」 彼女の声が少し震えた。 「わて、止めたかった。でも、もう遅くて……抜けようとしたら、報酬かけられて追われる身になった。 生け捕りで5000万クレジット。死体でも2000万やって」 俺は静かに聞いた。 調べた内容とほぼ一致してる。アカリは嘘をついてへん。 「今日、外で情報集めてたら、ブラックタイガーの連中がネオなんばグランド花月の周辺に集まってる気配あった。 今夜か明日の夜に、大きな動きがあるみたいや」 アカリはグラスを握りしめて、俺を見た。 「双葉さん……わて、巻き込んでごめん。 でも、あんたに隠し事したくなかったんや」 俺はウイスキーを一口含んで、ゆっくりと息を吐いた。 「……知ってたで」 アカリの耳がぴくりと立った。 「え……?」 「ジローってキツネの情報屋から聞いた。お前の名前も、報酬の額も、ブラックタイガーの目的も——全部な」 アカリの瞳が揺れた。尻尾が一瞬止まり、それからゆっくりと垂れ下がった。 「……ほんまに、ごめん。わて、あんたに迷惑かけるつもりちゃうかったのに」 俺はカウンターに肘をつき、アカリの顔をまっすぐ見た。 「迷惑や。……でも、放っておけへん」 アカリの金色の瞳が、わずかに潤んだ。 「なんで……? あんた、ただのバーテンダーやろ? なんでそこまで」 「さあな。雨に濡れたトラが可哀想やったんか。お好み焼き食う顔が可愛かったんか」 俺は苦笑いして、グラスを軽く振った。 「それとも……この街が、聖地が、タイガースが、壊されるん嫌やったんか」 アカリはしばらく黙って俺を見つめていた。 それから、ゆっくりと微笑んだ。 「……双葉さん、ほんまにええ男やな」 外では、ネオ通天閣のネオンが夜の帳をさらに濃く照らし始めていた。 かに道楽の蟹がゆっくりハサミを振り、グリコ・マンがゴールインを叫び続ける。 今夜、何かが起こる。 選択肢 1.「一緒にブラックタイガーを止める方法を考えよう」と提案する 2.「今すぐここ出よう。安全な場所に隠れる」と逃亡を優先する 3.「警察に連絡する。お前は証言者になれる」と正規ルートを選ぶ 4.「まずは酒を飲もう。今夜は長い夜になる」と一旦落ち着いて作戦を練る 4 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十一章 長い夜の始まり 俺は棚から新しいボトルを取り出し、琥珀色のウイスキーを二つのグラスにたっぷり注いだ。 アカリの前に滑らせて、自分も一口含む。 「まずは酒を飲もう。今夜は長い夜になる」 アカリは少し驚いた顔をしたが、すぐにグラスを手に取って小さく笑った。 「……せやな。長い夜やわ」 二人は軽くグラスを合わせて、ゆっくりと飲み始めた。 アルコールが喉を通るたび、肩の力が抜けていくのがわかった。 アカリはグラスを回しながら、橙と黒の耳をぴくりと動かした。 「双葉さん、あんたほんまに巻き込まれてもええの? ブラックタイガーは本気やで。失敗したら、聖地どころかこの街全部がヤバくなる」 「知ってる。だからこそ、放っておけへん」 俺は窓の外を見た。 ネオ通天閣が紫と緑のネオンで空を毒々しく染め、クイダオレ・タローが「くいだおれやで~!」と叫びながら回転している。その下で、かに道楽の蟹がゆっくりハサミを振っていた。 「俺はただのバーテンダーやけど……この街で生まれ育って、タイガース見て育った。 佐藤監督が采配ミスった時も、選手がエラーした時も、ずっと応援してきた。 聖地を金に変えられるなんて、許せへん」 アカリは俺の顔をじっと見て、それからふっと息を吐いた。 「……あんた、ほんまにええ男やな。わて、惚れそうになるわ」 「惚れるんは後でええ。今は作戦考えよう」 俺はカウンターに地図アプリを投影した。 ネオなんばグランド花月、ネオ大阪城、甲子園——主要なポイントをマークする。 「アカリ、お前はブラックタイガーの動きをどれだけ把握してる?」 「今夜、ネオなんばグランド花月の地下サーバールームに侵入する予定やて。 そこから予備回線使って、甲子園のセキュリティに穴開けるつもりや。 人数は10人くらい。リーダーは『シャドウ・バース』ってコードネームの人間の男」 「侵入ルートは?」 「裏の配送通路からや。警備は緩いけど、監視カメラは多い」 俺はウイスキーをもう一口。 頭が少し熱くなってきたが、思考は逆に冴えてくる。 「止める方法は二つやな。 一つは侵入前に警察に通報して、包囲してもらう。 もう一つは……俺たちが先回りして、サーバールームで待ち伏せる」 アカリの尻尾がぴんと立った。 「待ち伏せ? 二人だけで?」 「せや。お前は情報屋やろ。ハッキングの知識もあるはずや。 俺は……まあ、喧嘩なら少しはできる」 アカリはグラスを空けて、俺をまっすぐ見た。 「……決めたら、戻れへんよ?」 「覚悟はできてる」 二人は再びグラスを合わせた。 琥珀色の液体が揺れて、ネオンの光を反射する。 長い夜が、本当に始まった。 選択肢 1.「警察には頼らん。二人でサーバールームに先回りする」と決断する 2.「一応、匿名で警察に情報リークしよう。それから俺たちも動く」と両方を並行する 3.「お前はここにいろ。俺一人で様子を見てくる」とアカリを危険から遠ざける 4.「もう少し情報集めよう。今夜はまだ動かず、明日の朝まで待つ」と慎重に進める 2 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十二章 二重の保険 俺はウイスキーを一口含んで、ゆっくりと息を吐いた。 「警察には頼らんわけちゃう。一応、匿名で情報リークしよう。それから俺たちも動く」 アカリの金色の瞳が少し丸くなった。 「ええ考えやな。警察が動けばブラックタイガーの連中も慌てるし、わてらが先回りする隙もできる」 「せや。保険は二重にかけるに限る」 俺はスマホを取り出し、匿名通報用の暗号化アプリを起動した。 ジローから教えてもらった、警察のサイバー犯罪部門直通の隠し回線だ。 短く、要点だけを入力した。 『今夜、ネオなんばグランド花月地下サーバールームにブラックタイガー構成員10名侵入予定。 目的:甲子園核融合炉セキュリティ網へのバックドア設置。 リーダーコードネーム「シャドウ・バース」』 送信ボタンを押すと、画面に「受信確認」のマークが出た。 これで警察は動くはずや。少なくとも警戒態勢は敷かれる。 アカリは俺の横で尻尾をゆっくり振って、感心したように言った。 「双葉さん、えらい手際ええな。ほんまにただのバーテンダーか?」 「昔、常連にハッカーおったんや。色々教えてもらった」 俺はスマホをポケットにしまい、立ち上がった。 「準備しよう。ネオなんばグランド花月まで、裏道使えば30分で着く」 アカリも立ち上がり、ライダースジャケットのジッパーを上げた。 橙と黒の耳がぴんと立ち、尻尾が力強く上を向いている。 「わて、ハッキングツールは持ってるで。サーバールーム入ったら、バックドア作る前に逆ハックできるかも」 「頼もしいな」 俺は店の奥から古いスタンガンを取り出した。 非殺傷だけど、十分に相手を倒せる。バーの用心棒代わりにもう10年使ってるやつだ。 「武器はこれだけや。お前は?」 アカリはジャケットの内ポケットから、小型の電磁パルスガジェットを出した。 「これで監視カメラとドローンは無効化できるわ。……トラの爪も、意外と役立つけどな」 彼女はにやりと笑って、尖った爪をちらりと見せた。 二人は軽く拳を合わせた。 「行こう。聖地を守るために」 外に出ると、ネオ・オーサカの夜風が少し冷たかった。 ネオ通天閣が毒々しい光を放ち、空にはミスター・ビリケンが「福きたる!」と叫んでいる。 今夜、すべてが決まる。 選択肢 1.二人でバイクを使ってネオなんばグランド花月へ急行する 2.裏道を徒歩で慎重に進み、警察の動きを遠くから確認しながら向かう 3.途中でジローに連絡して、追加の支援(情報や援護)を頼む 4.アカリに「何かあったら、お前を優先して逃げる」と約束してから出発する 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十三章 聖地への疾走 「警察には任せとこう。俺たちは先回りする」 俺は店の奥からヘルメットを取り出し、アカリに放った。 「バイクで行く。ネオなんばグランド花月まで最短ルートで飛ばす」 アカリはヘルメットを受け取り、橙と黒の耳を少し折り曲げて被った。 尻尾が興奮したようにぴんと立ち、ライダースジャケットの裾を翻して俺の後ろに飛び乗る。 「頼むで、双葉さん!」 俺は古い電動バイクのエンジンを起動させた。 ネオ・オーサカの夜の空気を切り裂くように、裏道を突っ走る。 ネオ通天閣の毒々しいネオンが後ろに遠ざかり、空にはグリコ・マンが「ゴールイン!」と叫びながら疾走する俺たちを追いかけるように光っていた。 風が耳元で唸る。 アカリの腕が俺の腰にしっかり回され、彼女の胸が背中にぴったりと押しつけられる。 尻尾が風になびいて、時々俺の太ももに絡みつくように触れた。 「右の路地入って! 監視カメラ少ないで!」 アカリの声がヘルメット越しに響く。 俺はハンドルを切って、狭い裏通りへ。 ネオなんばグランド花月の巨大な看板が、遠くに見えてきた。 吉本新喜劇のホログラム役者たちが、夜空で漫才を披露している。 バイクを路地裏に停めて、エンジンを切る。 「ここから徒歩や。配送通路はあっち」 アカリがヘルメットを外すと、橙と黒の耳がぴんと立って周囲の音を捉えている。 金色の瞳が暗闇で光り、尻尾が警戒しながらゆっくり揺れていた。 俺たちは影から影へ移動し、ネオなんばグランド花月の裏側に回った。 地下サーバールームへ続く配送通路の入り口が見える。 まだブラックタイガーの気配はないが、遠くでサイレンの音が微かに聞こえ始めた。 ——警察も動き出したか。 アカリが俺の袖を軽く引いた。 「双葉さん……ありがとな。ほんまに、わて一人やったら逃げてたと思うわ」 「礼は聖地守ってからでええ」 俺はスタンガンを握り直し、アカリと目を合わせた。 彼女はにやりと笑って、尖った牙を見せた。 「ほな、行きましょか」 二人は通路の闇に滑り込んだ。 選択肢 1.サーバールームに先に入り、ブラックタイガーが来るまで完全に待ち伏せる 2.通路の途中で隠れて、侵入してくる連中を奇襲で倒す 3.アカリにハッキングを任せ、俺が外で見張りと警察の到着を待つ 4.侵入前にサーバールームのセキュリティをアカリが遠隔で強化してしまう 3 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十四章 闇の分担 俺は通路の入り口で足を止め、アカリの肩に軽く手を置いた。 「お前はサーバールームに先に入って、ハッキング対策を頼む。 俺はここで外を見張ってる。警察の到着も確認する」 アカリの金色の瞳が少し揺れた。 「……双葉さん、一人で大丈夫? ブラックタイガーの連中、武装してるかもやで」 「スタンガンあるし、喧嘩なら自信ある。 お前の方がハッキングの腕が必要や。逆ハックして、バックドア作る前に封じ込めてくれ」 アカリは橙と黒の耳を少し伏せて、尻尾をゆっくり左右に振った。 「わかった……でも、ヤバくなったらすぐ呼んでな。 わての耳、遠くの音も聞こえるから」 彼女は小型の電磁パルスガジェットを見せて、小さく笑った。 「監視カメラは全部落とすわ。双葉さんの姿、誰にも見られへんようにする」 俺は頷いて、アカリをサーバールームへ向かう階段の方へ促した。 「頼むで、佐伯」 アカリは一瞬立ち止まり、振り返って俺をまっすぐ見た。 「……トシアキ」 初めて名前で呼んだ。 その声が、少し甘く響いた。 「絶対、生きて帰ってきてや」 俺は苦笑いして、軽く手を上げた。 「ああ。聖地守った後でお好み焼きまた食おう」 アカリはにやりと牙を見せて、闇の中に消えていった。 橙と黒の尻尾が最後にふわりと揺れて、階段の下に溶け込む。 俺は通路の入り口近くの影に身を隠し、周囲を警戒した。 遠くでサイレンが少しずつ近づいてくる。警察の動きは順調や。 だが—— 数分後、予想外の足音が複数聞こえてきた。 ブラックタイガーが、予定より早く来てる。 しかも、配送通路とは逆の方向——非常階段の方からだ。 「……くそ、ルート変えたか」 俺はスタンガンを握り直し、息を潜めた。 闇の中で、黒い戦闘服の男たちが静かに降りてくる。 10人どころじゃない。15人以上はいる。 リーダーらしき男が、低い声で指示を出していた。 「シャドウ・バースだ。サーバールームはすぐ下。トラの雌はもう中にいるはずだ。生け捕り優先」 ——アカリの居場所、バレてる。 俺の心臓が激しく鳴った。 今、動かなあかん。 選択肢 1.すぐに奇襲をかけて、敵の先頭をスタンガンで倒し、アカリに警告を送る 2.静かに後退し、アカリを呼び戻して一緒に逃げる 3.警察の到着を待ち、敵がサーバールームに入るまで耐える 4.敵の会話をさらに盗み聞きして、シャドウ・バースの詳細を把握する 4 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十五章 シャドウ・バースの声 俺は息を殺し、影に身を沈めたまま、敵の会話をさらに盗み聞きすることにした。 スタンガンは握ったまま、指一本動かさず、耳を澄ます。 ブラックタイガーの連中は非常階段を静かに降りきり、通路の中央で輪になった。 黒い戦闘服に身を包み、顔はマスクで隠れているが、リーダーの「シャドウ・バース」らしき男は少し体格が違う。背が高く、肩幅が広い。声も低く、落ち着いている。 「トラの雌はサーバールームに単独で潜入済みだ。生け捕りを最優先。 あの女が持ってるハッキングツールは、計画の最終段階で必要になる」 部下が小声で応じる。 「ボス、警察の動きはどうです?」 「匿名通報があったらしいが、遅い。 俺たちがサーバールームを制圧した後なら、警察が来ても手遅れだ。 核融合炉の制御コードはすでに一部入手済み。残りはあのトラが持ってるデータと合体させるだけ」 ——一部入手済み? そんな話、ジローからもアカリからも聞いてへん。 俺の背筋に冷たいものが走った。 シャドウ・バースは続けた。 「あと30分で予備回線を乗っ取る。 その後、甲子園球場の上空にホログラムで声明を流す—— 『ネオ・オーサカの電力は俺たちの手中にある。1000億クレジット用意しろ。 さもなくば、聖地は永遠に暗闇に沈む』とね」 連中が低く笑う。 「佐藤輝明の顔を泣き顔ホロにして流すのも楽しみだな」 「ランディ・バースのホロを爆発させてやる」 ——ふざけんな。 俺の拳が震えた。 シャドウ・バースが最後に指示を出した。 「チームAはサーバールームへ直行。トラを生け捕り。 チームBは地上で警察の到着を遅らせる。爆煙弾を数カ所で使用しろ。 俺はチームAと共に行く」 連中が二手に分かれ始めた。 チームA——シャドウ・バースを含む8人が、サーバールームへ向かって歩き出す。 アカリが一人でいる場所へ。 ——今、動くしかない。 俺はスマホをそっと取り出し、アカリに緊急メッセージを送った。 『敵8人、シャドウ・バース含む、今向かってる。生け捕り目的。 警察は遅れる。逃げろ、または隠れろ。俺は後ろからつける』 送信と同時に、俺は影から影へ移動し、チームAの最後尾に忍び寄った。 選択肢 1.最後尾の敵をスタンガンで気絶させ、武器を奪って奇襲を開始する 2.アカリの返信を待って、彼女が隠れるか逆ハックを終えるまで耐える 3.チームBが地上へ向かうのを追い、爆煙弾を阻止して警察の到着を早める 4.シャドウ・バースのすぐ後ろまで忍び寄り、一対一でリーダーを倒す賭けに出る 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十六章 奇襲の火蓋 ——もう待ってる時間はない。 俺は息を止め、チームAの最後尾を歩く男に音もなく近づいた。 黒い戦闘服の背中、首筋が無防備に露出している。 スタンガンを最大出力にセットし、一気に飛び出す。 「——っ!」 電極を首に押し当て、トリガーを引く。 バチッという鋭い音とともに、男の体が硬直し、そのまま床に崩れ落ちた。 他の7人が振り返るより早く、俺は倒れた男の腰からショックガンを奪い取った。 非殺傷型の電磁パルス銃——こいつはスタンガンより射程が長い。 「敵襲!」 シャドウ・バースの低い咆哮が通路に響く。 残り7人が一斉に銃を構えるが、狭い通路では動きが鈍る。 俺は壁を盾に身を滑らせ、奪ったショックガンを連射した。 バチバチバチッ! 青白い電磁パルスが飛び、三人が膝をつく。 残り4人——シャドウ・バースを含む——が一気に距離を詰めてきた。 その瞬間、サーバールームの扉が爆発的に開いた。 「トシアキ、下がって!」 アカリの声だ。 橙と黒の尻尾を怒らせ、彼女は爪を立てて飛び出してきた。 トラの身体能力は人間の数倍。 一人の敵の銃を弾き飛ばし、肘打ちで気絶させる。 続けて電磁パルスガジェットを投擲——通路の照明と敵の通信機が一瞬で機能停止した。 暗闇の中、俺とアカリは背中合わせに立った。 「遅なってもうた! ごめん!」 「ええタイミングや!」 残り3人。シャドウ・バースが中央に立ち、冷たい声を吐く。 「……邪魔なバーテンダーと、裏切り者のトラか。 生け捕りは諦める。殺せ」 敵が銃口を向けた瞬間——遠くからサイレンが爆音のように近づいてきた。 警察の特殊部隊だ。爆煙弾を阻止されたチームBが失敗したらしい。 シャドウ・バースが舌打ちする。 「撤退だ!」 だが、もう遅い。 通路の両端から警察のライトが照射され、拡声器が響く。 「ブラックタイガー! 武器を捨てて両手を上げろ!」 敵は慌てて逃げようとしたが、アカリが素早くガジェットを再起動。 非常階段のシャッターが自動で閉まり、退路を封鎖した。 シャドウ・バースが最後に俺たちを睨み、マスクを外した。 意外に若い、30代前半の男だった。目だけが異様に冷たい。 「……覚えておけ。これは終わりじゃない」 そして煙幕を焚き、警察の銃撃の中で姿を消した。 残りの構成員は全員拘束された。 戦いは終わった。 俺とアカリは壁に背中をつけ、肩で息をしていた。 橙と黒の尻尾が、興奮の余韻で小刻みに震えている。 「……聖地、守れたな」 俺が呟くと、アカリがふっと笑った。 「せやな……トシアキ、かっこよかったで」 警察が近づいてくる中、二人は自然と手を握り合っていた。 選択肢 1.警察にすべてを説明し、正式に証言者として協力する 2.匿名を保ち、警察の捜査が終わるまで店を一時閉めて隠れる 3.そのままアカリと一緒に店に戻り、勝利の酒を飲む 4.事件の後処理を警察に任せ、二人はすぐに甲子園球場へ向かう(日本シリーズの時期が近い) 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十七章 証言の代償 警察の特殊部隊に囲まれ、俺とアカリは手を上げたままゆっくりと通路の中央に出た。 ライトが眩しくて目を細めながら、隊長らしき男が近づいてくる。 「君たちが匿名通報者か? よくやった。ブラックタイガーの大半を捕まえられた」 俺は頷いて、スタンガンと奪ったショックガンを床に置いた。 「双葉トシアキです。こっちは佐伯アカリ。 彼女は元々ブラックタイガーの末端にいたが、計画を知って離脱した。 今夜の侵入情報も、彼女の協力で得たものです」 アカリの耳が少し震えたが、俺の手をぎゅっと握り返してきた。 隊長は二人を交互に見て、静かに言った。 「事情は大体把握した。シャドウ・バースは逃げられたが、捕まえた連中から十分な証拠が出るはずだ。 君たちには正式に証言者として協力してもらいたい。保護プログラムも適用できる」 アカリが小声で呟いた。 「……保護、ってことは、ネオ・オーサカから出なあかん?」 「場合による。少なくともしばらくは身分を隠して生活してもらうことになるだろう」 俺はアカリの手の温もりを感じながら、隊長を見据えた。 「協力します。聖地を守れただけで十分や。 ただ、俺の店——『粉もんブルース』だけは、誰かに任せて続けてもらえへんか?」 隊長は苦笑いした。 「検討してみよう」 その後、数時間の事情聴取。 ブラックタイガーの計画の詳細、アカリの過去、俺の関与——すべて正直に話した。 シャドウ・バースが逃げたことは気がかりだったが、組織の根幹は壊滅したらしい。 聴取が終わると、外はもう夜明け近く。 ネオなんばグランド花月の上空に、朝焼けが広がっていた。 吉本のホログラムは停止し、代わりに臨時のニュースホロが浮かんでいる。 『緊急速報:サイバーテロ集団ブラックタイガー壊滅。聖地・阪神甲子園球場の核融合炉は無事』 アカリが俺の肩に頭を寄せてきた。 「……終わったな」 「ああ。でも、まだ日本シリーズが残ってる」 俺たちは警察の車で店に戻った。 一時的に保護観察下やけど、今夜だけは自由らしい。 店に入ると、カウンターに座って、勝利の酒を注いだ。 アカリは橙と黒の尻尾をゆっくり振って、グラスを俺に合わせた。 「トシアキ……ほんまに、ありがとな。 わて、こんなええ男と出会えて、よかったわ」 俺はグラスを軽く合わせて、彼女の金色の瞳を見つめた。 「俺もや。アカリがいなけりゃ、聖地は守れへんかった」 外では、朝のネオ通天閣が穏やかに輝き始めていた。 選択肢 1.その夜、保護プログラムの話が出る前に、二人は初めて唇を重ねる 2.店で朝まで酒を飲み、過去や未来の話を静かに続ける 3.テレビをつけると、ちょうど日本シリーズの話題が流れていて、二人は甲子園へ向かうことを決める 4.アカリが「もう逃げたくない」と言い、トシアキは彼女と一緒に新しい生活を始める覚悟を決める 3 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十八章 聖地の灯 店に戻って少し休んだ後、俺はリモコンを手にテレビをつけた。 朝のニュースがまだブラックタイガーの事件を繰り返してるかと思ったら、画面はちょうどスポーツ中継の予告に切り替わっていた。 『——いよいよ今夜、阪神タイガース対福岡ソフトバンクホークス、日本シリーズ第4戦! 舞台は聖地・阪神甲子園球場。 佐藤輝明監督率いるタイガースは、昨夜の事件にも動じず、連勝で王手をかけるか!? 試合開始は19時、水曜日のナイターです!』 アカリがカウンター越しに身を乗り出した。 「今日、第4戦やて! しかも水曜日……聖地でナイター!」 橙と黒の耳がぴんと立ち、尻尾が興奮で左右に激しく振られる。 「トシアキ、行こ! 絶対行こ! 聖地が無事やったん、ちゃんとこの目で見たい!」 俺は少し考えて、笑った。 「……せやな。警察にはもう話したし、今日は特別やろ。 チケット、取れるか?」 アカリはスマホを素早く操作して、にやりと牙を見せた。 「外野指定、2席取れたで! レフトポール際やけど、ええ席や!」 事件の余波で一部のファンが観戦をキャンセルしたらしい。 幸運にも、俺たちは聖地へ行けることになった。 夕方、保護観察の担当官に連絡を入れて許可をもらい、二人はバイクで甲子園へ向かった。 ネオ・オーサカの夜空には、いつもより明るいホログラムが浮かんでいる。 クイダオレ・タローもグリコ・マンも、今日は「タイガースがんばれ!」のメッセージに変わっていた。 甲子園球場に着くと、銀傘が朝焼けから一転してナイターのライトに輝いていた。 ファンで埋め尽くされたスタンド、トランペットの音、ジェット風船の準備。 アカリは俺の手を握り、目を輝かせた。 「すごい……ほんまに、守れてよかった」 試合は白熱した。 タイガースが先制し、ピンチをしのぎ、佐藤監督の采配が冴える。 9回裏、2アウト満塁でサヨナラヒットが生まれた瞬間、球場全体が揺れた。 「やったー!!」 アカリが俺に飛びついてきて、橙と黒の尻尾が興奮の極みで俺の腰に巻きついた。 俺も自然と彼女を抱きしめ、耳元で叫んだ。 「日本一まであと1つや!」 試合後、選手たちがグラウンドで喜びを爆発させる中、俺たちはゆっくりと球場を後にした。 帰り道、バイクの後ろで、アカリが俺の背中に頰を寄せてきた。 「……トシアキ、今日、ほんまに幸せやったわ」 俺はヘルメットの中で微笑んで、アクセルを少し強めた。 聖地の灯が、二人を優しく照らしていた。 選択肢 1.試合の興奮冷めやらぬまま、店に戻って熱い夜を過ごす 2.保護プログラムが始まる前に、二人は一晩だけ街を離れて淡路島の実家跡へ行く 3.日本シリーズ最終戦まで毎日甲子園に通い、聖地を守った絆を深める 4.アカリが「トシアキと一緒に、新しい人生始めたい」と告白する 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 第十九章 熱の残る夜 甲子園からの帰り道、バイクのエンジン音が夜のネオ・オーサカに響く。 興奮がまだ体から抜けきらず、アカリの腕が俺の腰に強く回されている。 橙と黒の尻尾が風を切って何度も俺の背中に絡みつき、彼女の体温が背中全体に伝わってくる。 店に戻ると、シャッターを上げて中に入った。 カウンターの照明だけを点け、俺はいつもの琥珀色のウイスキーを二つ注いだ。 でも、グラスを手に取る前に、アカリが俺の腕を掴んだ。 「トシアキ……」 振り返ると、彼女の金色の瞳がすぐ近くで揺れていた。 試合の歓声とライトの残光が、まだその瞳に宿っている。 橙と黒の耳が少し後ろに倒れ、尻尾がゆっくりと、でも確実に俺の腰に巻きついてきた。 俺はグラスを置いて、彼女の頰に手を伸ばした。 指先が触れた瞬間、アカリが小さく息を漏らし、目を閉じた。 そして、自然に——唇が重なった。 最初は軽く、探るように。 でもすぐに熱が深くなり、アカリの尖った牙が俺の下唇をかすめる。 彼女の舌が少し野性的に絡みつき、喉の奥から低い「ごろ……」という鳴るような音が漏れた。 俺は彼女の腰を引き寄せ、ライダースジャケットのジッパーをゆっくり下ろした。 下は薄いタンクトップ一枚。豊かな胸の谷間が息づかいとともに上下し、俺の胸に押しつけられる。 アカリが唇を離して、熱い息を耳元に吹きかけた。 「……トシアキ、欲しい」 その言葉に、俺の理性は完全に溶けた。 俺は彼女を抱き上げ、カウンターの上にそっと座らせた。 ジャケットを脱がせ、タンクトップの裾を捲り上げる。 白い肌に、橙と黒の縞模様が尻尾の付け根まで続いているのが見えた。 指先で胸を撫でると、アカリの体がびくんと震え、尻尾が俺の背中に強く巻きついた。 乳首を軽くつまむと、彼女は甘い声を漏らして俺の首に腕を回した。 「んっ……あ……そこ、気持ちええ……」 俺は首筋から鎖骨へ、ゆっくりと唇を這わせていく。 アカリの匂い——少し野性的で、でも甘い——が鼻をくすぐる。 彼女の手が俺のシャツを脱がせ、爪が軽く背中を引っ掻いた。 トラの爪は鋭いが、痛みではなく心地よい刺激になる。 カウンターからベッドへ移動し、俺はアカリを優しく横たえた。 ショートパンツを脱がせると、尻尾が自由に揺れ、橙と黒の毛先がシーツを撫でる。 俺は彼女の太ももから内腿へ、ゆっくりと唇と指を這わせた。 アカリの息が荒くなり、尻尾が俺の腕に絡みついて離さない。 「トシアキ……もう、我慢できへん……」 俺も限界だった。 ゆっくりと体を重ね、彼女の中に入る。 アカリの金色の瞳が潤み、耳がぴくぴくと震えた。 「あっ……んんっ……!」 熱く、狭く、俺を強く締めつける。 尻尾が俺の腰に巻きつき、リズムに合わせてぎゅっと締まるたび、快感が倍になる。 俺は腰を動かしながら、彼女の胸を優しく揉み、乳首を口に含んだ。 アカリの声がどんどん高くなり、爪が俺の背中に食い込む。 「トシアキ……好き……大好きや……!」 動きを速めると、彼女の体が弓なりに反り、尻尾が最大限に張り詰めた。 そして——同時に頂点に達した。 アカリの体が小刻みに震え、長い吐息を漏らしながら俺にしがみついてきた。 尻尾が優しく俺の腰を包み、耳が俺の頰に触れる。 「……幸せやわ、トシアキ」 俺は彼女の髪を撫でながら、静かに呟いた。 「俺もや。アカリ」 窓の外では、ネオ通天閣が穏やかに輝き、遠くで日本シリーズの勝利を祝うホログラム花火が上がっていた。 選択肢 1.朝まで何度も体を重ね、保護プログラムが始まる前の最後の夜を濃密に過ごす 2.事後、二人でシャワーを浴びながら未来の話を始める 3.テレビで日本シリーズ第5戦の予告を見ながら、再び甲子園へ行く約束をする 4.アカリが「トシアキの子、欲しい」と囁き、二人は新しい家族の夢を語り合う 1 ネオ・オーサカの夜に咲く 最終章 最後の夜、朝まで 事後、二人はシーツにくるまったまま、汗ばんだ体を寄せ合っていた。 アカリの橙と黒の尻尾が俺の腰にゆるく巻きつき、耳が俺の胸にぴったりと触れている。 息が少しずつ落ち着いてきた頃、彼女が俺の首筋に唇を寄せ、小さく囁いた。 「……まだ、足りひん」 その一言で、再び熱が灯った。 俺はアカリを仰向けに押し倒し、ゆっくりと唇を重ねる。 今度は焦らず、時間をかけて。 首筋から鎖骨、胸のふくらみへ、舌先で丁寧に這わせるたび、アカリの体がびくんと反応した。 「んっ……トシアキ、そこ……もっと……」 俺は乳首を口に含み、軽く歯を立てて転がす。 同時に指を下腹部へ滑らせ、すでに濡れている秘部を優しく撫でた。 アカリの尻尾が強く俺の腕に巻きつき、爪がシーツを掴む。 彼女の声が甘く高くなり、腰が自然に持ち上がる。 俺は指をゆっくりと挿入し、中の熱と締めつけを確かめながら、敏感な部分を探り当てる。 「あっ……! そこ、ええ……もっと強く……」 アカリの金色の瞳が潤み、耳がぴくぴくと震える。 俺は指の動きを速め、もう一方の手で胸を揉みしだいた。 彼女の体が弓なりに反り、尻尾が最大限に張り詰めて——二度目の絶頂を迎えた。 息を荒げながら、アカリが俺を引き寄せた。 「今度は……わてが、トシアキを気持ちよくしたる」 彼女は俺を仰向けに押し倒し、胸から腹部へ、ゆっくりと唇を這わせていく。 尖った牙が軽く肌をかすめるたび、ぞくりとした快感が走った。 そして、俺の中心を口に含んだ。 温かく、湿った感触。 トラの舌は少しざらついていて、それがまたたまらなく気持ちいい。 アカリはゆっくりと上下に動かし、時々牙を軽く当てて刺激を与える。 俺は思わず声を漏らし、彼女の橙と黒の髪を優しく撫でた。 尻尾が俺の太ももに絡みつき、耳が俺の指に触れてぴくりと反応する。 限界が近づいた時、アカリは口を離して俺を見上げた。 「……中がええ。トシアキ、全部……」 三度目は、正常位で深く繋がった。 アカリの脚を俺の腰に回し、尻尾が俺の背中に強く巻きつく。 ゆっくりと、でも確実に動きを速めていく。 彼女の声がどんどん大きくなり、爪が俺の肩に食い込む。 「トシアキ……! 好き……大好きや……!」 俺も限界を迎え、彼女の奥深くで果てた。 アカリの体が震え、同時に三度目の絶頂に達する。 その後も、何度も何度も。 横向きで抱き合いながら。 アカリが上になって腰を振る形で。 後ろから優しく包み込むように。 尻尾が俺の体を絡め、耳が俺の息に反応し、金色の瞳が潤むたび、俺たちは互いを求め続けた。 窓の外が薄明るくなってくる頃、二人はようやく動きを止めた。 汗と体液で濡れたシーツに、ぐったりと横たわる。 アカリが俺の胸に頭を預け、尻尾を俺の腰にゆるく巻きつけたまま、小さく呟いた。 「……朝やな。保護プログラム、今日からやのに…… 最後の夜、めっちゃ幸せやったわ」 俺は彼女の髪を撫でて、静かに答えた。 「最後の夜ちゃう。これからも、ずっと一緒や」 外では、朝のネオ通天閣が穏やかに輝き始めていた。 遠くのテレビから、かすかに日本シリーズの話題が流れている。 ——11月上旬の夜、甲子園で。 画面には、佐藤輝明監督が選手たちに胴上げされる様子が、さりげなく映っていた。 タイガースが日本一に輝いた瞬間。 アカリがくすっと笑った。 「……聖地も、守れてよかったな」 俺たちは手を握り合い、朝の光の中で静かに目を閉じた。 これが、俺たちの新しい始まりだった。 完結