「オキロ!」 鉄のドアがぺしゃんこになるんじゃないかと思うほどの勢いで、壁に叩きつけられた。 だがその爆音よりも、彼女のけたたましい声の方が鼓膜をぶるぶると震えさせてくる。 こちらの起き上がるのさえ待たず、胸ぐらを掴まれて引き起こされるのは、 自分がひどくちっぽけなものに成り果てたかのようで嫌だ――そんなことも言っていられない。 「『クリップが一番』ッテイエ!」 壁が天井へ、床が壁へ――視界ごと大回転する俺の頭はたちまちめまいを引き起こし、 身体中の力が回転に従ってあちこちに飛び散ってしまって、動くことができない。 やめてくれ、と首を鷲掴む手に触れることすらできないのだ――声もまた震えて止まらない。 そして急に視界は止まり――勢いをつけて後ろへと一気に流れていく。 唐突に、彼女が俺を放した――より正確に表現すれば、投げ捨てた、からだ。 「『好き』ッテイッタノ、ウソカ?」 着陸の衝撃で痛む節々の点検をする暇もなく、俺の身体の上に少女はのしかかる。 ギョロギョロと落ち着きなくこちらを睨む目、ギザギザと互いに食らい合う歯列は、 一々耳に引っ掛かるような発音と合わせて、小さな緑の肉食獣を想起させる―― 今にも彼女のその牙が、俺の喉を食い破ってもおかしくないように思えた。 「ウワキモノ!」 返事を待たずして、また胸ぐらを掴まれて――呼吸が、できなくなっていく。 あの場をしのぐために、ファンだ、とは確かに言った――それがいつの間にか、 “彼女に対する好意を表明したにもかかわらず、他の女にも色気を出している”と取られたらしい。 獣の唸りが俺を威嚇する――それとは裏腹の、若い女特有の、どこか甘さのある匂い。 そのギャップに、俺の頭は一層かき混ぜられるのだ――彼女の身長が仲間内でも小さな割に、 ある一箇所――身体が近づくたびに押し付けられる柔らかな――だけは妙に大きいのと一緒だ。 他の四人のような、真綿で首を絞めてくる陰湿さは彼女にはない――がつん、と星が散る。 シンプルな、暴。色気もない、色気。ほとんど子供のようなのに、不釣り合いな、身体―― 何か言わないと、また頭にいくつも瘤ができ――胴には床とのキスマークが付くだろう。 頭を回転させ始めると――視界がそれを追うように、再びの大回転を始めるのだった。