唐突に、扉が開く。ノックの音も、こちらへの声掛けも一切なしに。 そして止まった足音は、不愉快な無言の時間を――何の前触れもなく終わらせる。 爪先で、ごろん、と蹴り起こされて、視界は半回転、天井へと向く。 その上から――青い瞳がこちらを見下ろすのだった――感情の読めない目。 「そろそろ、素直に言う気になったか」 立ったままそう言い捨てる彼女と俺の距離は、物理的なそれよりもずっと遠く隔てられている。 君のファンだよ、という当然の一言を、不当に焦らし、勿体ぶっている――そんな風に、 彼女が苛立っているのが、低い声からもよくわかった。先程の、蹴りに込められた力からも。 「キラーチューンはアタシあってこそ、違うか?」 俺が何かを言う前に、少女はさらに顔を近づける――首の動きの分だけ。 全員が全員、自分がチームの顔だと信じてはばからない――音楽性も違う五人を、 確かに引っ張っているのは、この目の前の少女――レコ、であるのかもしれない。 だがリーダーシップ、という点で評価するなら、こんな子供のような癇癪を起こして、 ファン――を自称する男――を、監禁し、言葉を引き出そうとするだろうか。 望む言葉を吐かぬからといって、暴力に訴えるのがリーダーの証であるだろうか? 全身の痛みに呻く俺の身体に、高いヒールの付いたブーツの、拍車めいた円盤が当たる。 硬いものが骨を震わせ、電流のような痛みがびりびりと神経を走る。 たまらずまた呻いた俺の反応に――訝しむように、彼女の眉は歪んだ。 「あいつら…ひでぇことしやがんな」 乱暴に俺の服を捲くり上げ、生傷や痣を確かめて――少女は吐き捨てた。 自分がやったことを棚に上げて、仲間が俺を痛めつけたことに腹を立てているのだ。 それは正義感などではなく――限りなく独占欲に等しいものであった。 「正直になったら、アタシがちゃんと守ってやんよ」 掴んでいた服の裾をまた唐突に手放しながら――いかにも親切な風に、言う。 俺はと言えば、服の生地が強かに肌を打った痛みで、それどころではないというのに。 誰を味方に付けたとして――ろくでもない未来しか待っていないのは、言うまでもなかった。