ドルフロ2の二次創作のまとめ 六枚目 前提と独自の設定 これは二次創作。本編とは混同しないこと。 この世界は治安が悪いため、敵対する個人・組織が簡単に出現する。 グリフィンの指揮官は複数人居て、人形も分散して割り当てられていた。 ヴェプリーはエルモ号に乗るまでに様々な職種を経験している。 この話は本編とは関係無い曖昧な時系列で進行している。 設定の齟齬については諦める。 なんらかのパロディが含まれている場合がある。 登場人物 エルモ号の連中 エルモ号の男指揮官……エルモ号で最も指揮が得意だが、持ち回り制で他の指揮官に指揮をさせている。 エルモ号の女指揮官……エルモ号で二番目に指揮が得意。美容に気を使い、我が強い。 ヴェプリー……戦術人形。強い。暇な時にネットで新曲を配信している。出来る範囲でアイドルらしくありたいと思っている。指揮官が結構好き。 元グリフィンの連中 ツインテの指揮官……車の趣味が他の指揮官達と合わない。そこそこの生活をパートナーと送れればいいタイプだが、現実は常に厳しい。 ツインテ……M14を持っている戦術人形。場数を踏んでいる為、下手な人形より強い。真面目。 クロの指揮官……メンヘラ男。指揮より直接戦闘が得意だが、あまり意味がない。 クロ……戦術人形。場数を踏んでいる為、下手な人形より強い。配信が趣味。誓約している指揮官には優しいタイプ。 元グリフィンの女指揮官……元グリフィンの指揮官達と組んでいたが、ヴェプリーの一連の話に出ることはない。 新興PMCのCEOの女……エルモ号の連中と微妙に協力している元グリフィン上級職員の賞金ハンター。いつの間にか離婚している。かなり変な性格。 ツインテの指揮官の元上司……仕事が嫌になり脱サラしてピザ屋を経営している。 01 クルーデッキにはいつもの連中が屯していて、キッチンの前でグダグダやってる。 ヴェプリーは何やってるのって?何かネタになる瞬間を探してるの。クロみたいに。 「最終的には料理と創薬の境目は消えちまうんじゃないか?」ツインテの指揮官がろくろを回した。 「大きく出たわね」とうちの女指揮官。「続けて?」フローレンス。 「だからさ、要するに必要な条件を満たす組成を発見するってことなんだよ、構造・成分とさ」 「ヴェプリーわかんないけど、ツインテは何言ってるかわかる?」「わかりません!」OK。 フードプリンターの中で印刷された食品が完成していく。 「えーと、この料理の名前は?」ヴェプリーが質問。 「配合96427番、衛星都市料理研究会員A作です」「それ料理の名前?」 「名前なんて識別の為のIDでしかないさ、重要なのはそいつに何ができるかってわけ」 「誰が食べるの?」 湯気を立てる緑色の格子のようなものを見つめた。 「食レポもネタになるんだろ?」クロの指揮官が呟いた。「ええ?私?」 彼女が咀嚼する度、口の中からガチ、ザク、バキと音が出る。 「う、うまい!」 うちの男の指揮官が顎と喉と側頭部の辺りに電極を取り付けて、真っ白い、表面に膜がある格子を食べている。 「ピーナッツバターの味がする」「この辺の数値を変えましょう」「こないだクロが出した発酵した豆の味だ」 指揮官は泣いた。 「私が何をした?」「依頼に協力したいと言ったのはあなたでしょう?」居候のCEOの女が呟いた。 何でこんな事を?それはBRIEF経由の食糧事情を改善する為の大量生産できる食糧のデータ収集の為。 味だけをソフト的に編集して、食感をハード的に変更出来る食べ物が実際に作れれば完成するらしい。 「これヴェプリーも食べられる?」「このアプリをインストールすれば出来るわ」 食べてみた。「どう?」「凄い、格子からステーキの食感と味がする……」「これを人間に導入したいのよ」 「ねえ、うちの指揮官達だけじゃデータが足りなくない?」ヴェプリーが呟いた。 「捕虜もサンプルに加えましょうか」 尋問部屋。 「それ、食い物か?」ヴァリャーグが質問した。 「たんとお食べ……」ヴェプリーがフォークに刺したそれを近づける。 「嘘だろ!やめてくれ!」 02 エルモ号。早朝。 「うちの現場からヴァリャーグが建機を盗みやがったんだ」 今ヴェプリーは現場のおじさんと話し合ってるところ。指揮官は小指を家具にぶつけて治療中。 「盗まれた建機の型番と外見がこれ」端末を見る。監視カメラの映像もセットで。 二脚重機がトラックに積み込まれていく。 「足つきですか」ツインテが入ってきた。「あいつら、いつもこれを盗んでくらしいんだよ。俺もやられるとはなぁ」 「これ契約書ね、内容はハードコピー取っておけるけど、ここにサインして☆」「結構高いな」 「銃を持った相手と戦うのは大変なの。後……念の為に整備工を雇う準備してた方がいいよ?」「何でだ?」 「棘まみれのメカが返ってくるからですよ」 車に乗って三時間。 「やっぱムカつくよ!」クロに合わせた。「ね!工期とかめちゃくちゃになっちゃうし、最低!」 「何で意気投合してるんだ?」ツインテの指揮官。「知らねえ」クロの指揮官。 ヴァリャーグの拠点、廃工場って感じの場所にドローンを忍び込ませると、盗まれた重機が綺麗な状態であった。 ヴェプリー達はこれを傷つけずに回収しなきゃいけない。 今、ネメシスとツインテがそれぞれ反対側から問題の廃工場を監視していて、場合によっては撃てる状況だ。 ただ問題の重機に当てない為、射線が制限されてる。ヴェプリーはこれを頭に入れないといけないんだけど…… さて、見張りが二人。 茂みからヴァリャーグの足首を掴んで引きずり込み、コルフェンが首を捻る。 ヴェプリーはたまたま置いてあった止まれの道路標識を使って思いっきり殴った。 工場の反対側では事が始まっているところだろう。「誰だ!?」コルフェンがレンズを消音拳銃で撃ち抜いた。 「ナイス☆」「どうも」ドサッと背後で音がすると、銃声が遅れて響いた。『貸し一つ……』ネメシスだ。 油断してる。訓練の量を増やさなきゃいけない。 女の指揮官がドローンで味方の位置を確認してくれてる。クロの指揮官達が対角線上の入り口に付いた。 無線に合わせて突入し、屋内をクリアリング。 これで仕事が終わった。味方も目標も無傷。理想的な仕事だった。 エルモ号。 「それで?」男の指揮官。「工期遅延の分の違約金の支払いで、ヴェプリー達の報酬少なくなっちゃったの」 そういうこともある。 03 闇ブローカーの男とCEOの女がエルモ号の席に座って長々と話を始めたが、真面目に聞いてるのはヴェプリーだけ。 「えらい面白いゲームを見つけたってハンターがいるがな、それが廃墟のゲーセンにあるってんだよ……」 クロがポテチをつまみ始めた。 「うちが雇ったグリーンエリアの人が、深夜2時のゲーセンでしか遊べない凄いゲームがあるって言い出したの」 「パラデウスか?」男の指揮官が呟いた。 「ポリビウスよ」咳払い。 「問題はそのゲームを遊んだ人が強烈に依存して、仕事を放りだしたり仲間を殴ったりするくらい依存するってこと」 「あのさ、ゲーム依存って疑似科学でしょ?」クロ。「私もそう思うんだけど、うちの新人が無断欠勤してるのよね」 「それで?」指揮官。「実地調査でどうにかして真相を究明して、後うちの新人と賞金ハンター数人を見つけなさい」 ツインテの新しい普通のトラックを借りて古い街に車を進め、ゲーセン近くに辿り着いた。 死体だ。大量の死体がある。 賞金ハンター、ヴァリャーグ、PMC、長城列車警備兵。 「ここで一体何が起きたらこうなるの……」 死体をひっくり返した。失踪した賞金ハンター数人が見つかった。後…… 「ねえ、あなたの警備会社の新人だよ……」ヴェプリーは無線機に話しかけた。 『遺族への説明を考えると頭が痛いわ。私を助けてくれない?』 クロは袖をまくった。「何かそれっぽいの見つけりゃいいのよ」 ゲーセンの奥に進んでいった。中は廃墟そのもので、ゲーム筐体なんてずっとほったらかしで、ホコリまみれだ。 その中にも死体が点々としていて、銃撃戦の跡がある。 店の奥に、黒いアーケードゲーム筐体がある。場違いなほど清潔で、新品同様の筐体が。 『クロ、ハックしなさい』「ハイハイ、ボス……ああやだやだ、昔を思い出すわ……」筐体と端末にコードを刺す。 「ゲームってのはねえ、解析じゃなくて遊ぶもんなんだよ?ねえ?」それから数分。 「人間連れてこなくて良かったわ」とだけクロは呟く。顔を見る。真顔だ。 『何を見たの?』クロはセーフティを解除して、ヴェプリーの肩を叩いた。ヴェプリーは頷く。 「願望機」それから筐体を壊れるまで撃った。 BRIEFに報告書を提出して、その件は終わった。 04 クリスマスが今年もやってきて、鐘が鳴る…… エルモ号。 「メリークリスマス☆」ヴェプリーはイエローエリアの子供達にプレゼントを配ってます。 うちの指揮官達は何をしてるかって?居候のツインテのとクロのは外回りと警備担当。 うちの指揮官二人は……「髭を引っ張らないでくれ!」「アハハハ!」子供の相手。 二人ともセンタウレイシーが作った手の込んだサンタクロース衣装を着てうまくやってるみたい。 「弊社の株を買ってくれる素敵なサンタさんはいないかしら」「ここに株を買える金持ちはいねえよ」 CEOが闇ブローカー達と交渉してケーキを買ってくれたので、皆で分けることにしました。 マナーモードの端末が震えた。 『ヴェプリー、戦力不足だ。コルフェンと加勢してくれ。指揮官にも伝言頼む』 「そのケーキ、外回り行ってる人達の分も残しててね」と言い残し、ケーキを頬張るコルフェンの肩を叩く。 「何ですか?」「食後の運動行こっか☆」「了解~」 我らがサンタクロースが子供にもみくちゃにされてる所に割り込んだ。 「居候の人達に呼ばれたから、念の為に準備しててね」「ん?わかった……」 荒野。 『今回のウェーブはかなり多いぞ』端末に表示。 見た感じ、既に相当量のヴァリャーグと生骸が片付けられているようだ。 「弾切れです!一旦戻って補給するので、その間お願いします!」サイドカーに乗ったサンタクロース二人。 ツインテールが遠くの電飾の光を反射し輝く。 「コルフェン~これ持ってきちゃいました!」新品の無反動砲は彼女へのクリスマスプレゼント。 複数の略奪バンに乗ったヴァリャーグが遠目に見える。 ヴェプリーは予備弾の入ったバッグのジッパーを開ける。 砲弾にペンでハートを描く。「メリークリスマス☆」バンが爆発する。「当たった!」ヴェプリーはリロード役。 それが完了したら「次」と言う。それを繰り返す。やがて前方の地面が昼間のように明るくなる。 サンタクロースのハットが反撃の銃弾で剥がれたが、まだ驚くほどじゃない。繰り返し、繰り返し、繰り返す。 終わり際、武装二脚重機が砲の照準をエルモ号に向けているのが見えた。 ハートの描かれた最後の一発がコックピットを撃ち抜き、燃え上がる。 「じゃ、パーティの続きに戻ろっか?」「そうしましょうか」 05 ある研究施設の廃墟に行った賞金ハンターが次々に失踪している……ヴェプリー達はそこの調査を任された。 「こんな所に本当にジラードの研究施設があるっての?」クロが呟く。「それを確かめるのが任務でしょ?」ツインテ。 薄暗い施設の中をヴェプリー達は歩いてる。 「今足音聞こえなかった?」「やめろよ!」「しっ!」……何も聞こえない。ドアを開けて、中を探る。 「人形工学と人工知能の研究をしていたのは確かみたいですね」とツインテ。クロはPCの電源を点けて、弄ってる。 「ここ、どうやらジラード関係ですらないっぽい?空振りじゃん」とクロ。「あ、でも次世代戦術人形研究って……」 足音が聞こえた。 「うちの指揮官達、ジビエの食中毒でダウンしてるからここに来られないはずですよね」ツインテ。 ヴェプリーがクリアリングしたとき、アームキャノンの付いた戦術人形が部屋の外。大きな廊下に立っていた。 視線がこちらに向いた。 ヴェプリーが横っ飛びした時、既に左腕が撃ち抜かれていた。 「敵襲!」しかも、べったりと照準が胴体を追尾してる。かろうじて部屋に飛び込むのと同時に修正射が来た。 「勘弁してよ!」 五分後。 クロが右腕をやられた。ツインテは左足をやられたから、ヴェプリーが背負うことに。 今は施設内を逃げ回って、どうにか脱出しようとしてる。 部屋の外から足音が聞こえる。 位置はおおまかしかわからない。でも、アームキャノンを構えた時のあの音が聞こえた。 ヴェプリーがドアごとアイツを蹴って、天井に穴が開いた。それから強引に外れたドアを踏みつけて抑え込む。 「クロ!!」顔の無い頭部や胴体に向かって集中砲火したが、数秒もしない内にドアごと跳ね上げられる。 「全員逃げるよ!」ヴェプリーはEMP、煙幕、破片手榴弾をその場に投げつけて叫び、走り出した。 背負ったツインテが制圧射撃をしてるのがわかる。「あれで何で動けるんですか!?」噓でしょ? 満身創痍で車に辿り着いた時、ツインテが色付きの信号弾を打ち上げた。最悪の事態の合図だ。 「エンジン!」「EVですよ!」急いで発進した。「は!?何あれ!?」クロが叫ぶ。 バックミラーに自動車並の速度で走ってるあの人形が映った時、死を確信した。 窓を蹴破って、全員で撃ち続け、数分。視界からあの人形が消えたけど。 助かった気がしない。 06 コルフェンとフローレンスがカウンセリングを行ってるのは周知の事実だけど。 内容は守秘義務が敷かれてるから誰も知らない。 ヴェプリー達はエルモ号の雑用を担当してるけど、その時にうっかり聞いた場合、他言無用と言うことになっていた。 「俺は多分タイムスリップしたいんだ」ツインテの指揮官とコルフェンの声が聞こえる。「というと?」 「俺はG&Kに入った時、キッツイ訓練を潜り抜けて、それから1年は3Kの仕事で……でも俺は輝いてた!」 「続けて」「給料で服や車を買って、すげえワルって気分だった!けど正規軍との合同演習から全部狂っちまって……」 好奇心。作曲のネタにしたいという気分が鎌首をもたげた。 「昔に戻りたいんだよ……うまくいってた頃に……」 ……ヴェプリーはアイドルで、今は大人だから、このまま整備の終わったダクトを抜けて、聞かなかった事にする。 倉庫。 昔に戻ったらどうなるかな。ロクサット連盟の事業がどうなるかなんて気にせず、アイドルをやっていれば済んだ時代。 「アイドル、ヴァリャーグのヤサにレイドするよ」クロが声をかけてきた。 「ん」M72をピザくんにひっかけた。 ライブ会場はLEDの光とレーザー光線が輝いていて、ヴェプリーね、とってもテンション上がっちゃう☆ 頭痛。 ……調子悪いみたいだね☆でも今は会場の皆にこの光より激しい輝きを与えたいから、頑張っちゃうよ! 客席は満席。これ以上無いくらいサイコーのステージ。一生この空間が続けばいいのに。 控室に戻って、鏡を見る。メイクアップされた自分自身を見る。「ヴェプリー、今日のライブはどうだった?」 元G&Kの彼はヴェプリー達の管理人。「楽しかったよ」嘘のない言葉を言った。「それはよかった」 彼はホルスターにマカロフを刺してる。それをグロックに変えて、また戻したのも知っている。 「……ヴァリャーグの自己適応型マルウェアによる幻だってことも知ってる。けど、楽しかったよ」 敵を破壊する能力だとしても、洗練するにつれて美しくなるのは確かだ。 解除方法は求めるものを破壊することだということもわかっている。 「……現実に戻っても辛いかもしれないけど、いいのかい?」彼の姿形をしたソフトウェアが話した。 「良くないよ、でも仕方ないの」銃を奪い、彼の胸に銃口を押し付ける。 起きろ。 07 ヴァリャーグのアジトを襲撃するってクロが言いだしたんだけど、事態は一気に悪化しちゃったんだ。 他のヴァリャーグより洗練された凶悪な連中が北蘭島以前の発電所を占拠してたんだけど…… 実際に突入したら、雑兵が数人いるばかり。クリアリングが終わった途端、マルウェアの散布と同時に砲撃が来た。 ヴェプリー達、どうやらやらかしたみたい。 二日酔いの三倍酷い感触と共に目を開けると、ツインテが何度か頬を叩いていた。どうやらまだ移動してないらしい。 「やめて!ヴェプリーもう十分起きれてるから」「立ててる指、何本ですか?」一本?「視覚系やられてます」「OK」 「セキュリティ規定に従ってた?」クロ。「ん。でも周波数ホッピングが偶然ヴェプリーの無線周波数を当てたみたい」 「損害は」「VRに強制導入してる隙に乱数上書きを食らって、聴覚からピーナッツバターの味がするし、ダメかも」 立とうとした。立つって……どうやって?「わあ!動きかたがわかんなくなっちゃった!」ツインテが背負った。 クロの指揮官が窓を覗くと、狙撃。かろうじてヘルメットに跳弾した。 どうしよう。 ……ヤバい、砲撃も来た! 壁に大きな穴が開いて、ヴェプリー達は大急ぎで隣の部屋に這っていくと、ちょうどそのタイミングで機銃が来た。 「ここアスベスト使われてないよね?」クロが呟く。「26年に着工されてるなら大丈夫だろ」ツインテの指揮官。 「今回はダメそうだし、とりあえずモク焚いて逃げるぞ」クロの指揮官。なんか意外と皆動揺してない感じ。 「ねえ、ヴェプリーどうしたらいいかな?」「あなたの仕事はおとなしくあたしに背負われることです」ツインテ。 「ヴェプリー、役に立ててないな」「あまり気にしないでください。あたしにだってこういう時がありましたから」 皆は匍匐前進で建物から出て、発煙弾を山ほど放り投げた。その中に赤いスモークが混じってるのが見えた。 「あれ何?」「プランB。秘密兵器」クロが言う。「あんた、事前の作戦も忘れてる。ちょっとヤバいよ」マジ? クロの指揮官がチョップした。「痛!」「クロ、負傷者を茶化すな。ただの位置指定のサインだろうが」 最悪な気分に浸ってると、徘徊型弾薬がヴァリャーグの機甲にブチ当たる音が聞こえてきて。 その時、皮肉なくらい空は青かった。 新曲のライナーノーツも決まった。 08 イエローエリア。 廃住宅街の立ち並ぶ地域をしばらく抜けると、グリーンエリアの居住権を得られてない人たちの街に辿り着く。 「だから!俺は賞金ハンターになりたいんだって!」「ダメだと言っただろう!あれはお前の想像よりも危険な職だ!」 子供と言い争う声が聞こえる。負傷のリハビリの為に軽めの配達依頼を受けたけど、ヴェプリーはタイミングが悪い。 「おい!待て!」「ちくしょう!俺だってなあ!」子供が走っていき、男がそれを追いかけていった。 「えー……」「ちょっと!あなた……あら」女の人。「これ、配達依頼で来たんですけど☆……サインできる?」「まあ」 「さっきのは?」「うちの子供です。賞金ハンターになりたいって、それで最近ちょっとモメてて、お恥ずかしながら」 お茶を貰っちゃった。 「人の選択肢って結構あると思うんですけど、賞金ハンターって3Kの職場で、軍か警察の人以外勧められないですよ」 「やっぱり?」「まぁ、カッコいいって言われれば、否定できないけど……」 父親の男が戻ってきたようだ。 「畜生!ヴァリャーグの奴ら……息子をさらって……」「何ですって?」 ああ、クソ。 敵の拠点。 首を回して、次に拳を二度鳴らした。 「ハァイ」「あ?誰だ?」ヴァリャーグがこちらを向いた。「ふん!」顔面を思いっきり殴った。 ドアを蹴破り、目に見える全ての敵にAPスラグ弾を撃ち込み、後続の敵にも弾をブチ込んだ。 死体の陰に隠れてリロードし、敵のベルトから手榴弾を剥ぎ取って、投げつける。爆発とともに悲鳴が来る。 「野郎!」防弾盾を持った奴が突っ込んできた。片手で受け止め、壁に向かって押し付け、拳銃を奪って隙間から撃つ。 「いい盾だね☆」外骨格を着た歩兵に、奪った盾を投げつけ、壁に縫いつけた。「来ないでくれ!」蹴った。 最後のドアを蹴破った。 「近寄るな!このガキがどうなってもいいのか!?」拳銃を人質の側頭部に突き付ける前に、先に敵の頭を撃った。 帰り道。 「俺、賞金ハンターになれないかも」少年がそう言った。「どうして?」「姉ちゃんくらい強くないといけないんだろ」 「そこまでじゃなくても、もっと大きくなって、軍で働けるような人になったらなれるかもね」「なれるかなぁ」 「ま、気長に考えなよ。ヴェプリーだって受付やってた時もあったからさ」「うん……」 09 「これが新開発の未来予測マッスィーンよ!」チータが得体の知れない機械を持ってきた。 「ハハ、すごいね」男の指揮官は疲れてるって感じ。 デスクトップPC、電極の付いたヘルメット、エピフィラムアンテナ。これが機械の全体像。 「ねえCEO、ちょっと試してみて」とヴェプリーは居候の警備会社の女に被せた。 「むむ、これは……凄いのが出てきたわね……」とCEO。彼女の企業が世界を死滅させる映像が出力された。 クルーと居候の人々で装置を回し合ったが、おおよそバッドエンドだけが出力された気がする。が、そこは割愛する。 娯楽室で出力された映像が議論を巻き起こしていたが、女の指揮官が唐突に立った。 「あなた達、未来を見れるなら本当に見るべきものは何かわかるわよね?」「な、何を……?」 「株よ!上がる株がわかればそれを買えばいいじゃない。チューニングしなさいチータ!」笑顔でヘルメットを被る! クロがノートパソコンを持ってきて、ヴェプリー達はエピフィラムアンテナが枯れて娯楽室が爆発するまで取引した! 「これで私達はリッチよ!」「給料日だわ!」女の指揮官とCEOが叫んだ! 翌日! 「もう全部うんこだわ」「死にてえ」「ヴェプリーね、ピザくんなの。ヴェプリーは本当は操り人形なの……」「クソ」 「おい、買った株全部大暴落してんだけど」チータの胸倉を掴もうとしたんだけど、先客のおかげで掴むところが無い。 「待って、釈明させてよぉ~」論文を取り出した。 「何々、私達の世界は単一の線ではなく、3次元のグリッド状と解釈されていたが、実際は多次元である可能性が高い」 ヴェプリーが読み上げる。 「わかるように説明してくれよチータ」男の指揮官が泣き腫らした目でそう質問した。「そうだー!」クロが乗った。 「あの機械は確かにコーラップスの波のようなものを解析して見れるんだけど!必ずそうなるとは限らないというか!」 「つまり!?」「間違った出力が含まれてる可能性がっ」女の指揮官が振り始めた。「やめて~!」 水色のスクールバスがエルモ号に横付けした。最終生命の治験バスだ。 「ああ~終わり終わり」「大丈夫!うまくいけば全員超人になれるヨ!」人間組が全員連行されていった。 一週間後。 人間組が戻ってきたけど、何をされたかは誰も言ってくれなかった。 10 ここは非合法の人間・人形混成闘技場がある街。 レッドエリア付近にある事だから摘発するにはコストがかかりすぎるのもあり、今の今まで生き残っていたらしい。 ヴェプリーは今何してるの? 「うおおお!」「殺せ!殺せー!」「大金賭けてんだ、簡単に死ぬんじゃねーぞ!」 人形闘技場のリングの真ん中にいます。イェーイ。 勘弁してよ。 さて、拉致される時のEMPで記録媒体がちょっと故障したせいで、最近ログを残せてなかったの。わかる? 目の前にはアサルトアーティラリー。目的は処刑だ。急に勝ち上がった新入りは八百長を疑われ、制裁が下される。 証拠もないのに?そういうものです。 試合開始を告げるサイレンが鳴る。敵AAが跳躍し、派手な踏みつぶしを試みる。 ヴェプリーはアイドルだ。多分。最近はプロの戦術人形に近づいてきたから、こんな時だって、飛び込んで避けてやる。 目の前にいる都市迷彩の汎用機は10年前の型で、ネットゲームのフォーラムに設計図が投稿されたことがある機体だ。 だから、こんな風にカメラの死角だってわかる。 『クソ!どこへ行った!?』 なんて素人なの。 関節に吸着地雷を張り付ける。熟練の兵士ならこんな事させる間もなくヴェプリーを処理してるだろう。 爆発。それから機体が擱座した。両脚を吹き飛ばされても、これは固定砲台だとしても恐怖の存在なのは間違いない。 『な、何だ!?』 背中側に回ってCIWSの砲塔に蹴りを入れて、レシーバーを歪ませる。銃口を向けようとする機銃を撃ち、破壊する。 近接格闘用の剣が背中にマウントされてる。固定を外し、剣をどうにか持った。 本当は箸しか持てないくらいかよわい子だけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。 剣を振り上げた。 『ま、待て、待ってくれ!やめろ!おい!』 「やめない!」 歓声を浴びながら控室に戻っても、またこんなことを繰り返すなら、死んだも同然…… 「あんな風にコックピット潰せるくらい元気なら、助けなんていらないんじゃない?」 「ど、どうやって入ってきたのキャロリック?とりあえず助けてほしいんだけど……」「ほら、鍵」 首輪の端子に差し込むと、自由が戻ってきた。 「ね、帰る前に少し運動したいな」「あ、そう?ならアタシも混ぜなさいよ」 11 「来ないでよ!来ないで!」グリーンエリアの雑居ビルの屋上、女の子がフェンスを乗り越えてる。 「ちょっと待って!一回話し合わない?」ヴェプリーは何とか抑えようとしてる。 この事態、今月で何回目?道端で自分の頭を撃とうとした警官。ホームドアを乗り越えようとした男。かなり多いよ。 「言ってもわかんないでしょ!?」「話してくれなきゃわかるものもわからないよ!」 クロ達が回り込んでネットやらを張るまでの時間稼ぎだけど、この場で抑えてくれるならそれが最良。 「話して!聞くから」「……」じっと目を見る。 その後の事は……クロ達が上手くキャッチしたとだけ。説得に失敗したけど、今回に限ってはヴェプリーは気にしない。 「君たちの話を総合するとだ」男の指揮官が眉間を抑えた。 「その女の子、駅の奴、警官、その他数十人とも人生が上手くいった世界を見たって事が共通してるわね」 女の指揮官はため息。 「分かるか?」「わかんないわよ」 「洗脳?」コルフェン。「それがね、全員本当にそこで生きてたような事言ってたの!」ヴェプリー。 「結果出たよ~」フローレンスが入ってきた。 路地裏。 「で、何?脳にナノマシン?」クロ。「ああ。でもクラウド通信と感覚器の刺激機能しかない、VR演算は不可能だ」 クロの指揮官が言った。「ヴェプリーにわかるように言ってよ」「要は端末だ。大本がある。探してブチのめす」OK。 いかにもチンピラ然とした服装の男が立っている。 「何だテメー、客ってツラじゃねえな」「よくわかってるじゃないですか」ツインテが大腿を消音銃で撃った。 「あああ!?」「何で初手で撃つんですか!」コルフェン。「質問するからですよ!」ツインテ。 「殺す気ですか!?」「質問する為に脚を撃ったんです!」傷口をローファーで蹴った。 「なあ、この辺にアンタらのオフィスあるだろ。ちょっと場所教えてくれないか」ツインテの指揮官。 「誰が教えるか!」「右脚撃て」「教えます!」 暴力的な人形と人間達が物騒なオフィスに入っていくと、叫び声と共に窓が割れて人間と残骸と薬莢が降ってきた。 「元G&Kって皆こんな乱暴なの?」ヴェプリーの指揮官もそうなのかな。 でも結局、わかった事といえば、裏社会が新製品を流通させ始めたことくらいで…… 物事の輪郭すら掴めていなかった。 12 ある日、元G&Kの職員たちと同窓会を開くことになったの。 エルモ号のクルーと居候の皆が気まずかったりあるいは暖かかったりする空間を過ごしたのは確かだよ。 でも居候のツインテの指揮官の元上司と、クロの指揮官の元上司がめちゃくちゃ揉め始めたの。 「PMCとして上に上がっても、しまいにはロクサット主義者のドローンとして使いつぶされるだけだろうさ!」 「ピザ屋を経営して売り上げの数%を人道支援に使っているそうね……私の方がクールよ。戦いから逃げてない」 「しょーもな」クロ。「どうでもよくないですか?」ツインテ。「良くない!」ハモった。 「いっそ草野球で決めたら?」ヴェプリーは培養貝柱をつまんだ。 いらんこと言ってしまった。 人生には口を閉じた方がいいタイミングがいくつもあるし、そこを把握できなければいけない。 把握できなければどうなるか?まずいことになる。 マウンドには気まずそうな表情のツインテが立っていて、ヴェプリーは打席だ。 つまり、ヴェプリーとクロはCEOのチームに金で雇われ、ツインテはピザ屋チームに昔のよしみで雇われたのだ。 まずい状況だぞ、ヴェプリー。 ツインテがデッドボールをやらかし、クロが泣きながら整備場に引きずられていったのが数分前のことだ。 彼女の剛速球ときたら流石なものだ。トルネード投法を使った速球。更に盗塁を刺す能力だってある。 それはそれとしてノーコン気味で、デッドボールになりかけの投球でボールになった時は少し焦った。 戦術人形というのは、いずれにせよ手榴弾を非常に長い距離に投擲することを想定して設計されていることが多い。 迫撃砲の役割を音のしない人形の投擲で行わせるということは、第三次世界大戦の時期にある種の流行を見せていた。 彼女の素体、あるいはヴェプリーの素体にもその血塗られた歴史の痕跡が残っているということらしい。 2アウト満塁。デッドボールが招いた危機だ。しかしこちらは既に2ストライクでもある。 「来い。ヴェプリーが打ってやる」「やってみてください」 睨み合った。 こちらが構え、彼女も構えた。 どんな剛速球が来たっていい。ヴェプリーは指揮官に、観客に、最高の瞬間を見せてあげるから! 視界一杯に硬球が映った。 『ああー!デッドボール!乱闘が始まりました!大変な事ですよこれは!ああー!』 13 スプリングフィールドが業務用冷蔵庫を買って来たある日。 「絵面が良くないわね」と女の指揮官が呟いた。 「まぁ、ヴェプリーが冷蔵庫持ち上げてて、大の男三人が小物ってのはちょっと……」コルフェン。 「何?そう言うなら……」男の指揮官が立ち上がった。 居候の指揮官達に勧められ、今やベンチプレスにドハマりしたヴェプリーの指揮官。 「ホアア!」彼は顔を真っ赤にして冷蔵庫を持ち上げ……「あ、危ないって!」結局ヴェプリーが手伝ってしまった。 捨てられた子犬みたいな目をしてた。 ある日、街中…… 指揮官達が路地裏で取引をしているのが見えた。「マッスル秘密結社とツテがあるって本当か」「ああ」 「ハイパープロテインは?」「お前、勝ちてえんだな?人形に……」「……ああ」「こいよ、聖域に連れて行ってやる」 怪しげなフルスモークのバンに乗って行ってしまった。 「ねえ、うちの男連中知らない?」女の指揮官。「こないだ街中で怪しい人と話してたよ」ヴェプリーは事情を話した。 「バカ!そいつはボディビルダーをだまくらかして奴隷にしてるってヤバい奴よ!行くわよ!」そういうことになった。 ヴァリャーグの基地。 「ワハハ!私は最強だ!」そんなことを言いながら彼は他の奴隷と怪しげな棒を押して回している。 「指揮官があんな風になるはずが……」額に電極が張り付けられている……あれか? 「クロ、どう?」「ローカルネットに繋いだけど、人力発電で仮想通貨をマイニングして……待って、仮想空間もある!」 サーバーブラウザから選択すると、マッチョな指揮官がネイトをスプーンみたいに曲げているVRが映った。 「VRを見せながらさらに脳でもマイニングしているんだ!このままじゃ廃人になる!」「早く指揮官を助けないと!」 「な、何だてめえらは!」体脂肪が一桁も無いようなマッスルヴァリャーグの群れだ! 「ツインテ!時間を稼いで!」「え?あたし?」 オフィス。 「貴様!我々の筋肉の聖域を汚すか!」こいつがボスか! 「人間をマイニングリグに加工して奴隷労働させているのの何が聖域よ!来なさい!ヴェプリーがぶちのめしてやる!」 「おおお!」正面からの拳を避け、それから思いっきり掴む。 完全なバックドロップだった。 そしてヴェプリー達は車を奪い、炎上する基地から人々を助け出したの。 14 「だからこの間からどうにも犯罪や異常行動が増えてるの、さすがにおかしくないか?と私達は捜査していたんだ」 拉致されていた男性陣達が正座しながら釈明しているのをヴェプリー達は聞いていた。その時、着信が入る。 ヘリアンさんだ。 「指揮官を呼んでくれないか?男の方だ。違う、その男じゃなく赤いジャケットの方だ。よし」 同席してもいいとの事だったから、ヴェプリーも情報交換に参加した。 「それでだ、霜降小隊のオフィスでの盗難被害と、この衛星都市での異常事態が始まった時期が符合している」 ヘリアンさんがデータを送ってきた。横向きA4サイズの文字や画像がびっしりと入った書類だ。 「彼らの潜入捜査のおかげで奴らのアジトもわかった。衛星都市の大学教授がヴァリャーグに業務委託していたらしい」 「私達はどうする?」指揮官が聞いた。 「霜降小隊は先日の業務中の戦闘で修復中だ。契約書と概要をBRIEF経由で送信しておく。頼むぞ」 通信が切れた。 「よし、やるぞー!」男の指揮官が声を出した。 「いや、アンタら脳に変なもん突っ込まれてないか検査結果出るまで出勤禁止でしょ」女の指揮官が言った。 二時間後。 地元警察とヴェプリー達賞金ハンターのセットが件の大学の構内に入っていった。 「すみません、アポ無しはちょっと……」「犯罪捜査よ、この人の研究室はどこ?」「え?何であの人畜無害な人が?」 ヴェプリーは研究室のドアを引き開け、いかにも未熟って感じのペーペーの警官が入っていった。 「あ……見てください」例の大学教授の老人が椅子に座っている。死んでからそう時間は経ってないな…… 「机の上に遺書もあります」「ヴェプリーに見せて」 『ブージャムサーバー、広域記憶伝達技術、限定逆コーラップスによる未来観測技術がついに完成した』 『最良の世界の記憶を転写し、最高の瞬間の中で死ぬことこそが人類にとっての最適解だと私は考える』 『永続する戦争と分断という病から人類は逃れることは出来ない。終末医療が彼らには必要なのだ』 『自分一人だけ生きようとは思わない。私が第一号となる。サーバーは起動予約した』 『追伸。チータ。技術を盗んだのには謝る。こうするしかなかった』 振り向くと、新人警官が虚ろな目で笑いながら顔面から血を流し、倒れた。 サーバーを探さないと大変なことになる。 ここにいる人間は皆狂ったように笑っていて、倒れて痙攣している人もいた。 正気なのは人形だけかと思いきや、一部の人形も同じような症状になりはじめていた。 教員枠らしい正気の人形の一人を見つけた。 「今すぐこの大学のサーバーの実験をやってる場所を教えなさい!」「は、はい!」 実験室のドアを蹴破る。 「これは……」サーバールームと言われれば納得したかもしれない。 だが半透明のラックの中にはところどころELID患者のように珪素化した有機物が詰まっていた。 ピザくんからハンマーを取り出し、振り上げて、振り下ろし、それを延々と繰り返していく。 その時、ヴェプリーは最高のライブ会場に立っていた。あらゆる問題が解決され、指揮官が観客席に立っている世界。 人類がこうなるなら、これでいいのかもと一瞬思う。けど、コルフェンがいつかヴェプリーに話したことを思い出した。 『たとえ理想的な治療方法があっても、緊急事態ならさておき、まず患者の合意を得ることが大切なんですよ』 「よし、やるぞ」呼吸を整え、今、自分がどこに立っているか、何をするべきかを認識する。 ……ハンマーを振り上げた。 数日後。 エルモ号の人間達は最終生命の何かしらの治療を受けに行ってやつれた表情で帰ってきていた。 「ヴェプリーが何を見たか知りたい?」と誰かに聞いたとする。 「ああ、新型の薬物が衛星都市で使われたってんでしょ?」そう返ってくるだろう。 結局件の大学教授がやった事については、公式発表では衛星都市の無差別化学テロでの不幸な死ということになった。 ブージャムサーバーとやらも壊し終わったら溶けて無くなり、残留コーラップス反応とわずかな電子機器が残るのみ。 証拠品は直筆の遺書とPCくらいだが、ヴェプリーが帰る前にこっそり繋いだ時、OSすら残っていなかった。 カバーストーリーの謎のテロリストの役割は近くにいるヴァリャーグが請け負うことになるだろう。 だからこの件はこれで終わってしまったのだ。 コルフェンはいつものようにタブレットのカルテを見て唸っていて、それを邪魔する気にはなれなかった。 今の所、ヴェプリーに賞金ハンターとしての仕事は無い。だから完全にフリーだった。 防音室の中に一人。あの時何を聞いたか思い出そうとする。が、やめた。 今の自分にふさわしい曲を弾こう。