ガキンッ キンッ と剣が打ち合う音が響く。 「腕をあげたなイザベル」 「黙れ!」  イザベルの斬撃を容易く捌きながら、ボーリャックは薄く笑う。 「答えろ!ボーリャック!貴様の仕業だと噂される様々な悪事は本当のことか!?」  同時に両者が飛びずさると、イザベルが剣を突き付けながら糾問した。彼女の態度に内心(おや?)と僅かな違和感を抱く。 「何を問いたい?貴様の決意が今更揺らいだのか」 「違う!ただ、貴様の真意がどこにあるのか知りたいのだ!」  内心ボーリャックは戸惑いを覚えた。クリストのようなお人好しはともかく、彼女がこのような理性的な態度をとるとは思いもしてなかったからだった。  だが、このことで己の罪を釈明することなど許されることではないとボーリャックは己を戒める。動機はどうであれ今の自分は聖騎士の仇に与する裏切者。全ての業を背負う覚悟はとうの昔に出来ていた。  心中の揺らぐ思いを隠しつつボーリャックはイザベルの言葉を促す。 「何が聞きたい、言ってみろ」 「うむ…」  剣の剣先を僅かに下に降ろし、イザベルは暫し逡巡する様子を見せた後、覚悟を決めたようにボーリャックを睨みつけて「一つ!」と叫んだ。 「ジャンクがヨシタカという男のPTの爛れた性生活を目撃して『エッチ怖いよお…』っと、か弱き存在になってしまったのはお前の仕業か!」 「…は?」  一瞬ボーリャックの思考が完全に停止した。もしイザベルがこの時斬りかかっていたなら、なす術もなく彼は斬り倒されていたであろう。 「聞こえなかったのか?ジャンクがヨシタカという」 「いや聞こえなかったわけではない」 「むっそうか」  ボーリャックは天を見上げる。そして深く深呼吸をすると、深々と頷いた。 「ああ、俺の仕業だ」 「やはり!次だ!クリストがギルのPTの必中のスナイプとかいう男に駆けポーカーに負けて、一日女装メイド姿でそ奴の側に仕える羽目になったのはお前の仕業か!」 「なんだその面白い状況はゲフンゲフンそうだ!」 「次!ギルがそのスナイプという男がクリストの女装を見て『いけるな…』と呟いたのを聞いて、そ奴を抹殺すべきか半ば本気で悩んでるのもお前の仕業か!」 「やっちゃえよギル!ゴホッゴホッああそうだ!」   「次!コージン殿がレンハートマンホーリーナイトがメロ王女にガチ恋されて『インモラルはまずいだろ…』と私に相談してきたのもお前のせいか!」 「(メロ王女ってムキムキマスクマンがタイプなのか?ちょっと引くわー)俺が悪い!」 「次!ナチアタが『存在自体がエロ』という悪質な風評被害で理由で出番が大幅に制限されてる件については!」 「あーうん、あれはなー…俺のせいだ!」 「次!ゾルデがマリチャンとかいう作者の薄い本『おっさんず裸舞』を最近熱心に読んでいる件は!」 「マリアァン!ああ俺のせいだ!」 「次!イゾウがミサ殿が明らかに自分モデルのBL漫画の創作をはじめたことで『俺が悪いのかなあ…』って最近黄昏てる事については!」 「かわいそ…じゃなくて俺のせいだ!」 「そして…最後に…!」  ぐっと拳を握りわなわなとイザベルが震える。その顔には無念、憤懣、怨嗟あらゆる負の感情が浮かんでいた。 「私が…通販で菓子類や武器防具を碌に値段を見ずに買い続けていたせいで、雇い主に厳重注意、加えて当分お菓子抜きにされた件についてた!」  ボーリャックは頬を掻き、首を斜めに傾け、こくんと頷いた。 「うん、俺が悪い」 「やはり!」  ボーリャックに憎悪の表情をイザベルは向ける。『イザベル、お話があります』と自分を読んだ時の、無感情の顔をしたヘルマリィの顔は本当に恐ろしかった。『当分の間貴女はおやつ抜きです。悔い改めてください』と宣告されたときは床に手を突いて絶望した。 「せめて最後のがお前と無関係なら…くそお!」  剣を振りかぶりイザベルが突進してくる。己も剣を構えながら(今日イザベルに殺されるのは絶対に嫌だな)と思うボーリャックであった。