王都警察プチ怪文書「四月狂騒曲事件 報告書」  4月1日早朝、王都内企業ビルにて爆発事故が発生、110番通報の後、王都警察が出動した。  爆発は規模こそ大きかったものの、損害は無く、被害者も全くのゼロ、奇跡と評されたがこれは序曲に過ぎなかった。  一時間を待たずして都内各地で事件事故が多数発生、こちらも生命に関わる被害はゼロであったが断続的な出動により警察職員は疲弊していた。  被害に遭った企業、団体は総じてエイプリルフールの企画を仕込んでおり、曰く企業ロゴを変化させるネタであれば職員の顔も変化して意思疎通が取れなくなり、曰く団体ビルの爆破ネタであれば実際にビルが破裂してその後元に戻るなどした。  昼に差し掛かる頃「嘘がホントになる現象」は企業団体から個人レベルまで影響が拡大、ネタを用意していた者はそれに踊らされ、用意していなかった者は逆に「何もないの?」と周囲に冷ややかな目を向けられるなどの被害をもたらした。  ギャン・スブツグ、ダテイワ・クシテル両名がいつもと違い妙にパリッとしたスーツでなんとも悲しい顔をしている。  それはそれとして非常に有能なお二人が犯人の尻尾をつかみ、夕方には犯人グループのアジトを特定。  これまであまりにも多くの緊急出動で怒りがたまっていた王都警察は多数の人員を投入、アジト全方位から強襲する電撃作戦でこれを逮捕せしめることを考案する。  突入直後、倉庫内で縛られた市民を発見、保護したのも束の間、倉庫中央の装置から大量の魔鹿が発生、捜査員を巻き込み都内になだれ込んだ。  どうやら「山から魔鹿が大量に襲ってきたぞ!」という嘘をつき街を練り歩こうと企図していたらしく、最悪の形で反撃を食らうこととなった。  場が混乱する中、夜叉のような女が警察を嘲笑する犯人グループに突撃、魔鹿の波を躱し、これを撃滅した。  眼鏡をかけた女は目に光るものを浮かべながら逃走、王都の闇に消えていった。    一晩明け本日、事件の全容が判明した。  犯人グループは全員昨年のエイプリルフールでつかまされた誤情報に期待を裏切られ、この日そのものに恨みの感情を抱いていた。  そんなに嘘をつきたければいっそ本当にしてしまえと行動を開始、本年4月1日にのみ効果範囲を絞ることで魔術の効果を大きくすることに成功、市民は大混乱に陥ったというわけである。  混乱は招いたものの、世間が踊らされた以外の人的被害はゼロ、どのような罪状で起訴すべきか警察と法務で協議が進められている。  魔鹿の嘘を企図した男を拉致監禁した罪で逮捕するのではというのが大方の見方である。  さて、犯人グループを撃滅せしめた女の正体であるが、本人の権利を守るために名前の公表は差し控えさせていただく。  しかしながら「いやぁ~ん17歳になっちゃったわぁ~ん」などと嘯いたせいで暴走族全盛期の自身が顕現してしまい、あまりに恥ずかしくこの大立ち回りに及んだと供述されている。 「以上、このようなトンチキ事件の報告書をこの時間まで纏めさせられていたサトーが報告いたしました」 「最後のくだりは削除してくれっていったじゃないのサトーちゃん」 「いいえ、入れますよ。面白かったので」 「フフ…いうようになったじゃないか。そういえば昨日は何をしていたんだい?急病って聞いたけど」 「…遠い遠い親戚が入れ替わった設定でいこうと思ったら何着てもブルマに変化するようになりまして…出てこれませんでしたね…」 互いに笑うサトーとハルノ。 どのような嘘であったとしても、明かされたときに笑って済ませる範囲に収めておきたいものである。