自在に動き回るホログラムのターゲット。 「フンッ!」 魔弓から放たれた赤い衝撃が、それを正確に射抜く。 ここはデジタルワールドに存在する施設――“アリーナ”の公開訓練場。 今、二体のデジモンがこの訓練場で激しい特訓に明け暮れていた。 一体はベルゼブモン。弓を得物とする長身の人型デジモン。 もう一体はインダラモン。馬に似た二足歩行のデジモンだ。 ベルゼブモンはインダラモンの背に乗り弓を構える。 疾走する不安定な馬上でありながら、正確な狙いで次々とターゲットを射抜いていく。 「見事だ。」 それを眺める少女が一人。 静かな拍手が、喧騒の中で不思議とよく響いた。 ベルゼブモンは最後のターゲットを撃ち抜くと、軽く息を吐きながら弓を下ろす。 インダラモンも歩みを止め、主を振り返るように静止した。 「これでも……まだまだアイツには到底届かねぇ。チャンピオンにはな。」 自嘲気味に肩をすくめるベルゼブモン。 その言葉には悔しさの奥に、敬意が混じる。 少女はわずかに目を細める。 「ところで、そのチャンピオンがどこへ行ったか知らないだろうか?」 ベルゼブモンは軽く笑い、インダラモンの背から飛び降りた。 ブーツの踵が床を打ち、乾いた音が響く。 「なんだよ、お嬢ちゃんもアイツのファンか。ここ数日は見てねぇな。普段アイツが何してるかも謎だしな。」 冗談めかして言いながらも、その視線は少女から外れない。 ――ただの少女ではない。そう確信していた。 「そうか、すまない。私はチャンピオン……マグナモンの元同僚でね。近くに来たから挨拶を、と思っただけだ。」 その言葉が落ちた瞬間、空気が変わる。 ベルゼブモンの表情が固まった。 インダラモンもまた、蹄を鳴らしわずかに身構える。 「……今、なんて言った?」 低く、確かめるような声。 少女は静かに顔を上げる。 「近くに来たから挨拶を――」 「そこじゃねぇよ。マグナモンの“同僚”だと?……ってことは何か? お嬢ちゃん、まさか――」 言葉は途中で途切れる。 脳裏に浮かんだ可能性が、あまりにも現実離れしていたからだ。 少女は静かに一歩、前へ出た。 その所作には一切の無駄がなく、ただ立つだけで周囲の空気を支配する。 「これは失礼した。私の名はアルファモン。――ゆえあって、今は桐梁譲子と名乗っている。」 その名を聞いた瞬間―― 「え!? あのアルファモン!? 自分、ファンなんすけどサインもらっていいっすかウマ!?」 真っ先に反応したのはインダラモンだった。 「てめぇは黙ってろウマ野郎!」 バチンッ!! 「ヒヒンッ!!」 頬をビンタされるインダラモン。 もはや日常茶飯事と言わんばかりに、ベルゼブモンは平然と話を続ける。 「で、だ……お嬢ちゃん――いや、アルファモン。俄然アンタに興味が湧いてきた。」 口元が吊り上がる。 その目は、獲物を見定める狩人のそれへと変わっていた。 「ここは戦いの殿堂“アリーナ”だ。試合でもどうだ?」 「残念だが、君の期待には応えられない。今の私は、とある事情であまり戦えなくてね。」 譲子――アルファモンは、わずかに視線を逸らしながら答える。 「……そうか。」 肩を落とすベルゼブモン。 同時に戦闘態勢を解き、手にしていた弓をカードへと変換し、デッキへ収めた。 張り詰めていた空気が、ふっと緩む。 「――!? そのカードは……!」 譲子の視線が鋭くなる。 興味を隠さず、カードを覗き込む。 「こいつは“騎龍魔弓サジットボウ”。このアリーナで勝ち続けた証だ。」 ベルゼブモンはどこか誇らしげに言う。 カードを軽く弾く指先には、自信と実績が滲んでいた。 「実は、私も似たようなものを持っていてね。」 そう言って譲子はポケットから一枚のカードを取り出す。 淡い光。 カードは瞬く間に形を変え―― 現れたのは、一振りの巨大な剣。 ベルゼブモンの目が見開かれる。 「そいつは……“紫電の霊剣ライトニング・シオン”だと!? アンタ、一体どこでそれを……!」 ソードブレイヴ――十三聖剣の一振り。 それを目の当たりにした興奮は最高潮に達する。 対照的に、譲子の声は静かだった。 「かつて仲間たちと繰り広げた大冒険……その中で得た戦利品であり、思い出の品だ。」 遠くを見るような目。 そして―― 「……気が変わった。」 ベルゼブモンが笑う。 「カードバトラーが出会ったなら、やることは一つ――そうだろ?」 サジットボウのカードをデッキへと差し込む。 「確かに。戦うことはできなくても、“こちらの勝負”なら話は別だ。」 譲子もまたデッキを取り出した。 二人は同時にデッキを掲げる。 「「ゲートオープン――界放!」」 異界への扉が開く。 カードフィールドが展開され、足元の床がせり上がり、対戦卓へと変形する。 ◆第1ターン(譲子) 先攻は譲子。 「私のターン。スタートステップ、ドロー、リフレッシュ、メインステップ。」 譲子の手札:5 リザーブ:4 「“湖に咲く薔薇”を配置。」 譲子の足元に、芦ノ湖を模した幻想の湖が広がる。 その中央に、巨大な一輪の薔薇が咲き誇った。 「ターンエンド。」 「ネクサス配置だけとは随分おとなしいスタートじゃねえの。」 譲子 手札:4 リザーブ:1 フィールド:湖に咲く薔薇(Lv1/コア0) トラッシュ(コア):3 ◆第2ターン(ベルゼブモン) 「オレのターンだ。……メイン!」 ベルゼブモンの手札:5 リザーブ:5  ドローしたカードを見て、ベルゼブモンがニヤリと笑う。 「“創界神ヘラ”を配置。【神託<コアチャージ>】。」 デッキの上から3枚のカードがトラッシュという闇へと消えていく。 そしてその3枚の中の条件を満たしたカードの数だけコアを増やす。 消えた3枚は全て"呪鬼"であった。 創界神ヘラ(Lv1):コア0 → 3 「グランウォーカー…」 譲子に緊張が走る。 創界神は軽く、それでいて強力。 ただし真価は【神託】でコアを蓄えてこそ発揮される。。 設置が早いほど見返りは大きく、初手での配置はまさに理想ともいえる動きだった。 「さらに“インプモン”を召喚!インプモンの効果!」 創界神ヘラ:コア3 → 4 紫色の小悪魔が現れ、デッキの上からカードを一枚ずつ持ち上げる。 ちまちまと動きながら、合計3枚を確認する。 そしてその中の"呪鬼"1枚を手札へ加えることができる。 「“アイスデビモン”は手札に。他は破棄だ。」 黒い渦が広がり2枚のカードをトラッシュの闇へと飲みこんだ。 「あ、オイラ落ちたウマ……」 破棄された中にインダラモンのカードが混じっていた。 「オレのターンはここまでだ。」 1ターンで5枚もトラッシュにカードを落とした。そして使う色は紫。 (この動き、まさしく再利用前提でのトラッシュ戦術…) 譲子はベルゼブモンの次の一手を推測する。 【神託】は順調で、手札もよさそうだ。猶予はあまりないだろう。 ベルゼブモン 手札:3 リザーブ:0 フィールド:インプモン(Lv1/コア1)、創界神ヘラ(Lv1/コア4) トラッシュ:コア4/カード5 ◆第3ターン(譲子) 譲子の手札:5 リザーブ:5  メインステップに入ると、譲子は静かにカードを掲げた。 「来い、"大輔のブイモン"!」 青い小さな影が光の渦から飛び出し、元気よく周囲を駆け回る。 同時にデッキが輝き、4枚のカードが宙に浮かんだ。譲子の指が素早く1枚を選び取る――「アルケニモン」を手札へ。 残りは粒子となってデッキの下へ還っていく。 手札は揃った。ここで仕掛けるか1ターン待つか。 いや、譲子に迷いはなかった。 「アタックステップ。進化せよブイモン!」 ブイモンが淡い光に包まれ、手札へと戻る。 代わりに【進化】で指定されたスピリットがノーコストで召喚される。 「来い!"スティングモン"。」 そして現れたのは人型に近い体型の緑色の蜂型デジモン。 湖に咲く薔薇の効果とスティングモンの召喚時効果が発揮された。 ボイドから湖に咲く薔薇の上に1個、スティングモンの上に1個、それぞれコアを追加される。 「行くぞ。スティングモンでアタック。 スティングモンの効果で更にコアを追加。」 「そしてスティングモン、超進化せよ!」 スティングモンが光の繭に包まれ、手札へと戻る。 「現れよ、アルケニモン!」 そして蜘蛛の下半身を持つ女性型デジモンが姿を現した。 スピリットの召喚に反応し湖に咲く薔薇へコアが置かれる。 アタックしていたスティングモンがいなくなったことでバトルは空振りに終わる。 「アルケニモンでアタック!コア1つをこのアルケニモンへ。 更に、デッキを2枚オープン!」 この効果の発揮条件である『緑一色のネクサスがあること』は湖に咲く薔薇の存在で既に満たしている。 アルケニモンが粘性のある糸を放ち、デッキトップの2枚のカードにひっかける。 2枚のカードが宙を舞う。そのうち1枚、会心の一手がここに揃う。 「来た!今こそ出でよ我が分身、"アルファモン"を召喚!」 アルファモンは豪運とも言える確率で、デッキの上2枚の中に自身の分身となる切り札を引き当てる。 雷光を纏い、装甲を光らせながら漆黒の騎士が戦場に降り立つ。 「究極体がデッキから直接…!?」 ベルゼブモンの頬を冷汗が伝う。 更にスピリットの召喚により湖に咲く薔薇へまたもやコアが追加される。 「おいおいおい、一体いくつコアを増やすつもりだ?」 現在、譲子の使えるコアは9個。 一連のアクションでコアの数を前のターンの倍以上へと増やしていた。 (さて…) 予想外の状況にベルゼブモンは思考を巡らせる。 (攻撃を凌ぐことは出来る。だが…次のターンで勝つための布石を打つには…) その間、沈黙が戦場を支配する。 ベルゼブモンは落ち着きを取り戻し、そしてあらゆる可能性を予測、結論を出した。 「その攻撃、ライフで受ける!」 アルケニモンが6本の足をせわしなく動かしベルゼブモンの卓へ迫る。 そのまま跳んでベルゼブモンに殴りかかった。 ベルゼブモンの正面にバリアが現れ、割れる。 ベルゼブモンのライフ:5 → 4 「続けてアルファモンのアタック。聖剣グレイダルファー!インプモンのコアをリザーブへ!」 アルファモンが手にした光の剣を振ると斬撃の波動がインプモンへ飛んでいく。 そしてインプモンのコアが弾き飛ばされ、インプモンが粒子となり消えていく。 「そして"アルファインフォース"!2コストを支払うことでアルファモン自身を回復させる!」 「何もねえ!ライフだ!」 アルファモンがベルゼブモンを袈裟斬りにする。 ガラスのようにベルゼブモンのライフが砕け散った。 ベルゼブモンのライフ:4 → 3 「2撃目!そしてアルファインフォース!」 再び2コストを支払い次の攻撃を予約する。 次の攻撃は横薙ぎだ。 「(受けるのは)ライフだ!」 アルファモンの剣がベルゼブモンのライフを刈り取る。 再び結晶が砕け、破片がフィールドに降り注ぐ。 ベルゼブモンのライフ:3 → 2 「3撃目!そしてアルファインフォース!」 ベルゼブモンのライフは残り2。 そしてアルファモンはこのアタックのあとにさらに1回の追撃が予約された。 つまり、防ぐ手段がなければベルゼブモンはここで"詰み"だ。 …この展開、ここまでベルゼブモンは予期していた。 「ッハ!フラッシュタイミング!」 ベルゼブモンは凶悪な笑みを隠すことなく高らかに宣言する。 「ヘラの【神技】<グランスキル>!手札の"迷宮の番人デステリオス"を捨て、その効果でトラッシュのインプモンを復活!」 【神技】は創界神のコアを消費することで発揮する効果だ。 創界神ヘラ:コア4 → 0(Lv1) その効果は"呪鬼"のスピリットを手札から捨てて1ドロー後、捨てたカードの効果を発揮させる。 ベルゼブモンが捨てたのは"迷宮の番人デステリオス"。 その効果は「トラッシュにあるコスト8以下の呪鬼をコストを支払わず召喚する」というもの。 インプモンの効果でベルゼブモンの手札にメフィスモンが加わり、トラッシュへ2枚のカードが落ちる。 さらにインプモンの召喚が【神託】の条件を満たし、ヘラのコアが1つ増える。 「インプモンでブロックするぜ。」 インプモンがベルゼブモンとアルファモンの間へ割って入る。 インプモン VS アルファモン その戦闘力はアルファモンに遠く及ばず、あっさりと返り討ちに遭ってしまう。 インプモンはアルファモンのパンチ1発で爆発四散した。 だが、そう、これこそが狙い。 思惑通りに破壊されたインプモンの姿を見てベルゼブモンの笑いが止まらない。 「インプモンが破壊されたことで…出ろ!"ベルゼブモン"!」 自身の分身たるスピリット…つまり切り札。 その召喚の方法は『コスト3以下のスピリットが破壊された時に1コスト支払う』こと。 最初のアルケニモンのアタックの時点では、コストに支払えるコアが足りなかった。 ベルゼブモンはあえてライフで受けてコアを貯め、召喚で払うコストを確保していた。 「ベルゼブモンの効果だ。ぶっ飛べ、アルファモン!」 上空から着地したベルゼブモンが走り、アルファモンの懐へ飛び込む。 そのまま蹴りを腹に浴びせ、アルファモンからコアが弾き出された。 光の粒子となって消えるアルファモン。 「スピリットが消滅したんでドローするぜ。」 デッキからカードを引くベルゼブモン。 譲子のフィールドにはアタック可能なスピリットが残っていない。 「ターン…エンド…」 譲子にとっては不本意な結果に終わる。 譲子 手札:4 リザーブ:2 フィールド:湖に咲く薔薇(Lv1/コア0) アルケニモン(Lv1/コア1/疲労状態) トラッシュ:コア8/カード1 ベルゼブモン 手札:6 リザーブ:0 フィールド:ベルゼブモン(Lv2/コア3)、創界神ヘラ(Lv1/コア2) トラッシュ:コア5/カード9 ◆第4ターン(ベルゼブモン) ベルゼブモンの手札:7 リザーブ:6  「さて…フィナーレと行こうじゃねえの。 出番だ相棒!"騎龍魔弓サジットボウ"!ベルゼブモンへ直接合体<ダイレクトブレイヴ>!」 ベルゼブモンの腕から暗闇が生じ、弓の形へと実体化していく。 そこには弓を構える、先ほどまで訓練場にいた時と変わらないベルゼブモンの姿があった。 「そしてピコデビモンを召喚。効果で1ドロー!」 創界神ヘラ:コア2 → 3(Lv1) 「ベルゼブモンでブレイヴアタック!さーてコイツが俺の最高の相棒である意味を教えてやるよ!」 ベルゼブモンが矢を番え、アルケニモンへと狙いを定める。 「サジットボウの合体アタック時効果!BP7000以下のスピリットを破壊する!」 炎の矢がアルケニモンを貫く。だが矢はそこで止まらなかった。 貫通した矢がそのまま軌道を維持し、譲子へと真っ直ぐに飛んでいく。 「そして、スピリットを破壊したとき、相手のライフのコアをリザーブへ移動させる!」 矢が譲子の胸に刺さる。 「ここで!ベルゼブモンの効果! 自身の効果でリザーブへ置くコアをトラッシュのデジモンの数だけ+1する!」 現在トラッシュにあるデジモン――成長期/成熟期/完全体/究極体の合計は6枚。 「7点ダメージ。これで終わりだ!」 バトスピの初期ライフの5点を大きく超えるオーバーキルダメージ。 現在、サジットボウの【合体時】ライフダメージ効果はベルゼブモン自身の効果として扱われている。 そして、ベルゼブモンの持つ「このスピリットの効果でリザーブに置くコアを+1個する」効果はライフダメージにも適用される。 ベルゼブモンとサジットボウの組み合わせによる一撃必殺の極悪コンボだった。 矢が大きな爆発を起こし、爆炎が譲子を飲みこもうとする―― その瞬間。 「…マジック"デルタバリアLT"を使用。」 譲子の静かな宣言。 「なっ!」 ベルゼブモンに驚愕の表情が浮かぶ。 煙が晴れ、譲子が姿を現す。 巨大な三角形の障壁が彼女を守っていた。 「デルタバリアLTは効果でダメージを受ける前に使用できる。 このターンの間、私のライフはコスト4以上のスピリットの攻撃及びカードの効果では0にならない。」 譲子のライフ:5 → 1 4つの結晶が同時に砕け散る。 0にならないだけでダメージそのものがなかったことにはならない。 譲子の残りライフは風前の灯火だ。 「ッハ!バトル続行だ。」 ベルゼブモンのアタックは継続中だ。弓を握りしめながら譲子へと走っていく。 「ライフで受ける!」 ベルゼブモンがサジットボウを鈍器のように扱い譲子に殴りかかる。 だがその攻撃は展開中の三角形の障壁によって退けられた。 「お前を出しておいて良かったぜ…ラストアタックだピコデビモン。トドメを刺してこい!」 ピコデビモンのコストは3。展開中のデルタバリアはコスト3以下のアタックは素通ししてしまう。 バタバタと小さい翼をせわしなく動かし、ピコデビモンが譲子に迫る。 「フラッシュタイミング!"紫電の霊剣ライトニング・シオン(リバイバル)"の【アクセル】を発揮!」 天空から雷鳴と共に剣が降り、フィールドへ刺さる。 そこから水平に放たれた電撃がベルゼブモンとピコデビモンを貫く。 「ベルゼブモン、ピコデビモンのコアをそれぞれ1つずつリザーブへ。更に1枚ドロー。」 ピコデビモンは維持のためのコアがなくなり、消滅する。 アタック可能なスピリットは残っていない。 「…ターンエンドだ。」 譲子 手札:3 リザーブ:2 手元:紫電の霊剣ライトニング・シオン フィールド:湖に咲く薔薇(Lv1/コア0) トラッシュ:コア13/カード3 ベルゼブモン 手札:6 リザーブ:2 フィールド:ベルゼブモン+サジットボウ(Lv1/コア2)、創界神ヘラ(Lv1/コア3) トラッシュ:コア5/カード10 ◆第5ターン(譲子) 譲子の手札:4 リザーブ:16 (さて、わかりやすくオレのピンチだが…ま、どうにかなんだろ。) 譲子はコアの数こそ膨大だが手札の枚数は少ない。 その手札の内2枚は前のターンで場から手札に戻ったブイモンとスティングモンと判明している。 ベルゼブモンは自分の手札とトラッシュに一瞬だが視線を送る。 トラッシュには"ブリザードウォールLT"、手札には"人造吸血鬼ドラクシュタイン"。 どちらもコアをあまり消費せずに使える優秀な防御カードだ。 特に、スティングモンが出てきた場合にはドラクシュタインが即座に刺しに行ける。 「メインステップ。」 譲子が動く。 「マジック"爆烈十紋刃(リバイバル)"を使用!トラッシュのアルファモンを手札に。」 トラッシュの【バースト】を回収するマジック。 「そしてアルファモンを召喚。待たせたな、私の全力をお見せしよう! 手元の紫電の霊剣ライトニング・シオンをアルファモンに直接合体<ダイレクトブレイヴ>!」 フィールドに刺さっていた剣をアルファモンが引き抜く。そして前面に向かって構えた。 「覚悟はいいか?アルファモンでブレイヴアタック!」 剣を構え、アルファモンが走る。 その黒い装甲が次第に色を失っていき… 「紫電の霊剣ライトニング・シオンの合体アタック時効果! 自身の色を無色として扱い、相手のコア1個をリザーブへ送る。」 まるでガラスのように透き通った姿となるアルファモン。 (ブリザードウォールはダメージを受けた時点でこれ以上ライフが減らなくなる効果…) トラッシュを見ながらベルゼブモンは思案する。 「ライフで受ける!」 ベルゼブモンが宣言する。 「合体スピリットはダブルシンボル!ライフを二つ頂くぞ!」 (つまり、2点のライフを同時に砕かれちまったら意味がねーぜ。) アルファモンの剣がベルゼブモンのライフを2つ散らす。 決着! バトルフィールドを閉じ、ベルゼブモンと譲子が相対する。 「なあアンタ?最後のターンのプレイング、正気とは思えなかったぜ?」 17個あったコアの内16個を注ぎ込みアルファモンの回収と召喚を優先した。 コア除去効果の防御カードを持っている可能性の高い紫を相手に、だ。 結果的にそれがベルゼブモンの手札のドラクシュタインを腐らせることとなったため、正解だったわけだが。 「自分のエースカードで仕留めたいと考えるのはそんなに不思議か?」 譲子は当然とばかりに言い放った。 「ハハっ!ちげえねえ。」 ベルゼブモンは目の前の少女への認識を改めた。 現実主義者に見えてその実は理想家。 ロマンに理解のある楽しいカードバトラーなのだと。 「いいバトルだった。またやろうぜ!」 ベルゼブモンが拳を突き出す。 譲子はそれに合わせるようにコツンと拳を当てた。 終