茨城県の山奥、深い森に埋もれた古い廃墟。どれだけの月日が流れただろうか。 茨ひよりは、元・座敷牢だった部屋に『投獄』されていた。  連れてこられたのは「コラボ案件の打ち合わせ」と騙され、ましろに勧められた睡眠薬入りのお茶を飲んだ直後だった。 意識を失い、目覚めたときには鉄格子と分厚い壁に囲まれた独房の中にいた。廃墟とは思えないほど、部屋は掃除が行き届き、 簡易ベッドやテーブル、椅子まで揃えられている。計画的な異常性が、ひよりの背筋を凍らせた。 「ここはボクしか知らない場所なんだ~」 ましろは無邪気に笑いながら、ひよりの手を引いて内部を案内して回った。 秘密基地を自慢する子供のような口調。その笑顔と、底知れない狂気が入り混じる恐ろしさに、ひよりはただ震えるしかなかった。 古びた本をめくりながら、ましろは目を輝かせて言った。 「この建物はもともと、食糧不足を解消しようと、人間のメスと畜産動物を交配して食肉を手に入れようとしてたみたいなんだよね」 目線を上げ「で、ボクはホントか確かめたいんだよ!!」椅子に両手両足を拘束されたひよりの前で、ましろは鼻息を荒くして説明を続けた。 返事など待たず、どこから持ってきたのかホコリの積もった箱からアンプルを取り出し、針をひよりの腕に突き刺した。 プツ――  血管に注射針が突き刺さる感触に、ひよりの肩がびくりと震えた。 「んしょ」ましろは軽い掛け声とともに、ゆっくりと薬液を注入していく。透明な液体が血管に流れ込むのを感じ、ひよりの顔が青ざめていく。 「ましろくんって、医者じゃないよね……?」 「そだよ?」 「その薬って安全性って大丈夫なの?! ホコリかぶってたよね?!」ひよりの声が震える。 ましろは少しだけ首を傾げ、考えるような素振りを見せたが、注入する手を一切止めなかった。 「うーん……大丈夫じゃない?」悪気も危険性の認識もまるでなく、ただ軽く答える。 モラルよりも、観察することにしか興味がない目で、ひよりの反応をじっと見つめていた。 「そんなことよりさ、どう? 身体の感じは」実験台として、淡々と尋ねる声。 ひよりの胸に、呆れと怒りの感情が一気に湧き上がった。 『さすがに怒らなくては――』「スゥ…」と息を吸い込むが「あ、熱い……お腹が熱い! 子宮が焼けちゃいそう!!」 突然の熱が、下腹部から全身に広がっていく。  ひよりの胸が荒い息で激しく上下し、ピンク色の整った秘部が無意識にひくついた。 「うん。成功みたいだね」 ましろはペラペラと古い説明書をめくりながら、満足そうに読み上げた。 「子宮が異種の種を受け入れる準備が整うと胎内に熱さを覚える、だって。すごいね!」 「ねえ! 大丈夫なの?! 私、死なないよね!!!」ひよりの叫びが部屋に響くが、ましろはすでに次の行動に移っていた。 成功を確信したのか、鼻歌まじりにご機嫌な様子で拘束具を外し、あっという間にひよりを組み伏せて別の拘束具へと固定した。  四つんばいに固定され、大型犬が連れ込まれた瞬間から、ひよりの地獄が始まった。 丸出しで遮る物がない秘部にイヌのペニスが突き立てられ、乱暴に腟内をかき乱して射精する。  無限に感じられた時間が終わり、苦しさと悔しさに涙を流すひよりの心情など、ましろは一切興味を示さなかった。 「赤ちゃんデキるといいね~」甲斐甲斐しく世話を焼き、食事、睡眠、そして次の交尾――『妊活』を淡々と繰り返させた。 (自分は……実験台で、観察対象なんだ……)ひよりは何度も逃げ出そうとした。  迷路のように入り組んだ廃墟を彷徨い、出口を探しても、すぐに「なにしてるの?」とましろに連れ戻される。 色仕掛けで体を擦り寄せたり、僅かな所持金を差し出しても、ましろは興味を示さず「それより身体を大事にしなよ」とただ優しく微笑むだけだった。  月日は流れ、ついに――ひよりは犬の赤ちゃんを出産した。ましろはまるで自分の妻が子を産んだかのように小躍りし、子育てを積極的に手伝った。 産後のひよりの体を気遣い、授乳の補助までする姿は、理想的なパパそのものだった。 『産んだのが犬じゃなければ……理想的なパパなのに』ひよりは混乱していた。 良きパパのように振る舞うましろと、イヌを産ませた狂気のどちらが本当の彼なのか。 それ以上に、自分が赤ちゃんを置いて逃げ出せない母性に戸惑い、諦めの境地で子犬に授乳する自分の胸に、深い虚しさが広がった。  溢れる乳を、子犬が夢中で吸う。ピンク色の乳首が小さく震え、ひよりはただ、静かに目を閉じた。 しばらくして、子犬の姿が忽然と消えた。「どこに行ったの……?」ましろに尋ねると、彼はあっさりと答えた。 「ブリーダーに譲ったよ。元気な子だったね」さみしい感情が、ひよりの胸に湧き上がった。 そのことに気づいた瞬間、彼女は軽く自分自身に嫌悪感を覚えた。 (生まれたのはイヌなのに……)