襲撃は突然だった。 新規配属した量産機の裏切り、こちらの行動を完全に見越した奇襲、基地の全機能の迅速な掌握、司令官との分断。どれほど用意周到な策略であったのかを知る者は襲撃の首謀者のみであろうが、とにかく結論として S-Forceの拠点は、完全に陥落した 不幸中の幸いと言えるのは、ブリッジヘッドの機能が完全に掌握される前に-時空を歪める力を持つエージェントと機械開発担当が密かに仕込んでいた上位者権限を奪取する裏コードの合わせ技による-緊急転送で人員が逃げ出せた事と、S-Forceの共通装備たる個人間の多次元間連絡機能が未だ機能している事だが、緊急転送故に人員はもはや多次元世界に散逸したと言っていい有様で、再集結に掛かる時間は絶望的なほどに長い。 しかも、その脱出者の中に司令官がいない、との報告まで上がって来たとあっては隊員達の士気がどうなるかは火を見るよりも明らかで。 最早打つ手なし…のように思われた。 しかし、一枚の-現地に取り残された時間移動者の新入りエージェントが泣き震えながら共有した-写真を見て、司令に次ぐ古参たる悪魔は呵呵大笑した。次いで仏頂面の保安官は呆れたように首を振り、電子の侍はこの時を待ち侘びていたように装甲の光を強めた。 写真に映るのはボロボロに破壊され、廃棄された司令官の武装スーツと、中身がなくなったコンテナ。 確かに今回の首謀者は用意周到かつ確実な策略を以て事に及んだ。普通であればこれで詰み、もはや盤面が覆る事など起こり得ない。 ──されど、ただ一つ。あまりにも致命的なミスを犯した。 S-Forceの司令官は倒された。だが、もしも優位を握ったのだとしたら決して逃してはいけない。絶対に見つけ出し確実なトドメを刺すか、いっそ司令官という似合わぬ椅子に座らせたまま暗躍を続けるべきだったのだ。 だから、あの男が帰ってきた。 あの、青臭くも真っ直ぐで、揺るぎなく頑固な-価値観の相違で離脱した忍びが持つ物と、とてもよく似た-正義感を胸に自分の世界だけじゃ飽き足らず、時空さえ越えて平和を守ろうと立ち上がった、あの大馬鹿野郎が! だから、そんな彼が何を成したのか身を以て知る者達は たった今、一人でも戦っている筈のあの正義バカのマーカーの元へと 帰還の準備を開始したのであった。