サカエトル王都警察 怪文書  サカエトル王都警察、ウァリトヒロイが王都サカエトルを守護するために組織されたと思われる警察組織である。  勇者や冒険者パーティほどの個人能力はないが、組織力で事件の解決にあたる。  これはみんなで協力するお巡りさん+αのお話。  サカエトル都立博物館、様々な調度品や王家ゆかりの品が展示されている文化施設である。  たまに国宝剣がなくなったりするが、まぁちゃんと戻ってくるのでそこは大丈夫だろう。  それはさておき現場はその隣、サカエトル銀行博物館前支店。  犯人グループが人質を取り立てこもっている。 「君たちは完全に包囲されている。悪いことは言わんからさっさと投降してくれないかなぁ~」  どこか気の抜けた言葉を放ちながら犯人グループに投降を促す話法である。  事実博物館前の広場の隅々に至るまで警官で埋め尽くされており、犯人たちが逃げおおせる隙間はない。 「冒険者ギルドとか軍とか相手にするくらいならこっちにしといた方がいいぞー!」  暖簾に腕押し、返される言葉もない。 「なんでしょうね、この余裕」 「なんか逃げる手段でもあるのかな」  リーゼロッテ=ホフアイゼン巡査、リンダ=エドワーズ巡査、交通安全課の両名も周囲の交通整理のために駆り出されていた。 「逃げるなら逃げるでさっさとしてくれないものかしら」 「まぁ…お仕事だもの。仕方ないよね…ん?」  不気味なほどの静寂と緊迫感にあふれた銀行前の広場をけたたましい音が引き裂く。 「なんかきた!」 「この咆哮は…」  銀行の入り口から鋭い車体が顔を出すと同時に警察隊へ突っ込む。  犯人グループは完全なる包囲の突破に超高速での中央突破を選んだ。 「追いかけるわよ」 「おうとも!」  二人が持ち場を離れてクルマに乗り込む。  広場を少し離れたところで通信が入る。 『ワルキューレ、聞こえる?』 「はい、明瞭に聞こえますストランド巡査部長」 『良かった。少し繋がりが悪くて…。対象の後ろにつけてる?』 「視認できてますよオペ子先輩。直線は速いですけどコーナーで詰めてます」 『相手はドラスティ、最近ランボファームから盗まれたモビリティよ。あまり傷つけないで返して欲しいみたい』 「了解です。もとよりそのつもりです」 『OK、じゃあ頑張って』 「ラジャー!」  ランボ・ドラスティ、劇的なる者の意味を持つランボファームの記念モデル。  力強く大地を捉え猛進する大角である。  戦乙女と猛牛のチェイスが始まる。 「ストレートじゃ離されるけど、そろそろとっつけそうじゃない?どうする?」 「とりあえず前に出る。あれだけの暴れ牛に乗ってるんだから制御術式くらい使ってるでしょ」 「じゃあまあそれをカットする形で」 「あとはクルマの方で不適格者を振り落とすわよ」  ドラスティの背後に付く、相手には既に見えている、次のアタックでお前を堕とすという意志が突き刺さる。  しかし先行車は突如車体を左右に振り、ぶつけるようなそぶりを見せる。 「はぁ、浅はか。その子はそんな風に走る子じゃないわ」  一度減速し、相手を大きくとらえる。  激しく振られるテールに合わせて速度も落ちる、そこにアウトからアプローチする。  相手のラインを潰すように頭を押さえ、リズの術式が発動する。 「はい、ズィルバーン」  ハッキング術式がドラスティの制御術式に入り込み、繋がりを断つ。  猛牛は自身に乗り込む不届き者を先ほどの浅い揺れとは比べ物にならない勢いで車外に振り落とす。 「この前のアライグマちゃんの方が手ごわかったわよ」  勝敗は決した。 「じゃあ、後はお願いねリンダ」 「了解、任された」  車外に振り落とされるもよろよろと逃げていく犯人たちをリンダが追いかけていく。 「ちぃ!」  一人が短剣を突き出す。  素早く躱して肘を肩で突き上げる、上腕と頭部を押さえて地面へ押し倒す。 「ぐぅ!」 「このっ!」  一人が印を構える、魔弾の充填である。 「おっと」  軽くスウェーバックして距離を取る。  発射寸前の腕を何かが打ち払った。 「ゴウくんナイス!」 「遅くなりました先輩!」  空から伸びで来た警棒が犯人の腕を撃ち抜き、円を描きながら犯人の頭部を叩き伏せる。  ゴウ=タイセイ巡査が雲に乗って降りてきた。 「あれ、もう一人は?」 「あっち行ったみたいです!追いかけます!」  郊外に駆けていくもう一名をゴウがBMヴォルケで追走する。 「ここは…面倒だな…」  サカエトル地下水道、上下水道設備も含めた王都サカエトルの大動脈。  国府で把握している以上に細かく枝分かれした水路の先は謎の地底生物や反社会組織の巣食う魔窟と化している。 「ストランド巡査部長、聞こえますか?」 『なに~ゴウ君』 「先ほどの犯人グループの一人が水道に逃げ込みました。追えますか?」 『タグはついてるわね。深く潜られると縦軸は難しいかもしれないけど、横方面なら追えるわ』 「ありがとうございます。ナビゲートお願いします」 『オーケー』 「お前は待っててくれよ、ベン」  心なしかしょんぼりした風に車体をすくめるBMを置いて水路に入っていく。 「にょわー☆」 「グワーッ!」  水路に踏み込んだところで丸いウォークライと男の叫びが木霊する。 「!? 今のは?」 『少し先に犯人の反応と…未登録の生体反応が離れていくわ、慎重に進んで』 「了解しました」  警棒を構えて水路を進んでいく。 「これは…」  男が倒れている。  盗んでいった金は手つかずでケースごと転がっている。 「対象を発見しました。気絶しています」 『え?ゴウ君がのしたんじゃなくて?』 「俺じゃないですね、命の危険がない程度に捩じられて絞め落とされています」 『えぇ…とりあえず錠かけて運搬してきて、車両回すから。  周りにその親切な絞殺魔がいるかもしれないから気を付けてね』   「了解です」  その後は特に何事もなく地上に出ることが出来た。  応援に来た署員に犯人の身柄を受け渡し、ゴウが水路を振り返る。 「一体なんだって言うんだ…。また変なのが地下にいるっていうのか…?」  当然の疑問を胸に、その日は引き上げていった。