最近、イレーヌお姉ちゃんの様子がおかしい。 ‥‥いや、“変”って言うと失礼なんだけど。 なんていうか、距離が近い。 前から優しかったし、頭を撫でてくれたり、ぎゅっと抱きしめてくれたりする事はあった。 イレーヌお姉ちゃんはふわふわしてて、優しくて、包み込むみたいに笑ってくれる。 だけど。 「わぁ、おめでとうございますっ!」 最近は、すごく近い。 柔らかいおっぱいが思いっきり当たって、そこに顔を埋めるみたいな形になるし。 「わっ!? い、イレーヌお姉ちゃん!?」 なんて情けない声を出しちゃって、慌てて離れようとするんだけど、全然離れられない。 ふわっと、いい匂いがして。 成すがままにされるしかない。 そのせいで、最近恥ずかしい。 嫌いになったとかいう訳じゃない。 だけど、安心する気持ちだけじゃなくて、もっと変な‥‥言葉にできないような感情が混じってる。 それが自分が嫌で、ちょっと距離を置こうとした。 なのに、イレーヌお姉ちゃんは余計に近付いてきたり。 寂しそうにして来るから、またすぐにお互いの距離が近く戻ってしまう。 そんなことを繰り返しているうちに、頭の中はイレーヌお姉ちゃんでいっぱいになってしまった。 イレーヌお姉ちゃんは僕の事、ただの“可愛いマスター”くらいにしか思ってない筈なのに。 最近はイレーヌお姉ちゃんのことばっかり考えてしまって、落ち着かない。 前ならあんなに自然に一緒にいられたのに、最近は顔を見るだけで変に緊張する。 あの柔らかい笑顔とか、ふわっと近づいてくる距離とか、たまに妙にじっと見てくる視線とか。 全部、心臓に悪い。 だから、とりあえず落ち着こうと思って、お風呂に入ることにした。 服を脱いで、浴室へ入る。 ここなら一人だしようやく落ち着ける、なんて思った、その時。 ドアの開く音に、反射的に振り返るとそこにいたのは。 「イ、イレーヌお姉ちゃん!?」 僕が真っ赤になって叫ぶと、イレーヌお姉ちゃんはきょとんと首を傾げた。 見ちゃいけないと思ってるのに、視線が勝手に吸い寄せられる。 湯気の中で、髪がちょっとしっとりしてて、いつもより妙に色っぽく見えてしまって。 それに‥‥それに、見えてる‥‥全部。 「だって、いつも一緒に戦っているんですし」 それがどうしてお風呂に、そんな疑問を投げかける前に。 「背中くらい、お流ししますよ〜?」 後ろから、ふわっと声がして。 次の瞬間、肩に柔らかい手が触れた。 ぐっ、と肩を押されて、椅子に座らされる。 「イ、イレーヌお姉ちゃん、もう自分で‥‥!」 必死に抵抗するけど、肩を押さえる手はびくともしない。 「遠慮しなくて大丈夫ですよ〜?」 泡のついた柔らかい掌が首筋をなぞって、背中を撫でて。 柔らかい手が撫でる度に、身体がぞくぞくする。 そして。 どんどん全身を洗われて、手がおちんちんに近づいてくる。 凄く恥ずかしくなって、止めようとするけど。 「ここもちゃんと洗わないとだめですよ〜?」 本気で逃げようとするけど、椅子に押さえつけられてて動けない。 柔らかい感触の、泡のついた温かい手。 おちんちんを優しく撫でていくたび、身体が変になりそうになる。 手首を握って離そうとしても、全然離れてくれない。 ただただ、恥ずかしくてどうしようもなくて、頭が真っ白になる。 そして、僕の思考はその瞬間、完全に止まった。 最初は、何をされてるのかちゃんと理解できなかった。 「――っ!?」 びくっと身体が跳ねる変な感覚。 今まで触られたことのない場所を、泡のついた柔らかい指が丁寧に触ってくる。 いつの間にかイレーヌお姉ちゃんの手の動きが違っていた。 妙に丁寧で、変にさきっぽばっかり触ってくる感じで。 なんか、おかしい。 変なのに嫌とか気持ち悪いじゃなくて、ただ頭が真っ白になる感じ。 そもそも僕にとって、そこは“おしっこする場所”以上の意味なんて、ちゃんと理解してなかった。 どうしたらいいのか分からなくて身体をよじって。 僕は、無意識に腰を動かしてしまっていた。 イレーヌお姉ちゃんの手に、自分からおちんちんを擦りつけるみたいな。 そして、身体がびくっと大きく跳ねるような今までとは明らかに違う感覚。 頭の中が真っ白になる。 身体の奥から、急にどうしようもない何かが込み上げてきて。 イレーヌお姉ちゃんの手の中に、自分が“何か”を漏らしてしまったことだけは分かった。 でも、それが何なのかは分からない。 頭が追いつかないし、呼吸だけが荒くなって、心臓がどきどきして、顔が熱い。 ただ、ものすごく恥ずかしいことをしてしまった、という感覚だけがあった。 僕はただ放心して、何も考えられないまま身体の力が抜けて声さえ出ない。 ふと、視界の端でイレーヌお姉ちゃんが動いた。 ただ、ぼんやり見てしまう。 濡れた髪、湯気の向こうの熱っぽい顔に浮かぶ、いつもの優しい笑顔じゃない、どこか知らない表情。 その口元に浮かんでいるのは、さっきまでのふんわりとした微笑みじゃない。 名前を呼ぼうとして、その前に。 ――ぱくり。 その瞬間から、もう頭の中は完全にパニックだった。 必死で、イレーヌお姉ちゃんの頭に手を伸ばして、ぐっと押した‥‥のに。 「え‥‥?」 びくともしなかった。 まるで、鉄球でも押してるみたいだった。 そして、イレーヌお姉ちゃんの口の中で、僕のおちんちんに何が触れているのかすら、最初は分からなかった。 柔らかくて温かくて、今まで感じたことのない妙な感覚。 それが、舌だという感覚が頭に浮かんだ瞬間、全身の血が一気に熱くなる。 頭の中で、言葉にならない悲鳴が浮かんで、ぼやけて蕩ける。 考えがまとまらない中で、感触だけがやけに生々しく理解出来てしまう。 唇が根元まで優しく押し当てられ、温かい湿った感覚が絡みつく。 先っぽの敏感なところをくるくる撫でられて、 くすぐったいようなぞわぞわするような不思議な熱が、腰の奥にじわっと熱が集まってくる。 さっきの掌での刺激と同じような感覚が、さっきよりもずっと速く、じんじんとした疼きが募っていく。 「や、だめ‥‥っ」 泣きそうになりながら、懇願するように声を絞り出すけど。 イレーヌお姉ちゃんは、それを聞いているのかいないのか、むしろ口の動きを早めていった。 気が付けば、腕はぎゅっと頭を抱きしめるみたいになっていて。 そうして、またさっきと同じように、今度はイレーヌお姉ちゃんの口の中に、さっきより沢山漏らしてしまった。 イレーヌお姉ちゃんが口を離すまで、僕は息もできないくらいの衝撃の中で固まっていた。 「ごちそうさまです。ふふっ」 目を細め、唇についた精液をぺろりと舐め取るイレーヌお姉ちゃん。 それは、普段の優しく穏やかなイレーヌお姉ちゃんからは想像もつかない表情だった。 でも、それを見て、恥ずかしさで何も言えない僕は、ただ俯くことしかできなかった。 呼吸もうまくできなくて、身体はまだ震えていて。 何が起きたのか、ちゃんと整理もできていない。 「ご、ごめんなさい‥‥その‥‥」 やっと出た声は、情けないくらい小さかった。 絶対気持ち悪がられる。 怒られるかもしれないし軽蔑されるかもしれない。 ずっと信頼してた、大好きなお姉ちゃんに。 そんな想像が一気に頭を埋め尽くして、 怖くて仕方なかった。 だけど、帰ってきた答えは。 「大丈夫ですよ〜」 あの、ふわっとした優しくて、全部包み込んでしまうみたいな笑顔で。 だけど、その後の動きが。 僕の視線の先で、イレーヌお姉ちゃんは脚を開いて。 そこにある物を、見せてくれる。 女の人におちんちんが無いのは知ってるけど、そこに何があるのかは知らなかった。 イレーヌお姉ちゃんがお風呂に入って来た時は、見ないようにしてたし、あの時は閉じた脚の間で毛で隠れてた。 だけど、今ははっきりとそれが、急にはっきり現実として僕の目の前にある。 ひくひく、ぴくぴくと蠢くその中から。 とろ‥‥っと、熱っぽい雫が伝うのが見えた。 「おしっこじゃなくても、こうして濡れちゃう事があるんです、男の子も、女の子も」 そして、肩に手が置かれた。 いつもみたいに優しくて、乱暴さなんてまるでない。 ただ、そっと肩に置かれただけ。 なのに、立ち上がれない。 力は入ってるし、ちゃんと自分では立ち上がろうとしてる。 僕が立とうとする力にちょうど同じだけ返されてるみたいだった。 逃げようとすれば、その分だけぴたり、と。 肩が痛むわけじゃないし、押し潰される苦しさもない。 僕の呼吸は、もうめちゃくちゃだった。 何が起きるのか、何をされるのか分からなくて。 「ま、待っ‥‥」 言い終わる前にイレーヌお姉ちゃんは、ゆっくりと僕の上へ腰を下ろしてきた。 イレーヌお姉ちゃんの身体が、近いとかじゃなくて“重なって”いる。 頭が処理を放棄しかけている。 熱くてぬめぬめしてて柔らかくて。 なのに、凄く強い。 柔らかい万力に挟まれてるみたいだった。 ぺちん♡ 「――っ!?」 イレーヌお姉ちゃんが、腰を落とした音。 上下に動いて、柔らかいのに逃げ場のない感触が、 離れたり近付いたりして、ぎゅっと身体を締めつけてきて。 近づくたびに、離れるたびに、頭がおかしくなる。 そして、イレーヌお姉ちゃんの動きが少し変わった。 ぐりぐりと揺らすように腰を回して。 柔らかい肉の壁がずりずりと、ぴったり密着して。 中がうねるみたいにうごめいて、根本から先っぽまで、全部を擦るように。 イレーヌお姉ちゃんの身体が、びくっと震えた。 ここに擦りつける為の動きなんだって、分かってしまって。 そのまま、どうしようもない気持ち。 三回目になるそれが限界を迎えて、それは多分、イレーヌお姉ちゃんも同じで。 二人で、どうしようも無くなって抱き着き合っていた。 もう、まともに言葉なんて出せなくて。 浴室には荒い呼吸だけが残っていた。 そして、理解できないまま。 ――本当に、もう。 前みたいな関係には戻れないんだ、なんて事を思ってしまいながら、意識を手放した。 目が覚めた時に最初に感じたのは、温かさだった。 ぼんやりした頭で、天井を見る。 布団の感触にいつもの匂いと、柔らかい光。 昨日の記憶が、途切れ途切れに浮かぶ。 知らないイレーヌお姉ちゃんに、色んな事をされて。 そこまで思い出して、心臓がどくんと跳ねた。 ‥‥けど。 次の瞬間、自分の身体に何かがぴったりくっついていることに気づく。 僕を抱きしめたまま、眠っている。 ぴったりと身体を寄せて。 そして。 その顔はいつもの顔じゃなくて、不安そうで、寂しそうで。 眠っているのに、泣きそうみたいな顔をしていた。 ずっと信頼していたイレーヌお姉ちゃんが、 ある日突然全然知らない顔を見せてきて。 僕の知らないことを次々教えるみたいに。 僕の知らない感情を次々引きずり出してきて。 頭が追いつくわけがなかったし、怖くなかったって言ったら嘘になる。 昨日されたことがどういう意味なのか、ちゃんとは知らない。 だけど、イレーヌお姉ちゃんなりのどうしようもない気持ちの形だったんだって。 なら、まあ。 受け止めてあげるのも、マスターとしてはやぶさかではないかもしれない。 その日から。 僕たちの関係は変わっていった。 最初から全部をすんなり受け入れられたわけじゃない。 だって、イレーヌお姉ちゃんは時々、何の前触れもなく距離を詰めてきて。 「マスター〜♪」 なんて、いつものふわふわした声で近づいてきたと思ったら。 気づけば押し倒されてる、なんてこともあったから。 抵抗はする。 だって、あの時みたいに頭が真っ白になるのは正直すごく疲れるし。 「今日はだめ!本当にだめ!」 とか。 「心の準備!!」 とか。 ちゃんと言ってる、だけど押し切られる‥‥だって、勝てないし。 でも、仕方ない。 だって、嫌いになんてなれるわけない‥‥絶対に。 そもそも、イレーヌお姉ちゃんのカードを初めて見た時、僕は一目惚れしてたんだから。 だから、押し切られるのも、こんな関係も‥‥悪くない。 マスターとして、受け止めてあげるのも良いかもしれない、なんて。 数年が経って。 僕は、もう何も知らない子供じゃなくなっていた。 あの頃みたいに“なんか変なことされた”で終わるほど無知じゃない。 恋愛って何かとか、男女がどういう関係になるのか。 “あの日”に僕たちの間で起きたことが、どういう意味を持つのか。 あの日、イレーヌお姉ちゃんが僕に何をしたのか。 性教育を受け始めた頃の、イレーヌお姉ちゃんは少し変だった。 ほんのりと、よそよそしくなったのを覚えてる。 前みたいにべったりくっついてこなくなって、ちょっと距離を取るようになって。 そして、あれだけ時々あった、“押し倒される”こともぱたりとなくなった。 僕が色々知ってしまったことで“あの時のこと”の意味を理解して、幻滅されるかもしれないって思ったんだろう。 何も知らない僕だったから許されていたことが、ちゃんと意味を知ったら軽蔑されるかもしれないって。 あれがいけない事だし、イレーヌお姉ちゃんが悪いお姉ちゃんだとは思ったけど。 別の意味で、僕の頭はおかしくなりそうだった‥‥思春期の男子だから。 それが“いけない”とか“悪い事”だとか分かったところで。 その背徳感ごと、変な方向に燃料になる。 「‥‥マスター?」 首を傾げるイレーヌお姉ちゃん。 「昔、僕にしたこと、覚えてる?」 ぴたり、と動きが止まる。 分かりやすい。 顔は赤面しているのか青ざめているのか分からなくなって。 「え、えっと〜‥‥?」 その反応だけで確信する。 ああ。 イレーヌお姉ちゃん、この話題には弱い。 「何も知らない僕に、ずいぶん色々してくれたよね?」 「そ、それはですね〜‥‥」 しどろもどろな姿、目が泳いでる。 いつも余裕があるのに、珍しい。 僕は一歩近づく。 イレーヌお姉ちゃんが、一歩下がる。 追い詰めてるみたいで、そのやり取りが妙に楽しかった。 「マ、マスター〜?」 困ったような声。 「‥‥だから、僕がイレーヌお姉ちゃんに好き放題しても、良いよね?」 その言葉を聞いて、 「へ‥‥へ?!」 もう完全に狼狽えてる。 “マスター、意味を全部理解しちゃってる” “昔のあれ、どう思われてるんだろう” “軽蔑された?” “嫌われた?” “でも今こうして迫られてるってことは‥‥?” そんなのが全部顔に書いてある。 「イレーヌお姉ちゃんってさ」 僕は、さらに距離を詰める。 「攻められると、ほんとだめだよね」 自分からする時はあんなことする位に一直線だったくせに、 求められる側になると、びっくりするくらいしおらしい。 軽く肩を押す。 「きゃっ」 そのまま、ベッドへ。 「ま、待ってください〜!?本当に待ってくださいぃ〜!?」 慌ててぱたぱたと動かす腕を掴む。 「ひゃ‥‥っ」 小さな声と一緒に、声が跳ねる。 「僕が抵抗しても」 一言ずつ、ゆっくり。 「押さえつけて、逃がさなくて‥‥何回も、色んなことしたよね?」 抵抗しようとしてた気配が、その瞬間に消える。 「‥‥自業自得、ですねぇ」 言葉とは裏腹に。 あの時のことを受け止めて貰った安堵の表情。 油断してるイレーヌお姉ちゃんの耳元へ、そっと顔を寄せた。 「思春期の男の子の性欲が凄いの、分かるよね?」 その瞬間、イレーヌお姉ちゃんがぴたっと固まった。 あの時と立場が逆転したみたいに、僕が攻める側で、イレーヌお姉ちゃんが責められる側で。 「これからは、イレーヌお姉ちゃんのえっちな身体で、全部受け止めて貰うから」 あの時散々僕が受け止めた分、これからは全部、受け止めて貰おう。