丸く見開かれた目は、手に握ったそれから、でき得る限り視線を離すように努めていた。 指は震えている。腿の肉がたぷたぷと、打たれもせずに揺れている。 再び視線は恐る恐る、そちらの方へ向いた。が、何らの画像が網膜内に形成されるより先に、 少女の視線はまた、彼の顔へ――機嫌を伺うような締まりのない笑顔のまま、戻るのである。 男は何も言わず、じっと、彼女の顔と、その手元の棒とを俯瞰するように――あるいは、 それらがそもそも眼前にないかのように、遠い目をした。唇さえ動かなかった。 ただ、汗の粒だけは時の止まった二人の頬を垂れる。顎の線をなぞって裸体に落ち、爆ぜる。 針の音は、無言の空間の中に繰り返し繰り返し響き――唾の塊が、喉の奥へと降りていく。 やはり震えた声が、彼の否定の言葉を求めて少女の唇からすり抜ける。 しかし男は何も言わない。表示された線の数は、物理的に確定した事実であるからだ。 それを見えぬと言うたところで、ごまかしにも慰めにもなりはしない。 彼の沈黙をそのまま肯定の意と取り、眉は困ったような八の字へ。 指先はついにその重量物を保持できず、ぽとんと股座に落としてしまう―― その最中、彼女の下腹の上に跳ねて変わらず表示面を上に向けたまま。 今にも泣きそうな彼女の顔は、まだ自分の肉体の変化を受け入れられない風であった。 もっとも、その格好と――今からしようとしていたことと言えば、 ほんの二月前の彼女なら、考えもしないような淫らなことであった。 ほんの飾りばかりの布地だけを身に着け、猫のような手袋と靴下、尻尾と耳まで揃っている。 胴は丸見え――当然、平たい胸もぽってりした下腹も、ぴったり閉じた外性器もそうだ。 女子中学生の迸る若さを、けれど確かにある女体の柔らかさ、弾力とを、 一切隠しもせず――否、強調さえするような、そんな姿である。 少女の目尻がほんのり濡れると――男は素早く彼女のぷりぷりとした唇に唇を重ね、 自分の顔以外が見えないようにした――そして片手で、その頭を撫で回す。 艷やかな淡桃色の髪の川を、四本の指が櫂めいて漕ぎながらゆるりと下っていき、 後頭部の骨の丸みを確かめるように、柔らかく動いて――一時、現実を忘れさせる。 しかしそれも永遠には続かず、息継ぎのために離れた顔は、見てはならぬものを見て、 またすぐに、泣きそうな状態に逆戻りする――男は苦心しながら、 彼女の頬がじんわりと湿る程度の状態へと落とし込んだのであった。 落ちていた棒を、今度は男が摘み上げる。彼の視線を追うように少女は目線を上げ、 いくら見ても変わらない線の数をまた一から数えた――だがいくらか気が楽であったのは、 その事態の責任が、彼の側に移ったように感じたからであったろう。 男はあたかも、小刀でも弄ぶかのような手つきでそれをくるくると回す。 振ったところで変化はない。握ったところで変化はない。ただ指が躍るごとに、 少女は少しだけ、ずっしり沈み込んでいた胸が軽くなるように思った――けれど男は、 不意にその切っ先を、ぽってりした彼女の腹部目掛けて向けるのである。 たった一本の赤い線のせいで、そこに生る命一つ分の人生を、二人は担わねばならない。 少女はあまりに幼すぎた。肉体的にも、精神的にも。いくら若返りの結果―― 一度二十歳過ぎの男として育ってから、性と歳とをかき混ぜられて産まれたものだとしても、 どこか彼女は他人事だった――己の内にあるその生命にさえ。現実味が、ない。 男は追認するように、少女の下腹を水風船めいてぐにぐにと揉むのである。 無論その下――中、には、彼女の動揺の根源が既に胎盤を形成しつつあった。 舌と舌を絡めて。現実感を蕩かして。内から込み上げる熱に流されて。 二人はそれを見なかったかのように床に投げ捨てて、ただ相手の顔だけを見つめた。 肉体年齢相応の、手の平をほんのりと曲げさせるだけの膨らみは酷く柔らかく、 それに反して突端の桜色は、ぷっくりと盛り上がって艶々していた。 男の指はねちっこく、膨らみを揉み潰しては少女の喉から悲鳴混じりの嬌声を引き出し、 また指先では、乳首をぐにぐにとこね回して育てながら声の艶をより鮮やかにさせていく。 男の舌に絡められた舌は――より熱心に、いっそ依存的なまでに彼を求める。 丹念にほぐされた身体は、もはや内と外との区別を失ってしまう。 ほとんど自覚ないままに緩くなった尿道から、潮混じりの液体が噴き出た。 床に跳ねた雫のいくらかは、やはり赤い線を刻々と棒の上に刻むのである。 彼に言われるより先に、ごろんと寝転がった少女は己の腿を保持するように持ち上げて、 くっぱりと開いた鼠径部――その中心の鮮やかな肉色を見せつける。 濡れきった膣口には、もうわざわざそれ以上の何かをする必要性すらなかったのだが、 男はそれでも、右手の中指を根元までずっぷり埋めて、陰核を弾きながら具合を確かめる。 彼の形に最適化されたもの。彼の味だけを知って育ったもの。彼の子を宿すためにあるもの―― 少女の身体がびくびくと大きく痙攣し、喉から甘ったれた呼気の出るのを聞き届けると、 男はその下腹部をすりすりと撫で回し――その膨らみは単なる見間違いなのだと彼女に告げた。 できるはずがない、できているはずがない――そんな言葉を聞くにつれ、 彼女の中にあった不安はよりくっきりとした形を取り――彼の性器に轢き潰される。 胎の奥の奥まで、捻り込まれる雄の槍。自分の指や張り型などでは届かない、一番奥。 子宮の入り口を、ごつんごつんと叩かれて――視界がちかちかと明滅し、反転し、壊れる。 助けを求めて開いた口は、酸素を取り込むより先に彼の唇に強引に塞がれ、 雄臭い吐息を鼻の裏から逆流させるほどに吹き込まれ――酔う。 身体はほとんど反射的に、自分の身体を押し潰そうとする硬く大きな塊を跳ね除けようとする。 しかし同時に、相手はそれをさせない。柔らかな乙女の肉体が雄に抗えようか。 果たそうにも果たせぬ反射は――次第に、彼への適応へと新たな活路を見出す。 自ら彼の身体へと己を委ね、与えられる刺激と暴力的な抽挿とを、ひたすら受け入れる。 脳の中の回路が、壊れて、作り直されて、壊れて――おしまいに、なっていく。 頭蓋内の奔流に耐えきれず、少女の鼻先からはたらりと赤い雫が落ちるが、 それが却って、逆流する彼の吐息を塞ぐ形になって、雄の臭いを強く意識させるのだ。 今の、男なんかではない、女としての――貪られるだけの、雌の、身体。 まだ発育途上のはずの自分の肉体を、こうまで求められて抗えるわけがないのである。 小さな手で、男の背を抱く。きゅっ、とか弱いその力が、万力のように彼の精を搾り出す。 びちびちと、音どころか光景さえも明確に想像できるほどの、濃いものが放たれていく。 そしてその想像通りのものが、いくつもの塊に寸断されながら、膣口からこぼれ出てくる。 一塊抜けるごとに、小さな身体はびくんと震え、また次の塊を吐き出していく。 雄の精が雌の胎に吐かれた後、何が起こるか知らぬわけでもあるまいに、 二人はその光景を、あたかも他人事であるかのように見ているのだった。 そして現実味が戻ってくると、それはすぐにまた性欲に席を譲る。 硬さを取り戻しつつある彼のものを、少女の手が――あるいは舌が包んで刺激し、 ぴん、と天井を向くほどの角度にまで、すぐさま戻してやる。 何のためか?無論、それでまた胎の奥をほじってもらうためだ。 行為に溺れていれば――何も考えられないぐらいの快楽に流されていれば、 あんなちっぽけな棒の赤線一本きりを、怖がることもないのである。 悪い夢でも見たかのように、少女は彼に甘え――男は、その胎を遠慮なく穿つ。 その中にあるものごと、磨り潰して消えてくれと願うかのように。 けれど窓の外には日が昇る。すぐに沈んで、また昇り――二人の罪の徴は大きくなっていく。 丸々と実り、突かれて揺れるほどになってさえ――少女はそれを直視はしなかった。