「……東の国に、俺と共に布教に行きたい、と?」 ギルは疑わしげな声をあげた。 「そうです。ジュダさんの生まれた地方の国は、我らの信ずる神の教えが殆ど根付いてないようなのです。そのような地方へ赴き教えを広める事こそ我らの務め」 ギルは目を輝かせた。 「それはすごいな。だが……すまん。俺は棄教した身。宣教の旅はできん」 クリストは少し考えてから、続けた。 「ええ、ですので、ボディーガードとして貴方を雇いたい。何分タンク兼ヒーラーな身。仲間が欲しくて」 「ベンケイから聞いた話だと、向こうの国はホトケという神に誓い存在や、土着信仰が盛んなようです」 クリストは静かに言った。 「そんな中に我らが足を踏み入れれば、異端者として迫害されるかもしれんな」 ギルは笑った。 「望むところだ。その程度の覚悟なくして、信徒を得られようか、 神の教えを広められるなら、我々がどう謗られようがかまわんさ」 「イゾウ、この先も俺とともに戦ってくれるか? 危険があるのは、クリストの説明したとおりだ」 ギルの顔から笑みが消えていた。 「聞くまでもないだろう」 イゾウは豪快に笑った。 「クリストの言う難しいことはよく分からんが、 俺はお前を信じるだけだ。ミサも俺の判断に任せると言った。それで十分だろう」 3人は、互いに微笑をかわし、一気に盃を空けた。 「つええ相手やスリル満載の旅なんだろぉ?望むところだぜ!」 ジャンクの答えは簡単だった。 「我らの旅は神の教えを広める旅。貴女も説教してもらいますよ」 クリストは茶化すように言った。 「ふん、なら相手を選ぶだけだ。純粋に戦いだけを求めている奴、狂犬や怪物のような奴を拳で説教(ワカラセ)してやるさ。オレの時みたいになぁ!」 ジャンクの大きな笑いが響く。 「私は邪魔なの?クリスト」 イザベラの目は、みるみるうちに涙で一杯になった。 「クリストは君の身を案じているだけだ。邪魔だなんて思ってはない」 ギルの慰めも、火に油を注いだ。 「サーヴァインさんまで、私を除け者にするのね。ひどい、ひどいです。ここまでクリストと一緒に来たのに」 こうなると止めようがないのをクリストはよく知っていた。 「ギルさん、イザベラ様も仲間に入れられませんか?」 「どうして私に声を掛けないのですか?」 ギルとクリストは顔を見合わせた。 「君はこういうことには興味がないと思いましたから……」 クリストの言葉をカタリナ・イーネは遮った。 「あなたたちの人選は明らかにミスです、戦略に欠けています。ジャンクさん、イゾウさんは力が強いだけですし、宣教の旅というならイザベラさんの必要性は……ゼロです。このグループには私のような頭脳が必要とされています。あなたにはには分かりますよね、ギルさん」 「私を置いていかないでくれ!」コージンは叫んだ。 「はっ、さっさと国に帰れ親不孝者が。オルァァァン!!?」ジャンクは軽蔑して唾を吐いた。 「貴方を連れていくと外聞が悪くなります」カタリナは相手にしなかった。 「じ、自分の立場わ、わかってます?」イザベラは気味悪がった。 「さっさと両親に頭下げに行けよ」イゾウは厳しく言った。 「お前はレンハートに帰れるだけの功績は十分に挙げた」ギルの優しい声には拒絶があった。 「頼むよ。私も一団に入れてくれよ」コージンはクリストにすがりついた。