//愛しいあなたにオレンジを 「一つ、お話でもしましょうか」 ベッドの上に2人、仰向けに寝転がりながら、共犯者が語る。 「人間の反応は複雑に絡み合っていますが、一つ一つ解いていけば理解することは可能です。そうですね、ではある反応を例にとって説明してみましょうか」 ピロートークには似つかわしくないような、それでも彼女らしいような気もする切り出し方。私は、彼女のそういうところも気に入っているのかもしれない。 「まず最初に、ある種の視覚的、身体的、あるいは精神的刺激によって脳内のある中枢が活性化され、血管が拡張されます。これによりある部位は充血し、またある部位は湿潤し……となるわけです」 前言撤回、これは確かにピロートークに相応しい内容かもしれない。 ちょっと生々しいけれど、たまにはこういうのも… 「この刺激は同時に近傍の神経系にも影響し、継続すると全身の筋肉が硬直したり、呼吸が荒くなったり、体温が上がったりもするわけです」 …と思っていると、段々と彼女の息が荒くなる。それこそ先ほどまでお互いそうであったように、あるいは今彼女が語っている内容の通り。 「この神経系への影響はまた脊髄の反射中枢にも伝わり、これが一定の閾値を超えて繰り返されると、突然、っ!」 呼吸はどんどん速く、浅くなり、声も震えだす。まるで何かを期待するように、何かを耐えるように。その度合いもまた段々と激しくなって… 「…はぁ……全身の筋肉が一気に弛緩しつつ、一部の筋肉のみが0.8秒程度の周期で痙攣し、同時に特定の脳内物質が放出される……」 蕩けるような湿った声色、私の好きな彼女の声が響いて… 疲れて判断力の落ちていた私の頭が、ようやく違和感に気付く。 「この一連の反応のキモはこの特定の反射中枢に届く刺激が閾値を超えることで、ココを別の手段でトリガー出来れば、その後の筋肉の痙攣と弛緩、脳内物質の放出も連動して行われるわけです。」 彼女の手は、最初から最後まで両方とも見えていたし、下半身もそれ以外も、そういった箇所を刺激していた様子もない。 なら、彼女はどうやって…と考えが至った時、彼女がその答えを口にした。 「ところで、わたしたち魔法少女はソウルジェムからの操作により随意運動として可能な範囲を超えて自在に肉体を操作出来ます。例えば、『特定の反射中枢に対し強力な刺激を、それこそ手足を動かすのと同じように繰り返し送信可能なダミー神経回路』を造成する……とか」 ぺろり、と唇を湿らせた彼女の舌の艶めかしさが、却って何か目覚めさせてはいけなかったものを目覚めさせてしまったのではないかという懸念を抱かせる。 「そしてもう一つ、サイオニックエミュレータ技術の発展とテレパシークラスタの意図的な増設により、『特定の神経系を遠隔かつ当人の意識とは無関係に起動可能なリモコン』も……まぁ対象の肉体に専用の受信アンテナとなるクラスタが増設されていれば、作れちゃったりするわけです」 そしてそれに興奮してしまう私自身の罪深さと、この度し難さを抱きしめてどこまでも沈みたくなるこの想いも。 「……ふふ。流石に、ここまで説明すればピンときたみたいですね」 それを受け取ってはいけない。 続く申し出を、容れてはいけない。 「はい、どうぞ。ほむらちゃん専用の、『いつでもどこでも観測者ちゃん強制絶頂スイッチ』です。満員電車の中?登下校中?買い出しに向かったお店とか?ただし戦闘中はやめてくださいね。安全装置とか用意してないので」 いけないことだからこそ、私はそれを手に取った。 カチッ…カチカチッ! 「んっ、あぁぁあっ!……早速、っ!容赦が…ないですねぇ……ほむらちゃん」