サンク・マスグラード帝国のある日、王宮内に魔法で作られた一室に皇帝レストロイカを中心に彼を慕う女性たちが囲っていた。 「さて陛下、今日という今日こそは私たちから逃げる理由をお聞きしたいと思います」 そう話すのは直属の部下であるメリア。彼女の言葉に対し頷くのは同僚のセターと彼の武器である血錆の乙女、ウァリトヒロイ王国王女シュティアイセ、ノースカイラム国王テオクラシアの4人。 「あの…アタシも陛下のこと好きだから…気持ちに応えてほしいっていうか…」 「童貞拗らせるのもいい加減に観念して気持ちにわしらの気持ちに応えるべきじゃぞー?」 「僕だってレスのこと好きなのに逃げてばっかりなんだから困るんだよねぇ…」 「わたしは陛下の気持ちに整理がつくまで待てますけど…皆さんの想いには応えるべきだと思いますよ…?」 ひとり、またひとりと順番に想い人である彼に対して言葉で追い詰める。 「…まだ、まだ国が落ち着いてないから…民が…」 レストロイカはそう答えるが、5人は「それは何度も聞いて(います/おる/るよ)」と返し、レストロイカは縮こまる。 「だが…だがそれでも!俺には民の幸せを優先しなければならない!!!」 5人の圧に一度は縮こまったレストロイカだが、己の内の強迫観念が彼を強く訴えさせた。 逆臣による民草の犠牲。命を奪われた者、家族を失った者、在り方を狂わされた者。この国の内情を知る者にあの惨劇を知らぬ者はいない。 彼があの惨状にひどく心を痛めていることを知るメリアやセター、乙女、テオクラシアの4人は口を噤むしかなかった。 「なら尚のこと、おぬしが幸せにならなければ民草は幸せにはならんぞ?」 だが、この沈黙をシュティアイセが破った。 「おぬしが国の頭だからこそ一番初めに幸せにならんだら、だーれも幸せにならんぞ?」 その言葉にレストロイカは唖然とするがティアは言葉を続ける。トップが悲しんでいるばかりでは下の者も悲しまなければならない。たとえ喜ばしい出来事があっても、トップが悲しみ続けていれば、周囲はそれを不謹慎だと咎めてしまう。前にならえの法則は単純ゆえにその効力は強いと。 「いい加減分かったじゃろ?おぬしが明るい話題を作って真っ先に笑顔を見せるべきなんじゃよ?」 レストロイカに満面の笑みを見せながらそう言うティア。 「ティア様の言う通りですよ…!」「うん、アタシもそう思う…」「レスは真面目過ぎるからね…」 3人もティア同調し、レストロイカの手を取った。そして血錆の乙女が彼を抱きしめ 「貴方があの惨劇に心を痛めていることは私にもわかります…ですが、だからこそ、少しは自分が幸せになることを許してあげてください」 暖かく優しい声色で、そう伝えた。 「よーしこれで心の問題は解決したのう!それじゃあわしら全員抱かれるとするか!!!」 「は…?」 ティアの突然の発言に5人のしんみりとした空気が吹き飛ぶ。乙女に抱きしめられているレストロイカは唖然とする。いや何言ってんだお前と言わんばかりに彼の口が開く。 「順番はそうじゃな…まずは乙女からじゃな!!!抱きしめとるからのう!!!」「へっ!?!?!?!?」 ティアはレストロイカを無視して勢いのまま、彼に抱かれる順番を決める。トップバッターに選ばれた乙女は驚きながら顔を紅潮させる。 「次はそうじゃの…」「私っ!!次は私でっ!!!」「あっずるいぞメリア!?アタシだって陛下にぎゅってされたい!!」 ティア主体の順番決めにメリアとセターが激しく主張を始める。 「お、おう…じゃあ…」「悪いけど、2番目は僕が貰うよ?」 2人の圧に怯むティア。その隙にテオクラシアがレストロイカの手を取り自身の頬に当てる。 「「あっ!!!」」「1番目は流石に両想いの彼女に渡すけど、僕だって何年も前からずっと我慢してたんだよ?そのくらいはいいだろ?」 テオクラシアはレストロイカと腕に絡め合わせ、手を重ねながら恍惚とした彼の手に頬擦りした。 「…流石にわしも色々我慢しとるんじゃよ?なのにこうも勝手に決められるのは心外なんじゃが?」 主導権を奪われ始めたティアも怒りを滲ませる。彼女も彼女でレストロイカとの交流で想いを募らせていたのだ。ティア、メリア、セターが睨み合い始める。 「いや、あの、俺の意思は」「「「(おぬし/陛下)は黙っ(とれ/てて)!!!」」」 呆気取られていたレストロイカも正気を取り戻し、自分を無視して進む己との性交の順番決めに困惑しながらも口を挟むが、3人は怒鳴り黙らせた。 数秒間の睨み合いの後、女の戦いが始まった。 3人はあーだこーだとレストロイカへの想いの丈を叫ぶ。くっ付いていた3人は彼女たちから少し離れ、争う3人をどうなることかと見守る。 口論は続く。まだ続く。まだまだ続く。…この時レストロイカはふと思った。あれこれ逃げれそうだな?と。 彼が彼女たちを娶らないのは前述していた国の復興が一番の理由だが、彼自身がなんかちょっとこう…精神的な覚悟がまだ決まってないというか…という、あんまりにも童貞拗らせまくって情けないそれがあった。積極的にナンパをしてなぜか男の娘ばっかり引き当てる某冒険者の爪垢を煎じて飲ませるべきだろう。 それはそうと彼の行動は早かった。両隣にいる乙女とテオクラシアの隙をついて鋼の魔法を発動させ、数瞬の内に部屋の壁を断つ。切り刻まれる壁の音に呆気にとられた2人をよそに、彼は刻まれた壁を蹴飛ばし駆け抜けた。 「「「「「…あーっ!!!!!」」」」」 口論を続けていた3人も崩れる壁の音に振り返り、口をそろえ叫んだ。帝国を継ぐ子が生まれるのはいつになるやら。