肆號の斬りつけをスヮリはごんぶとの尻尾で弾き飛ばす。丸腰になった状況で肆號はつぶやく。 「舐めプ、止めろか…」 両手両足から4本の刀身が伸びて出る。 「私の本気、見せる」 それまで使っていた鉈型の聖剣と比べたら細身で頼りないが、手足に直接接続されているため体術との相性は実に良かった。 肆號の連撃をスヮリはガードをしながら耐える。そうしながら反撃の機会を伺っていると、肆號の右腕の切り付けをガードした際に異変に気づく。 「あれ?!なんか動きが鈍いにぃ…」 「この右腕の聖剣の銘は『慈悲』。痛みは与えない、でも全身を麻痺させる。」 肆號の突きをスヮリは尻尾のカウンターで叩きつける。 「スヮリはこんぐらいじゃへこたれないもんにぃ☆」 尻尾の連撃でガードを崩させると、スヮリゲーターは肆號の体を抱え飛び上がって叩きつける。 「スヮリーんジャンピングスラム☆」 要はただのボディスラムなのであるが、飛び上がって敵の体を抱えたまま巨体の体重を叩きつけるため下手なスープレックスよりも効き目がある。 「これで終わったにぃ…☆」 派手な投げ技を決めてこれで一安心したスヮリへ強烈なカウンターが来る。 肆號の右足から生えた剣がスヮリゲーターに刺さった。 「何で…全然効かなかったにぃ…」 全身を貫く激しい苦痛にスヮリはのたうち回った。 「右足の聖剣の銘は『共感』。私への攻撃の痛み、全て返せる。私は無痛症、反応あるとダメージどれだけか分かる。とりあえずありがとう…」 左腕に付いている『希望』の聖剣を掲げる。そこに見えているビジョンは目の前にいるスヮリゲーターが沈黙している姿だ。 「未来見えた、これで止め」 肆號は両腕の聖剣を構え、『共感』由来の激しいダメージで動けなくなったスヮリゲーターへ止めを差そうとする。 すると二人の間に割って入る者があった。人造勇者終號ことシュウである。 彼は右腕を前に出し、こう叫んだ。 「反転!」 肆號が斬りつけようとした両腕の聖剣が弾き返され、二つの刃が自らの首元へ向かってくる。 この致命的な状況に半ば諦めかけた瞬間、肆號の首元を裸締めの要領でガードをする者があった。 それは先ほどまでシュウと戦っていた漆號である。 「大丈夫か?お前は俺と違って命は一つしかねぇんだから、あんなヤベー奴とは張り合うんじゃねぇ!」 「お前に助けられるの、むかつく。あいつ、何したんだ?」 「よくわかんねぇがカウンター魔法に近い能力らしい。考えなしに斬りかかると全部自分に帰ってきちまう」 どうやら『慈悲』に斬られた影響で、漆號は少しよろけながら敵の能力について説明をする。 状況は2vs1と不利ではあるが能力の相性的に実質1vs1ともいえる膠着した状態となっていた…。    *   *   *   *   * 幾合刃をぶつけ合ったのだろうか…、そんなことも思い出せぬほどライトと陸號の二人は激しく斬り合っていた。 「僕みたいな人工物じゃない刃を腕から生やすなんて、君絶対人間じゃないよね。ひょっとして魔族?でも見た目は普通の人間なんだよなぁ…」 陸號はライトの正体について探りを入れる。ライトは完全無視で相手にはしない。 「まぁ何だかよく分からないけど、君から美味しそうな臭いがした理由が分かったよ。生き物には格のような物があって雰囲気で分かるんだけど、君から漂ってる雰囲気は例えるならドラゴンなんだよね。だから早く食べたいんだ…」 当てずっぽうではあるが決して的外れではない。これにはライトも反応をする。 「何か言ってることキモいよ。女の子誘うんだったら、品のない露骨な言葉は使わない方がいいよ」 ライトの返しに陸號は笑い出す。 「そっかー。じゃあキモがられついでに僕の話をしてもいいかな? 僕はこの聖剣を腕に取り付けたせいで普通の食事じゃ満足できなくなっているんだ」 「でもね飢えっていうのかな。そんな感覚だけは残っているせいでいつも満たされない気持ちなんだけど、魔族や魔獣の血をこの刃に吸わせている時だけは幸せな気分になれるんだよ。相手が強ければ強いほど美味しい!って感じちゃうのさ」 「だからさ…早く僕に吸わせてよ…君の血を!」 陸號は高速で詰め寄り、ボクシングのワンツーの要領で突きを放つ。ライトはそれを腕の刃を使って払いのけた…。    *   *   *   *   * 女神像の前でミレーンと人造勇者弐號が対峙する。大剣を構えた弐號をミレーンは観察する。 「(あの体格に機械化された腕、おそらくパワー型であることには間違いないだろう。問題は他の連中のように何らかのスキルを持っているかどうかだ。仮にあるとすればあの腕か…。何らかのギミックが仕込まれていても不思議ではない)」 「(あの剣も聖剣であろうから打撃戦は無理。距離を詰めて近接戦闘に持ち込むしか方法はないな…)」 戦いのプランが決まるとミレーンは早速動く。弐號の周囲を素早く回ると建物の壁の反動を使った飛び蹴りを入れる。すると思わぬことが起きた…。 飛び蹴りは弐號に届かなかった。まるで見えない何かに遮られているようであった。 「防御障壁か…厄介だな。まずはどれぐらい固いのか小手調べだ!」 強化した両の手足でパンチとキックのコンボラッシュを入れるが破れる様子は全くない。 ならばどこかに隙間はないか調べるために、認識阻害を使い弐號の周囲を回る。崩れた床面の欠片を数個拾うと横や背後から投げつけるが障壁に弾かれてしまう。 欠片を弐號の上に向かって投げると、欠片は弐號の目の前の床に落ちる。どうやら上面は隙間が開いているようだ。 認識阻害をかけたまま天井の梁へと上って行く。そして弐號を見下ろす位置まで行くと手を放し認識阻害を解いてドロップキックを仕掛ける。すると弐號は顔を見上げてこう言ったのだった…。 「かかったな…」 中空で俺の体全体がまるで何かに挟まれるような感覚になる。 いや感覚だけでない、実際に挟まれているのだ。その証拠に俺の体は落下せず、宙に浮いたままになっている。 しまった…上部に隙間を開けていたのはこれを仕掛けるための罠だったのか…。 弐號は胸元で両の拳を突き合わせるような仕草をしている。 その間には何か弾力のあるようなものが挟まれたみたいに、行って戻ってを繰り返す。 そしてその動きが加えられる度に、俺を挟みこむ力が強くなる。 拘束から必死に逃げようとするがプレスする力は非常に大きく、ふんばりの効かない体勢も相まって動くことすらできない。 「アイゼンバイス!」 弐號が両拳を完全に突き合わせるとプレスする力は最大限になり、俺は完全に意識を失った…。    *   *   *   *   * 弐號がミレーンへの拘束を解くと、ミレーンの体は地面へと落下する。そして傍らにいた獣人たちが彼の体を確保する。 ライトは周囲を見渡す。ミレーンは囚われ、スヮリはダメージで全力を出せず、シュウは無事なものの仕掛けるための攻撃力には不足している。ならはここで取るべき策は…。 「みんな撤退だ!ここから一度撤退します!」 ライトが苦渋の決断を下す。 「しかしドラゴンくん、ホーリーナイトは?!」 「今ここで粘っても全員お陀仏です。だから一度引きます。いいですね!」 ライトの意を決したような力強い言葉に全員決意を固める。 「せっかくの獲物だよ、逃がすわけないでしょ」 距離を詰めようとする陸號に向かって、ライトは真空波を数発飛ばして距離を取る。 シュウはスヮリを抱えて逃走を図るが肆號が追いかける。巨体のスヮリを抱えてはスピーディーに移動できないシュウの目の前へ肆號が回り込もうとする。 するとライトは肆號に向って真空波を叩きつける。敵を切り裂くには威力は足りないが、とにかく数を撃って距離と時間を稼ぐのが狙いである。 一行はスヮリとシュウが乱入してきたルートを使って逃走する。追跡者が来れないようにブレスと刃でご丁寧に道を塞ぐ。 20分ばかり逃げ回り、追手も来る様子は見えなかったので一旦休憩を取ることにした。 「何とか逃げ切れましたね…」 「だがミレーンくんは捕まってしまった。とりあえず逃げてみたが、君は心配ではないのかね?」 「心配に決まっているじゃないですか。でも共倒れは本末転倒ですし、おそらく簡単には殺されたりはしないと思います」 「それはどういう根拠かね?」 「奴らが知りたいのまず情報です。情報を聞き出すために尋問をするでしょうから、少なくとも今日明日で殺されるようなことはないと思います」 以前ジーニャが黒い甲冑たちに捕らえられた時、ミレーンは価値のある者はそう簡単に殺されはしないと不安がるラーバルへと説いた。 事情は全く違うが恐らく今回も扱いは変わらないであろう。とはいえゆっくりしている場合ではない。 「スヮリさん、体の具合はどうですか?」 「もうすっかり回復したにぃ☆ スヮリが足引っ張ったみたいでごめんにぃ…」 「あの状況じゃ仕方ありません。じゃあ行きましょうか…」 「行くってどこへだい?」 「もう一度奴らの元へです。アイツらもまさかさっき逃げた連中がすぐに帰ってくるなんて想定してないでしょうから」 (続く)