積み上げられた紙の束から、微かなインクの匂いが漂ってくる。 換気扇の回る低いモーター音と、誰かの呼吸、そして、紙の上を走るペンの摩擦音だけが、少しだけ温度の高い室内を満たしていた。カリカリ、という乾いた音が、規則的なリズムを刻んでは止まり、また思い出したように鳴り始める。 「…………」 梅組所属の男子生徒、ユウジは、手元の原稿用紙に視線を落としたまま、大きく息を吐き出した。右手の指先から手首、前腕にかけて、鉛のような鈍い疲労感がこびりついている。何時間ペンを握り続けているのか、すでに時間の感覚すら曖昧になりつつあった。 視界の端で、黒い羽根が微かに揺れるのが見えた。 机の向かい側で作業に没頭しているのは、マルガ・ナルゼだ。彼女の背に生えた六枚の黒翼が、主の集中力に呼応するように、時折ピクリと反応しては静まる。艶やかな黒髪の隙間から覗く横顔は、普段のひねくれた態度からは想像もつかないほど真剣そのもので、鋭い眼差しが原稿の細部を容赦なく睨みつけていた。 カリ、カリカリ。 ナルゼのペン先が滑る音は、ユウジのそれよりもずっと速く、迷いがない。彼女の指先が紙の表面を滑るたび、カサッという微かな音が響く。その音を聞くたびに、ユウジの内に溜まっていた鬱屈とした感情が、じわじわと喉元までせり上がってきた。 「……なぁ、ナルゼ」 無意識のうちに、低く掠れた声が漏れる。 ペンを動かす手を止めることなく、ナルゼは視線だけをスッと上げた。黒曜石のような瞳が、冷ややかな光を帯びてユウジを射抜く。 「なんだい。手が止まってるよ、ユウジ。ベタ塗りの指定、そこだけじゃないんだからね」 ぶっきらぼうな口調。男勝りで、有無を言わせないその声のトーンに、ユウジは眉間を寄せた。彼女の背中の黒翼が、苛立ちを示すようにふわりと広がり、すぐにまた元の位置に収まる。その僅かな空気の動きが、ユウジの前髪を微かに揺らした。 「俺だって今回の同人の原稿まだ終わってねえんだけど、何だってお前のアシやらされてんだか……」 とうとう堪えきれずに、ユウジは口を尖らせて愚痴をこぼした。握りしめていたペンをコトリと机に置き、凝り固まった肩を回す。骨が小さく鳴る音が、静かな部屋に不自然なほど響いた。 自分自身の原稿の進捗を思い出すと、胃の奥がギュッと締め付けられるような焦燥感に駆られる。それなのに、なぜ自分はここで他人の原稿のベタやトーン貼りに精を出しているのか。 ユウジのその言葉を聞いた瞬間、ナルゼのペンの動きがピタリと止まった。 彼女はゆっくりと顔を上げ、細められた瞳でユウジをじろりと睨みつける。その視線の鋭さに、ユウジは思わず身を固くした。 「アシ代は出してるんだからいいでしょう」 冷徹な事実確認のように、ナルゼは淡々と言い放つ。しかし、その声の奥には微かな優越感と、からかいの色が滲んでいた。 「それに、あんたのはどうせ今まで上げてたイラストのまとめ本じゃない」 図星を突かれたユウジの肩が、ビクッと跳ねる。 ナルゼはふっと鼻で笑い、ペンをクルリと指先で回した。彼女の細く白い指の動きが、妙に滑らかで目を引く。 「既存の絵をまとめてポンッと出すだけの作業と、一からストーリーを構築して描き下ろす私の原稿。どっちの優先度が高いかは、火を見るより明らかだよ。だから、君のその暇な時間と労働力を、私が有意義に買い取ってあげてるんじゃないか」 「うっ……」 ユウジは言葉に詰まり、視線を泳がせた。彼女の言う通り、今回の自分の新刊は、これまで描き溜めてきたイラストをまとめた再録本に近い。作業量としては、ナルゼの新作漫画の比ではないのは確かだった。 その時、ふわりと、甘い紅茶の香りが二人の間に割り込んできた。 「はいはい、二人とも。お仕事中ご苦労様だよね」 とろけるような、ふんわりとした柔らかい声。 振り返ると、そこにマルゴット・ナイトが立っていた。金色の美しい髪が、歩くたびにサラサラと揺れる。彼女の背中の六枚の黄金の翼が、室内の明かりを反射して淡い光を放っていた。 ナイトは手にしたトレイを机の空きスペースにそっと置いた。二つのマグカップから、温かな湯気が立ち昇る。カップが置かれた時のコトリという音が、部屋の張り詰めた空気をふっと緩ませた。 「ガっちゃんもユウジ君も、ちょっと休憩しよ? ナイちゃんがとっておきの紅茶淹れてきたからさ」 ナイトはニコニコと微笑みながら、ナルゼの背中に背後からそっと抱きついた。豊かな胸の膨らみが、ナルゼの背中にむにゅりと押し付けられる。 「ちょっと、ナイ。重いよ……。今、いいところだったのに」 ナルゼはぶっきらぼうに文句を言いながらも、その声には先ほどまでの刺々しさはない。頬をほんのりと赤く染め、満更でもない様子でナイトの腕の感触を受け入れている。彼女の黒翼が、ナイトの黄金の翼と触れ合い、サラリと擦れる音がした。 「えへへ、ガっちゃんは頑張り屋さんだからねー。でも、ユウジ君も手伝ってくれてるんだから、あんまりいじめちゃダメだよね?」 ナイトはナルゼの頬に自分の頬をすりすりと擦り寄せながら、ユウジの方へウインクを投げる。その屈託のない笑顔と、圧倒的なまでのマイペースさに、ユウジの毒気も抜かれてしまう。 「別に、いじめてるわけじゃないさ。ただの事実を述べたまでだよ。ねえ、ユウジ?」 ナルゼが視線を横に滑らせ、再びユウジを捉える。その瞳には、完全な勝利者の余裕が浮かんでいた。 ユウジはマグカップに手を伸ばし、その温かさに逃げ込むように視線を落とした。指先に伝わる熱が、冷え切っていた手先をじんわりと温めていく。 「いや……」 ユウジは喉をゴクリと鳴らし、言い淀む。 「2、3枚くらいは、最低限書き下ろしするし……」 マグカップの縁を見つめたまま、誰にともなく言い訳を呟く。声はどんどん小さくなり、語尾はほとんど空気に溶けて消えた。完全に目を逸らして呟くその姿は、自らの敗北を認めているも同然だった。 「ふうん? 2、3枚『くらい』ね」 ナルゼは口角を僅かに上げ、意地悪な笑みを浮かべた。 「なら、その2、3枚が終わったら、またうちの原稿の背景、手伝ってもらおうかな。何せ、まとめ本ならすぐ終わるんだろう?」 「鬼かお前は……!」 ユウジは思わず顔を上げ、泣きそうな声で叫んだ。 「あははっ、ユウジ君、ファイトかなあ!」 ナイトの明るい笑い声が、インクの匂いが立ち込める部屋に響き渡る。 カリカリ、と。 ナルゼは再びペンを走らせ始めた。その音は先ほどよりもリズミカルで、どこか弾んでいるようにさえ聞こえる。 ユウジは大きなため息を一つ吐き出すと、冷めた紅茶を一口飲み込み、再び黒く塗りつぶすべき原稿用紙へと重い腕を伸ばした。窓の外から聞こえる微かな風の音が、彼の哀れな労働のBGMのように、静かに部屋の片隅で鳴り続けていた。 部屋の中は、じっとりとした熱気と、噎せ返るようなインクの匂いで満たされていた。 カリ、カリカリ、サッ。 紙の表面を金属のペン先が削る乾いた音だけが、等間隔に響き続けている。換気扇の低い唸り声が、その作業音の背景として単調なリズムを刻む。梅組所属の男子生徒、ユウジは、眼前に積まれた原稿用紙の束と格闘しながら、重くのしかかる疲労に息を吐き出した。肩から首にかけての筋肉は硬く強張り、指先はペンの形に固定されてしまったかのように強張っている。 そんな単調な作業の静寂を切り裂いたのは、向かいに座る少女の、唐突すぎる一言だった。 「ねえユウジ、あんたちょっと脱ぎなさい」 ピタリ。 ユウジの手元で、Gペンの動きが完全に停止した。紙に落ちたインクが、じわじわと黒い染みを広げていく。 (……は?) 頭の中に、巨大なクエスチョンマークが浮かび上がった。自分の聴覚が、疲労のあまり幻聴を拾い上げたのではないかと疑う。ユウジは視線を上げることなく、数秒間そのまま硬直した。そして、何も聞こえなかったかのように、再びペンの柄を強く握り直す。 カリカリ、カリカリカリ。 先程よりも意図的に大きな音を立てて、ユウジは原稿作業を再開した。触らぬ神に祟りなし。そう、これはきっと極度の疲労が脳に見せた幻だ。 バンッ! その逃避は、机を激しく叩く物理的な衝撃によって無惨にも打ち砕かれた。インク壺がビクッと跳ね、水面が黒く揺れる。 「ちょっと、無視してんじゃないわよ」 不機嫌極まりない、ドスの効いた声。 ゆっくりと顔を上げると、そこには六枚の黒翼を苛立たしげに震わせるマルガ・ナルゼの姿があった。黒曜石のような鋭い瞳が、逃げ場を塞ぐようにユウジを射抜いている。艶やかな黒髪の奥で、彼女の眉間には深い皺が刻まれていた。 ユウジは、ペンを静かに置いた。そして、狂人を見るような、どこまでも同情に満ちた生温かい視線をナルゼへと向ける。 「締め切りのせいで、ついに頭がおかしくなったか……」 哀れみを込めた声で呟く。同人誌の締め切りという魔物は、時として人間の理性を根こそぎ奪い去る。今のナルゼは、まさにその末期症状に陥っているのだとユウジは結論づけた。 しかし、ナルゼは冷たく鼻で笑い、腕を組んだ。彼女の豊かな胸が、その動作によって制服の生地越しにむにゅりと形を変え、圧倒的な質量を主張する。 「失礼なこと言わないでくれる? 私は至って正気だよ。男の裸の筋肉とか骨格の資料を探すのがめんどくさいの。なら、ちょうど野郎がここにいるんだから、それ生で見た方が、資料にするよりずっと早いじゃない。合理的だろ?」 淡々と、ひねくれた口調で論理を展開するナルゼ。その眼差しは、美術品や石膏像を品定めする彫刻家のそれと同じ、完全な観察者の冷徹さを持っていた。 「あのね、俺にも羞恥心とかあるからね!?」 ユウジは思わず身を乗り出し、抗議の声を上げた。いくら友人であり、作業を手伝わされている身とはいえ、急に服を脱いで裸になれと言われて、はいそうですかと従えるはずがない。 ナルゼは組んだ腕を解かず、ただ一言、悪魔のような囁きを放った。 「アシ代、上乗せするわよ」 その瞬間、ユウジの思考回路に強烈なノイズが走った。 (……上乗せ) 脳内で、財布の中の寂しい残高と、欲しかった画材の値段が弾き出される。羞恥心と金銭的欲求が、天秤の上で激しく揺れ動く。 「ふぅー……」 ユウジは、肺の中の空気を全て絞り出すように、長く、重いため息を吐いた。 「しゃあねえなあ。作画資料の為なら、仕方ない。そう、これはあくまで作画資料の為だから。謂わば、芸術の為の献身……芸術無罪だから」 誰に対する言い訳なのか、自分自身を納得させるようにブツブツと呟きながら、ユウジは立ち上がった。 カチャッ。 ベルトのバックルに手をかけ、金属が触れ合う硬質な音を響かせる。ジジジジッ、とジッパーを下ろす鈍い音が、静まり返った部屋にやけに大きく響き渡った。 布地が肌から離れる、擦過音。バサリ、とズボンが床に落ちる。続いて、上着のボタンを外し、シャツを脱ぎ捨てる。空調の風が直接肌に触れ、ユウジの表面の産毛がゾワリと粟立った。 「うわー、ユウジ君、ちょっろいねえ」 ふんわりと甘い、とろけるような声が背後から降ってきた。 振り返るまでもなく、マルゴット・ナイトだ。黄金の六枚の翼を揺らしながら、彼女は楽しげに目を細め、ユウジの半裸の姿を眺めている。その豊満な胸元を揺らしながら、からかうような視線を向ける彼女の存在が、ユウジの羞恥心をさらに煽り立てた。顔面が一気に熱を持ち、耳たぶまでがカッと赤く染まるのが自分でもわかる。 男のプライドをかなぐり捨て、下着一枚の姿で立ち尽くすユウジ。その視線の先で、ナルゼは新しい原稿用紙を引き寄せ、ペンを構えた。 「ああ、そうだ」 思い出したように、ナルゼが口を開く。その視線は、ユウジの顔ではなく、彼の下腹部、薄い布地で覆われた中心部分へと容赦なく固定されていた。 「あんたのアレが、大きくなってない状態を資料にしたいから。いくらあたしとマルゴットの美人2人に見られてるからって、変に興奮して大きくするんじゃないわよ。シワの寄り方とか、縮こまってる時の重力感とか、そういうのが描きたいんだからさ」 事も無げに、極めて事務的なトーンで放たれた言葉。 ユウジは、自身の股間へと集中する二人の少女の視線に、身をすくませた。ナルゼの黒曜石のような観察眼と、ナイトの面白がるような黄金の瞳。相反する二つの視線が、物理的な質量を伴って自分の急所を撫で回しているような、強烈な錯覚に襲われる。 普段は布の奥底に隠されている、男としての脆い部分。平常時のそれは、血の巡りも少なく、頼りなく縮こまっている。色彩も周囲の肌より一段濃く、しわくちゃに萎縮したその無防備な肉の塊の形状を、彼女たちは今、明確に想像し、透視するかのように見つめているのだ。 見られているという事実だけで、下腹部にツンとした微かな緊張感が走る。血流が集中しようとする本能を、ユウジは必死に理性の力で押さえ込んだ。ここで少しでも形を変えれば、さらなるからかいの標的にされるのは目に見えている。 (こいつ、自分で美人とか言ってやがる……) ユウジは、赤面した顔を引きつらせながら、心の中で全力のツッコミを入れた。 確かに、黒髪に黒翼のナルゼも、金髪巨乳で黄金の翼を持つナイトも、客観的に見れば息を呑むほどの美人であることは間違いない。しかし、その顔面偏差値の高さと反比例するように、彼女たちの要求はあまりにも遠慮がなく、そして凶悪だった。 「ほら、じっとしてなよ。少しでも動いたら、デッサン狂うだろ」 ナルゼのペン先が、カリッ、と紙の上を滑り始める。 ユウジは、ただ無言で天井を仰いだ。肌を撫でるエアコンの冷気と、二人からの熱を帯びた視線。その奇妙な温度差の中で、彼の哀れなモデル労働は、いつ終わるとも知れないまま幕を開けたのである。 カリカリ、ササッ。 金属のペン先が、規則的に原稿用紙の上を滑る音だけが室内に響き渡る。 エアコンから吐き出される冷たい風が、下着一枚で立ち尽くすユウジの肌を容赦なく撫でていく。露出した腕や太ももには粟粒のような鳥肌が立ち、体温がじわじわと奪われていくのを感じていた。しかし、それ以上に彼を苦しめていたのは、正面から突き刺さる二つの鋭い視線だった。 ナルゼの黒曜石のような瞳は、まるで精密機械のようにユウジの股間――下着の薄い布地越しに形を成す、しわくちゃで無防備な中心部を冷徹に観察し、手元の紙へとその形状を写し取っていく。隣に立つナイトもまた、黄金の瞳を細めながら、興味津々といった様子でユウジの萎縮した部分をねっとりと眺め回していた。 (早く……早く終わってくれ……!) ユウジは天井のシミを睨みつけながら、心の中で血の涙を流していた。少しでも動けば「デッサンが狂うじゃない」とナルゼから容赦ない罵声が飛んでくるため、微動だにすることもできない。羞恥心で全身の血が沸騰しそうになる一方で、下腹部だけは冷気と緊張で縮み上がっているという、極めて屈辱的な拷問のような時間が続いた。 やがて。 スッ、とナルゼのペンの動きが止まった。 「……よし、こんなものね。必要なアタリは取れたわ」 彼女は原稿用紙から顔を上げ、小さく息を吐きながらペンを置いた。その声には、一つの作業を終えた満足感が滲んでいる。 「もう服を着ていいわよ、ユウジ。ご苦労様」 その言葉は、ユウジにとってまさに天啓だった。 「っ……!」 ユウジは弾かれたように動き出し、床に脱ぎ捨ててあったズボンへと飛びついた。ガサガサと乱暴な音を立てて両脚を突っ込み、ジッパーを一気に引き上げる。続いてシャツをひったくるように手に取り、震える手で袖を通し、ボタンを下から順に狂ったような速度で留めていった。 布地が肌を覆い隠していくたびに、チリチリと焼けるようだった羞恥心が少しずつ和らいでいく。冷え切っていた皮膚に、衣服の温もりが戻ってくる。 「あははっ、ユウジ君、すっごい焦ってるねえ。ナイちゃんたち、別に取って食ったりしないのにさ」 服を着込むユウジの慌てふためく様を見て、ナイトがクスクスと笑い声を漏らす。彼女の背中で黄金の六枚の翼が楽しげに揺れ、室内の明かりを乱反射させた。 「誰のせいでこんな目に遭ったと思ってんだよ……!」 ユウジは最後にベルトのバックルをカチャリと鳴らし、真っ赤になった顔で二人を睨みつけた。しかし、当のナルゼはユウジの抗議など全く意に介していない様子で、さっそく先ほどスケッチしたばかりの用紙を横に置き、本番の原稿用紙へと向かっていた。 「はいはい、文句はアシ代を受け取ってからにしなさい。ほら、休憩は終わりよ。あんたは背景のベタとトーン貼りの続き。ナイは……そっちのモブのペン入れ、お願い」 「Jud. まかせてー」 ナルゼの指示に、ナイトはふんわりとした笑顔で頷き、自分の席へと戻っていく。 ユウジは大きくため息をつき、まだ微かに熱を持っている頬を手の甲で擦ると、重い足取りで自分の作業机へと戻った。椅子に腰を下ろし、先ほどまで自分がモデルをさせられていたという屈辱的な事実を脳の奥底へ無理やり押し込みながら、再びカッターとトーンを手に取る。 そこから先は、完全な沈黙の時間が支配した。 部屋の中に満ちるのは、三人が発する微かな呼吸音と、紙が擦れる音、そしてペン先が走る音だけ。換気扇の低い唸り声が、その静寂の輪郭をなぞるように鳴り続けている。 カリ、カリカリ。 ナルゼのペンの動きは、先ほどまでの冷徹な観察者のそれとは異なり、圧倒的な熱量を帯びていた。彼女の細い指先が、迷いなくGペンを操り、白い紙の上に命を吹き込んでいく。黒翼が時折ピクリと動き、彼女の深い集中力を物語っている。 ササッ、スッ。 対照的に、ナイトのペン運びは柔らかく、滑らかだった。彼女の口元には常に微かな笑みが浮かんでおり、まるで鼻歌でも歌うかのような軽やかなリズムで、しかし極めて正確に線を引き連ねていく。 ユウジは、指定された箇所にトーンを貼り付け、カッターの刃先で慎重に余分な部分を削り落としていく。チキッ、チキッという鋭い音が、ナルゼたちのペンの音と混ざり合う。 (……チクショウ、なんで俺はこんなに真面目に作業してんだ) カッターを動かしながら、ユウジは心の中で毒づく。先ほどの恥辱の代償として、少しはサボってやろうかという反抗心も頭を過ったが、目の前で鬼気迫る集中力を見せるナルゼの姿を前にすると、自然と手は動かざるを得なかった。 インクの匂いが、時間の経過とともに部屋の中でどんどん濃くなっていく。 数時間が経過しただろうか。ユウジの肩は完全に凝り固まり、瞬きをするたびに目の奥がズキズキと痛むようになっていた。手首の疲労もピークに達し、カッターを握る指先の感覚が麻痺し始めている。 窓の外は、すでに夕暮れの気配を帯び、部屋の中に差し込む光の色がオレンジ色へと変わっていた。 カリッ、と。 ナルゼが、最後に力強い一本の線を引き終え、ペンをインク壺の横に置いた。 「……よし」 小さく、しかし確かな達成感を伴った声が、静まり返った部屋に落ちる。 その声を合図にしたかのように、ユウジはカッターから手を放し、椅子の背もたれに深く寄りかかった。全身の筋肉が泥のように溶けていく感覚。 「終わった……のか?」 掠れた声で尋ねるユウジに、ナルゼはゆっくりと首を回してコリをほぐしながら頷いた。 「ええ。とりあえず、今日のノルマはここまでよ。メインのペン入れと、指定した背景処理までは全部終わったわ」 彼女の黒曜石の瞳には疲労の色が濃く浮かんでいたが、それ以上に、大きな壁を乗り越えた安堵と充実感が輝いていた。 「ふわあ……お疲れ様ー。ナイちゃんも、モブのペン入れ全部終わったよぉ」 ナイトが両腕を大きく上に伸ばし、豊満な胸を反らせながらあくびをする。黄金の翼がバサリと広がり、心地よい風を室内に生み出した。 「お疲れ、ナイ。ユウジもね。あんたのおかげで、デッサンの資料探しと背景の手間がだいぶ省けたわ」 ナルゼは少しだけ口角を上げ、ユウジに向けて労いの言葉を投げる。 「……その資料の取り方については、未だに納得してねえけどな」 ユウジは疲労困憊の表情で恨みがましく睨み返すが、ナルゼはフッと鼻で笑い飛ばすだけだった。 「細かいことは気にしないの。それより、キリもいいし今日はここまでにしましょうか。夕飯、どうする? 打ち上げも兼ねて、何か奢ってあげるわよ。もちろん、ユウジの分もね」 「おっ、マジか! じゃあ俺、肉がいい! がっつり焼肉!」 現金なもので、奢りという言葉を聞いた瞬間、ユウジの顔から疲労の色が半分ほど吹き飛んだ。 「焼肉かあ、いいねえ! ナイちゃんも賛成!」 ナイトも嬉しそうに手を叩き、ナルゼの腕にギュッと抱きつく。 「わかったわよ、焼肉ね。まったく、どいつもこいつも食い意地が張ってるんだから……」 呆れたように言いながらも、ナルゼの表情は柔らかく、どこか楽しげだった。 机の上に積まれた原稿用紙の束。そこには、三人の労働の結晶と、インクの匂いが深く染み付いている。ユウジは重い体を起こし、焼肉の匂いを想像しながら、ようやく終わった地獄のアシスタント作業からの解放を、腹の底から噛み締めていた。 机の上の惨状――インクの染みがついた原稿用紙や、散乱するトーンの切れ端――を片付けながら、ユウジは重い首を回した。ボキリ、と鈍い音が鳴る。 ようやく本日の過酷な労働から解放され、冷めた紅茶で喉を潤そうとマグカップに手を伸ばしたその時だった。 「ねえ、ユウジ」 向かいの席から、マルガ・ナルゼが唐突に口を開いた。彼女は組んだ両手の上に顎を乗せ、黒曜石のような瞳でユウジをじっと観察している。その後ろでは、マルゴット・ナイトがスマホの画面をスワイプしながら、ふんふんと機嫌良く鼻歌を歌っていた。 「ん? なんだよ」 「私、次の同人をNTR物にしようと思うんだけど。あんた、NTRの経験とかある?」 ブッ。 ユウジは口に含んだばかりの紅茶を、すんでのところで気管に詰まらせそうになり、激しく咽せた。 「ゲホッ、ゴホッ……はぁ!?」 喉を押さえながら涙目で顔を上げると、ナルゼは微塵も冗談めかした様子はなく、至極真面目な顔でこちらを見つめていた。まるで「今日の夕飯は何?」とでも聞くような、フラットで事務的なトーンである。 「彼女いたことすらねえよ!? 何言い出してんの!?」 声が裏返る。当然の反論だった。そもそも彼女がいたことがない人間に、他人に恋人を奪われる経験など存在するはずがない。論理的破綻もいいところだ。 しかし、ユウジのその必死の形相を見たナルゼは、同情するどころか、スッと冷ややかに目を細めた。 「まっ、そうよね。童貞って面してるし」 「こいつマジ……」 胸の奥に、見えない刃物が深々と突き刺さった。ストレートすぎる暴言に、ユウジは反論の言葉すら失い、机に突っ伏したくなる衝動に駆られる。 (いくら何でも、口が悪すぎるだろ……!) 「うーん、じゃあそうね。取り敢えずユウジ、あんたちょっと私の横に立って」 落ち込むユウジの心情など一切気にする様子もなく、ナルゼは椅子を蹴って立ち上がった。背中の六枚の黒翼がバサリと広がり、室内の空気を撹拌する。 「は? なんで」 「いいから。資料作りよ」 訳も分からず、ユウジは重い腰を上げてナルゼの横に並んだ。 二人が並ぶと、身長差はそれなりにある。ナルゼの頭のてっぺんが、ユウジの顎の下あたりにくる。彼女の艶やかな黒髪から、微かにインクの匂いに混じって、シャンプーの甘い香りが漂ってきた。 「ナイちゃん、撮るよー!」 いつの間にか、マルゴットが二人の正面に立ち、スマホのカメラを構えていた。黄金の翼をパタパタと揺らしながら、楽しそうにレンズを向けてくる。 カシャッ。 軽い電子音が鳴り、マルゴットが撮った写真を確認する。ナルゼがひょいと首を伸ばし、その画面を覗き込んだ。 「……ただ並んだだけね、これじゃ」 不満げな声。ナルゼは眉根を寄せ、チッと舌打ちをした。 「男女が並んでるだけで、奪う側の男のいやらしさとか、圧倒的な優位性みたいなものが見えてこないわ。距離が遠すぎるのよ。ユウジ、あたしの肩か腰に腕回しなさいよ」 「えっ」 「早く。……あっ、変なとこ触ったら殺すから」 有無を言わさぬ命令と、絶対的な脅迫。ナルゼの鋭い眼差しが、ユウジの両手を射抜くように睨みつける。 「何なんだよ、もー……」 ユウジは引きつった顔で呟きながら、恐る恐る右手を持ち上げた。 (肩か、腰。変なところ……胸とかお尻に触ったら確実に命はない。なら肩一択だろ) 心の中で安全圏を計算し、ユウジの指先が、ナルゼの華奢な右肩へと触れる。制服の薄い布地越しに、彼女の体温が直に伝わってくる。思ったよりも細く、そして温かい。すぐ間近にある黒翼の付け根が微かに震え、羽の先端がユウジの腕にサラリと触れた。そのくすぐったい感触に、ユウジの心臓がドクンと嫌な音を立てて跳ねる。 「じゃ、マルゴット、もう一回写真お願いね」 「了解〜。はい、チーズ!」 カシャッ。 再びシャッター音が響いた直後。 「はい、終わり。何時まで引っ付いてるのよ、離れなさい。よしっ、しっ」 ナルゼは肩をビクッとすくめると、まるで汚い野良犬を追い払うかのような手つきで、ユウジの腕をパンッと叩き落とした。その動作の素早さと、あからさまな嫌悪感の表現に、ユウジはポカンと口を開ける。 「手伝ってやってるのに、扱いが雑すぎる!」 さっきまで自分から「触れ」と命令しておいて、この手のひら返しである。ユウジの怒りの抗議も、ナルゼの耳には届いていないようだった。彼女は再びマルゴットのスマホ画面を真剣な顔で覗き込んでいる。 「何か、どうにもピンと来ないわね〜。表情が硬いというか、緊張感が足りないというか……。やっぱり童貞の男じゃ、NTRのドロドロした空気感は出せないのかしら」 ブツブツと独り言を呟きながら、ナルゼは大きくため息を吐いた。 「まあ、取り敢えず今日はこんなもんかしら。じゃあ、帰っていいわよ、ユウジ」 「……あ、そう。じゃあな」 散々振り回された挙句の、あっさりとした解散宣告。ユウジはどっと押し寄せる疲労感に肩を落とし、自分の鞄を掴み取った。これ以上この場にいると、またどんな理不尽な要求をされるか分かったものではない。 「ナイちゃん、ちょっと出てくるね〜」 ユウジが部屋のドアノブに手をかけた瞬間、背後でマルゴットの柔らかい声が響いた。振り返ると、彼女もまた鞄を肩にかけ、黄金の翼を小さく畳んでこちらへ歩み寄ってくる。 「ん、わかった。気をつけてね」 原稿用紙に向かい直ったナルゼの声を背に受けながら、二人は部屋を後にした。 廊下に出ると、ひんやりとした空気が火照った頬を撫でた。窓の外はすっかり暗くなっており、遠くの街明かりがポツポツと瞬き始めている。 ユウジは重い足取りで階段を下りながら、先ほどのナルゼの言葉を思い出しては、心の中で悪態をついていた。 (童貞って面してる、か。悪かったな、どうせ俺は平々凡々な男だよ) 建物を出て、冷たい夜気に肺を満たした時だった。 「ねーねー、ユウジ君」 背後から、衣擦れの音と共に、甘い声が鼓膜を揺らした。 振り返ると、マルゴットがすぐ後ろに立っていた。彼女の巨乳が歩く反動でゆさゆさと揺れ、街灯の光を受けた金髪がキラキラと輝いている。彼女は特有のふんわりとした笑顔を浮かべ、ユウジの顔を覗き込んできた。 「ユウジ君、ちょっと追加のお願いいいかな?」 「追加の、お願い……?」 ユウジは警戒心を露わにして、半歩だけ後ろに下がる。ナルゼのアシスタントの延長戦だとしたら、もう体力も精神力も残っていない。 しかし、マルゴットはさらに半歩距離を詰め、ユウジの顔に自分の顔を近づけてきた。彼女の吐息が届くほどの距離。甘い、女の子特有の香りが鼻腔をくすぐる。 「ガっちゃんね、ああ言ってるけど、本当はすごく悩んでるんだよ。NTRの『奪う側』と『奪われる側』の生々しい感情が、どうしても上手く描けないって」 マルゴットはそう言うと、黄金の瞳をすっと細め、ユウジの胸元あたりを見つめた。 「だからね、ナイちゃんが手伝ってあげようかなーって思って」 「手伝うって……何を?」 嫌な予感しかしない。ユウジの背筋に、冷たい汗がツーッと流れ落ちる。 マルゴットはゆっくりと顔を上げ、ニコリと、これまでで一番甘く、そしてどこか妖艶な笑みを浮かべた。 「あのね。ユウジ君に、『奪う側』の気持ち……実際に教えてあげようかなって、思ってさ」 夜の冷たい空気が、肺の奥で凍りつくような感覚があった。 「あのね。ユウジ君に、『奪う側』の気持ち……実際に教えてあげようかなって、思ってさ」 鼓膜にへばりつくような、甘く、とろけるような声。 街灯のオレンジ色の光の下、マルゴット・ナイトはふんわりとした笑顔を浮かべていた。しかし、その言葉が孕む圧倒的な熱量と異常性に、ユウジの全身からサッと血の気が引いていく。背筋を、氷の刃でなぞられたような強烈な悪寒が駆け上がった。 ザワッ。 風もないのに、ユウジの腕にびっしりと鳥肌が立つ。脳が危険信号を鳴らし、本能が「逃げろ」と叫んでいる。しかし、両足はコンクリートの地面に縫い付けられたようにピクリとも動かない。 「な……何を……」 掠れた声が、乾いた喉からどうにか絞り出される。 マルゴットはゆっくりと、本当にゆっくりと、ユウジに向かって一歩を踏み出した。カツン、と靴音が夜の静寂に響く。彼女の背中で、黄金の六枚の翼がバサリと大きく広がり、ユウジの視界から逃げ道を塞ぐように左右の空間を覆い尽くした。 甘い。あまりにも甘く、濃厚な匂いがユウジの鼻腔を侵食してくる。バニラか、それとも熟れすぎた果実か。マルゴットの体温に乗って放たれるその匂いは、夜の冷気を完全に塗り潰し、ユウジの思考を泥のように混濁させていく。 「ガっちゃんって、受け側っていうか、M側なんだよね」 コテン、と。マルゴットは可愛らしく小首を傾げた。豊かな金髪がサラリと肩からこぼれ落ち、街灯の光を乱反射してキラキラと輝く。 「だからさ、さっきのNTRの話で言ったら……私が寝取られるのを、ガっちゃんが目の前で見て体験するポジションの方が、相性いいと思うんだよね」 (えっ……急に何言い出してるの、こわ……っ!) ユウジの脳内で、警鐘が狂ったように鳴り響いた。 ドクン、ドクン、ドクン。 心臓が肋骨を突き破りそうなほど激しく脈打つ。恋人であるはずのマルガ・ナルゼを、あえて「寝取られる側(被害者)」のポジションに立たせようとする、その常軌を逸した発想。しかも、それを提案しているのが、他ならぬ恋人のマルゴット自身なのだ。 ユウジは恐怖で引きつった顔のまま、無意識に半歩だけ後ろへ退いた。 靴底が地面を擦る僅かな音。そのユウジの『拒絶』の反応を見逃すマルゴットではない。 ふふっ、と。 彼女の形の良い桜色の唇から、吐息のような笑い声が漏れる。 スッ。 先程よりもさらに素早く、距離を詰めてくる。今度はユウジの胸ぐらに触れられるほどの、完全なパーソナルスペースの侵犯。 「あ、ちなみに」 マルゴットが見上げる形で、黄金の瞳がユウジの瞳孔を真っ直ぐに射抜いた。その瞳の奥には、普段の暢気でマイペースな彼女からは想像もつかないほど、生々しく、どろりとした強烈な欲求が渦巻いている。 「別にナイちゃんは、ガっちゃんのこと嫌いになったとかじゃないからね?」 彼女の豊かな胸元が、呼吸に合わせて大きく上下に揺れる。制服の生地が弾けそうなほどの圧倒的な質量が、ユウジの胸のすぐ数センチ手前で、むにゅり、むにゅりと形を変えて波打っている。その視覚的な暴力と、肌から直接伝わってくる彼女の熱気に、ユウジは息をするタイミングすら見失っていた。 「ナイちゃん、ぶっちゃけ男も女も、どっちもイケるタイプだから」 悪びれる様子など微塵もない、あっけらかんとした告白。 サワワ……。 黄金の翼の先端が、ユウジの二の腕を愛撫するようにゆっくりと這う。羽毛の柔らかな感触と、それに反比例するような精神的な重圧。彼女は本気だ。本気で、この場でユウジを「奪う側」の男として利用しようとしている。 「それにねぇ……」 マルゴットはさらに顔を近づけてきた。彼女の甘く熱い吐息が、ユウジの首筋に直接吹きかかる。ゾクリ、とユウジの背骨の中を、電流のような痺れが駆け抜けた。 「ガっちゃんの手伝いをしてあげたいって気持ちと……NTRを体感して、よわよわになってるガっちゃんも見たいなーって」 彼女の言葉は、酷く歪んだ愛情に満ちていた。愛する恋人を絶望の淵に突き落とし、その脆く崩れ去る姿を見たいという、純度百パーセントの加虐心。 ペロリ。 マルゴットの赤い舌先が、自身の艶やかな唇を舐めめぐる。微かな水音が、ユウジの耳元でやけに大きく響いた。 「勿論、その後よわよわになってるガっちゃんは、ナイちゃんが美味しくいただくけどね♥️」 底知れぬ肉食性。 圧倒的なまでの捕食者の笑みだった。 ユウジの喉の奥で、ヒュッ、と短い音が鳴る。言葉が出ない。声帯が完全に機能不全に陥っている。 目の前にいるのは、ただの金髪巨乳の暢気な少女ではない。自らの欲望のためならば、愛する恋人すらも盤上の駒として扱い、すべてを貪り尽くそうとする、怪物のような捕食者だ。 夜の闇の中、黄金の翼を広げ、甘い匂いと異常な熱量で獲物を退路から塞ぎ込むマルゴット・ナイト。 ユウジはただ、その美しくも恐ろしい肉食獣を前にして、金縛りに遭ったように立ち尽くし、絶句することしかできなかった。冷や汗が額を伝い、顎の先から夜のコンクリートへと、ポツリと滴り落ちた。 凍りつくような夜の静寂を、ひどく場違いな、明るく弾んだ声が打ち破った。 「まあ、とは言えいきなりハードなのはガっちゃんに申し訳ないからね。まずは軽いのからやっていこー!」 鼓膜を打つその言葉の意味を、ユウジの脳は即座には処理できなかった。つい数秒前まで、獲物を追い詰める肉食獣のようなドロドロとした熱を放っていたはずのマルゴットが、一瞬にしていつもの、ふんわりとした暢気なテンションへと戻っている。 (えっ……軽い? 何言ってんだこいつ……!) 急激な温度変化に、ユウジは完全に思考をショートさせ、口を半開きにしたまま立ち尽くした。 そんな混乱の極みにいるユウジを完全に置いてきぼりにして、マルゴットは楽しげな足取りでさらに距離を詰めてきた。 タッ。 靴底がアスファルトを叩く短い音。 次の瞬間、ユウジの右半身に、圧倒的なまでの柔らかさと熱を持った質量が激突した。 むにゅんっ。 制服の薄い生地越しに、マルゴットの規格外に豊満な胸がユウジの二の腕に押し付けられ、無防備に形を変える。夜の冷たい空気に晒されて冷え切っていたユウジの皮膚に、彼女の高い体温がじんわりと、しかし急速に伝染してくる。 「っ……!?」 突然の密着に、ユウジの肩がビクンと大きく跳ねた。 すぐ横を見下ろせば、マルゴットの金色の頭頂部がある。甘ったるい、バニラのような香りが鼻腔の奥まで一気に侵入し、脳髄を直接かき混ぜるように甘く痺れさせた。背後の街灯に照らされた彼女の黄金の六枚の翼が、ユウジの背中を包み込むようにふわりと広がり、二人だけの閉鎖的で濃密な空間を作り出す。 「ほらほら、ぼーっとしないの。携帯出して、自撮りするよー」 マルゴットはユウジの右腕に自分の両腕を絡め、下から覗き込むようにウインクを飛ばした。その瞳には、悪戯を企む子供のような純粋さと、底知れぬ加虐心が入り混じっている。 (自撮り……!? 今、ここでか!?) 動揺で心臓が肋骨を打ち破りそうなほど激しく脈打つ。ドクン、ドクンという自身の血流の音が、耳の奥でうるさいほどに鳴り響いていた。 「早く早くー」 急かされるまま、ユウジは震える左手でズボンのポケットからスマートフォンを取り出した。画面の明かりが点灯し、暗い夜道の中で二人の顔を青白く照らし出す。カメラアプリを起動し、インカメラのレンズを二人に向ける。 画面の中には、引きつった顔で固まるユウジと、その横でとろけるような笑顔を浮かべ、ピタリと寄り添うマルゴットの姿が映し出されていた。 「んー、なんかユウジ君、体が硬いなあ。これじゃただの不審者と、それに絡まれてる女の子みたいじゃない。もっとこう、恋人同士の秘密の逢瀬、みたいな雰囲気出さなきゃ」 マルゴットは不満げに頬を膨らませると、ユウジの右腕を引っ張り上げた。 「ほらほら、腕をナイちゃんの腰に回して」 「えっ、ちょっ……」 抵抗する間もなく、ユウジの右腕はマルゴットの誘導によって、彼女の細く引き締まった腰へと巻き付けられた。掌から伝わる、女性特有の滑らかな曲線と、布地越しに脈打つ温かな体温。 (細っ……それに、あったけえ……) 極度の緊張状態にありながらも、健全な男子高校生であるユウジの身体は、極上の肉体を抱き寄せる感触に正直に反応してしまう。喉がカラカラに渇き、無意識にゴクリと唾を飲み込む音が鳴った。 その反応を逃さず、マルゴットはさらにユウジの腕を強く引き寄せた。 「もっとぎゅっと力入れて。……大丈夫大丈夫、胸に触れたっていいよ。というか、ちゃんとNTRっぽさを出す演出として必要だからさ」 ギュッ。 マルゴットが自らユウジの腕を引き寄せ、自身の豊かな双丘の底へと押し当てる。 むにゅっ、ふにゅんっ。 重力に従って垂れ下がる巨大な脂肪の塊が、ユウジの前腕の上にドシリと乗り上げ、その重みと柔らかさを残酷なまでに主張してきた。腕を動かすたびに、あるいはマルゴットが呼吸をするたびに、その弾力のある肉が擦れ、形を変え、ユウジの腕の神経を焼き切らんばかりの快感の信号を脳へと送り込んでくる。 (殺される……!!) 頭の片隅で、恋人である彼女の浮気現場(という設定の写真)を見せられた時の、マルガ・ナルゼの氷のように冷たい眼差しと、確実な死の予感が閃いた。 (でも……っ、柔らかっ……! すげえいい匂いするし……!) 恐怖と同時に、腕にのしかかる圧倒的な快感と、夜の闇に紛れて友人の恋人と密着しているという強烈な背徳感が、ユウジの下腹部に熱い血を集中させていく。抗いがたい『役得』の事実に、ユウジの顔面は一気に沸騰したように赤く染まった。 「ふふっ、ユウジ君、顔真っ赤だねえ。いいよいいよ、そのどこか怯えつつも興奮しちゃってるリアルな顔、すごくそそるよ♥️」 マルゴットはユウジの耳元に顔を寄せ、吐息を吹きかけるように甘く囁いた。彼女の吐息が耳の裏を撫でるたび、ゾワゾワと背筋に電流が走る。 「じゃあ、撮るよー。はい、チーズ♥️」 マルゴットがユウジの頬に自分の頬をすりすりと擦り寄せながら、楽しげに声を上げる。 カシャッ。 乾いた電子音が、夜の空気に吸い込まれて消えた。 ユウジの左手がゆっくりと下りる。画面には、頬を寄せ合い、腰に腕を回して豊満な胸に触れている決定的な瞬間が、残酷なまでに鮮明に切り取られていた。ユウジの顔は恐怖と羞恥、そして隠しきれない興奮で複雑に歪み、対照的にマルゴットは、すべてを手に入れたかのような満面の笑みを浮かべている。 「んっ、なかなかいい感じじゃないかなー。ふふん、これを後でガっちゃんに見せるんだ」 マルゴットはユウジのスマホ画面を覗き込みながら、心底嬉しそうに目を細めた。その黄金の瞳の奥で、加虐の炎がゆらゆらと揺らめいているのを、ユウジは確かに見た。 (こいつ……本当に見せる気だ。俺、明日の朝には消されてるかもしれない……) 絶望的な未来予想図に、ユウジはガクリと肩を落とし、肺の中の空気を全て吐き出した。 マルゴットはゆっくりとユウジから身体を離した。肌と肌が離れる際、微かに衣擦れの音が鳴り、ユウジの腕には彼女の胸の重みと体温の余韻だけが、呪いのように深く焼き付いて残っていた。 「まだ今回は軽い感じのやつだけど、次からもよろしくね、ユウジ君」 彼女は夜の闇の中で振り返り、黄金の翼をパタパタと揺らしながら、無邪気で、しかし絶対的な命令を下す。 そのどこまでも楽しげな笑顔を前に、ユウジはもう反論する気力すら湧いてこなかった。ただ、自らの腕に残る甘い熱と、これから始まるであろう底なしのNTRシチュエーションへの恐怖に、ただただ複雑な顔を浮かべて立ち尽くすことしかできなかった。 逢魔が時。昼と夜の境界線が、空を毒々しいほどの茜色と深い群青色に染め上げていた。 武蔵の居住区、その人通りの少ない裏路地。ひんやりとした夕暮れの風が吹き抜ける中、ユウジは落ち着かない様子で周囲をキョロキョロと見回していた。壁に寄りかかろうとしてはやめ、ポケットに手を突っ込んでは取り出し、無意味に足元の小石を蹴り飛ばす。 ドクン、ドクン、ドクン。 心臓の鼓動が、嫌なリズムで耳の奥に響き続けている。 数日前の夜、あのマルゴット・ナイトに脅迫めいた形で『NTRの自撮り写真』を撮らされて以来、ユウジの精神状態はずっと削り取られ続けていた。 何故なら、あの写真を見たであろうマルガ・ナルゼの反応が、あまりにも不気味だったからだ。 激高して白魔術をぶっ放してくるなら、まだ分かりやすかった。しかし、ナルゼは一切の暴力に訴えなかった。その代わり、ふとした瞬間に、あの黒曜石のような冷え切った瞳で、ユウジのことをジトッと……まるで羽虫の死骸でも観察するかのような、底知れない微妙な表情で睨みつけてくるようになったのだ。 その視線が背中に突き刺さるたび、ユウジは寿命が数日縮むような極度のストレスを味わっていた。 (もう限界だ……胃に穴が空く……) そうやって青ざめた顔で頭を抱えていた矢先、諸悪の根源であるマルゴットから直接呼び出しを受けたのだ。逃げ出したい衝動を必死に理性の鎖で縛り付け、ユウジは今、処刑台に向かう罪人のような心境で彼女を待っていた。 カツン、カツン。 不意に、軽快な靴音が静かな路地に響いた。 顔を上げると、夕闇の中にふわりと浮かび上がるような黄金色の六枚の翼が見えた。歩くたびにサラサラと揺れる美しい金髪。そして、制服の生地を今にもはち切れんばかりに押し上げている、規格外に豊満な双丘。 「お待たせー、ユウジ君」 ふんわりと甘い、とろけるような声。マルゴット・ナイトが、いつもの暢気な笑顔を浮かべて近づいてきた。 彼女から放たれる、バニラのように甘く濃厚な香りが、夕暮れの冷たい空気を一瞬にして塗り替える。その匂いを嗅いだ瞬間、ユウジの背筋にゾクリと悪寒が走った。 「あ、ああ……」 引きつった愛想笑いを浮かべるのが精一杯だった。マルゴットはユウジの目の前まで来ると、コテンと可愛らしく小首を傾げる。 「どうしたの? なんか顔色悪いよ?」 その純真無垢を装った問いかけに、ユウジの中に溜まっていた恐怖と鬱屈が、思わず口を突いて出た。 「あれからナルゼのやつ、微妙な表情で俺のことジトって睨んだりしてくるんだけど……大丈夫、俺、殺されない?」 声が微かに震えていた。すがるような目でマルゴットを見つめる。 ナルゼのあの冷徹な眼差しは、絶対に許しのそれではない。いつ寝首を掻かれるか分からない恐怖を訴えるユウジに対し、マルゴットはきょとんとした顔をした後、腹の底から楽しそうに笑い声を上げた。 「あははっ、安心してよ。ちゃーんとガっちゃんは説得してるからさ」 彼女は黄金の翼をパタパタと揺らしながら、事も無げに言い放つ。その明るいトーンと、ユウジが抱えている命の危機のギャップがあまりにも大きすぎる。 「説得って……本当に? あの目、絶対に俺のこと消そうとしてる目だったぞ……」 「それに、殴り掛かったりしてきてないでしょ?」 マルゴットはニコニコと笑いながら、ユウジの顔を下から覗き込んだ。夕陽を反射する黄金の瞳の奥で、ゾッとするような昏い加虐の炎がチロチロと揺らめいているのが見えた。 「いやー、やっぱりガっちゃんはそっちの(寝取られる側)才能もあるよ、うんうん」 一人で深く納得したように、マルゴットはうんうんと頷く。 その言葉の異常性に、ユウジは一瞬呼吸を忘れた。 恋人にわざと浮気現場(偽装とはいえ)を見せつけ、その絶望や嫉妬に歪む顔を見て「才能がある」と評価する。そこには、一般的な倫理観も、恋人に対する真っ当な愛情表現も存在しない。あるのはただ、愛する者を自分の手のひらの上で徹底的に弄び、その反応を貪り食おうとする、純度百パーセントの肉食獣の欲望だけだ。 (女ってこえー……) ユウジの奥歯が、カチリと小さく鳴った。 無意識のうちに後ずさりしようとした足は、しかし、地面に縫い付けられたように動かない。蛇に睨まれた蛙。圧倒的な捕食者を前にして、本能が完全に萎縮してしまっているのだ。 そんなユウジの恐怖など気にも留めない様子で、マルゴットはさらに半歩、距離を詰めてきた。 スッ。 彼女の白く滑らかな腕が伸びてきて、ユウジの右腕に絡みつく。 むにゅんっ。 「ひゃっ……!?」 唐突な密着と、腕に押し付けられた圧倒的な質量に、ユウジの口から情けない声が漏れた。 マルゴットの豊満な胸が、ユウジの腕の形に合わせてぐにゃりと形を変え、密着している。制服の薄い布地越しに、彼女の高い体温と、どくどくと脈打つ心音までもが直接伝わってくるようだった。 「じゃあ、ユウジの部屋に行こっか。今日はたっぷり時間あるよ」 耳元で囁かれたその声は、甘く、そして絶対的な拘束力を持っていた。 「へ……? 部屋って、俺の!?」 「そ。だって、外じゃ誰に見られるか分かんないし、集中できないでしょ? それに……」 マルゴットは腕を絡めたまま、さらに自身の体をユウジへと押し付ける。 ふにゅ、むにゅり。 重力に従う巨大な脂肪の塊が、ユウジの二の腕で無防備に擦れ、その恐ろしいほどの柔らかさをこれでもかと主張してくる。動くたびに甘いバニラの香りが立ち昇り、ユウジの思考回路を熱くドロドロに溶かしていく。 「ガっちゃんを本気でゾクゾクさせるためには、もっとリアルな……『実績』を作らなきゃいけないんだよねえ」 上目遣いでユウジを見つめる黄金の瞳。その唇の端が、妖艶な弧を描いて吊り上がった。 「じっ、実績って……お前、本気で……」 「もちろん本気だよ? ナイちゃん、中途半端なこと嫌いだからさ。ユウジ君には、今日からみっちり『奪う側』の男の役割、身体で覚え込ませてあげるからね♥️」 逃げ場は、もうどこにも無かった。 マルゴットの腕の力は見た目以上に強く、ユウジの右腕をがっちりとホールドして離さない。背中に回された黄金の翼が、まるで獲物を包み込む食虫植物のように、ふわりとユウジの退路を塞いでいた。 肌から伝わる熱と、圧倒的な快感。そして、その裏に潜む確実な破滅へのカウントダウン。 恐怖と、抗えない下半身の熱に思考をかき乱されながら、ユウジはただズルズルと、マルゴットに腕を引かれるまま歩き出すことしかできなかった。 完全に日が落ち、周囲は深い夜の闇に包まれようとしている。 その闇の中で、マルゴット・ナイトという名の美しい捕食者だけが、これから始まる甘く残酷な遊戯への期待に、爛々と黄金の瞳を輝かせていた。 夜の冷たい空気が肌を撫でる中、武蔵の居住区を歩く二人の間には、周囲の気温とは裏腹に異様なほどの熱が滞留していた。 「んふふー、ユウジ君の部屋ってこっちだよね」 カツン、カツンと、マルゴット・ナイトの歩調に合わせて軽いヒールの音が夜の静寂に響く。彼女はユウジの右腕を両手でがっちりとホールドしたまま、ご機嫌な様子で身を寄せていた。 その歩みに合わせて、ユウジの腕には強烈な物理的質量が絶え間なく押し付けられている。 むにゅん、ふにゅんっ。 マルゴットの規格外に豊満な双丘が、ユウジの二の腕を挟み込むようにして形を変える。彼女が一歩を踏み出すたびに、制服の薄い布地越しに重力に従って揺れる巨大な脂肪の塊が腕の筋肉の上で擦れ、弾み、その圧倒的な柔らかさと温かさを脳髄へと直接叩き込んでくる。 (やばい、やばい、やばい……!) ユウジの頭の中は、けたたましい警鐘と、抗いようのない快感の信号が入り混じり、完全にショート寸前だった。 冷え切った夜風に晒されているはずなのに、マルゴットと密着している右半身だけが火に炙られているように熱い。彼女の体温がじんわりと皮膚から浸透し、血液の温度を強制的に引き上げていく。さらに、彼女の体から立ち昇るバニラのように甘く濃厚な香りが鼻腔を支配し、ユウジの思考をどろどろに溶かしていた。 「ねえねえ、ユウジ君」 不意に、マルゴットがユウジの顔を下から覗き込んでくる。街灯のオレンジ色の光を受けた黄金の瞳が、面白がるような光を帯びていた。 「さっきの写真の時も思ったんだけどさ。ユウジ君、やっぱりまだ童貞感丸出し過ぎるんだよねえ」 「っ……!」 図星を突かれた上に、ストレートすぎる言葉の刃。ユウジの肩がビクッと跳ね、顔面が一気に熱を持つ。 「だって、しょうがないだろ……! 俺、こういうの慣れてないっていうか、そもそもお前はナルゼの……」 「あはは、言い訳はいいのいいの。でもね、NTRで『奪う側』の男がビクビクしてたら、ガっちゃんが見た時にリアリティがないじゃない?」 マルゴットはユウジの反論をあっさりと笑い飛ばすと、さらに腕のホールドを強めた。 ぎゅっ。 容赦なく押し付けられた胸の谷間の奥深くに、ユウジの腕がずぶりと沈み込む。凄まじい肉の弾力が腕を締め付け、ユウジの喉からヒュッと情けない空気が漏れた。 「だからね、もっと勇気だして、貪欲に行くくらいがちょうどいいよ!」 彼女の言葉は、恐ろしいほどの無邪気さと、底知れぬ加虐心に満ちていた。恋人を絶望させるためのシナリオ作りに、これほどまで嬉々として取り組める彼女の精神構造が、ユウジには底知れぬ怪物のように思えた。 (貪欲に行けって……相手はお前だぞ!? マルガ・ナルゼの恋人で、黒魔術使いで、こんな、こんな……!) 腕に絡みつく柔らかすぎる感触と、首筋を撫でる彼女の黄金の翼の羽毛の感触。そのすべてがユウジの理性を削り取っていく。恐怖で胃の奥が冷え切っているはずなのに、下腹部には確実に熱い血が集中し始めていた。健康な男子高校生の肉体は、目前の極上の雌に対して、本能的な反応を抑えきれなくなっている。 そのユウジの体の微かな強張りや、荒くなり始めた呼吸を、密着しているマルゴットが気付かないはずがなかった。 「ふふっ……」 マルゴットの形の良い唇から、艶やかな吐息が漏れる。 彼女は歩みを少し遅めると、ユウジの耳元へと顔を寄せた。 「ちょっとくらい乱暴でも、私はオッケーだしね♥️」 鼓膜に直接注ぎ込まれる、甘く、湿り気を帯びた声。 その瞬間、ユウジの背骨を強烈な電流が駆け抜けた。ビクンッ、と全身の筋肉が跳ね上がる。 「そ、そういう問題じゃ……」 「そういう問題だよ。そういうのの方が、ガっちゃんに見せた時の反応も絶対に良さそうだからね」 マルゴットの熱い吐息が、ユウジの耳殻を撫でる。彼女の吐息が皮膚に触れるたび、ゾワゾワとした粟立ちが全身へと広がっていく。 「野獣ってくらい強気で来てくれていいんだから。それに……」 ちゅっ。 不意に、マルゴットの柔らかい唇が、ユウジの耳たぶを軽く啄んだ。 「ひゃあっ!?」 ユウジの口から、完全に裏返った情けない悲鳴が飛び出す。 濡れた粘膜の感触と、微かな吸着音。一瞬の出来事だったが、その生々しい触覚はユウジの脳に深く焼き付き、下半身の熱をさらに一段階引き上げた。 「ユウジ君には、『奪う側』を体感させてあげるって言ったしね♥️ 遠慮しないで、ナイちゃんのこと、めちゃくちゃにしてもいいんだよ?」 悪魔の囁き。 完全に退路を断ち、本能のままに貪ることを許可する甘い誘惑。 マルゴットはユウジの反応を確かめるように、押し付けた胸を意図的に上下に擦り合わせた。 むにゅ、ふにゅり。 制服の摩擦音と、肉が潰れる微かな水音。圧倒的な快感が腕の神経から脳髄へと直結し、ユウジの視界がグラリと揺れる。 (めちゃくちゃにしても、いい……? 俺が、こいつを……) 恐怖の底に沈んでいたはずの欲望が、マルゴットの熱と匂いによってドロドロに溶かされ、黒い炎となって静かに燃え上がり始めていた。 ナルゼに見つかれば確実に殺される。だが、今この瞬間、腕の中にいるのは抗いがたい性的な魅力を持った一人の女だ。しかも彼女自身が、自分を貪れと誘惑してきている。 「ほらほら、着いたよ。ユウジ君の部屋」 マルゴットの弾んだ声で、ユウジはハッと我に返った。 気がつけば、見慣れた居住区のアパートの廊下、自分の部屋のドアの前に立っていた。薄暗い廊下の蛍光灯が、二人の影をコンクリートの床に濃く落としている。 「あ……」 乾いた唇から、間抜けな音が漏れる。 逃げ出すチャンスは、ここまで歩いてくる間にいくらでもあったはずだ。だが、マルゴットの匂いと感触に絡め取られ、頭を空っぽにされたまま、結局は自分のテリトリーにまで彼女を連れ込んでしまった。 「早く鍵、開けて?」 マルゴットはユウジの腕に抱きついたまま、下から上目遣いで急かしてくる。その黄金の瞳は、これから始まる密室での背徳的な遊戯への期待に爛々と輝いていた。 「っ……」 ユウジは無意識のうちにごくりと唾を飲み込んだ。 震える左手をズボンのポケットに突っ込み、冷たい金属の鍵を取り出す。指先が微かに痙攣していて、鍵穴になかなか先端が噛み合わない。 カチャカチャと金属音が鳴るたびに、ユウジの心臓の鼓動は限界を超えて早まっていく。 (開けたら、もう後戻りできない。この怪物みたいな女と、二人きりになる……) カチリ。 ついに鍵が回り、重いドアノブがカチャンと音を立てて下がった。 ギィィ……。 ゆっくりとドアが開き、ユウジの部屋の空気が夜の廊下へと流れ出してくる。男の一人暮らし特有の、少し埃っぽくて殺風景な匂い。 その薄暗い空間の入り口で、マルゴットはふんわりとした笑顔を深めた。 「お邪魔しまーす♥️」 彼女はユウジの腕を引っぱり、獲物を巣穴に引きずり込むようにして、自ら進んで薄暗い部屋の中へと足を踏み入れた。 バタン、と。 背後でドアが閉まる鈍い音が響く。 外部との繋がりが完全に断たれ、圧倒的な質量と熱を持つ女との、逃げ場のない密室の時間が幕を開けた。 バタン。 重く冷たい金属製のドアが閉まり、オートロックの鍵がガチャリと無機質な音を立てて落ちた。 その瞬間、外の居住区の喧騒や夜風の音は完全に遮断され、ユウジの六畳半の安アパートは、世界から切り離された完全な密室へと変貌した。男の一人暮らし特有の、少し埃っぽくて殺風景な空気。それが、侵入者であるマルゴット・ナイトが放つ、バニラのように甘く濃厚な香りによって、一瞬にしてドロドロに塗り替えられていく。 「んふふ、お邪魔しまーす。ユウジ君の部屋、なんか男の子って感じの匂いがするね」 マルゴットは全く悪びれる様子もなく、狭い玄関の三和土で軽やかに靴を脱いだ。彼女が動くたびに、背中の黄金の六枚の翼がバサリと揺れ、薄暗いワンルームの空間に圧倒的な存在感と光を落とす。 「お、おい……本当に上がって……」 ユウジはまだドアノブを握ったまま、引きつった顔で立ち尽くしていた。頭では逃げろと警鐘が鳴り響いているのに、身体は硬直し、彼女の匂いに絡め取られて動けない。 そんなユウジの迷いを断ち切るように、マルゴットはふわりと歩み寄り、至近距離からユウジの首元へと両腕を回してきた。 むにゅんっ。 「ひぐっ……」 ユウジの胸板に、マルゴットの規格外に豊満な双丘が正面から押し付けられる。制服の薄いブラウス越しであっても、その恐ろしいほどの柔らかさと、ずしりと沈み込むような脂肪の質量が、痛いほどの生々しさを持って伝わってくる。彼女の心臓の鼓動が、トクトクとユウジの肌を直接叩いた。 マルゴットはユウジの首にぶら下がるように体重をかけ、黄金の瞳で見上げてくる。その唇の端には、完全な捕食者の、そしてゲームを楽しむ絶対的な強者の笑みが浮かんでいた。 「ねえ、ユウジ君」 ちゅっ。 マルゴットの桜色の唇が、ユウジの顎のラインに軽く触れる。濡れた粘膜の感触と、微かな水音。 「ひゃ、あ……」 「さっきも言ったけどさ。ガっちゃんを本気で悔しがらせるためには、ユウジ君が『奪う側』として、徹底的にナイちゃんを汚してくれないとダメなんだよね」 マルゴットの熱い吐息が、ユウジの首筋を舐めるように這い上がってくる。ゾワゾワと皮膚の表面が粟立ち、背骨の中を電流が駆け抜けた。 「でも、ユウジ君、まだ震えてる。ガっちゃんに殺されるのが怖い? それとも、女の子の身体をどうしていいか分かんない?」 コテン、と小首を傾げる仕草は無邪気そのものだが、その言葉の刃は鋭くユウジの急所を抉る。 「ナイちゃん、ユウジ君に任せるって決めたから、抵抗なんてしないよ。だから……」 マルゴットはさらに身体を密着させ、ユウジの耳元へと口を寄せた。彼女の金髪がユウジの頬をくすぐり、甘い香りが脳髄を直接麻痺させる。 「出来るかどうかは分からないけど。本気で奪いに来ても、いいんだよ?♥️」 余裕たっぷりな、完全に相手を見下した挑発。 童貞だと馬鹿にされ、怯えていることを見透かされ、さらには「出来るかどうか分からない」とまで言われた。 ブツン。 ユウジの中で、何かが切れる音がした。 恐怖。理不尽。ナルゼへの申し訳なさ。そういった理性の鎖が、目前に迫る極上の肉体の熱と、なけなしの『男としてのプライド』を徹底的にコケにされたことで、一気に焼き切れた。 (出来るかどうか分からない、だと……!? 舐めやがって……っ!) 下腹部の奥底で燻っていた熱が、爆発的な勢いで全身の血管を駆け巡る。冷え切っていた手足に熱い血が奔流のように流れ込み、ユウジの視界がどす黒い欲望の色に染まった。 「……っ、言ってろ!」 低い、自分でも驚くほど掠れた声が出た。 ユウジは首に回されたマルゴットの腕を振り解く代わりに、彼女の華奢な両肩を大きな掌でガシッと掴んだ。 「きゃっ!?」 そのままの勢いで、マルゴットの身体を強引に反転させ、部屋の奥にある万年床のベッドへと乱暴に押し倒す。 ドンッ! 古いスプリングが悲鳴のような軋み音を上げ、マルゴットの身体がベッドのシーツに沈み込む。バサリと、彼女の背中の黄金の翼がシーツの上に大きく広がり、まるで捕らえられた美しい蝶のようなコントラストを描き出した。 「あはっ……」 予想外の乱暴な扱いに一瞬だけ目を丸くしたマルゴットだったが、すぐにその黄金の瞳を細め、嬉しそうに喉の奥で笑った。仰向けに倒されたことで、彼女の巨大な双丘が重力から解放され、制服の生地を弾け飛ばさんばかりに左右へとぶるんと大きく揺れる。 「ユウジ君……いきなりベッドに押し倒すなんて、乱暴だなぁ」 言葉とは裏腹に、彼女の声には恐怖など微塵もなく、むしろ期待に満ちた熱い湿り気が帯びていた。マルゴットはベッドの上で身をよじり、自ら足を少し開いてユウジを迎え入れるような態勢をとる。 ユウジは荒い息を吐きながら、ベッドに倒れ込むマルゴットの上に馬乗りになった。 両腕を彼女の顔の横に突き、上からその姿を見下ろす。黄金の髪がシーツに散らばり、少しだけ上気した白い頬、そして潤んだ瞳がユウジを真っ直ぐに射抜いている。むせ返るようなバニラの香りと、彼女の体温が、ユウジの全身を熱の檻のように包み込んでいた。 「お前が……本気で来いって言ったんだろうが」 ギリッと奥歯を噛み締めながら、ユウジはマルゴットの首元を飾る制服のリボンへと震える手を伸ばした。 (もう、どうなっても知らない……っ。お前が俺を煽ったんだ。ナルゼに殺される前に、お前をめちゃくちゃにしてやる……!) 恐怖は完全に興奮のスパイスへと変換されていた。マルゴットの言う『奪う側』の役割。それを演じるという建前を盾にして、ユウジの抑圧されていた本能が完全に暴走を始める。 「んふふ……うん、いいよ。その獣みたいな目、すっごくそそる♥️」 マルゴットはシーツの上で両腕を伸ばし、自らユウジの首に腕を絡め直してきた。彼女の指先がユウジのうなじの髪を弄り、甘く誘惑する。 「ほら、ナイちゃんのこと、ユウジ君の好きにして? ガっちゃんに見せるための、最高にドロドロした実績……いっぱい作ろ?♥️」 シュルッ。 ユウジの指先がリボンを引き解く。滑らかな布が擦れる微かな音が、静まり返った密室の部屋にやけに大きく響き渡った。理性の最後のタガが外れ、ユウジは目の前の圧倒的な質量の海へと、自らその身を投じていった。 シュルッ、と滑らかな摩擦音を立てて、制服のリボンが解け落ちた。 薄暗いワンルームの空間に、古いスプリングベッドの軋む音と、二人の荒い呼吸だけが異常なほど大きく響き渡る。 ユウジの両腕の間に閉じ込められる形で仰向けに倒されたマルゴット・ナイトは、怯えるどころか、黄金の瞳を細めて恍惚とした笑みを浮かべていた。シーツの上にバサリと広がった六枚の黄金の翼が、室内の微かな光を反射して神々しいほどの輪郭を描いているが、これから行われようとしているのは、その神々しさとは正反対の、極めて泥臭く背徳的な略奪だった。 「んふふ……いいよ。その獣みたいな目、すごくそそる」 マルゴットの甘くねっとりとした声が、ユウジの鼓膜を甘く撫でる。 ユウジはギリッと奥歯を噛み締め、震える指先で彼女のブラウスの第一ボタンへと手をかけた。 (舐めやがって……っ。童貞だなんだとコケにして、挙句の果てにはナルゼに見せるためのダシにしようってのか……!) 恐怖と理性のストッパーは、先ほどの彼女の挑発によって完全に焼き切れていた。代わりに脳髄を支配しているのは、底知れぬ背徳感と、目の前に横たわる極上の雌を自分の手でめちゃくちゃにしてやりたいという、どす黒い支配欲だった。 しかし、不慣れな指先は細かいボタンの穴になかなか引っかからず、もどかしい時間がコンマ数秒過ぎる。 そのユウジの必死で余裕のない手つきを見て、マルゴットは「もー、じれったいなぁ」とクスクス笑いながら、自らブラウスの襟元を両手で掴んだ。 ビリッ! プチッ、ポーン! 一切の躊躇なく左右に引き裂くように広げられたブラウスから、安っぽいプラスチックのボタンが二、三個弾け飛び、フローリングの床を乾いた音を立てて転がっていった。 「っ……!」 ユウジの喉の奥で、ヒュッと息が詰まる音が鳴った。 強制的に開け放たれた布の隙間から現れたのは、暴力的なまでの質量を持った肉の塊だった。薄いレースのブラジャーに押し込められ、今にもはち切れんばかりに膨れ上がった巨大な双丘。マルゴットの少し上気した白い肌と、黒いレースのコントラストが、ユウジの視神経を強烈に焼き付ける。 彼女が呼吸をするたびに、その規格外の脂肪がむっちり、ぷるんと揺れ、甘く濃厚なバニラの香りがむせ返るようにユウジの顔面へと吹きつけられた。 「ほら、ナイちゃんのこと、ユウジ君の好きにして? ガっちゃんから私を奪うつもりで、徹底的に汚してよ♥️」 自ら胸を突き出すように身をよじり、マルゴットが妖艶に誘惑する。 その言葉が最後の引き金となった。 ユウジは完全に理性を投げ捨て、両手でその巨大な双丘へと容赦なく掴みかかった。 むにゅんっ……!! 「ひゃああっ……!?」 指先が沈み込む。想像を絶するほどの柔らかさと、ずっしりとした重み。男の手のひらなどでは到底収まりきらないその豊満な肉体を、ユウジは親指と他の四本の指で挟み込むようにして、力任せに揉みしだいた。 「あっ、んんっ……! いきなり、強い……っ♥️」 予想外の乱暴な扱いに、マルゴットの口から甘い嬌声が漏れる。 ユウジの手のひらから伝わる彼女の体温は異常に高く、布越しでもその熱が指先を火傷させそうだった。 ぐにゅ、むちぃっ、と。 ユウジが指の形を変えて揉み込むたびに、巨大な脂肪が指の隙間からはみ出し、形を変える。その圧倒的な触覚の暴力に、ユウジ自身の下腹部も爆発しそうなほどの熱を持ち始めていた。 「お前が……っ、本気で来いって言ったんだろ!」 ユウジは荒い息を吐きながら、マルゴットの首筋へと顔を埋めた。 少し汗ばんだ滑らかな肌に、自らの唇を強く押し当てる。 ちゅっ、じゅるるっ……。 吸い付き、舌先で舐め上げる。生々しい水音が、静まり返った密室の部屋に卑猥なエコーとなって響き渡った。 「ああんっ……ユウジ君、そこ……くすぐったい……っ」 マルゴットは身をよじりながらも、ユウジの背中に両腕を回し、その背中を愛撫するように撫で回してくる。彼女の黄金の翼がベッドのシーツを擦り、サワサワという音が水音と混ざり合う。 ユウジの手は胸を揉みしだくのをやめ、彼女の背中へと回り込み、ブラジャーのホックを探り当てた。 カチリ、と金具を外す。 ボヨンッ……! 拘束を解かれた巨大な双丘が、重力に従って横へと大きく流れ、シーツの上にその全貌を晒した。 ユウジの目の前に、完全な無防備状態で放り出された極上の肉体。その頂に咲く薄桃色の突起は、すでにツンと硬く尖り、彼女自身もこの状況に強烈に興奮していることを雄弁に物語っていた。 「見せてやるよ……俺が、お前をどうするのか」 ユウジは完全に捕食者の目つきになり、その硬く尖った先端を、親指と人差し指で容赦なく摘み上げた。 「んあっ……!? ちょ、っと……急に……っ♥️」 コリッ、と爪を立てるようにして強く捻る。 その瞬間、マルゴットの身体がビクンと大きく跳ね上がり、背中の翼がバサッと痙攣するように動いた。ベッドのスプリングがギシッと悲鳴を上げる。 「あはっ……んんっ、ユウジ君、上手……っ♥️」 余裕ぶっていた彼女の顔に、明確な快感の色が滲み出た。黄金の瞳が潤み、視線の焦点が微かにぼやけている。 その反応を見たユウジの内に、さらなる加虐心と、相手を支配しているという強烈な万能感が込み上げてきた。 「なんだよ、お前も……感じてんじゃねえか。ナルゼに見せるための演技じゃなかったのか?」 「ふふっ……当たり前、でしょ。だって、ユウジ君が……すごく、必死なんだもん……っ♥️ 私も、ちゃんと『奪われる側』を……体感しないと、ね……っ」 強がりと欲情が入り混じったマルゴットの言葉。 ユウジはそれ以上の言葉を封じ込めるように、彼女の唇へと自らの唇を深く重ねた。 ちゅぷっ……。 互いの唇が触れ合い、すぐにユウジの舌がマルゴットの口内へと強引に侵入していく。 「んんっ……ちゅ、れろ……」 マルゴットもまた、ユウジの舌を迎え入れるように自身の舌を絡ませてくる。 じゅるるっ、くちゃっ、ちゅるる。 唾液が激しく混ざり合い、糸を引くような生々しい粘着音が二人の耳元で直接鳴り響く。彼女の口内から広がるバニラの甘い風味と、互いの体温が溶け合い、ユウジの脳髄を完全に麻痺させていく。 深く、深く舌を絡ませながら、ユウジの右手はマルゴットの滑らかな脇腹を滑り降り、プリーツスカートの裾へと潜り込んだ。 温かく湿った空気が、スカートの中からむわっと立ち昇ってくる。 下着の薄い布地越しに、彼女の秘部へと指の腹を押し当てる。 「んぅっ……!?」 キスを交わしたまま、マルゴットの喉の奥から微かな驚きの声が漏れ、彼女の太ももがビクッと反応してユウジの腰を挟み込んできた。 ユウジの指先に伝わってきたのは、彼女の言葉が嘘ではない証拠。 下着のクロッチ部分は、すでに彼女自身の発する熱と愛液によって、ぐっしょりと重く湿り気を帯びていたのだ。 (こいつ……ここまで濡れて……) ユウジは布越しにその湿った割れ目を指の腹でゆっくりと撫で上げる。 「んああっ……♥️ はぁっ、ユウジ、くんっ……♥️」 唇を離した瞬間、マルゴットの口から甘く、熱を帯びた吐息が溢れ出した。彼女の瞳は完全に欲情に濁り、先ほどまでの余裕のあるからかいの表情は完全に崩れ去っている。 ユウジの指先の動きに合わせて、彼女の腰がシーツの上で無意識に蠢き、さらなる快感を求めて押し付けられてくる。 部屋の中は、すでにむせ返るような二人の熱気と匂いで満たされ、外の冷たい夜の空気とは完全に隔絶された、狂ったような温度と湿度を持った愛欲の密室と化していた。 薄暗いワンルームの空間に、むせ返るようなバニラの香りと、二人の荒い呼吸だけが充満していた。 ユウジの指先は、マルゴットのプリーツスカートの奥、下着の薄い布地越しに彼女の最も無防備な中心へと押し当てられている。 指の腹を通して伝わってくるのは、想像を絶するほどの熱と、布地を通り越して指先を濡らすほどの大量の愛液だった。 (こいつ……っ、どんだけ濡らしてんだよ……!) 自分をからかい、余裕ぶっていたはずのマルゴットが、実はすでにこれほどまでに発情し、身体の準備を完全に整えていたという事実。 その圧倒的な肉体の反応が、ユウジの中にあるなけなしの理性を完全に吹き飛ばし、どす黒い支配欲と加虐心に火を点けた。 「ひゃあっ……♥️ んんっ、ユウジ、くんっ……そこ、だめぇっ♥️」 ユウジが布地の上から、重く湿った割れ目の形をなぞるように中指を動かすと、マルゴットは甘い嬌声を上げて背中を大きく反らせた。 仰向けに倒された彼女の背中で、六枚の黄金の翼がバサリとシーツを打ち据える。古いスプリングベッドがギシッと悲鳴を上げ、むき出しになった規格外に巨大な双丘が、重力と振動に従ってぶるんっ、むっちりと無防備に揺れ動いた。 「だめじゃないだろ。お前が奪いに来いって言ったんだからな」 ユウジは低く掠れた声で吐き捨てると、マルゴットのスカートの裾を無造作に掴み、一気に腰の上まで捲り上げた。 露わになったのは、青白い蛍光灯の光を反射してぬらぬらと艶めく、健康的な白い太ももと、すでに愛液でぐっしょりと色を変えた黒いレースの下着。 「ああっ……見られ、てるっ♥️ ガっちゃん以外に、こんなとこ……っ♥️」 マルゴットは両手で顔を覆いながらも、その太ももを閉じるどころか、自らユウジの視界に向かって無防備に広げてみせた。 恥じらいの言葉とは裏腹に、彼女の黄金の瞳の奥には、友人の恋人に自らを暴かれているという強烈な背徳感と、狂ったような快感の色がどろどろと渦巻いている。 その爛れた視線に煽られるように、ユウジは黒いレースの縁に指を引っ掛け、一切の躊躇なく下へと引きずり下ろした。 太ももを滑り落ち、膝下へと追いやられた下着。 完全に剥き出しになったマルゴットの秘部は、すでに彼女自身の熱と体液によって濡れそぼり、薄桃色の粘膜がだらしなく口を開いて、とろとろとした透明な蜜を太ももの内側へと滴らせていた。 「……っ」 ユウジは喉をゴクリと鳴らし、その濡れそぼった粘膜の入り口へと、直接二本の指を突き入れた。 ぬちゃっ……ぐちゅるっ! 「ああっ!? ひぎぃっ♥️ あああっ♥️」 水気の多い生々しい音が鳴り響き、マルゴットの身体が電気を流されたようにビクンと大きく跳ね上がった。 ユウジの指を飲み込んだ肉の壁は、異常なほどの高熱を帯びており、侵入してきた異物を歓迎するように四方八方からぬちゃぬちゃと絡みついてくる。 (すげえ熱い……それに、勝手に指を締め付けてきやがる……っ!) 「どうしたんだよ。さっきまでの余裕はどこ行ったんだ? 野獣みたいに来いって言ったのはお前だぞ」 ユウジは意地悪く囁きながら、突き入れた指を容赦なく前後に動かし始めた。 ぐちゅっ、ぬるっ、じゅるるっ! 「ああんっ♥️ はあっ、やぁっ♥️ 指、すっごい奥までぇっ♥️」 指を抜き差しするたびに、マルゴットの秘部からどろりとした愛液が溢れ出し、指にまとわりついて粘り気のある水音を部屋中に響かせる。 ユウジの荒々しいピストンに合わせて、マルゴットはシーツを両手で強く握りしめ、首を激しく横に振った。金色の髪が乱れ、彼女の口からはとめどなく甘い吐息と嬌声が漏れ出し続ける。 指の腹で内部の柔らかいひだをこすり上げ、ふいに少しだけ角度を変えて、内側の膨らみを抉るように刺激する。 「ひゃんっ!? そこっ、そこいいっ♥️ もっと、もっと強く抉ってぇっ♥️」 完全に快楽に支配されたマルゴットの懇願。 その声を聞いたユウジは、もうこれ以上待つことなどできなかった。 指を乱暴に引き抜くと、マルゴットから一瞬だけ身体を離し、自身のズボンのベルトに手をかける。 カチャリ、と金属のバックルが外れる音が鳴り、ジッパーを引き下ろす。ズボンと下着をまとめて蹴り脱ぐと、極度の興奮と熱によってすでに限界まで張り詰め、赤黒く怒張したユウジの熱の塊が、夜の冷たい空気に晒された。 「あ……」 マルゴットは潤んだ黄金の瞳を見開き、ユウジの股間から反り立つそれをじっと見つめた。 彼女の喉がゴクリと鳴り、舌先で自身の艶やかな唇を舐め回す。まるで極上のご馳走を前にした肉食獣のような、貪欲でどろどろとした眼差し。 「ナイちゃんの……奥、全部……ユウジ君ので、めちゃくちゃにして……っ♥️」 両脚を大きく開き、ユウジを迎え入れる態勢をとったマルゴット。 その誘いに乗るように、ユウジは再び彼女の上に覆い被さり、自身の硬く熱い先端を、蜜で濡れそぼったマルゴットの入り口へとピタリと押し当てた。 「……入れるぞ」 「うんっ♥️ きて、早くぅっ♥️」 ユウジは腰に力を込め、彼女の内部に向かって一気に腰を押し込んだ。 ぶちゅっ……ぬちぃっ! 「ああっ!? ああぁっ……♥️」 狭く熱い肉の壁が、ユウジの先端を飲み込み、無理やり押し広げられていく。 経験のないユウジにとって、女性の体内へ挿入するという行為は強烈な衝撃だった。四方からみっちりと絡みついてくる恐ろしいほどの圧迫感と、火傷しそうなほどの高熱。粘膜と粘膜が直接擦れ合い、溶け合うような生々しい感触が、下半身から脳髄へと一直線に突き抜けていく。 「くっ……あ、熱っ……! なんだこれ、すげえ締まる……っ!」 「あはっ♥️ ユウジ君の……おっきくて、すっごく熱いぃっ♥️ ナイちゃんの奥、ぎゅうぎゅうに広がってるぅっ♥️」 根元まで完全に飲み込まれた瞬間、二人の身体がピタリと密着し、ユウジの腹とマルゴットの下腹部がぶつかり合った。 マルゴットはユウジの首に両腕を回し、その背中に生えた黄金の翼を大きく広げて、ユウジの身体を包み込むようにホールドした。彼女の豊満な双丘がユウジの胸板にぐにゅりと押し付けられ、二人の心音が直接重なり合う。 「動くぞ……っ」 ユウジは荒い息を吐きながら、マルゴットの腰を両手で強く掴み、ゆっくりと腰を引き始めた。 内部の肉がユウジの質量を引き留めるようにぬちゃぁっと絡みつき、引き抜かれる瞬間に強烈な摩擦を生み出す。そして、再び深く奥底へと打ち込む。 ぱんっ! ぐちゅるっ! 「ああっ♥️ はあっ♥️ いいっ、すごくいいぃっ♥️」 肉と肉が激しくぶつかり合う破裂音と、大量の蜜が掻き回される水音が、密室に生々しく鳴り響き始めた。 ユウジは次第に理性を失い、腰の動きを加速させていく。 ぱんっ! ぱんっ! ぐちゅ、ぐちゅるるっ! 「ひゃああっ♥️ 奥っ、一番奥までぇっ♥️」 ユウジが強く腰を打ち付けるたびに、ベッドのスプリングがギシギシと悲鳴を上げ、マルゴットの巨大な胸が波打つように激しく揺れ動く。 彼女の体内は、ユウジの動きに合わせて波打つように収縮を繰り返し、その度にユウジの急所をぎゅうぎゅうと締め上げてきた。 「くそっ……お前、中、どんだけ……っ!」 「あはあっ♥️ ユウジ君っ、もっとっ♥️ 奪う側なんでしょぉっ? ナイちゃんのこと、もっと乱暴に扱ってぇっ♥️」 マルゴットは下からユウジの腰に両脚を絡みつけ、自ら腰を跳ね上げてユウジの打ち込みをさらに奥深くへと誘導してくる。 その圧倒的な肉欲と、友人の恋人を犯しているという強烈な背徳感が、ユウジの理性を限界まで削り落としていく。 (こいつ……本当に、頭おかしくなりそうだ……っ!) ユウジはマルゴットの要求に応えるように、さらに腰の振りを荒くし、彼女の最も深い場所を目指して容赦のないピストンを叩き込み続けた。 肌と肌がぶつかる音、粘り気のある水音、スプリングの軋み、そして二人の荒々しい呼吸。それらすべての音が混ざり合い、夜のワンルームは狂おしいほどの熱狂と快楽の渦へと深く、深く沈んでいった。 薄暗い六畳半のワンルームに、肉と肉が激しく叩き合う破裂音と、粘液が掻き回される水音だけが狂おしいほどに反響していた。 ぱんっ! ぱんっ! ぐちゅるるっ! 「くそっ……! なんなんだよ、お前……っ!」 ユウジは歯を食いしばり、汗ばんだ額から滴る汗を拭う余裕すらなく、目の前の圧倒的な肉体の海へと腰を打ち付け続けていた。 腰を引くたびに、マルゴットの内部の熱く柔らかな粘膜が、ユウジの質量を逃がすまいとぬちゃぁっと絡みついてくる。そして再び最奥を目指して強く打ち込めば、中の肉が無理やり押し広げられ、限界まで張り詰めたユウジの急所をぎゅうぎゅうと締め上げてきた。 スプリングが悲鳴を上げる古いベッドの上で、マルゴットの身体はユウジの激しいピストンに合わせて大きく揺さぶられている。 仰向けに倒された彼女の背中では、六枚の黄金の翼がシーツを擦り、サワサワという音を立てている。重力から解放された規格外に巨大な双丘は、ユウジが腰を打ち付けるたびに、ぶるんっ、むっちりと形を変えて暴力的に跳ね回っていた。 それだけ激しく、容赦なく内側を荒らされているというのに。 「あははっ♥️ ほらほら、頑張れ頑張れ〜♥️」 マルゴットは、ユウジの首に両腕を回したまま、まるでスポーツの応援でもしているかのような、暢気で、しかし確実に相手を小馬鹿にしたような声を出した。 「……っ!」 ユウジの動きが、ほんのコンマ数秒だけブレる。 見下ろした先にあるマルゴットの顔には、苦痛や快感で歪むような表情は微塵もなかった。黄金の瞳は楽しげに細められ、桜色の唇は妖艶な弧を描いている。彼女の額にも薄っすらと汗が浮かび、吐息は確実に熱を帯びているにも関わらず、その態度はあまりにも余裕に満ちていた。 (クソッ……煽りやがって……!) ユウジの胸の奥で、どす黒い苛立ちの炎がボワリと燃え上がった。 友人の恋人を奪い、密室で犯しているという強烈な背徳感。それすらも、マルゴットのこの絶対的な強者のような態度の前では、自分がただ手のひらの上で踊らされているだけの滑稽なピエロのように思えてくる。 「なんだよ……っ! その余裕な顔……っ!」 ユウジはマルゴットの細い腰を両手でガシッと掴み、指が食い込むほどの強い力で固定した。 そのまま、腰の振幅をさらに大きくし、打ち込む速度を一段階引き上げる。 ばちんっ! ばちんっ! ぐちゅ、じゅるるるっ! 「ああんっ♥️ んんっ、ユウジ君、ちょっとペース上がったかな?♥️ でも、まだまだナイちゃん、全然余裕だよぉ?♥️」 激しい衝撃にマルゴットの身体が上に跳ね、豊かな金髪がシーツの上に乱れる。しかし、彼女の口から零れる声は、やはり甘く弾んだ嬌声であり、ユウジが求めているような『乱された女』の悲鳴ではなかった。 「ナイちゃんね、もっと奥まで……ぐりぐりって抉られるの、好きなんだよねぇ♥️ ユウジ君、もっと頑張らないと、ガっちゃんに見せるための『よわよわなナイちゃん』には、なれないよ?♥️」 下からユウジを見上げ、コテンと首を傾げるマルゴット。 その言葉は、ユウジの男としてのプライドを粉々に打ち砕き、同時に、理性を完全に吹き飛ばすほどの強烈な刺激剤となった。 (……舐めやがって。そんなに余裕ぶってられるのも、今のうちだ……っ!) ユウジの視界が、真っ赤な欲望と怒りの色に染まる。 マルゴットが求めている『奪う側の男の役割』。それを演じるという建前すらも投げ捨て、ただ目の前の女を屈服させ、その余裕の顔を快楽でぐちゃぐちゃに歪ませてやりたいという、純粋な征服欲だけが脳髄を支配した。 「言ってろ……っ! 後で泣き見ても知らないからな!」 ユウジはマルゴットの腰を掴んでいた手を離し、今度は彼女の両太ももの裏側に腕を回した。 そのまま、マルゴットの膝が彼女自身の胸元に付くくらいまで、強引に両脚を折り曲げて上に押し上げる。 「えっ……? あ、ちょっ……」 予想外の体勢の変化に、マルゴットの黄金の瞳が初めて微かな驚きで見開かれた。 脚を高く上げられ、腰がシーツから浮き上がったことで、マルゴットの秘部はユウジの目前へと完全に曝け出され、同時に内部への侵入角度が劇的に変化する。 「泣くのはお前だ……っ!」 ユウジは、自身の最も硬く熱い先端を、マルゴットの入り口に押し当てたまま、全体重を乗せて一気に、かつてないほどの深さまで腰を打ち込んだ。 ごちゅっ……!! 「ひっ!? あ、ああっ!?♥️♥️」 鈍い音とともに、ユウジの質量がマルゴットの最奥の壁を容赦なく突き上げる。 今までのピストンでは届かなかった、未開の柔らかい肉の奥底。そこを、硬い先端でダイレクトに抉り抜かれた瞬間、マルゴットの喉から完全に裏返ったような、短い悲鳴が弾け飛んだ。 「どうした。まだ余裕か?」 ユウジは奥深くまで突き入れた状態を維持したまま、意地悪く囁き、腰を小刻みにグラインドさせた。 硬い先端が、マルゴットの最奥の敏感な部分をぐりぐりと執拗に擦り上げる。 「あ、ああっ♥️ だめっ、そこっ、深く入りすぎっ♥️♥️ ああんっ、ひぎぃっ♥️」 マルゴットの身体が、電気を流されたようにビクンビクンと激しく痙攣した。 先程までの余裕のある態度は完全に崩れ去り、彼女の両手は行き場を失ったように空を掴み、シーツを掻き毟る。折り曲げられた太ももが、ユウジの腕の中でガクガクと震え、内部の肉壁はかつてないほどの強い力でユウジの急所を締め付けてきた。 (すげえ……っ。中が、びくびく痙攣して……っ!) 指が食い込むほどの強烈な内部からの圧迫感と、沸騰しそうなほどの高熱。 それがユウジの下半身に、脳髄が焼き切れるような快感をもたらす。 「お前がもっと抉れって言ったんだろ。ほら、声出せよ!」 ユウジは再び腰を引き抜き、そして再び、最奥の急所を的確に狙って深く、重い一撃を叩き込んだ。 ぱんっ! ごちゅっ! ぐちゅるるるっ! 「あああっ!♥️ ひゃんっ♥️ 奥っ、奥抉られてるぅっ♥️♥️」 マルゴットの巨大な双丘が、衝撃で顎にぶつかる勢いで激しく波打つ。 バニラのように甘く濃厚だった彼女の匂いは、今や汗と愛液のむせ返るような雌の匂いへと完全に変質し、ユウジの鼻腔を侵食していた。 「あはっ……♥️ んんっ、ユウジ君っ、すごいっ♥️ ナイちゃんの奥、めちゃくちゃになってるぅっ♥️」 言葉こそまだ辛うじて紡いでいるものの、その声は甘く蕩けきり、唾液に塗れて輪郭を失っている。潤んだ黄金の瞳からは一筋の涙がツーッと頬を伝い落ち、口の端からはだらしなく銀色の糸が垂れていた。 (これだ……っ。この顔が見たかったんだ……っ!) ユウジは完全に捕食者のスイッチが入り、もはや一切のブレーキをかけることなく、野生の獣のように腰を打ち付け続けた。 ばちんっ! ぱんっ! ぐちゅっ、じゅるるっ! 密室に響き渡る破裂音は徐々にその間隔を狭め、やがて連続する一つの大きなノイズとなって部屋を満たしていく。 マルゴットの身体はユウジの暴力的なピストンによって上下に揺さぶられ続け、背中の黄金の翼は完全に力を失い、シーツの上で乱雑に散らばっていた。 「ああっ♥️ だめっ、ナイちゃん、もうっ♥️ おかしくなっちゃうぅっ♥️♥️」 「俺だって……もう、限界だ……っ!」 ユウジの全身の筋肉が硬く強張り、下腹部の奥底から煮えたぎるようなマグマがせり上がってくるのを感じる。 極限まで高められた摩擦熱と、マルゴットの内部から襲い来る恐ろしいほどの締め付けが、ユウジの理性の防波堤を完全に決壊させた。 「ああっ……! 出るっ……!」 「いいよっ♥️ ユウジ君の熱いの、ナイちゃんの奥に、全部出してぇっ♥️♥️」 マルゴットの懇願が、最後の引き金となった。 ユウジは彼女の最も深い場所へと、腰を限界まで強く押し込んだ。 ごちゅんっ……!! 「おおぉっ……!!」 ユウジの喉の奥から、獣のような声にならない呻きが漏れる。 同時に、硬く張り詰めていた先端から、白濁した熱い欲望の奔流が、マルゴットの柔らかな最奥へと勢いよく放たれた。 どくっ、どくんっ、びゅるっ! 「ああっ!?♥️♥️ 熱いっ、熱いぃっ♥️ ユウジ君の、いっぱい中に入ってくるぅっ♥️♥️」 マルゴットの内部へと、大量の精液が脈打つように注ぎ込まれる。 その強烈な熱と圧力を体内で直接受け止めたマルゴットは、背中を大きく反らせ、白目を剥き出しにして、かつてないほどの甲高い嬌声を上げた。 「んんっ……はあっ、はあっ……!」 ユウジは射精の快感と疲労で完全に身体の力が抜け、マルゴットの豊満な胸の上に覆い被さるように倒れ込んだ。 密着した肌から、二人の異常に早い心音が、トクトクと重なり合って伝わってくる。 「あはっ……♥️ んんっ、ユウジ君、すごい量……♥️ お腹の中、ぱんぱんだよぉ……♥️」 マルゴットはユウジの背中に弱々しく腕を回し、蕩けた声で耳元に囁いた。 ユウジの熱い塊はまだ彼女の内部に深く突き刺さったままであり、微かに脈打つたびに、漏れ出した精液と愛液が混ざり合った生温かい液体が、二人の結合部からツゥーッと太ももを伝ってシーツへと滴り落ちていた。 薄暗い部屋の中には、二人の荒い呼吸音と、行為の余韻を告げるむせ返るような匂いだけが、いつまでも濃密に漂い続けていた。