「佳織ねぇね、それ何?」 キャス子ちゃんこと木末 聖煌ちゃんは大峠 佳織ちゃんのもとに届いた一枚の紙切れに興味津々。 ちょっと見せて欲しい。あわよくばそれが欲しい。と言わんばかりの勢いで佳織ちゃんに迫ります。 書かれている内容に目を通しつつ、ちょっと待ってねとキャス子ちゃんを宥める佳織ちゃん。 「えっと、何々?豪華クルーズの旅に無料でご招待…8月14日の指定した時間より、この招待状にパートナーデジモンと同時に触れることによって船内エントランスへの転移が可能です…?へぇ、すっごい」 見るからに怪しさ満点の招待状ですが、豪華客船の旅に参加出来るとだけあって年相応に佳織ちゃんのテンションも高まります。 同様にキャス子ちゃんも目をキラキラさせながらテンション爆上がり。佳織ちゃんとの旅行が楽しみで仕方がない様です。 しかし…… 「待ってキャス。『招待状を持たないご家族様やご友人様などのご同伴・ご乗船は承りかねますこと、何卒ご理解とご了承を賜りますようお願い申し上げます。』…って書いてある。これ多分あたしと相棒しか行けないんじゃないかな?」 佳織ちゃんの一言にキャス子ちゃんの目の輝きは一気に消え、おろおろと狼狽え始めました。 と、そこへやって来たのは浅野ヒバリくんちゃん。ひょんな事でキャス子ちゃんと出会い、玩具にさr…お友達になった年上のお兄さん(?)です。 「お、佳織もそれ貰ったんだ。俺のとこにも同じのが来たぜ」 どうやらヒバリくんちゃんのところにも佳織ちゃんが貰ったものと同じ招待状が届いていた様でリュックの中からそれを取り出してみせます。 まるでキャス子ちゃんだけが仲間外れにされている様な状況にチョコモン(プリスティモン)もグミモン(ピニャタモン)も大人しくしている筈などありません。 まず手始めにチョコモンがヒバリくんちゃんの服の中へと潜り込むと、モゾモゾと中で動き回りました。 「ひぁっ!?……ちょっと…チョコモ……やめ……あぁっ……んぅっ…」 ヤケクソになって暴れ回っている様でいて的確にヒバリくんちゃんの敏感な箇所を責めるチョコモン。 妙に色っぽい声を出し、息を荒くしながら顔を紅潮させるヒバリくんちゃんにグミモンの更なる追撃が襲います。 「助けて欲しけりゃ今すぐその招待状をこっちに渡しな。このままじゃあまりにもキャスが可哀想だろ」 明らかな脅迫。ですがこの取り引きに応じなければチョコモンの手が止む事は決して無いでしょう。 責められ続けておかしくなっちゃう前に招待状を渡して楽になってしまおうか…その様に考え始めたヒバリくんちゃんを見かねたヌメモンは溜め息を吐き、佳織ちゃんに一言。 「……アネゴ」 「うん、わかってるよ相棒」 佳織ちゃんの力でチョ・ハッカイモンに進化させて貰ったヌメモンは背後からグミモンの首根っこを掴み、続け様にヒバリくんちゃんの服の中に居たチョコモンを器用に引っ張り出しました。 「はいはい、今すぐやめな。ヒバリが可哀想だろ」 「うわっ!てめえ何しやがる!?」 「HA☆NA☆SE!!」 チョ・ハッカイモンの手の中でジタバタと暴れるグミチョココンビをよそにキャス子ちゃんは… 「わかった……キャスだけ招待状を貰えなかったはきっとデジモンイレイザーの仕業。 また御礼参りしなきゃ…」 「え?ちょっとキャス!?」 佳織ちゃんが止めようとした時には既に時遅し。キャス子ちゃんはデジタルゲートを開けてそそくさと中に入ってしまいました。 「もうっ!またあの子は!…………それにしてもほんとなんでだろ…」 思い立ったら即行動を相変わらず地で行くキャス子ちゃんにたじたじな佳織ちゃん。 しかしながらこの一件が本当にデジモンイレイザー仕業だったとは佳織ちゃんやヒバリくんちゃん…そして発言したキャス子ちゃんでさえ、この時はまだ知る由も無かったのです。 ───────── 「奈良平さんのところにも届いていたのですね、そちらの招待状…。橘樹さんや逆井さんも同じものを持っていましたよ。」 キャス子ちゃんがイレイザーの本拠地へ殴り込みに向かったのと同じ頃、ここにも招待状を持たない子が一人…。名前は千年桜 織姫、キャス子ちゃんの再従姉に当たる女の子です。 恋人である奈良平 鎮莉さんのお家にお邪魔していたところ、偶然にも机の上の招待状を見つけてしまいました。 こちらもキャス子ちゃんと同じく、身近な人が尽く招待状を受け取っている中、何故か一人だけ届かないでいる織姫ちゃん。 この事を聞いて不自然に思ったのか、奈良平さんも少し訝しげな表情をしています。 「織姫ちゃんにだけ……というのも変な話ですよね〜」 「確認したところ、姉様や焔にもこの様なものは届いていないそうで…」 「織姫ちゃんの一族、出禁でも食らっているんでしょうかね〜?」 思い付いた事を冗談めかして言ってみた奈良平さんですが、対する織姫ちゃんは少しムッとした様に眉を顰めました。 「奈良平さんまで橘樹さんと同じ様な事を言わないで下さい…」 「あらあら、ごめんなさいね〜」 「……奈良平さんなので許します」 奈良平さんにそっと身を任せる様に寄り掛かる織姫ちゃん。 奈良平さんも同様に身を寄せ、織姫ちゃんの頭を優しく撫でてやります。 「奈良平さん…」 「何ですか?織姫ちゃん」 「それはそれとして招待状は偽造しました。ちゃんと目的の場所へ転移出来る事も実証済みですので、共に参りましょう」 「えぇ、勿論です」 ───────── またまた同じ頃…… 「クシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃんクシナちゃん!!」 「うるさいな……そんなに連呼しなくてもちゃんと聞こえてるから」 嬉々とした様子で須佐クシナちゃんに迫る千明 翼冴ちゃん。 手にした2枚の紙切れをクシナちゃんの顔面すれすれな位置でひらひらと見せびらかします。 「見て頂戴!」 「何も見えない…」 近過ぎて見えない。確かにクシナちゃんはそう言ったのですが、翼冴ちゃんはそんな事など全くのお構い無しに話を続けます。 「豪華クルーズの旅に招かれてしまったのよ!この上無く胡散臭い招待状だけど、行く事にしたから数日空けるわね!」 尚も視界が奪われているため紙に書かれている内容は一切確認できないクシナちゃんでしたが、『クルーズの旅』というワードには心当たりがありました。 「恐らくだけどそれ、ボクのところにも来たよ。…でもなんで翼冴は2枚持ってるの?」 翼冴ちゃんには妹が居ると聞いていたクシナちゃん。 2枚のうち1枚はその妹のやつかな?などと思いつつ一応尋ねてみたクシナちゃんでしたが、返って来た答えは予想だにしないものでした。 「一枚は私がボールペンで書いた自作の招待状よ!」 正直、この子は一体何がしたいのか…クシナちゃんには全く理解できませんでした。 しかしながら翼冴ちゃんにはちゃんと意図があった様で、真剣な表情で事の顛末を話し始めます。 「指定した時間に招待状に触れる事で船内のエントランスへと飛ぶ事が出来る……ここにはそう書かれてあるわよね?」 「…うん。」 「差出人のクラウス・シュテルンって人はそんな凄い御手紙を作り出す事が出来た。 だったら私に同じものが作れたって何らおかしな事ではないでしょ?」 クシナちゃんは開いた口が塞がりません。 「いや、おかしいからね」 「出来た人が居るという前例があるのなら当然私にも同じ事が出来なくちゃいけないの。最強とはかくあるべきだから!!」 キャパオーバーを起こし、脳内で無限に拡がる大宇宙を展開させちゃうクシナちゃん。 もう、何も言うまい……心の中でそう強く誓うクシナちゃんなのでした。 ───────── イレイザーベースに乗り込んで来たキャス子ちゃんの前に立ちはだかったのは日竜将軍デジタマモン超究極体。 イレイザー軍の中でも特に強い力を持ったネオデスジェネラルの一人です。 「貴様か、侵入者というのは………」 途方もないほどの強敵を前にして一切物怖じしないキャス子ちゃんを見て彼女に興味が湧いたのか、デジタマモン超究極体は楽しげに笑みを浮かべます。 「面白い……貴様はこの私が直々に屠ってやるとしよう。せめて明日のクルーズ船襲撃に備えてのウォーミングアップくらいにはなれば良いが…」 クルーズ船…その言葉をキャス子ちゃんは決して聞き逃しませんでした。 まるで瞬間移動をするが如くデジタマモン超究極体に急接近したキャス子ちゃんは、そのまま日竜将軍の身体に取り憑きました。 幽霊のお母さんから生まれたキャス子ちゃんにとって他者に憑依する事など造作も無い事……何の苦もなく相手の懐に入り込み、そのデジコアを握り潰してしまったのです。 いくらイレイザー軍最強の戦士と言えど、体内からデジコアを破壊されてはひとたまりもありません。 完全に事切れて物言わぬ骸となってしまい、身体の主導権をキャス子ちゃんに譲渡する事となってしまいました。 かくして、ネオデスジェネラルの肉体という乗船チケットを無事ゲット出来たキャス子ちゃん。 果たしてお船の上では一体どんな冒険が待っているのでしょうか…?