「……兄さん。お食事の準備が整いました。お手を洗って、お席についてください」 「あ、ああ……分かった。すぐ行く」 洗面所で冷水を顔に叩きつけ、鏡を睨む。 そこに映る自分の表情は、自分でも呆れるほど強張っていた。 (……しっかりしろ、俺。相手は実の妹だぞ) リビングに戻ると、エプロン姿の綾香が静かにたたずんでいた。 黒髪を後ろで一つにまとめ、隙のない立ち姿でこちらを見つめている。 「……兄さん。髪に水滴がついておりますよ。ちゃんとお拭きになってください」 「あ、ごめん……慌てて顔洗ったから」 「謝る必要はございません。ただ、だらしないお姿を目の前で見せられるのは不快なだけです」 「……相変わらず辛辣だな、お前は」 「事実を申し上げたまでです。さあ、料理が冷めないうちにお座りください」 食卓には湯気の立つ湯豆腐と魚の煮付け、小鉢が綺麗に並べられていた。 対面に着席し、箸を取る。 「いただきます。……あ、今日の湯豆腐、出汁が利いててうまいよ」 「……ありがとうございます。お気に召したようで何よりです」 「そういえばさ、綾香。学校の方はどうなんだ? 最近、あんまり話してなかったし……」 「特筆すべきことはございません。至って平穏です」 「そうか。部活とか、友達関係とか……何か困ってることとかないか? 兄貴として、相談に乗るくらいなら――」 「兄さんに心配していただくようなことは、何ひとつございません」 「……そっか」 「ええ。私には何の不自由もございませんから。……それより、お豆腐が冷めてしまいますよ」 「あ、ああ。(パクッ……ゲホッ、コホッ!)」 「……落ち着いてください、兄さん。誰にも奪われはいたしません」 「熱っ……ゴホッ、だ、大丈夫だ……」 「はぁ……。お冷をどうぞ」 「サンキュ……助かった」 「礼には及びません。兄さんがお食事を喉に詰まらせて倒れられては、私が困りますので」 「……お前は本当に、一言多いな」 「……」 綾香は静かに視線を落とし、茶碗を持つ細い指先に微かに力を込めた。 「……何か言いたいことでもおありですか?」 「いや、別にそういうわけじゃ……ただ、もっと普通に話せたらなと思って」 「普通、とは?」 「……昔みたいにさ。くだらない話で笑い合ったりとか」 「私はいつでも『普通』にしておりますが。……不満がおありでしたら、具体的に仰ってください」 「不満なんてないよ。ただ……お前が俺を避けてるように見えるから」 「……気のせいです。私はただ、兄妹としての適切な距離を保っているだけに過ぎません」 「適切な距離、ね……」 「ええ。これ以上、近づく必要も遠ざかる必要もございません」 箸を置く小さな音が、静かなリビングに響く。 「ごちそうさまでした。……お召し上がりになりましたら、食器はそのままで結構です。私が洗っておきますので」 「いや、それくらい俺も手伝うよ。いつも作ってもらってばかりだし」 「結構です。兄さんのお手を煩わせる筋合いはありませんから」 「でも、妹に全部押し付けるのも申し訳ないし……」 「申し訳ないとお思いなら、余計な気を遣わずに自室へお戻りください」 「……綾香」 「お食事はお済みですね? では、失礼いたします」 「あ、待って――」 「……何か?」 振り向いた綾香の瞳には、一切の感情が浮かんでいなかった。 だが、その白く細い首筋と、かすかに震える唇が、言葉以上の緊張を物語っていた。 「……いや。なんでもない。おやすみ」 「……はい。おやすみなさいませ、兄さん」 ギシ、ギシと階段を踏みしめる音が遠ざかり、綾香の部屋のドアが重く閉まる。 残されたのは、冷めきった料理の残り香と、俺一人きりの静寂だけだった。 (適切な距離、か……) 近付きすぎれば、自分の中に芽生えつつある不徳な感情が漏れ出てしまう。 だから俺は距離を置き、綾香もまた、冷酷なまでの礼儀正しさという鎧で自分を守っている。 夜が深まり、時計の針が深夜零時を回る頃。 自室のベッドで天井を見つめていた俺は、強烈な睡魔と、全身の骨が擦り減るような不気味な浮遊感に包まれていった――。 ◇ 「……ん……あ……」 重い頭を抱えながら体を起こす。 手に触れたのは、自宅の敷布団の感触ではない。滑らかで沈み込むような、上質なシーツの肌触りだった。 「……ここ、は……?」 目を開けると、そこは見覚えのない広い部屋だった。 天井には間接照明が怪しく灯り、中央にはキングサイズのダブルベッド。奥にはガラス張りのバスルームが見える。 「あ……兄、さん……?」 すぐ脇のシーツの上で、身を縮めるようにして綾香が横たわっていた。 ゆっくりと体を起こし、周囲を見回した彼女の顔が、瞬く間に蒼白になっていく。 「な、なんですか、ここは……! 私、自室で寝ていたはずですが……!」 「俺も分からん……。急に意識が遠のいて、気づいたらここに……」 「……冗談はやめてください。兄さんが私に何か変な薬でも盛って、このような場所に連れ込んだのですか!?」 「なっ……バカ言うな! 俺がそんなことするわけないだろ!」 「では説明してください! この不気味な部屋は何なのですか!?」 「説明しろと言われても……俺だって目覚めたばかりだ!」 跳ね起きるようにベッドを降り、出入口を探す。だが、壁のどこを見渡しても外への扉らしきものは存在しなかった。 外から丸見えの透明な壁で遮られた浴室とトイレへのドアがあるのみ。 窓もない。完全に密閉された空間だ。 「……ドアが、ない……?」 「嘘……そんなはず、ありません……! どこかに非常口や窓があるはずです!」 綾香は素足のまま立ち上がり、なりふり構わず部屋の壁を叩いて回る。 しかし、どこを叩いても重く鈍い音が返ってくるだけだった。 「開かない……窓もない……! 兄さん、これ、どうなっているんですか!?」 「落ち着け、綾香! まずは状況を整理しよう」 「落ち着いていられるわけがございません! 出口のない部屋なんて、常識的に考えてあり得ないでしょう!?」 「スマホは……そもそも無いみたいだ」 「私、寝る前にパジャマに着替えたはずなのに、どうして制服なのでしょう……」 その時、沈黙していた枕元の大きなTVモニターが、突如として音もなく発光した。 ビシッ、という静電気の弾ける音とともに、漆黒の画面に白い文字が浮かび上がる。 『――密室からの脱出条件――』 『指定課題の完全消化、および膣内射精』 『現在の初期課題』 『A1:手を繋ぐ』 『A2:見つめ合う』 『A3:抱き合う』 『A4:キスをする』 文字を目にした瞬間、部屋の中に凍りつくような沈黙が流れた。 「……は……?」 綾香の口から、乾いた声が漏れる。モニターの文字と、俺の顔を交互に見つめる彼女の瞳に、嫌悪と恐怖が波寄せていた。 「……何ですか、この悪質な冗談は」 「俺に言われても……」 「兄さんの仕業ですね!? こんな悪趣味な部屋を用意して、私にそのような……異常な真似をさせるつもりなのですか!?」 「違うって言ってるだろ! 仮にそうだとしたらどうやったらこうなるんだよ。俺も何が起きてるかサッパリ分からないんだ」 「……それもそうですね。ですが、なんですか、これは」 「この部屋にはドアも窓もない。どう見ても普通の場所じゃない」 「……っ!」 綾香は後退りし、ベッドから一番遠い部屋の隅へと背中を打ちつけた。 抱きかかえるように自分の腕を擦りながら、蔑むような冷たい視線で俺を射抜く。 「……近寄らないでください。気安く触れようものなら、声を上げて抵抗いたしますから」 「とにかく、何か脱出の手がかりがないか探してみる」 妹に強く拒絶されて傷つきながら、俺は部屋の中を探索する。壁は一枚の金属板のように頑丈で、窓も換気扇の隙間すら存在しない。浴室には水洗トイレと洗面所、ガラス張りのシャワーブースがあるだけだった。 「……何か食べるものとか、鍵みたいなものはないのか……?」 ベッド脇の小さな冷蔵庫に手をかけ、ドアを開ける。 「……え?」 「……何かあったのですか、兄さん」 「いや……食料は一切ない。ただ……」 冷蔵庫の中には、棚一面に整然とボトルが並べられていた。黒と金色のラベルが貼られた、小容量のガラス瓶――栄養ドリンク、それも精力増強を謳う類のものばかりが、ぎっしりと詰まっていた。 それと、性的なオモチャ。 「精力ドリンク?」 「不潔です……! なぜそのようなものが……!」 「……まあ、落ち着けって。とにかく、水か何か喉を潤せるものは……」 冷蔵庫の奥を探すが、入っているのはそのドリンク類のみ。 棚の横には小さな注意書きのカードが添えられていた。 『※本室内に食料は存在しません。空腹時は備え付けの精力ドリンクをご利用ください』 「……食料がない……?」 綾香がかすれた声で呟く。 「嘘でしょう……。ここでご飯も食べられずに放置されたら、私たちはどうなるのですか……?」 「……とりあえず栄養ドリンクはある。警察か誰かが探してくれるはずだ」 「そんなの……いつになるか分からないじゃないですか……」 腹の底から鳴る小さな音が、静かな部屋に空しく響いた。 綾香は顔を真っ赤にして、お腹を両手で隠すようにして身を縮める。 「……くっ……」 「綾香、お前……夕飯、あんまり食べてなかったろ」 「……関係ございません。放っておいてください」 「そうもいかないだろ。……喉も乾いてるはずだ」 俺は冷蔵庫から精力ドリンクの瓶を2本取り出し、1本を綾香に向かって差し出した。 「な……何ですか、それ! そんな怪しげなもの、飲むわけがございません!」 「背に腹は代えられないだろ。空腹と脱水で倒れたら終わりだぞ」 「何が入っているかも分からないものを口にするなんて……」 「俺が先に飲む。毒じゃないことくらいは確かめてやるから」 キャップを捻り開け、一気に喉へと流し込む。 濃厚で甘苦い、独特の薬草のような風味が口いっぱいに広がった。 「味は濃いが、毒じゃない。ただの栄養ドリンクだ」 「本当に大丈夫なのですか?」 「ああ。ほら、お前も飲め。意地を張って倒れられたら、それこそ困る」 綾香は疑わしげに瓶を見つめ、葛藤するように唇を噛んだ。 やがて、極度の喉の渇きに耐えかねたのか、震える手で瓶を受け取った。 「絶対に、変なマネはしないでくださいね」 「しないよ。早く飲め」 綾香は意を決したようにキャップを開け、小さな口を付けてちびちびと飲み始めた。 「……く、薬っぽくて不味いです……」 「まあ、美味いもんじゃないな」 二人がドリンクを飲み干して数分後。 突如として、胸の奥から急激な熱波が押し寄せてきた。 「……っ!?」 ドクン、と心臓が大きく脈打つ。 身体の深部からじわじわと沸き立つような、異様な熱さと動悸。 「……あ……兄さん……何、ですか……これ……?」 綾香が胸元を力なく掴み、荒い吐息を漏らす。 彼女の白かった頬が、朱を挿したように赤く染まっていた。 「滋養強壮成分が強すぎるのか? 体が火照るな」 冷房の効いた部屋の中で、俺たちの肌にうっすらと汗が滲み始める。 出入口のない密室の中で、怪しげな指示だけが、俺たちを追い詰めていくのだった。 ◇ どれほどの時間が過ぎ去ったのか、まったく分からなかった。 この部屋には窓もなく、時計の一つも置かれていない。 テレビモニターの冷たいバックライトと、ガラス張りの浴室から漏れる間接照明だけが、不気味に室内を照らし続けている。 「……兄さん。無駄な足掻きはやめなさいと言ったはずです」 部屋の反対側の隅で、膝を抱え込んだ綾香が冷ややかな声を投げかけてくる。 だが、俺にも分かっていた。その声にはいつもの張りがなく、酷く弱々しい。 「……やってみないと……分からんだろ……」 俺は荒い息を吐きながら、少し前に試みた脱出の真似事を思い返していた。 冷蔵庫を動かそうとしたのは最初だった。 微動だにしない冷蔵庫を諦めた俺は、次にベッドのフレームや、浴室の金属製タオル掛け、果ては洗面所の蛇口を力任せに破壊しようと試みた。 だが、どれほど体重をかけようと、金属製のパーツすら歪みひとつ作らない。 まるで部屋のすべてが、この空間という概念そのものに溶接されているかのように頑丈だった。 「テレビのリモコンも、チャンネルが変わるだけで設定画面すら出ない。コンセントを抜こうにも、コードは壁の中に直接吸い込まれている……」 「体力が無駄に削られるだけです」 綾香は制服のスカートを抱え込み、胸元に顔を埋めるようにして身を縮めていた。 二人を包み込むのは、エアコンの静かな稼働音だけだ。 時間の経過を知らせるものは何一つない。ただ、自分たちの空腹感と疲労感だけが、刻一刻と命が削られていることを伝えていた。 あの冷蔵庫の精力ドリンクを全て飲み干してから半日ほどが経過した頃。つまり、ここにきて体感時間でもう何日も何日も経過した後。 俺たちを最初の、そして決定的な試練が襲った。 猛烈な空腹感だ。 「……ぐぅ……」 静まり返った室内に、俺の腹が不格好な音を響かせる。 続いて、離れた場所にいる綾香の腹からも、切実な音が漏れ聞こえた。 「……っ……」 綾香は顔を真っ赤にし、両腕でお腹を強く押さえつけるようにして身を丸める。 「……見ないでいただけますか、兄さん。不快です」 「見たくて見ているわけじゃない……。お前だって、限界だろ」 「だからと言って、どうしようもないでしょう……」 「……水ならある」 俺は重い体を起こし、フラつく足取りでガラス張りのバスルームへと向かった。 洗面台の蛇口をひねると、透明な水が勢いよく流れ出す。 綾香が、小さく息を吐いた。 だが、その表情に安らぎなど微塵もなかった。 「……余計に、気持ち悪くなります」 「……そうだな」 「胃の中に冷たい水が溜まって……重くて、タプタプと言っています。空腹が紛れるどころか、酷い気分です」 俺自身も蛇口から直接水をガブガブと飲んだが、綾香の言う通りだった。 胃袋が冷たい水で重く膨れ上がるだけで、血肉になる栄養はゼロ。だるさが増すばかりだ。 「……それでも、飲まないよりはマシだ。倒れるよりはな」 「こんな水腹で重くなった体で耐え続けるのが……マシだと仰るのですか」 綾香は恨めしそうな瞳で俺を睨みつけてきた。 だが、その瞳の奥には、隠しきれない不安と恐怖が色濃く陰っていた。 さらに、何時間が過ぎ去っただろう。 体感時間では一日以上が経過しているはずだった。 大量の水道水を胃に流し込み続けている以上、避けて通れない生理現象が俺たちを追い詰め始める。 「……っ」 綾香が限界を迎えたように、立ち上がった。 「綾香……? どうした」 「……あっちを向いていてください」 「え?」 「いいから、あっちを向いていてください! 絶対にこちらを見ないでください!」 綾香は鋭い声で言い放ち、ガラス張りのバスルームへと向かった。 ドアは透明なガラス一枚。鍵すら存在しない。壁もなにも、全部丸見えだ。 便器の前に立った綾香は、背後からの視線を激しく意識しながら、屈辱に震える手で制服のスカートをまくり上げ、下着を膝まで下ろした。 俺に背中を向け、丸めるようにしてやりすごす。 目を背ける前の綾香は、少しでも俺の視界に入らないよう、膝を抱え込んで小さくなっていた。 (嫌……嫌です……! なんで私が、こんな場所で……) そんな心の声が聞こえてきそうなほど、綾香の肩は震えていた。 チョロチョロと、静かな室内に無慈悲に響く排泄の音。他に音がないから、透明なドア越しにも音が聞こえてしまう。 俺に排泄音を聞かれているという事実に、綾香の頭はどうにかなりそうだったに違いない。 耳の裏まで真っ赤に染まり、ぽろぽろと涙を零していた。 「……あぁ……」 用を足し終え、下着とスカートを整えて便器の水を流す。 洗面所で手を洗い、フラつく足取りで部屋の隅へと戻ってくると、綾香はそのまま床にへたり込んだ。 「……本当に、最悪の部屋です……」 「……すまん。俺はちゃんと壁を向いてたからな」 「そういう問題ではありません! 音だって……全部聞こえているでしょう……!」 「聞こうとして聞いてるわけじゃない……」 俺も気まずそうに顔を背けるしかなかった。だが、俺自身もまた、何時間か後には同じようにガラス張りのトイレへ入らざるを得なかった。 綾香は意地でも背を向け、耳を塞いで丸まっていたが、狭い室内に響く水音や気配だけで、お互いの精神は削られていった。 こんなことを、何日も、何度も繰り返さなければならなかった。 体感で二日、あるいは三日が過ぎた頃。 照明の明るさは変わらず、朝も夜も訪れない。 俺たちの肉体と精神は、完全に磨り減っていた。 何度も水を飲み、何度も丸見えのトイレで用を足し、そのたびに尊厳を打ち砕かれる。 綾香は、もう水を飲むのもやめてしまっていた。 「……う……くっ……」 ベッドの端に腰掛けた綾香が、力なく額を押さえる。 「綾香……? 大丈夫か」 「……頭が……割れそうです……。ズキズキと、脈打つように……」 「水を飲め」 「栄養が……何一つ入ってこないからです……。それに……体が、寒くて」 俺も自分の体を見下ろし、絶望的な気分になっていた。 空腹で体力が底をつき、手足には力が入らないというのに、ズボンの下――俺のペニスだけは、狂ったように硬く脈打ち続けている。 死に瀕しているせいで、生存本能が刺激されているのか。 下半身の生殖器の主張だけがダイレクトに脳を支配してくる。 「俺もだ。頭はフラフラする。だけど変なんだ。勃起が収まらない」 「不潔です……。そのような報告、私にしないでください……」 綾香は荒い息を漏らしながら、冷たく突き放した。 綾香の身体から、うっすらと甘く湿った匂いが漂っていた。 綾香のもまた、意識とは裏腹に、愛液を分泌し続けているのか。 「私……もう駄目かもしれません……」 綾香の脚が力なく崩れ、ベッドから床へと滑り落ちた。 「綾香っ!」 俺は手を伸ばして抱き留めようとしたが、俺自身も膝に力が入らず、二人で床の上にもつれ込むように倒れ伏した。 「くっ……力が入らん……」 「……はぁ……はぁ……兄さん、重いです……どいてください……」 口ではそう言いながらも、綾香には俺を押し返す力すら残っていなかった。 至近距離で重なり合う身体。 冷房で冷やされた部屋の中で、互いの肌から伝わる乾いた熱だけが、生々しく主張してくる。 「……ねえ、兄さん」 重なり合ったまま、綾香が掠れた声で呟いた。 「……なんだ」 「私たちは……ここで、どれくらい過ごしたのでしょう」 「さあな……。一週間かもしれないし、もっとかもしれない……」 「外では……私たちが消えたこと、騒ぎになっているでしょうか……」 「……捜索届は出ているはずだ。警察だって探している」 「嘘をおっしゃらないでください」 綾香の冷たい瞳が、至近距離で俺の目を射抜いた。 「出入り口もないような場所に閉じ込められているのですよ? 警察が探したところで、見つけられるはずがありません」 「それは……」 「このままここで、水だけを飲んで……何度も惨めに用を足して……最後には動けなくなって飢え死にする……。それが私たちの運命ですか?」 返す言葉がなかった。 綾香の言っていることが、ぐうの音も出ないほど正しい現実だったからだ。 この不条理な空間において、常識的な救助など期待できるはずもない。 俺たちに待っているのは悲惨な餓死だけだ。 「兄さん」 「なんだ」 「あのモニターの指示、覚えていますか」 綾香の視線が、壁に輝く大型画面へと向けられた。 『――密室からの脱出条件――』 『指定課題の完全消化、および膣内射精』 『現在の初期課題:A1:手を繋ぐ / A2:見つめ合う / A3:抱き合う / A4:キスをする』 「覚えているも何も、嫌でも目に入るだろ」 「あれに従えば、外へ出られると、あの画面は言っていますね」 「ああ」 「兄さんは、妹のおまんこにちんぽを突っ込んで、中に射精したいのですか?」 露骨で生々しい単語を、綾香は感情の抜けた声で口にした。 普段の彼女なら絶対に口にしないような直接的な言葉。それが、極限の疲弊によって淡々と紡がれる。 「そんなわけないだろ! 俺がお前をそんな目で見られるわけがない!」 俺は、とっさに嘘をついた。 そりゃ妹は美人だしスタイルもいい。そもそも俺が綾香を避けるようになったのは、俺が綾香とセックスをしたくなったからだ。 綾香は冷たく言う。 「だったら、ここで死にますか?」 「それは……」 「ここで二人で、お腹を空かせたまま、うなされて、惨めに死んでいきますか?」 綾香の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。 それは屈辱の涙であり、死への恐怖の涙だった。 「私だって嫌です。兄さんとそんな、狂った真似をするなんて、死んでも嫌だと思っていました」 綾香は俺の服の胸元を、力のない手でぎゅっと掴む。 「ですが、何もできずにここで干からびるなんて、もっと嫌です。倒れて本当に意識を失う前に、やるべきことは試しましょう」 「綾香」 「出れば、外へ戻れさえすれば、夢だったと思えるかもしれない。だから、さっさと済ませて、この部屋から出ますよ、兄さん」 無感情に、やるべきことを淡々と告げる綾香。 理不尽な密室、終わらない飢餓と水腹の不快感、丸見えのトイレで壊されていくプライド、目前まで迫った死。 すべての極限状態に追い詰められた俺たちは、生き延びるためだけに、兄妹という禁忌を犯す決意を固めたのだった。 ◇ 「……では、始めますよ」 床に倒れ伏したまま、綾香が掠れた声で言った。 互いに腕を突いて身体を起こそうとするが、ずっとまともな栄養を摂っていない肉体は酷く重い。 俺たちは浅い呼吸を繰り返しながら、床の上で向かい合った。 「画面の指示通りにこなします。余計な会話も感情も要りません。……ただの脱出のための作業です」 「……ああ、分かった」 俺は喉の奥を鳴らして応じた。 壁のモニターが、冷たい光で俺たちの疲弊しきった姿を映し出している。 『現在の初期課題』 『A1:手を繋ぐ』 『A2:見つめ合う』 『A3:抱き合う』 『A4:キスをする』 「まずはA1、手を繋ぐ、です」 綾香が細く痩せこけた右手を伸ばしてきた。 力が入らないのか、指先が力なく揺れている。 俺も重い腕を持ち上げ、妹の手を握り返した。 触れ合った皮膚は冷たく、乾いていた。 水道水で水腹になっているものの、血肉になる栄養がない身体の表面は、生きている人間とは思えないほど熱を失っている。 指の骨がダイレクトに当たり、カサついた触感が手に伝わる。 幼い頃、出先で俺の服の裾や手を小さく握りしめていた妹の記憶が一瞬脳裏をよぎった。 あの頃の手は柔らかく、あたたかかった。 だが今、俺の手の中にあるのは、死の直前で乾燥し、骨ばった妹の手だった。 感傷に浸る余裕すらない。 ビシッ、とモニターが音を立て、文字が切り替わった。 『A1:手を繋ぐ――達成』 「判定は出ましたね。次はA2、見つめ合う、です」 手を繋いだまま、綾香が顔を上げた。 黒い瞳が俺の目を見つめ返す。 至近距離で交差する視線。 栄養不足で落ち窪んだ目元と、光を失った瞳。 いつもなら冷ややかに俺を突き放す顔には、ただ生への必死な執着と、深い疲弊だけが刻まれていた。 無言のまま、互いの顔を見つめ続ける。 昔、二人で無邪気に笑い転げながら睨めっこをした面影など、どこにもない。 ここにいるのは、不条理な部屋に閉じ込められ、干からびかける肉体を引きずって無機質に作業をこなす二人だけだ。 『A2:見つめ合う――達成』 画面が切り替わる電子音が響く。 「手を離してください」 綾香は力なく手を解き、かすかに肩を上下させた。 「次はA3、抱き合う、です。来てください」 俺は膝立ちのまま前に出て、綾香の細い肩に腕を回した。 綾香もまた、腕を持ち上げて俺の背中へ回してくる。 密着する二つの身体。 制服のブラウス越しに伝わるのは、力弱く打つ心臓の鼓動だけだった。 胸の柔らかさや魅力的な感触を味わう余地などない。 死にかけた二つの肉体が、ただ生存のために押し合っているに過ぎなかった。 「……くっ」 綾香が俺の肩に額を預け、短い息を吐く。 生温かい吐息が首筋に触れるが、お互いに抱き合っているという興奮すら湧いてこない。 ただ、この不快な工程を一つでも早く終わらせたいという焦燥感だけが、頭を支配していた。 『A3:抱き合う――達成』 機械的な電子音が鳴り、残るは最後の初期課題となった。 『A4:キスをする』 身体を離すと、綾香は感情の抜けた目で俺を見つめた。 「最後です。唇を合わせます」 「ああ」 顔を近づける。 息が合わさる。綾香の口元からは、水分を失った人間のカサついた匂いだけがしていた。 幼い頃、おままごとごっこで頬や唇に触れた記憶など、いまの極限状態の前には何の意味もなさなかった。 綾香が静かに目を閉じる。 俺はそのまま、妹の乾いた薄い唇に自分の唇を重ね合わせた。 「ん」 カサカサとした皮膚同士の感触。 だが、単に唇を触れ合わせるだけでは、モニターは判定を下さなかった。 『判定中、指示の深化が必要です』 「舌を絡めろ、ということですね」 綾香は一切の感情を排した声で呟くと、自らわずかに口を開けた。 俺は躊躇わず、綾香の口内へ舌を差し入れた。 乾きかけた口腔と、わずかに残る粘つき。 互いの舌を無機質に滑らせ、唾液を交換し合う。 そこには快感も、官能的な欲望も存在しない。 ただ生き残るために、互いの口内を作業として擦り合わせる水音だけが静かな室内に響いた。 「ん、ふ……っ」 ビシッ、と大きな電子音が鳴り響く。 『A4:キスをする――達成』 『初期課題の完全消化を確認』 画面の文字が書き換わり、赤く明滅する新たな指示が浮かび上がった。 『最終段階:ちんぽの膣内挿入、および膣内射精を実行してください』 口を離すと、綾香は弱々しく息を吐きながら、袖口で口元を拭った。 「……指示は、通りました」 「ああ」 「服は脱ぎません。下着だけをずらして、さっさと終わらせます」 綾香は床の上に仰向けに倒れ込み、制服のスカートを自分でたくし上げた。 露出した太ももも、長期間の飢餓によって痛々しいほど痩せていた。 情念も甘さもない、ただ生き延びるためだけの作業として、俺たちは引き返せない最後の工程へと足を踏み入れようとしていた。 ◇ 床の上に仰向けになった綾香は、制服のスカートを自分の手で腰までたくし上げた。 剥き出しになった太ももは、飢餓によって痛々しいほど細く痩せこけている。 もともとは健康的にむっちりと張り出していたのに。 ここに来てから、もう何キロも痩せているのだろう。 それは俺も同じだった。 中央を覆う薄い下着を、綾香は投げやりに脱ぎ捨てた。 ……思えば、この部屋に来てからずっと履いていたものだ。 それは否応無く汚れていた。 露わになる妹の恥部。 当然のことだが、俺が妹の秘所を直視するのはこれが生まれて初めてだった。 下腹部には綺麗に切り揃えられたように黒々とした陰毛が生え揃い、その下には少女から大人へと変化を終えた割れ目が固く閉ざされている。 色素の薄い桃色の外周部は、未だ誰の侵入も許したことのない純粋な処女そのものだった。 だが、そこに濡れ気など一切なかった。 栄養を失った身体は完全に乾ききり、おまんこの粘膜はカサカサに干からびている。 自発的な愛液など一滴も滲み出ていなかった。 「……入れられませんね、これでは」 自分の恥部を見つめたまま、綾香は感情の抜けた声で言った。 「ああ……摩擦で滑らない」 俺は膝立ちのまま、自分のズボンと下着を膝まで押し下げた。 空腹で全身の力が入らないというのに、ちんぽだけは歪な硬さを保って脈打っている。 だが、先端をあてがってみても、乾ききった粘膜が突っかかり、物理的に押し込むことすら不可能だった。 この部屋の浴室には、シャンプーやリンス、ボディソープや石鹸の類は一切置かれていなかった。 それどころか、冷蔵庫の脇に並べられていた大人用のオモチャの棚を見回しても、潤滑用のローションや避妊用のゴムといった保護具は一つとして存在しない。 この部屋は最初から、生セックスしか許さないようだった。 「……すこし待っていてください」 綾香はフラつく足取りで身体を起こすと、四つんばいの姿勢でバスルームへと向かっていった。 ガラス張りのシャワーブースへ手を伸ばし、洗面器に風呂場のぬるいお湯を汲んで戻ってくる。 バシャッ、と雑な音を立てて、綾香はそのお湯を自分の股間へと直接ぶちまけた。 「っ……」 ぬるま湯が痩せた太ももと割れ目を濡らし、床へとしずくが垂れる。 だが、お湯だけではすぐに流れてしまい、滑りとしては到底足りない。 「口を……開けてください、兄さん」 綾香は俺の顔元へ手を伸ばすと、自らの指を俺の口内へと突っ込んできた。 カサついた舌で指先を舐め回させ、唾液を絡め取る。 さらに自分でも指を口に含み、粘り気のある唾液をたっぷりと濡らした。 そうして唾液でぬめらせた自分の指先を、干からびた秘唇と割れ目の奥へとなすりつけていく。 ペチペチと水音が静かな室内に響く。 お湯と唾液を交ぜ合わせ、滑りを良くするための作業。 そこには恥じらいも、愛撫の甘さも一切存在しなかった。ただ穴を拡張し、異物を滑り込ませるためだけの無機質な前処理だった。 そして、俺のペニスにも、同じように唾液をまぶした指でぬめりを加えていく。 「……これで、押し込んでください」 再び床へ横たわり、脚を開いた綾香が淡々と言った。 俺は濡れそぼった綾香の秘唇の隙間へ、ペニスの先端をあてがった。 お湯と唾液のぬめりのおかげで、先ほどまでの引っかかりは消えている。 「入れるぞ」 「ええ」 俺は体重をかけ、ちんぽを前へ突き出した。 「くっ……ひぃ……っ!」 先端が狭い膣口を押し広げ、中へと侵入した瞬間、綾香の口から短く鋭い悲鳴が漏れた。 未開通の処女膜が強引に突かれ、引き裂かれる激痛。 濡れ方の足りない生々しい肉の壁が、ペニスの幹を強く締め上げてくる。 破瓜の痛みに、綾香の指先が床を強く掻きむしった。 「痛い……です……息が……っ」 「……我慢しろ、引いたら余計に痛む」 俺は躊躇わず、腰を押し進めた。 ブチッ、という鈍い手応えとともに処女膜が破れる。 ペニスは狭い膣の奥深くまで一気に突き刺さり、最奥の子宮口にまで達した。 「はぁっ……あぐぅっ……!」 綾香は首を後ろへ反らし、歯を喰いしばって痛みを耐えている。 制服を着たまま、下着だけを脱ぎ捨てた歪な格好。 引き裂かれた処女膜から溢れた鮮血が、お湯と唾液と混ざり合い、太ももの内側を伝っていった。 綾香に快楽など微塵もない。 あるのは、無理やり押し広げられた異物感と、破瓜の激痛、そして早く終わらせたいという焦燥感だけだ。 俺は綾香の細い腰を掴み、機械的に腰を打ち付け始めた。 パン、パン、と乾いた肉同士がぶつかる音が部屋に響く。 妹の膣内は狭く、動かすたびに強い摩擦と圧迫感がちんぽを締め上げる。 綾香は顔を歪め、俺の肩に手を置いてただ耐えていた。 「……早く……出してください……っ」 「わかっている……!」 俺は感情を殺し、ただ脱出のためだけに腰のストロークを早めた。 一週間以上溜め込まれていた精液が、下腹部で猛烈に沸き立つ。 限界が訪れる。 俺は綾香の身体を強く抱き寄せ、ちんぽを最奥の子宮口へ強固に押し当てた。 「出、る……!」 ドクッ、ドクッと、脈打ちとともに、精液が勢いよく噴き出した。 綾香の膣の最奥、子宮口へ直接叩きつけられる大量の精液。 一度では収まらず、何度も腰を押し付けながら、子宮の入り口を精液で満たしていく。 「んぁ……っ……熱い……です……っ」 子宮口を直接叩く熱量に、綾香の身体が小さく強張った。 生殖のための種付け。 兄妹という血のつながりを犯す大量の中出しが、膣内で完了する。 余韻もなく、部屋全体を揺らすような巨大な電子音が鳴り響いた。 『――脱出条件達成――』 『膣内射精を確認。これより現実空間への帰還を行います』 壁のモニターが激しく明滅し、白い光が室内を包み込んでいく。 ちんぽの先端から精液を吐き出し切り、俺は綾香の上に倒れ込んだ。 綾香の膣内からは、俺が注ぎ込んだ熱い精液と鮮血が混ざり合い、溢れ出していた。 視界が真っ白に染まり、意識が急速に遠ざかっていく。 脱出の安堵とともに、俺たちの意識は闇へと落ちていった。 ◇ 目を開けると、見慣れた自室の天井が広がっていた。 カーテンの隙間から、朝のやわらかな光が差し込んでいる。 自分の手を見つめる。 なんの変哲もない、いつもの俺の手だ。 体調もすこぶる良好で、どこにも異常はない。 だが――なぜだろうか。 目覚めた瞬間から、胸の奥に理由のわからない重苦しい引っかかりと、妙に焦燥感を煽る動悸が残っていた。 まるで、とてつもなく不吉で破廉恥な悪夢でも見ていたかのような後味の悪さ。 だが、どれほど思考を巡らせてみても、夢の内容など何一つ思い出せなかった。 俺はベッドから起き上がり、首を傾げながら洗面所で顔を洗い、階下のリビングへと向かった。 キッチンの横では、すでに制服姿の綾香が朝食の準備を進めていた。 トントン、と包丁がまな板を叩く規則正しい音が響いている。 「おはよう、綾香」 「……おはようございます、兄さん。朝食、もうすぐできますから座っていてください」 振り返った綾香は、いつも通りの隙のない佇まいだった。 気品があり、どこか冷たさを感じさせる厳格な態度。 俺は食卓の椅子に腰掛け、何気なく綾香の後ろ姿を眺めた。 普段から余計な脂肪がなく、全体的にはすっきりと引き締まって痩せている綾香。 だが、妹としてではなく一人の少女として見れば、その身体の肉付きは恐ろしいほど魅力的だった。 制服のブレザー越しにもわかる、しっかりと大きく膨らんだ健康的なおっぱい。 キュッと引き締まった細いウエストから、滑らかな曲線を描いて豊かに張り出すお尻。 そして、短いスカートの裾から伸びる太ももは、全体がスリムであるにもかかわらず、女としての健康的な張りとむっちりとした弾力を湛えている。 立ち上がって味噌汁を椀に注ぐたび、その胸が揺れ、太ももとお尻の肉が柔らかな張りを主張していた。 自慢の妹であり、童貞の俺が思わず目を背けたくなるほど生々しく熟しつつある肉体。 俺が彼女を避けるようになった根本的な原因――妹を異性として意識し、あのおまんこに自分のちんぽを突っ込んで抱きたいと願ってしまう醜い欲望が、理由もなく胸の奥で持ち上がってくる。 (何を考えているんだ、俺は……) 俺は慌てて視線を手元のコップへ落とした。 「どうぞ、兄さん」 綾香が食卓へ朝食を並べ、自分の席へ腰を下ろした。 焼き魚と味噌汁、ご飯と小鉢。整然と並べられた朝食に、綾香は綺麗に手を合わせる。 「いただきます」 「……いただきます」 二人で静かに箸を進める。 会話はない。普段通りの、お互いを意識しすぎるがあまりに生まれた冷淡で不自然な静寂。 ふと、綾香がわずかに眉をひそめ、制服のスカートの股間あたりを気にするように、小さな動作で身動ぎをした。 「綾香? どうした」 「なんでもありません。話しかけないでください」 綾香は冷ややかに言い捨て、刺々しい視線で俺を牽制した。 ◇ 今朝目覚めた際、綾香の下着の股部分には、理由のわからない微量な愛液の湿り気が付着しており、下腹部の奥には不快で甘い火照りが燻っていたのだ。 なぜ自分がこのような状態になっているのか分からず、綾香は自分自身の身体に起きた謎の異変と不潔感に、激しい自己嫌悪と苛立ちを抱いている。 そして無意識下で、その生理的な異常の原因が目の前の兄にあると勘付いているからこそ、必要以上に刺々しい態度をとってしまうのだった。 「ごちそうさまでした。……お皿洗いはお願いしますね、兄さん」 綾香は箸を置くと、一度も兄と目を合わせようとはせず、冷淡な足取りでリビングを後にした。 お互いに、何も覚えてはいない。 だが、理由のない動悸と身体の火照りだけを残し、二人も知らぬまま、静かに新しい一日が始まっていた。 ◇ 朝から全身を包んでいた泥のような倦怠感は、夕方になっても抜けていなかった。 腰の奥から下腹部にかけて、正体不明の重い熱っぽさが残っている。 夢の記憶はない。だが、一日中身体が重かった。 今日の夕飯と明日の朝食は、俺の家事当番だった。 重い身体を引きずって台所に立ち、夕食の準備を整えてリビングの食卓へ並べる。 階段を降りてきた綾香へ、俺は声をかけた。 「……綾香、夕飯できたぞ」 綾香は黒髪を乱れなく整え、清潔な部屋着を着ていた。 スリムな体つきだが、胸や尻の豊かな張りが制服を脱ぐと余計に生々しい。 「……ご苦労様です、兄さん」 「体調でも悪いのか? 何だか顔色が固いが」 「いいえ。余計なご心配には及びません」 感情を削ぎ落とした声でそっけなく答え、綾香は俺から視線を外した。 「お皿、俺が運ぶよ」 手伝おうと皿を差し出そうとすると、綾香は半歩身体を引いた。 「寄らないでください。邪魔です」 「邪魔って……俺、何か嫌がるようなことしたか?」 「何も。ただ、朝から一日中……そのように無遠慮な距離感で近づかれるのが不快です」 「近づかれるのが不快って……」 「お皿は自分で運べます。席に着いてください」 その言葉には感情的な怒りも照れもなく、ただ冷淡な拒絶だけがあった。 胸の奥で理由のわからない動悸が跳ね上がる。 「……今日の夕飯と明日の朝食、俺の当番だったろ。料理に何か不満でもあったか?」 「献立に不満はありません。何でもないんですったら」 「……分かったよ」 対面の椅子に腰を下ろし、静かに箸を取る。 「いただきます」 「いただきます」 カトラリーが皿に当たる小さな音だけが響く。 「味、薄くなかったか?」 「問題ありません」 「ならいいんだが。最近、あんまり会話してなかったから気になってな」 「会話の必要性を感じませんし」 「そうだな。余計なことを聞いた」 「ええ。お気になさらないでください。美味しくいただいておりますから」 「そうか」 「文句があるなら言いますから。文句がないから、何も言わないんです」 食べ終わると、綾香は自分の食器だけを持つと、振り返ることもなく台所へと向かった。 ◇ 九条綾香は、朝目覚めた瞬間から下腹部を支配する不快な違和感に苛まれていた。 下腹部の奥深く、子宮のあたりに重く鈍い熱が澱んでいる。 自分の生理周期とは明らかに異なる熱と疼き。 次の生理までまだ二週間以上もあるはずなのに、なぜ子宮の奥がこんなにも重く脈打っているのか。 そして何より苛立ちを覚えるのは、下着のクロッチ部分に貼り付いていた粘つきだった。 指で確かめるまでもなく判別できる、分泌された愛液の感触。 (……なぜ、このようなことに) 夢を見た記憶はない。 誰かに身体を触れられた覚えもない。 処女であるはずの自分が、なぜ周期すら無視した体液で身を汚さなければならないのか。 学校にいる間も、下腹部に残る周期外の疼きと熱は消えてくれなかった。 帰宅して夕食の当番である兄の姿を視界に捉えた瞬間、理由もなく心拍数が跳ね上がる。 「……綾香、夕飯できたぞ」 兄の声を聞き、顔を直視するだけで、下腹部がきゅうと嫌な収縮を起こし、熱を吹く。 その理不尽極まりない身体の反応に対し、綾香は氷のような冷徹さで己の感情を抑え込んだ。 (動揺を見せる必要などない。私はただ、いつも通りに振る舞えばいいだけ) 脈打つ下腹部の疼きを徹底して無視し、綾香は冷ややかな強がりで身を包みながら、静かに席に着いた。 ◇ 目を開けると、視界に飛び込んできたのは見覚えのある天井だった。 窓は一つもなく、部屋の中央には不釣り合いなほど巨大なキングサイズのベッド。 そして、その奥には中が完全に透けて見えるガラス張りのバスルーム。 「……っ」 俺は跳ね起きるように上体を起こし、周囲を見渡した。 冷蔵庫には、びっしりと並べられた見覚えのある小瓶――強力な精力ドリンク。 「……また、ここですか」 すぐ隣から、冷え切った硬い声が聞こえた。 振り返ると、綾香が床の上に正座した姿勢で、壁の大型モニターを睨みつけていた。 乱れのない黒髪、清潔な制服。 現実の家で夕食を終え、各自の部屋に戻って眠りについたはずの妹が、そこにいた。 「綾香……お前も、ここに」 「見れば分かるでしょう。また閉じ込められたようです」 「どうして……あの時、脱出して終わったはずじゃなかったのか」 「私に聞かれても困ります。理不尽な怪異に理由を求めても意味がありません」 綾香は一切の取り乱しを見せず、氷のように冷淡な声で淡々と言い放った。 だが、その膝の上で握りしめられた指先は、白くなるほど強く強張っている。 ピピッ、と無機質な電子音が室内に響き渡った。 壁の巨大モニターが青白く発光し、黒い文字が次々と浮かび上がる。 『――第2夜:課題フェーズ開始――』 『脱出条件:提示された全課題の達成、および【騎乗位での膣内射精】』 『現在の課題: A7:相手の着替えを目の前で凝視する A8:下着姿のまま正面から抱き合う A9:全裸になり、互いの肉体を観察する A10:一緒にお風呂に入り、全身を洗い合う』 モニターに並んだ文字を読んだ瞬間、喉の奥がカラカラに乾いた。 「A7から、A10……」 「……随分と、品のない要求ですね」 綾香の声には、前回の記憶、飢餓、そして最後に味わった破瓜の激痛への警戒が張り詰めている。 「どうする、綾香……これ、またやらなきゃ出られないのか」 「当たり前でしょう。他に何か選択肢がおありですか?」 「でも、お前の服を脱がせて、全裸で風呂に入るなんて……」 「躊躇している暇があるなら、頭を使いなさい、兄さん」 綾香はすっと立ち上がり、俺を見下ろした。 表情には羞恥も照れもなく、ただ不快な作業を前にした冷徹な決意だけが浮かんでいた。 「また何日も飲まず食わずで衰弱し、餓死寸前まで追い詰められてから屈服するおつもりですか?」 「それは……嫌だ。あんな思いは二度とごめんだ」 「なら、話は簡単です。不毛な抵抗などせず、理性と体力が残っているうちにさっさと課題を終わらせて脱出します」 「綾香、お前、平気なのか」 「平気なわけがないでしょう」 吐き捨てるように言いながら、綾香は自分の制服の襟元に手をかけた。 「ですが、長引かせればそれだけ苦痛が増すだけです。……始めますよ、兄さん」 「……ああ」 「目を逸らさず、しっかり見てください。課題未達成で脱いだ服をまた着て、もう一度脱ぐなんてあほらしいですからね」 綾香は俺の正面に立ち、至近距離でこちらを冷たく見据えた。 細い指先が、胸元のボタンへとかかる。 プチ、と小さな音を立てて最初のボタンが外され、白い鎖骨が覗いた。 「見ていますか」 「見てるよ」 妹が目の前で服を一枚ずつ脱ぎ捨てていく異様な時間。 綾香の指先が、二つ目、三つ目のボタンを外していく。 布地が左右に開かれ、薄い布地で包まれた胸元が露わになった。 大人びた黒いレースのブラジャー。 細身の体つきに反して、カップから溢れんばかりに豊かな張りを湛えた双丘が、俺の目の前で露わになる。 「……どこを見ていますか」 「指示通り、お前が脱ぐところを見てるだけだ」 「ええ、結構です」 綾香は表情を一切崩さず、スカートに手をかけ、一気に足元へと滑り落とした。 すらりと伸びた健康的な太もも、引き締まったふくらはぎ。 前回ここに来た時の最後の記憶とはまったく違う、魅力的な女の身体だった。 下半身を包むのは、ブラジャーと同じ黒いレースのショーツだけだ。 綾香が脱ぎ終わったから、俺もパっと脱いでしまう。 ピピッ、とモニターから軽快な音が鳴る。 『A7:達成を確認。次の課題へ移行します』 『A8:下着姿のまま正面から抱き合う(制限時間:60秒)』 「……次は下着での抱擁です」 綾香が一歩、こちらへ歩み寄ってきた。 布地一枚を隔てただけの妹の肉体が、目の前に迫る。 「兄さん、腕を回してください」 「ああ……」 俺は下着姿の綾香の背中に、恐る恐る両手を回した。 綾香もまた、俺の首元に細い腕を絡めてくる。 ぎゅっ、と互いの身体が正面から密着した。 「ふぅ……」 綾香の息が、耳元にかかる。 薄いブラジャー越しに、柔らかく弾力のある胸の感触が俺の胸板へと直接押し当てられた。 スリムな体型からは想像もつかないほどの確かな質量と熱量。 抱きしめた細い腰は驚くほど華奢で、俺の手のひらの中にすっぽりと収まってしまう。 「兄さん」 「何だ?」 「鼓動がうるさいです」 「お前のだって、かなりうるさいぞ」 「それと股間、当たっています」 「それはすまん。俺にもどうしようもない」 密着した下腹部には、否応なしに熱が集まっていく。 俺の股間が熱を帯び、ショーツ越しに硬さを増していった。 勃起したペニスが、綾香の履くショーツのクロッチ部分へと押し当てられる。 「兄さん」 「す、すまん……生理現象だから、どうにもならなくて」 「分かっています。分かってはいるんですけど……」 綾香は顔を背け、俺の肩口に額を押し当てた。 硬く尖ったペニスの先端が、綾香の秘部の割れ目を押し潰すように圧迫している。 互いの呼吸が荒くなり、部屋の中に重苦しい沈黙が落ちた。 ピピッ――。 『A8:達成を確認。次の課題へ移行します』 『A9:全裸になり、互いの肉体を観察する』 機械的な電子音が、抱擁の終了を告げた。 綾香は躊躇なく俺の身体を突き放し、半歩後ずさった。 「……次は全裸での観察です。下着を脱いでください」 「……お前も、脱ぐのか」 「見れば分かるでしょう。このモニターは妥協を許しません」 綾香は背中に手を回し、ブラジャーのホックを外した。 パチン、という小さな金具の音とともに、豊かな胸が解放される。 重力に従ってわずかに揺れ、形の良い球体が完全に剥き出しになった。 先端には、色素の濃い紅色の乳首が、緊張でかキュッと硬く引き締まっている。 なんとも言えずエッチだった。 続けて、綾香はショーツの両端を指でつまみ、膝下まで一気に引きずり下ろした。 完全に、一糸まとわぬ全裸。 「……っ」 俺は息を呑んだ。 白く滑らかな肌。引き締まった腹部の下、綺麗に切り揃えられた黒々とした陰毛の茂み。 その奥に隠された女の割れ目。 大陰唇は固く閉じられ、外気に晒されて微かに震えている。 「何を突っ立っているのですか。兄さんも早く脱ぎなさい」 「あ、ああ……」 俺は下着に手をかけ、一気に脱ぎ捨てた。 露出した俺のちんぽは、先ほどの下着抱擁で刺激され、太く反り上がって脈打っていた。 亀頭は赤黒く充血し、先端からわずかに我慢汁が滲んでいる。 「……観察、ですから。互いの体を直視しなければ判定が出ません」 綾香は視線を落とし、俺の勃起したペニスをじっと見つめた。 妹の瞳には嫌悪と、得体の知れない恐れが宿っている。 「……相変わらず、無駄に肥大化して醜悪ですね」 「男の構造なんだから仕方ないだろ……」 「構造の話をしているのではありません。その先端から滲み出ている汚らわしい分泌物の話です」 「悪かったよ……」 俺もまた、綾香の全身に視線を走らせた。 豊かな胸、くびれたウエスト、張りのある腰つき、そして固く閉ざされたおまんこ。 一切濡れていない。 前回の激痛の記憶があるからだろうか、割れ目の粘膜は乾ききり、固く強張っている。 「……見ましたか」 「見た。お前の……その、隅々まで」 「なら、モニターを確認しなさい」 「まだダメみたいだ」 そう告げると、綾香はひどく疲れたようなため息をついた。 「まったく、性格の悪い機械ですね」 そう言うと、後ろを向いて手でおしりの肉を開き、すぼまりをこちらに向けてきた。 「あ、綾香」 俺のペニスは、これ以上ないほどに硬く、大きくなった。 先端から出る汁の量も多くなる。 「兄さんも早くやってください」 俺はそうした。 ピピッ。 『A9:達成を確認。次の課題へ移行します』 『A10:一緒にお風呂に入り、全身を洗い合う』 「お風呂、行きましょう」 綾香は一瞥もくれず、ガラス張りのバスルームへとスタスタと歩いていった。 その後ろ姿は、引き締まった尻と太ももが健康的な肉感を主張しており、兄妹という理性を激しく揺さぶってくる。 俺は硬直したペニスをぶら下げたまま、綾香の後に続いた。 さっきマジマジと見てしまったおしりの穴が、脳裏から離れなかった。 ガラス戸を開けてバスルームに入ると、床は冷たく、シャワーの金属ノズルが鈍く光っていた。 棚には、前回は存在しなかった白い石鹸と、プラスチックの洗面器が置かれている。 「……石鹸があるな。前回は水しかなかったのに」 「課題をこなさせるためだけに都合よく用意されたのでしょう。……座りなさい、兄さん」 綾香は床に置かれたプラスチックの椅子を指差し、自らは冷たいタイルに膝をついた。 シャワーの栓を捻ると、ぬるいお湯が勢いよく噴き出す。 綾香は石鹸を手に取り、手のひらで泡立て始めた。 「まず、兄さんの背中から洗います。後ろを向きなさい」 「ああ……」 俺が背を向けて座ると、泡立った綾香の手のひらが、俺の背中にぺたりと貼り付いた。 ひんやりとした泡と、妹の柔らかな掌の感触。 「痛かったら言ってください」 「いや、痛くはないけど……お前の手、冷たいな」 「緊張しているからです。このような真似、好き好んでやっているわけではありません」 ゴシゴシと、無機質な手つきで背中が擦られる。 背骨に沿って滑る手のひら。 作業的ではあるが、素肌と素肌が石鹸の泡を介して擦れ合う感触は、全身の神経を鋭敏に尖らせていく。 「背中は終わりました。前を向きなさい」 「前も洗うのか?」 「『全身を洗い合う』という指示です。一部でも怠れば判定が下りません」 俺が正面を向くと、綾香は目の前にしゃがみ込み、再び石鹸を泡立てた。 目の前には、泡に濡れた綾香の豊かな胸がぶら下がっている。 動くたびにフルフルと揺れるその双丘から、目が離せない。 「……どこを見ていますか。顔を上げなさい」 「すまん……」 綾香の手が、俺の胸板から腹筋へと滑り降りてくる。 泡が肌の上を滑り、指先が臍の周りをなぞる。 そして、その手がさらに下へと伸び――太く勃起したペニスの根元に触れた。 「っ……!」 「動かないでください。……ここも洗わなければならないのでしょう」 綾香は表情を一切動かさず、泡だらけの手で俺のちんぽを握り込んだ。 ぬるりとした石鹸の滑りと、妹の冷たい指先の圧迫感。 根本から先端の亀頭に向かって、シャッ、シャッと規則正しく手が上下する。 「あ……くっ……」 「声を出さないでいただけますか。耳障りです」 「無理言うな……刺激が強すぎる……」 「ただの洗浄作業です。変な気を起こさないでください」 綾香は眉一つ動かさず、亀頭の溝や裏筋まで丁寧に泡で洗い上げていく。 だが、その触れ方は極めて機械的で、快楽を与える意図は微塵も感じられない。 俺のペニスはさらに硬度を増し、綾香の掌の中でドクンドクンと脈打った。 「……流します」 綾香はシャワーのぬるま湯をかけ、一気に泡を洗い流した。 水滴を弾く俺の肉棒から手を離し、立ち上がる。 「次は私の番です。……兄さん、手を動かしてください」 綾香は俺の前に立ち、無防備にその全裸を晒した。 濡れた黒髪が肩に張り付き、水滴が白い肌を伝って胸の谷間へと吸い込まれていく。 「……どこから洗えばいい」 「背中からで結構です」 綾香が背を向ける。 俺は震える手で石鹸を泡立て、綾香の華奢な背中に手を置いた。 触れた瞬間、綾香の肩が小さく強張る。 「……力を入れすぎないでください」 「ああ、分かってる」 肩甲骨から背骨、そして細い腰へと泡を伸ばしていく。 肌のキメが驚くほど細かく、吸い付くような滑らかさだった。 俺の手が腰から、ふっくらとしたお尻の膨らみへと差し掛かる。 「……っ」 「洗うぞ、綾香」 「……ええ。さっさと終わらせてください」 両手で綾香の豊かな尻たぶを包み込み、泡を馴染ませるように撫で回す。 弾力のある柔らかい肉が、俺の手の中で形を変える。 妹の尻を揉むような背徳感に、頭がどうにかなりそうだった。 「……前も、洗いなさい」 綾香が振り返り、正面を向いた。 濡れた瞳で、真っ直ぐに俺を見下ろしてくる。 恥じらいを完全に封じ込めた、毅然とした表情。 俺は再び石鹸を泡立て、綾香の豊かな胸へと手を伸ばした。 両手で左右の双丘を包み込む。 ずっしりとした重みと、極上の柔らかさが手のひらに伝わってくる。 「……んっ」 綾香の喉から、押し殺したような小さな吐息が漏れた。 指先で先端の乳首を擦るように泡立てると、突起がさらに硬く尖っていく。 「痛くないか?」 「……痛くはありません。ですが、早く次へいってください」 「……分かった」 俺は膝をつき、綾香の足元へと視線を落とした。 すらりとした太ももに手をかけ、泡を塗り広げていく。 内ももの柔らかい肌を撫で上げ、手が股間の茂みへと到達する。 「脚を……少し開いてくれ」 綾香は無言のまま、わずかに両脚を左右に開いた。 露わになった、一糸まとわぬ秘部。 黒々とした陰毛に囲まれた割れ目は、固く閉ざされたままだった。 お湯で濡れてはいるが、自発的な愛液による濡れ気はない。 前回の激痛の記憶が、綾香の身体を完全に拒絶させているのが分かった。 「……触るぞ」 「……どうぞ」 俺は泡立てた指先で、固く閉じた割れ目をそっと撫でた。 大陰唇の隙間に指を割り込ませ、小陰唇とクリトリスの周りを泡で洗っていく。 「っ……く……ぅ……」 綾香は奥歯を噛み締め、天井を見上げたまま耐えている。 粘膜に指が触れるたび、太ももの筋肉が引きつるように強張る。 だが、そこから愛液が滲み出る気配は微塵もなかった。 あるのは、異物に触れられていることへの冷たい拒絶と、作業としての忍耐だけだった。 「……もう、十分でしょう。流してください」 綾香が震える声で言った。 俺はシャワーヘッドを取り、綾香の胸や下腹部に残った泡をぬるま湯で一気に洗い流した。 シャワーの水が、乾ききった秘部の粘膜を濡らし、足元へと流れ落ちていく。 だが、課題終了にはならない。 さっき全裸で全身を見たときと同じなんだろう。 「……なあ、綾香」 「分かっています」 少し怒気を含んだ様子の妹に、腰を浮かせてもらい、尻穴を洗う。 また、俺の尻穴も洗ってもらった。 ピピッ――! バスルーム内に、ひときわ大きな電子音が鳴り響いた。 『――A10:達成を確認――』 『全事前課題の消化を完了しました』 『これより最終脱出条件へ移行します』 ガラス戸の向こう、部屋の大型モニターの文字が激しく明滅し、赤黒い文字へと切り替わった。 『脱出条件:【騎乗位による膣内射精】』 『制限時間:なし。達成され次第、現実空間へ送還します』 シャワーの音が止み、静まり返ったバスルームにモニターの無機質な宣告が重く響いた。 「……終わりましたね、事前準備は」 綾香は濡れた身体のままバスルームのドアを開け、部屋の中央にある巨大なベッドを見つめた。 その瞳には、これから行われる行為への恐怖と、絶対に弱音を吐かないという強固なプライドが混ざり合っていた。 風呂から上がると、バスタオルがドアの近くに置いてあった。 「……行きますよ、兄さん。ベッドへ」 「綾香……」 「躊躇しても何も始まりません。さっさと終わらせて、この悪夢から脱出します」 手早く全身を拭いた綾香は、一切の躊躇なくベッドへと歩みを進めていった。 ◇ バスタオルで濡れた全身を拭き終えると、綾香はタオルを雑にベッド脇へ投げ捨てた。 一糸まとわぬ全裸のまま、広大なベッドの脇に佇んでいる。 引き締まった太もも、ふっくらとしたお尻の肉、そして豊かに張り出した胸。 お風呂場で洗い合ってきたばかりの妹の肉体は、直視するだけでペニスがいきりたつほど生々しい。 「……何をしているのですか。早く来てください、兄さん」 綾香が冷ややかな声を響かせた。 その瞳は真っ直ぐに俺を射抜いている。 「あ、ああ……」 俺は躊躇いながら、ベッドの端に腰を下ろした。 膝の間に反り上がった自分のちんぽが、赤黒く脈打っている。 先端からは我慢汁が糸を引いて垂れていた。 「……本当に、やるのか」 「またその愚問ですか」 綾香は心底あきれ返ったように吐き捨てた。 「モニターの指示をご覧になりませんでしたか? 『騎乗位での膣内射精』です。やらなければ脱出できません」 「それは分かってる……分かってるけど、前回のことがあるだろ」 「前回の何ですか」 「お前の……おまんこ、全然濡れてないじゃないか。お風呂場で触った時も、カサカサに強張ってた。このまま入れたら、また猛烈な痛みが――」 「言いましたでしょう。躊躇している暇があるなら、体を動かしなさいと」 綾香は俺の言葉を遮り、ベッドの上に膝をついた。 「また何日も閉じ込められて、飢餓で動けなくなってから泣く泣くやるつもりですか? そんな無駄な苦痛を味わうくらいなら、身体が動く今のうちにさっさと終わらせるのが一番合理的です」 「合理的って……そんな簡単な話じゃないだろ。俺だって、お前に痛い思いをさせたくない」 「兄さんがモタモタと躊躇していること自体が、私にとって最大の苦痛です」 「綾香……」 「兄さんに任せていては埒が明きません」 そう言うなり、綾香は俺の肩を強く押し倒した。 「っ……!」 背中が柔らかいシーツに沈み込む。 俺が仰向けになった瞬間、綾香は俺の腰を跨ぐようにして身体を乗せてきた。 膝をベッドにつき、俺の下腹部の上に覆いかぶさるような体勢。 見上げる位置にある妹の全裸。 豊かに実った二つの胸が、重力でゆらりと揺れて俺の胸元に迫る。 「あ、綾香……お前、自分で動く気か?」 「ええ。兄さんに主導権を握られて、ダラダラと長引かされるのは御免ですから。私が動いて、さっさと終わらせます」 「待て! 無理だ! 潤滑も何もないんだぞ! 中は何の準備もできてない!」 「準備など必要ありません。単なる肉の結合と、精液の排出作業です」 綾香は俺の制止を完全に無視した。 細く滑らかな手が下へ伸び、俺の太く勃起したペニスの幹をしっかりと握りしめる。 冷たい指先の触感。 綾香は俺のちんぽを引き寄せると、己の股間の下へと導いた。 「おい、綾香、やめろって! ちゃんと濡らしてからじゃないと!」 「黙ってください、兄さん」 綾香の黒々とした陰毛の茂みが、俺の亀頭に押し当てられた。 固く閉ざされた未熟な割れ目。 愛液のぬめりなどほとんど存在しない秘唇の隙間に、亀頭の先端が突っかえる。 「……行きますよ」 俺が制止の声を上げるより早く、綾香は両手を俺の胸板に突き立て、一気に体重をかけて腰を落とした。 「――くっ……あぁぁぁぁぁぁっ……!?」 静寂を切り裂くような、短い悲鳴が部屋に響き渡った。 「綾香!」 「ひっ……くぁ……っ……あぐぅ……っ!」 綾香の顔が劇的に歪んだ。 歯を食いしばり、目元に一瞬で涙が浮かび上がる。 ほとんど濡れていない膣口に、太いペニスを無理やり押し込んだのだ。 摩擦などという生易しいものではない。 肉の壁が強引に引き裂かれ、こじ開けられる烈痛。 「痛い……痛い……っ! 何ですか……これ……っ!」 「だから言っただろ! 抜くぞ、一回降りろ!」 俺が腰を浮かせようとすると、綾香は爪が刺さるほどの力で俺の胸板を強く押さえつけた。 「……動かないで……ください……っ!」 「綾香!」 「途中でやめたら……この痛みが無駄になるでしょうが……っ!」 「でも、お前、顔が真っ白だぞ!」 「この程度の痛み、どうということは、ありません!」 涙で潤んだ瞳で俺を鋭く睨みつけながら、綾香は強がりを口にした。 全身を激しく震わせ、呼吸を荒く乱しながら、必死に痛みを耐えている。 だが、ペニスの先端はまだ膣口を広げた程度で、完全には没入していない。 「……く……ふぅ……あ……っ」 綾香は深呼吸を一つ挟むと、再び奥歯を噛み締め、さらに強く身体を突き落とした。 「あぐぅっ!? はぁっ……はぁっ……!」 メリメリ、という生々しい感触が俺のペニスに伝わってくる。 狭く熱い膣が、俺の肉棒を強引に呑み込んでいく。 肉と肉が擦れ合う凄まじい摩擦抵抗。 俺のペニスもまた、万力で押し潰されるような猛烈な圧迫感と痛みに襲われた。 「あ……が……入っ……た……っ」 綾香が浅く途切れがちな息を吐き出した。 根元まで一気に身体を落とし切ったことで、俺のちんぽは綾香のおまんこの最奥まで没入していた。 だが、秘部から愛液は溢れていない。 あるのは、無謀な強行による引き裂くような激痛だけだった。 「大丈夫か、綾香」 「……話しかけないで……ください……。喋ると……舌を噛みそうです……」 綾香は俺の胸の上で息を荒げ、身体を強張らせている。 内ももの筋肉が痙攣するようにヒクヒクと震えていた。 「……抜くか?」 「バカなことを言わないでください……。入れ直すなど、正気の沙汰ではありません……」 「じゃあ、どうするんだよ」 「……動きます……。さっさと……出してください……」 綾香は荒い呼吸を整えようと必死に胸を上下させながら、ゆっくりと両手を俺の肩へと移した。 「行きますよ」 「無理するな」 綾香は俺の言葉を無視し、震える腰を持ち上げた。 「くっ……ひぁっ……」 ほんの数センチ、ペニスを引き抜くだけで、乾いた粘膜が激しく擦れ合って悲鳴が上がる。 摩擦の痛みに顔を歪めながらも、綾香はすぐにまた腰を叩き落とした。 パン、と乾いた肉同士がぶつかる音が響く。 「あぐっ……! んぐぅ……っ!」 「綾香」 「ただの上下運動ですっ。作業ですっ!」 綾香は自分に言い聞かせるように、自暴自棄とも言える勢いで腰を打ち付け始めた。 上下に揺れる豊かなおっぱい。 濡れていないおまんこに太いちんぽを抜き差しするたび、ギチギチとした鈍い引っかかりと摩擦の手応えが伝わってくる。 甘い愛撫も、快楽による喘ぎ声もない。 あるのは、痛みに耐える歯噛みの音と、不快な作業を早く終わらせようとする焦燥感だけだった。 「……早く……出してください……っ! 兄さんの……その、精液を……っ!」 「そんなこと言われたって……急に出せるわけがないだろ!」 「出してください、限界まで溜まっているのでしょう!? 私の身体の中へ……早くぶちまけてください……っ!」 綾香は涙を散らしながら、必死に腰を振り続ける。 ギチ、ギチ、と乾いた粘膜が擦れ合う音が虚しく室内に響く。 だが、どれだけ腰を振っても、十分な量の愛液が湧き出る気配はなかった。 激しい摩擦熱によって、わずかに粘膜が熱を帯び、身体の奥がピクッと微かに痙攣するような反応を見せることはあっても、それは快楽には遠く及ばない。 激痛と不快感が、綾香の全身を支配していた。 「あ……く……っ! 痛い……痛いです。どうして」 「綾香、もうやめろ! 俺が動く!」 「嫌です、兄さんに任せたら、また甘いことを言って、長引かせるに決まっています!」 「俺だって、お前が痛がってるのを見てられるかよ!」 俺は抑圧していた情欲と、妹を傷つけている罪悪感の限界を迎えていた。 下から綾香の細い腰をしっかりと両手で掴み上げる。 「兄さん……!?」 「動くな!」 俺は下から勢いよく腰を突き上げた。 「ひゃぁぁぁぁっ!?」 激しい突き上げに、綾香の口から甲高い悲鳴が跳ね上がった。 俺は容赦なく腰のストロークを加速させる。 引き締まった妹の尻肉を両手で掴み、力任せにペニスを突き立てた。 パン! パン! パン! と、激しい肉体と肉体の衝突音が部屋を満たす。 「あぐっ……! ひぅっ……! やっ……激し……っ!」 「すぐ終わらせてやる! 我慢しろ!」 「くあぁっ……! 痛……痛いのに……奥が……っ!」 俺が下から強く突き上げるたび、太い亀頭が綾香の膣内最奥にある子宮口をダイレクトに打ち据えた。 多少は愛液が滲み出てきたとはいえ全く十分ではない膣内を、強引にこじ開け、削り取るような怒涛のストローク。 綾香は俺の肩に深く爪を立て、痛みに耐えるように顔を背けた。 激痛と摩擦熱、そして子宮口を直接叩かれる異物感が、彼女の身体を激しく強張らせる。 「出……出るぞ……綾香……っ!」 「出して……っ! 早く……全部……っ!」 限界に達した俺は、綾香の腰を限界まで引き寄せ、ペニスを膣の最奥、子宮口へぴったりと押し当てた。 ドクッ! ドクドクッ! と、精液が噴き出した。 「んあぁぁぁぁっ……!?」 子宮口を直接叩く大量の精液に、綾香の背中がピンと強張った。 どくどくと脈打つたびに、熱い精液が子宮の入り口を激しく叩き、狭い膣内へとなだれ込んでいく。 一回の噴射では収まらず、何度も何度も腰を押し付けながら、濃密な精液を注ぎ込み続けた。 「はぁ……っ……あぁ……熱い……っ」 綾香は俺の胸に突っ伏し、熱い吐息を漏らした。 痛みに耐え抜いた顔は涙と汗で濡れ、唇はうっすらと開いている。 生殖のための種付け。 絶対の禁忌である兄の精液が、妹の膣内を、子宮口を満たしていく。 ピピッ――! 部屋全体を揺るがすような巨大な電子音が鳴り響いた。 『――脱出条件達成――』 『騎乗位による膣内射精を確認。これより現実空間への帰還を行います』 壁のモニターが眩い白光を放ち、部屋の景色が急速に輪郭を失っていく。 「はぁ……はぁ……っ……終わった……のか……」 俺は倒れ込むようにくずれた綾香の身体を抱きしめた。 綾香のおまんこからは、俺が注ぎ込んだ精液と少量の愛液が混ざり合い、太ももを伝って垂れ落ちていた。 終わった後に、愛液が湧き出てきたようだ。 「……勝手な……真似を……しないでください……兄さん……」 俺の胸元で、綾香が力なく呟いた。 「あんな……突き上げ方……痛いに決まって……いるでしょう……」 「すまん」 「……次からは……私の……言う通りに……」 「いや、今回は石鹸あったし、前回は唾液使ったのに、どうして」 「……あ」 綾香はぽかんと口を開いて、それと同時に俺たちの意識は急速に途切れ、白い光の中へと溶けていった。 ◇ 電子アラームの甲高い音で、俺は意識を引き戻された。 シーツから身を起こすと、腰の奥にずっしりとした倦怠感が沈殿していた。 ただ、すっきりはしていた。夢精はしていなかった。 何かとても素晴らしいものに激しく腰を打ち付けていたような、得体の知れない感触だけが肌に残っていた。 「……なんだろう。わからん」 首を振り、顔を洗ってリビングへ降りる。 今日の朝食も俺の当番だった。 冷蔵庫から食材を取り出し、フライパンで卵を焼き、トーストとスープを手早く準備して食卓に並べる。 トントン、と階段を降りてくる規則正しい足音が聞こえた。 身支度を整えた綾香がリビングへ入ってくる。 乱れのない黒髪に、清潔に着こなした制服。 すらりと伸びた手足に、制服の上からでも存在感を主張する豊かな胸の傾斜と、引き締まった腰回りに思わず目が行く。 「おはよう、綾香」 「おはようございます、兄さん」 綾香は足を止め、俺に視線を向けた。 その声は普段通り冷淡で、感情の起伏を感じさせない。 「朝食、できてるぞ」 「ありがとうございます。いただきます」 食卓へ向かって歩み寄ってきた綾香の視線が、ふと、俺の下半身へと落ちた。 吸い寄せられるような、無意識の凝視。 ほんの一瞬の出来事だったが、綾香の瞳が小さく揺れ、何かに気づいたように弾かれたように顔を背けた。 「どうした?」 「何でもありません」 「そうか。トースト、冷めないうちに座ってくれ」 「ええ」 対面の席に腰を下ろし、互いに手を合わせる。 「いただきます」 「いただきます」 カトラリーと食器が触れ合う音だけが、静かな朝の空間に響く。 綾香は姿勢を正したまま、無駄のない所作でトーストを口に運んでいた。 「スープの味、どうだ?」 「ちょうどいい塩梅です。文句はありません」 「なら良かった。体調、まだ戻らないのか?」 「ですから、どこも悪くありませんと申し上げているはずですが」 綾香は冷ややかな瞳で俺を射抜いた。 「兄さんは朝から、他人の顔を観察しすぎです。余計な詮索はおやめください」 「詮索ってわけじゃないけど……歩き方が、少しつらそうに見えたから」 その言葉が出た瞬間、綾香の指先がピクリと強張った。 だが表情は一切崩さず、淡々と言葉を返す。 「筋肉痛のようなものです。兄さんが気にする筋合いはありません」 「……そうか」 「ええ。ごちそうさまでした」 綾香はトーストを食べ終えると、すぐに席を立った。 自分の皿を流し台へ置き、カバンを手に取って玄関へと向かう。 「もう行くのか? まだ時間はあるだろ」 「日直ですから。早く行かなければならない仕事があります」 玄関で靴を履く綾香に声をかけようと、俺が廊下へ出た瞬間だった。 立ち上がった綾香と至近距離ですれ違う。 「綾香」 「邪魔です、兄さん」 視線すら合わせず、吐き捨てるように言い残すと、綾香は冷たくドアを開けて出て行った。 バタン、と静かに閉まる玄関の音。 残された俺は、妹の冷淡な言葉と、なぜか自分の股間に向けられたあの無意識の視線の意味を測りかねて、立ち尽くすしかなかった。 ◇ 九条綾香は、家を出て駅へと向かう通学路を、奥歯を噛み締めながら歩いていた。 下腹部の奥底、子宮の入り口あたりに、熾火のような残滓が燻っている。 歩幅を広げるたびに、股の奥がきしむように痛み、内ももの筋肉が引きつるような感覚に襲われる。 (……何なのですか、これは……) 夢など見ていない。 昨夜も自室のベッドで一人、静かに眠りについただけのはずだった。 それなのに、目覚めた瞬間に襲ってきたのは、激しい運動を無理やり強いられたかのような肉体の疲労感だった。 そして、今朝の下着を取り替えた瞬間の屈辱。 クロッチ部分には、昨日の朝とは比較にならないほど濃密で、べったりとした愛液の粘つきが付着していた。 分泌液の生々しい湿り気と、下腹部を貫く異様な圧迫感の余韻。 まるで、硬くて太い異物を無理やり押し込まれ、奥深くまでこじ開けられたかのような――生理的な痕跡が、身体にこびりついて離れなかった。 (不潔です……本当に、意味が分かりません……) 理由の分からない身体の異常に、激しい自己嫌悪が湧き上がる。 その極限の動揺を抱えたままリビングに降りた時、キッチンに立つ兄の姿が目に入った。 そして、兄の、男の股間に、自分の視線が無意識に吸い寄せられた瞬間、胸の奥で心臓が激しく跳ね上がったのだ。 なぜ兄の下半身を見たのか。 なぜその部分を見た途端に、子宮の奥がキュウと嫌な熱を吹いて疼いたのか。 自分の理性を裏切る身体の反応に対する恐怖と羞恥が、そのまま鋭利な拒絶の言葉となって口をついて出た。 (兄さんには……絶対に悟られてはなりません) 下腹部に残る痛みを懸命に無視し、綾香は冷徹な無表情を張り詰めたまま、駅の改札へと足早に歩みを進めた。