【R18】IF、TSシーメール海賊を満足させる話 前編 「敵襲!! 敵襲―――――――!!!!!」 見張りの声が響きわたった。 号鐘が乱打されるのを耳にしながら、船長ピタには、どこか予感があった気がしていた。 海賊カイネ・ドリームガーデンの襲撃から、半月。 甲板に走り出たピタの目に、前回と同じ、彼女の姿が映った。 「よぉ、嬢ちゃん。久しぶりだな?」 またいつか“彼女”が来るのではないかという予感はあった。 貿易船の用心棒では歯が立たないくらいに、危険度の高い海賊。 この半月、立ち寄る港で情報を集めながら、もしまた同じことが起きたらどうすればよいのかを、ピタは考えつづけていた。 そして、今はそれを実行するしかない。 「お久しぶりです、カイネさん」 ピタは平静を装い、軽く膝を曲げ、スカートをつまんで微笑んだ。 「たまたま船が目に入ったんでな。酒はあるか?」 カイネは馴染みの酒場に来たような調子で聞く。 「…………お酒。  ……あの、カイネさん。もしよろしければ、中で飲みませんか?  いろいろお話も聞けたらと思って」 ピタは船長室のある船尾楼を指した。 カイネは値踏みするように、ピタを顔からつま先までじろじろと観察する。 「まぁ、それも悪くねえな」 カイネは担いでいた黒錨を海に投げこんだ。水しぶきが高くあがる。 ピタは甲板で固まっている船員たちの中から、副船長を見つけて手招きした。 小声で手早く伝える。 「目的地を最寄りの陸地に変更、全速力で向かって。  船の全員をすぐに甲板に出られる状態で待機、救命艇も準備を。  誰も船長室には近づけないように」 「船長……」 「それから……何かあったら、船を、お願い」 「……お嬢……ッ」 船の最古参の副船長は、悲痛な声をあげた。 「大丈夫。そう簡単にやられるつもりはないから」 ピタは笑顔を作ってみせてから、副船長に背を向けた。 「では、カイネさん、こちらへ」 船長室はオイルランプの明るい光で照らされている。 カイネは無遠慮に椅子に腰かけた。 ピタは鏡台の上に三角帽子を置き、いつも身に着けている護身用のピストルとナイフも傍に置いた。 カイネに敵意がないことを示すためだったが、そもそもこの凶暴な海賊相手に、この程度の武器は効かないだろうという諦めもあった。 「先日のお酒は大丈夫でしたか?  瓶が割れてしまわなかったか気になって……」 「割れてはいねえが、半年ってのは長すぎだ。  今度は手作りの酒じゃ満足しねえぞ?」 半月前、海賊カイネがこの船にやってきたときは、手作りの酒を渡すことでなんとか場をしのいだ。 しかし、その作戦を指揮した人物は、今はこの船にはいない。 「さすがに、今日は材料もありませんので……」 ピタは作りつけの棚の奥にしまってあった酒をとりだす。 前回の事件の後に買った酒で、この貿易船ミーニャ・ニーニャ号にとっては、かなり値の張るものだ。 “高価な酒を渡せば見逃してくれる”というのが、港で語られる“絶望峰の悪夢爪 カイネ”に対する対処法だった。 だが、これがカイネの求める「高価な酒」にあてはまるか、ピタには自信がなかった。 ……だからこそ、やるしかない。 ここで失敗すれば、船が沈む。 ――船長として最善を尽くさねばならない。 ピタは貼りつけた笑顔のまま、酒を二つの杯についだ。 前回のカイネの襲撃時は、恐怖と緊張で、彼女の顔をまともに見た記憶がなかった。 いま、至近距離で見ると、ぞっとするような凄みのある美人だ。 (……本当に元は男だった、のかな……?) 目つきは悪いが整った顔、古傷以外は陶器のような肌、使い古した服の間から覗いている双丘。 手首と足首には不定形な水の塊、鎖のような何かがついている。 不思議なことに、海から直接船に乗りこんできたのに、肌も服も濡れていない。 (なにか、魔法のような力が働いている……?) カイネが女性らしい白くすらりとした指を伸ばして杯を取ろうとする。 その右手を遮るように、ピタは手を机に置いた。 「ん?」 「カイネさん。実は、前回お話したときから、またお会いしたいと思っていたんです」 ピタはカイネの右手を両手で包みこむように握った。 酒を飲む前に、しなければならない。 もし、この酒がカイネの満足するものでなければ、カイネはすぐこの場を離れるだろう。 (それじゃ駄目。先に“やらない”と――) ピタには仕事上の目的のために相手を誘惑したり、身体を売った経験はなかった。 それでも、やらなければならない。 「……その……カイネさんのことをもっと知りたいと思って」 見え透いたご機嫌取りの言葉を嘲笑うように、カイネが口の端をあげて、ピタの目を見た。 今しかない。 ――《魅了》。 それはピタが唯一持つ、生まれつきの力だった。 相手の性欲を急激に高め、自分に向ける力。 それほど強い術ではない。 高位の魔法使い、特に精神魔法を操る者には効かないだろうと、以前とある魔法使いに忠告された。 カイネが“高位の魔法使い”なのか、そもそも《魅了》が効くのかは、賭けだ。 この賭けに負けた場合、カイネは妙な術をかけられたことに怒るだろう。 (どうか、どうか効いて……、お願い……っ) ピタは祈るようにカイネの目を見る。 女海賊の琥珀色の瞳は、見開かれていた。 その瞳孔がにじむように揺らいで、顔全体が紅潮する。 (…………効いてる!) ピタは片手で自分のシャツの紐を引っ張ってほどいた。 胸があらわになり、カイネの視線がそちらにひきよせられるのがわかる。 このあとカイネがピタを襲ったとして、ピタには一つ「秘密」があるのだが――それは《魅了》を重ねがけすることでなんとかする。 (……なんとかなるはず!) 「カイネさんは……」 「……色仕掛けで俺を落とそうとする船長は初めてだ」 カイネが荒い息の間からしぼりだすようにうめいた。 (《魅了》をかけたってバレた……!?  でも、まだ、バレたって決まったわけじゃ……) ピタはなんとかこれまでと同じ表情をとりつくろった。 「だが、テメェが……テメェがどんなに俺を落とそうとしようと……」 カイネは乱暴に立ちあがる。 バレているかはわからないが、カイネの表情を見るに、《魅了》自体の効果は続いている。 うまくいけば、相手が男であれ女であれ、ピタを押し倒す程度に、理性の枷を奪うことができる。 だが、カイネはそうしなかった。 カイネは何かを躊躇するように髪をかきあげ、意を決したようにズボンのベルトをゆるめた。 「この身体でどうやってヤれっていうんだ…………ッ」 カイネがズボンを一気に下ろす。 ピタの視線は彼女の股間に吸いこまれた。 ピタは、カイネが“女性に姿を変えられた男”だと聞いていた。 だから、彼女の股間には、“それ”は存在しないと思っていた。 だが、カイネには陰茎があった。 そしてそれは、子どものような小ささだった。 (わたし、今、驚いた顔してない……よね。  なんとかこの人のプライドを傷つけないようにしないと……) ピタは全力で思考を巡らせた。 海の男のプライドは高い、それが海賊ならなおさらだろう。 船を守るためには、カイネを満足させて、帰ってもらわねばならない。 (この人は自分の男性器に引け目を感じている……  つまり、わたしは、今日は絶対にスカートを脱がないようにして……) ピタには「秘密」がある。 ピタの下半身を見せることで、カイネのコンプレックスを不必要に刺激したくはなかった。 (――いま、できることをやらないと) ピタは変わらぬ調子を装って、カイネに微笑む。 床に膝をつくと、カイネの陰茎を口に含んだ。 「……ぐっ……」 カイネのくぐもった息が漏れる。 控え目なサイズの性器の形を舌で確認して、ピタは唇で吸った。 「んんっ…………」 ところが、陰茎はやわらかい感触のまま、ピタの舌に転がされている。 勃起する様子はない。 (もしかして……もしかして、これって……) ピタは自分の選択が悪手であった可能性に思い当たる。 《魅了》を放ったのに勃起してない時点で、気づくべきだったのだ。 (おちんちんが勃たない……っ!?  それなのにフェラチオしてるのって、この人を怒らせちゃうだけなんじゃ……っ) カイネは右手でピタの後頭部をつかむと、自分の方に強く押しつけるように動かした。 「……んっ、……んっ……」 そのまま何度もピタの喉の奥に挿入しようとするように頭を動かす。 しかし、小さく柔らかな陰茎は舌の奥にも届かない。 (たぶん、これは) ピタは頭を押しつけられつつ、冷静な頭で考えていた。 (昔、この人が男だった頃には、きっと立派なモノの持ち主で……  乱暴に女の頭を押しつけて、自分のモノを女の喉の奥に突っ込む、そういうタイプの人だったんだ……  でも……今は…………) ピタはカイネの表情を伺おうと目線を上げた――が、カイネの豊かな胸が邪魔して伺えない。 ただ、彼女の荒い吐息だけが聞こえてくる。 (“海の呪い”で体の大半を女性に変えられて、おちんちんも小さくなって……  早く、早くなんとかして、この人を満足させないと――、でも、どうすれば……) カイネの手に頭を押しつけられながら、ピタは睾丸を指先で刺激しようとし、 その奥にある、“何か”に触れた。 「……ひゃぅっ……」 今まで聞いたことのない、甲高い女性の声が降ってきた。 (今のは……、今、指先に触ったのは――っ) ピタはすぐに何事もなかったようにとりつくろう。 口の中、舌先で亀頭を舐め、根本を指で挟んでしごきながら考える。 指先に触れた、濡れたような触感。 カイネは“女性に姿を変えられた男”という言葉が頭の中を回る。 女性らしい大きな胸、丸みをおびた身体のライン、それがあるなら、つまり。 今、触れたのは―― 彼女を満足させるための、なにか。 ピタは顔をあげた。 こちらを見下ろしているカイネの顔は赤く、息遣いも荒い。 怒り、恥辱、焦燥。 自分が勃起しないという事実を受けいれられないというような、打ちのめされたような。 ピタの判断は早かった。 「……カイネさん」 ピタはカイネの手をとり、寝台に座らせた。 カイネは変わらぬ表情のまま、目を合わせず腰を下ろす。 「……もっと、気持ちよくなりたいですか?」 「…………あ?」 ピタは寝台の上でカイネの足をそっと開かせる。 カイネは抵抗しなかった。 両足を開かせたピタは、思わず息をのみそうになり、こらえた。 カイネの股間には、力ない姿を晒す小さな陰茎があり。 その奥に、花弁がある。 まるで彫刻のように左右対称なつくりの女性器は、愛液に濡れ、てらてらと光っている。 (やっぱり、両方「ある」んだ……) ピタは、自分以外で、そういった人間を見るのは初めてだった。 ということは。 (こっちも、女の子の部分を、“満足”させれば……!) 船の命運がかかっている。躊躇している時間はない。 ピタは秘部に舌を這わせた。 「ん……………………ッ」 カイネの口から、今までと違う女性の声が漏れ、肩が震えた。 さっき、一瞬秘部に触れてしまったときのような声。 ピタは顔を上げて、カイネの表情を確認する。 カイネは右手で口元を抑えていた。まるで、「出してはいけない声が出てしまった」というような。 「…………我慢しなくていいんですよ、カイネさん」 ピタはカイネのシャツのボタンを外す。 サイズの合っていないシャツは、無理やり服の裾を縛ることでなんとかカイネの胸を支えていたのだが、ボタンを外され、豊かな乳房がこぼれた。 (…………ズルい) そんな言葉が胸に浮かぶ。 あらわになった胸は、やはり作り物のように均整がとれている。 彫刻のように美しい丸みをおびた輪郭、ぷっくりとした乳輪。 赤みを帯びた乳首は硬く上向きに立っている。 やわらかそうな白く汗ばんだ肌。 (わたしだって女の子としてそれなりに胸もあるけど……  まるで、すごい彫刻家が心をくだいて作った彫刻を見てるみたい…) 整った肢体は、どこか作り物めいた印象すらある。 体中の古傷も、彫刻家が肉体を際立たせるために配置した装飾のようだった。 胸の間には、甲殻類が肌に沈んだような物体があった。 遠目にはネックレスの一部のように見えていたが、近くで見ると、肌にめりこんでいるような形だ。 (……? なんだろう、アクセサリーじゃない……?) 疑問に思いつつも、ピタはカイネの白い胸に指を沿わせた。 「……ん……っ……」 刺激に身を震わせたカイネは、ピタの手首をつかんだ。 (……っ、怒らせちゃった……!?) 「…………それに……ッ、……触るんじゃねえ……ッ」 カイネが目線で示したのは、胸と胸の間にある、アクセサリーに見えた甲殻類のような物だった。 「……それがッ……、……“海の呪い”の本体だ。  触って呪われても知らねえぞ……ッ……」 (――――今、結構大事な情報を聞いた気がする) ピタはこくこくと頷いた。 カイネはそれ以上何も言わなかった。 (……このまま続けても構わない、ってこと、だよね……?) ピタは“海の呪い”に触れないように気をつけながら、胸に指を沈めた。 「……はぁっ…………んん……っ……」 さっきまでの押し殺したような低い声とは違う、女性の嬌声が漏れる。 興奮でぴんと立った乳首をピタは口に含んだ。 「……ふっ……。…………あ…………あっ………………」 カイネは最初はなんとか嬌声を抑えようとしていたようだが、漏れる声は段々大きくなってくる。 (…………感じてくれてる) 硬くなった乳首を舌全体で絡めとるように舐め、吸う。 「……はっ…………くぁっ……」 ちらりと上目づかいでカイネを確認する。 全身で刺激を感じている表情は、今までとは印象が変わっていた。 今までは、美人ではあるが、表情は男性的だった。 だが、今は、表情はゆるみ、女性らしい蠱惑的な色香を出している。 「…………ふぅっ、……はぁっ………………」 (女の子の顔、に、見える……) 艶めかしい視線がこちらに向けられる。 近距離で上半身だけを見ていると、完全に女性にしか見えない。 (気持ちよくなってくれてる、よね?) 「ん……っ」 上向きに立った乳首を舐めつづけながら、ピタは指先をカイネの胸から腹へ滑らせていった。 カイネの身体がびくんと震える。 そのまま指をさらに下方へ、鼠径部に沿わせて進む。 たどりついた秘部の縁を指先でなぞると、濡れた感触が伝わる。 「……はぁ…………っ」 秘部に触れられたことで、カイネは電撃が走ったように震える。 ピタはゆっくりと何度も花弁に指を沿わせて、反応を伺った。 「……んっ……、はぁっ…………!!」 (やっぱり、おまんこできもちよくなってる……) カイネの女性らしくふせられた瞳が、困惑と快楽の間で揺れている。 ピタは愛液で濡れた指先をクリトリスにあてがった。 「……あっ…………あ…………ん゛っ…………っ!」 これまでにない身体を走る刺激から逃れようとするようにカイネが身をよじる。 「あっ……」 ピタは逃げようとするカイネの腰を引き寄せた。 未知の感覚に怯えるように、カイネは息を荒くして眉をひそめている。 「…………はあっ…………はーっ、…………」 (……もしかして、触ったこと、ないのかな) カイネが元々男で、その精神も男のままなのだったら、自分の秘部を触ったことがない、ということは考えにくい気がした。 (他の人に触られたことがない、とか……?  もしかして、女の子として、えっちするのは初めてなのかも……っ) クリトリスを指先でそっと掬うように刺激する。 指を動かすたびにカイネの身体がびくんと震えた。 「んっ……、ん゛…………っ……」 止まらない嬌声を抑えようと、カイネは右手で口をふさぐ。 ピタはその手首をそっと握った。 「我慢しないで、カイネさん。もっと気持ちよくなっていいんですよ」 「ん…………っ!?」 ピタは指先をクリトリスから秘部へ移した。 愛液を吐きだし続けている秘部を、確かめるように指を沿わせる。 ピタはカイネの胸元から顔をあげると、両足を開かせるように押さえた。 カイネは戸惑った顔だが抵抗はしない。 おそらくまだ《魅了》が効いた瞳は、乞うようにピタを見ている。 改めて見てみると、花弁は整ってはいるが小さめだ。 (……生まれつきのものじゃない、から……?) ピタは再び、秘部に舌を沿わせた。 「ひゃぅ……っ……!……あっ…………っ……」 秘部を舐め、クリトリスを舌先でくちゅくちゅと刺激すると、カイネがのけぞる。 「…………はっ、………………あっ…………!」 (……大丈夫。ちゃんと感じてくれてるから、このまますれば……) 「……カイネさん。指、挿れてもいいですか……?」 「……ぇ…………ふ…………えっ…………!?!?」 焦点の定まらない声を肯定と受けとめて、ピタは中指の先をゆっくりと挿入した。 「……あっ、…………はぁっ………………っっ」 指を締めつけるような膣肉の感触。 やはり、見た目どおり、膣内はだいぶ狭い。 顔をあげて表情を確認すると、カイネは荒い息を吐きだしながら眉間にしわをよせている。指一本でもかなりキツいのだろう。 (無理しないように……ゆっくりやらないと……) 細心の注意を払いながら、指先を一度抜きかけて、再び奥へ。 中をほぐすように、中指を抜き差しする。 「……んっ、………………あっ……………………」 膣肉が絡みついてくる感覚。カイネが何度も体を震わせる。 「……あっ、……だっ、……っ…………!」 (よかった、少し動かしやすくなってきた……) カイネが声をあげ、何かを言いよどむように眼を逸らす。 「……ちがっ、……はっ…………あっ…………」 (感じてるのを、すごく我慢してるみたい……?) 指の出し入れを繰り返すたびに、奥から愛液があふれてくる。 「ふっ、…………はぁっ……っ」 「カイネさん、指、もう一本いれますね」 「はぁ……っ!? はっ…………あ…………」 もはや抵抗の気力が奪われたような吐息だけが返ってくる。 もう一本の指を重ねて、注意深く挿入した。 「んっ…………、はぁ……っ……」 カイネの腰が跳ねる。 その瞬間、何かスイッチが入ったかのように喘ぎ声が大きくなり、船長室に響く。 「……はっ、あああああっっっっっ!!」 (すごく……気持ちよくなってくれてる……指がきゅうきゅう締めつけられちゃう……っ) 「……ふっ、うぅぅっ…………」 海賊の顔ではない、女性の顔。 再びカイネが腰を弾ませ、そのはずみに挿入していた指が外れる。 「あっ……」 「…………はっ……」 指が抜けた感触にカイネはまた声をあげ、力の抜けていた右手で口元を抑える。 何か思考が頭の中を駆け巡っているらしい。 目線がピタから、胸元の“海の呪い”に向けられ、右手でそれを強く抑えた。 その目が蕩けた女性のものから、夢から覚めるように、はっきりとした光を取り戻す。 突然、カイネが身体を起こし、ピタを制止するように肩をつかんだ。 「……カイネさん?」 「…………る」 「えっ?」 「帰るッ!!!」 カイネは叫ぶと寝台の下に飛び降りた。 (えっ、なにかいやなことがあったの!?  えっ……?) カイネは机に置いてあった酒杯を一息に飲む。その隣に置いてあったピタの分もつかむと、飲み干した。 「えっ、あっ、カイネさんっ!?」 「…………」 カイネは無言でズボンを穿き、コートを掴んで羽織り、目を合わせずに部屋を出ていく。 (どっ、どうしよう、怒らせちゃった!?  とにかく後を追いかけないと……) カイネを追おうとして、ピタは、自分があられもない姿であることに気づいた。 急いで着衣を整え、三角帽子を手にとって部屋を出ようとして、 「船長~~~~~~~~!!!!!!!!!」 扉の前に押しかけた大量の船員たちと出くわした。 「えっ、えっ???  皆、なんで…………かっ、“彼女”は……?」 「船長~~~~!!!!  無事でよかったぁぁぁ~~~~っっっ!!!!!」 押し掛けた船員の中には、感動にむせび、男泣きする者すらいる。 その内の一人が、絶え絶えに説明した。 「カイネがっ……、カイネが一人で出てきたから、俺たちはてっきり船長がやられちまったと思って……」 「それでっ、“彼女”はどこに!?」 「カイネは海に帰っちまいました…………」 “海に帰った”? 今のところ、船が沈む気配もない。 (……助かった…………のかな?) 突然のカイネの心境の変化を、どう捉えればいいのかわからない。 (途中で嫌になった……?  でもそれなら、腹いせに船を沈めそうだし……そんなに嫌では、なかった……???) 「とにかく船長……っ、船長が無事でよかった……!」 「……わたしだって、そう簡単にはやられません。  さぁ、目的地変更! 皆、持ち場に戻って!!!」 「い、イエス、マム~~~ッ!!!!!」 船員たちはバタバタと持ち場に戻っていく。 船に何事か起こらないか、ピタは緊張して周囲を伺うが、特に何も起きる気配がない。 (本当に、助かった、のかな……?) 船員たちの最後方にいた副船長が、不安げな目でピタを見ていた。 「船長……ご無事で……ッ」 「助かった…………みたい。  ……あ、でも」 「?」 「また来るかも」 「えっ」