春。ゴールデンウィークに入って、私には不思議な幻聴が聞こえた。 自称、神様。そいつが私を嫁にしたい、嫁になるまでは時は三十一日より先に進むことはない、という。 本当だった。六月一日の朝は、五月一日の朝に戻っていた。 ――目覚まし時計の電子音が、耳障りに鳴り響いている。 枕元へ滑らせた指先が止めるボタンを押し込むと、静寂が部屋を満たした。カーテンの隙間から差し込む光は、見覚えがありすぎる角度でフローリングを照らし出している。 ベッドから身を起こし、胸元まで滑り落ちた薄手のブランケットを見下ろす。制服を脱ぎ捨てて身につけた紺色の部屋着。すらりと伸びた自分の細い足。そのどれもが、三十分前――私にとっては昨夜、あるいは「最初の一ヶ月」の果てに迎えたはずの五月三十一日深夜の感覚を、綺麗さっぱり洗い流していた。 机の上に置かれた卓上カレンダーに目をやる。 黒いインクで刻まれた数字は、紛れもなく『5月1日』。 めくったはずの頁が、皺ひとつなく元通りの顔をして澄ましている。 『――クク、目が覚めたか、我が愛しき花嫁よ』 空間の歪みから滲み出るように、低く湿り気を帯びた粘つく声が鼓膜を撫でた。 姿は見えない。けれど、空気の温度が一段階下がり、部屋の四隅に淀んだ黒い影が澱のように溜まる。自称・神様。人知を超えた怪異であり、私をこの奇怪な時間の檻へ閉じ込めた元凶の気配だった。 『我が言葉を疑っていたようだが、これで理解したであろう。貴様がどれほど現世の理に縋ろうと、余の手のひらからは逃れられぬ。余の神気を受け入れ、その身を余に捧げて花嫁とならぬ限り、貴様の時は永遠に五月のうちに腐ち果てるのだ』 威厳に満ちた、だがどこか歪んだ欲望を孕んだ声音。普通の人間なら、恐怖で膝を折り、涙を流して命乞いをする場面なのだろう。けれど、私の心に湧き上がった感情は、戦慄などではなかった。 ただただ、底知れぬ不快感と、冷え切った怒りだけだった。 「朝っぱらから、虫唾が走る声を聞かせないでいただけますか」 私は乱れた姫カットの黒髪を手櫛で整えながら、声の主がいるであろう虚空へ冷ややかな視線を投げつけた。 「花嫁だなんて、おぞましいにも程があります。私の身体も、私の心も、兄さん以外の男に一ミリたりとも触れさせるつもりはありません。ましてや、姿形も見せない怪異など論外です」 『……兄、だと?』 怪異の声に、わずかな戸惑いと侮蔑の色が混ざる。 『馬鹿な娘だ。血を分けた兄などという卑小な存在に何を拘泥する。人ならざる余に見初められたことこそ至上の栄誉であろうに。貴様のその白く滑らかな素肌も、豊かに実った胸も、すべては余が愛でるためにこそある』 「気安く私の身体を品定めしないでください。兄さんならともかく、あなたのような得体の知れない化け物の種を宿すくらいなら、舌を噛み切って死んだほうが何倍も清々いたします」 私は立ち上がり、洗面台へと向かった。鏡を覗き込むと、そこにはいつも通りの、誰が見ても非の打ち所のない「優等生の妹」の顔があった。陶器のように白い肌、手入れの行き届いた漆黒の髪。薄手のシャツの下で仄かに自己主張する、細身の体躯にはやや不釣り合いな双丘。 どれも、兄さんだけに見せ、兄さんだけに触れさせるために慈しみ育ててきた私の肉体だ。 蛇口を捻り、冷たい水で顔を洗う。水滴を拭いながら、私は背後に漂う悪神の気配へ、淡々と言葉を続けた。 「ルールはわかりました。要するに、あなたが諦めるか、私があなたを完全に無力化すれば、この五月から抜け出せるのですね?」 『無力化だと? 神たる余をか? 片腹痛いわ。貴様のごとき矮小な人間の小娘に、一体何ができるというのだ』 「ええ、呪術や物理であなたを殴り倒すのは骨が折れそうです。ですから――もっと簡潔な方法を取ることにします」 私は鏡越しに、薄く笑みを浮かべてみせた。 「私が、兄さんと結ばれればよろしいのでしょう? 兄さんに私のすべてを捧げ、身も心も繋がり合って、兄さんの子どもを作る。そうして完全に兄さんの女になってしまえば、あなたの求婚など最初から破綻いたします。兄さんの熱い愛に満たされた私を見せつけられれば、あなたも興ざめして消え失せるしかありませんものね」 沈黙が落ちた。怪異は呆気にとられたように息を呑み、やがて喉の奥を鳴らして嘲笑を響かせた。 『……くはは、大口を叩くと思えば、そのような妄言か! 笑わせるな、小娘。貴様の兄への情念など、ただの一方通行、叶わぬ片思いではないか!』 図星を突かれたはずなのに、私の眉毛一つ動かない。 『余は見ておったぞ。最初の一ヶ月、貴様が兄の寝首を掻く機会を伺いながら、結局はただの「出来のいい妹」の仮面を剥ぎ取れずに終わった様をな! 兄にとって貴様は守るべき無垢な血族に過ぎん。女として見られてすらいないのだ。そのような男が、たった一ヶ月で貴様を抱き、己の女として欲するなど、天地が引っくり返ろうとあり得ぬわ!』 「あら、見ていらっしゃったのですね。ずいぶんと悪趣味な覗き魔ですこと」 私は冷淡に言い放ち、クローゼットからアイロンの効いた清潔な私服を取り出した。 「おっしゃる通り、最初の一周目は様子見でした。けれど、この輪廻が本物であると理解した今、遠慮する理由など何一つありません。兄さんが私を妹としてしか見ていないなら、その理性を焼き切ってしまえばいいだけのこと。一ヶ月もあれば十分です。兄さんの雄としての本能を極限まで呼び覚まし、私なしでは生きていけない身体にして差し上げます」 『ほざけ! ならば見せてもらおうではないか。貴様の浅ましい愛欲が、兄の理性に跳ね返されて無様に砕け散る様をな!』 嘲笑を残し、怪異の気配は部屋の隅へと溶けていった。消え去ったわけではない。この屋敷の影に潜み、私の行動を監視し、月末の審判を待つつもりなのだろう。 上等だ、と私は心の中で舌を打った。 怪異の呪いなど、私にとっては渡りに船でしかない。兄さんとひとつ屋根の下、親の不在が続くこの黄金週間から始まる五月を、何の後腐れもなく兄さんを堕とすための時間に使えるのだから。 部屋を出て階段を下りると、一階の台所から香ばしいトーストの匂いが漂っていた。 リビングのテーブルには、すでに二人分の朝食が並べられている。そして、エプロン姿の青年が、冷蔵庫から牛乳パックを取り出しているところだった。 「あ、椿姫。おはよう。ちょうど起こしに行こうと思ってたところだ」 はじめ兄さん。 私の、世界でたった一人の兄であり、私の魂のすべてを縛り付けて離さない至高の男。 無防備に微笑むその顔立ちには、学生特有の純朴さと、妹を心から慈しむ無害な優しさが満ち溢れている。首筋から覗く鎖骨のライン、部屋着のスウェット越しにわかる適度に引き締まった体躯。そのすべてが、私の視覚を通じて下腹の奥をキュウと甘く疼かせた。 「おはようございます、兄さん。朝食、作ってくださったのですね」 「おう。せっかくの連休初日だしな。父さんも母さんも旅行で月末まで帰ってこないんだから、俺がしっかりお前の面倒を見ないと」 兄さんは誇らしげに胸を張り、私の分の椅子を引いてくれた。 ああ、なんて愛らしいのだろう。自分がこれから、妹という名の毒牙にかかって骨の髄まで貪り尽くされるとも知らずに、健気にも保護者ぶっている。 席に着きながら、私はスカートの裾をわずかに整えるふりをして、兄さんの逞しい腕の筋を盗み見た。 男としての体温。石鹸と汗の混じり合った、噎せ返るような雄の匂い。 (……たまらない) 先ほどまで冷え切っていた私の胎内が、兄さんの声を聞き、その姿を視界に収めただけで、じわりと熱を帯びて愛液を分泌し始めているのがわかる。最初の一周目、私はこの無防備な兄さんを前にして、己の理性と「完璧な妹」の体面を保つためにどれほどの苦血を舐めただろうか。 だが、もう我慢する必要はないのだ。失敗しても時間は巻き戻る。ならば、躊躇う理由がどこにあるというのか。 「いただきます、兄さん」 「はいよ。ジャム、どれにする? 苺とブルーベリーがあるけど」 「兄さんと同じものがいいです」 「じゃあ苺だな」 他愛のない朝の会話。けれど私の瞳は、兄さんの唇や、パンを口へと運ぶ指先の動きを執拗に追っていた。 兄さんはまったく気づいていない。妹が向ける眼差しが、家族愛などという清純なものではなく、獲物を値踏みする牝の渇望そのものであることに。 連休初日の空は、午後を過ぎたあたりから急速に機嫌を損ね、重苦しい鉛色の雲に覆われ始めた。 ぽつぽつと窓ガラスを叩き始めた雨粒は、やがて視界を白く染めるほどの土砂降りへと変わっていく。雷鳴が遠くで轟き、古い木造の家屋を微かに揺らしていた。 「うわ、降ってきたな。天気予報、当たりすぎだろ」 リビングの窓を閉めながら、兄さんが溜息をつく。 二人きりの家。外は激しい雨。薄暗い室内。 これ以上ないほど、おあつらえ向きの舞台だった。 「兄さん」 私はソファから立ち上がり、兄さんの背後へと歩み寄った。 いつもの制服でも、だらしない部屋着でもない。この日のために――いや、先ほど自室で着替えてきた、薄手の白いサマーニットと、柔らかな布地の膝上丈のフレアスカート。下着は、レースの透け感が際立つ黒を選んである。白い生地を通して、うっすらと下着の輪郭が浮き出る仕様だ。 「ん? どうした、椿姫」 振り返った兄さんの視線が、私の胸元でわずかに止まり、慌てて泳いだ。 完璧な反応だ。兄さんは健全な男子学生なのだから、無防備な妹の身体に無自覚な劣情を刺激されないはずがない。 「少し、肌寒くなってまいりましたね」 「あ、ああ……そうだな。暖房、つけるか? それとも上着持ってくるか?」 「いいえ。そういう寒さではありません」 私は一歩、兄さんとの距離を詰めた。 靴下を脱ぎ捨てた素足が、床を踏みしめるたびに微かな熱を放つ。兄さんの吐息がかかるほどの至近距離。見上げる瞳を潤ませ、私は怜悧な仮面をかなぐり捨てた。 「兄さんの温もりが、欲しいのです」 「……は? 椿姫、お前、何言って――」 困惑に目を見開く兄さんの胸板に、私は自らの身体を躊躇なく押し当てた。 柔らかな乳房の感触が、薄いニット越しに兄さんの胸部を圧迫する。息を呑む気配。兄さんの身体が一瞬にして強張るのが、肌を通じて生々しく伝わってきた。 「つ、椿姫……!? 離れろ、急にどうしたんだよ!」 「どうもしません。ずっと、こうされたかったのです。兄さんに抱きしめて欲しかった」 「お前、熱でもあるんじゃないか!? ほら、離れ――」 兄さんが私の肩を掴み、引き剥がそうとする。男の手の平の力強さ。けれど、その指先が微かに震えているのを私は逃さなかった。 兄さんの視線が、至近距離にある私の濡れた唇と、乱れた黒髪の間から覗く白い項に釘付けになっている。 「兄さん、嘘をつかないでください」 私は兄さんの両手を自らの胸元へと導いた。豊かな膨らみの上に、兄さんの無骨な掌を強引に押し当てる。 「ほら……こんなに速く脈打っています。兄さんの心臓も、私の心臓と同じくらい、激しく暴れているではありませんか」 「っ……馬鹿、何触らせてんだ! お前、妹だぞ!?」 「妹だから何だと言うのですか?」 私は兄さんの耳元へ顔を寄せ、熱い吐息をその薄い耳たぶに吹きかけた。 普段の澄ました敬語ではない。兄の鼓膜を直接犯すような、甘く粘つく声で囁く。 「兄さん、興奮してるんですね。こんなにカチカチに勃起させて……言葉では妹だって言いながら、ペニスは正直ですね」 兄さんのスウェットの股間が、信じられないほど大きく、凶暴な質量を持って張り詰めているのが、私の太ももに押し付けられていた。 隠しようもない、雄の衝動。 兄さんは顔を真っ赤に染め上げ、信じられないものを見る目で私を凝視した。その瞳の奥には、長年押し殺してきた倫理の防壁が、音を立てて軋む光景がはっきりと見えた。 「つ、ばき……お前、何を……そんな、破廉恥な言葉……」 「破廉恥? ふふ、何がおかしいのですか。大好きな男の人の前で発情して、おまんこを濡らすのが、そんなにいけないことですか?」 私は躊躇なく、自らのスカートをたくし上げた。 黒いレースのショーツは、すでに私の股間から溢れ出た愛液を吸い上げ、中心部がじっとりと濃い色に変色していた。太ももの内側を伝い落ちる透明な雫。部屋中に満ちていく、初夏の雨の匂いと、熟れた牝の甘い体臭。 「見てください、兄さん。私のここ……もう、兄さんのペニスを欲しがって、こんなにびしょ濡れです」 「やめろ……見せるな……!」 兄さんは拒絶の言葉を吐きながらも、その視線を私の秘所から逸らすことができない。喉仏が上下し、荒い息が漏れる。 もう、防壁は決壊寸前だった。あと一押し。ほんの少し、背徳の引き金を引いてやればいい。 私は兄さんの手を自分のショーツの中へと滑り込ませた。 指先が、熱く湿りきった粘膜へと触れる。ぐちゅ、と卑猥な水音が静かなリビングに響き渡った。 「あっ……ん、兄さんの指……すごく、熱い……」 「あ、ぐ……椿姫……お前、本当に……っ」 指先に触れる愛液の感触が、兄さんの残された理性を完全に焼き切った。 兄さんの瞳から理性の光が消え、代わりに飢えた獣のような暗い情欲が宿る。 次の瞬間、私の視界が激しく回転した。 どさりと、毛足の長い絨毯の上へ押し倒される。 見上げる先には、荒い息を吐きながら私を見下ろす兄さんの姿があった。 「兄さん……」 「お前が……お前が煽ったんだからな……っ!」 唸るような声とともに、私のスカートが無造作に捲り上げられ、ショーツが乱暴に太ももから引き剥がされた。 涼しい外気が一瞬だけ熱を持った秘裂を撫で、すぐに兄さんの逞しい肉体がそれを覆い隠す。スウェットを押し下げて現れた兄さんの陰茎は、怒張し、赤黒く脈打ちながら、私の下腹部にその熱い先端を擦り付けてきた。 太い。熱い。そして、これが私の兄さんの雄の証なのだという事実が、私の頭を狂おしい快感で満たしていく。 (ああ……素晴らしいわ……!) 部屋の片隅、天井の梁のあたりに、あの悪神の気配が揺らめいているのが見えた。 驚愕と、苦々しさに歪む空気の淀み。 見ているがいい、名無しの怪異よ。あなたの思い通りになどさせない。私は今、ここで兄さんの女になるのだから。 「兄さん、入れて……っ。私の処女、兄さんにあげます……!」 兄さんはもう、私の言葉の是非を判断する余裕など持ち合わせていなかった。 太い手が私の太ももを割り開くように広げ、硬く反り立った亀頭が、愛液で濡れそぼる私の膣口へとあてがわれる。 熱い先端が、入口の襞を押し分け、侵入を始める。 「あ、っ……ふ、ぁ……!」 きつい。未だ何者も受け入れたことのない私の肉体は、兄さんの雄棒の太さに悲鳴を上げているようだった。けれど、その痛みすらも甘美な痺れとなって子宮を揺らす。 兄さんが腰を低く沈め、一気に体重を乗せて突き入れた。 ぶつり、と。 私の中で、何かが引き裂かれる鈍い感触があった。 「――っ、あぁぁッ……!」 鋭い痛みが下腹部を貫く。だが、それ以上に私の全存在を満たしたのは、兄さんの熱い肉棒が、私の膣壁をみちみちと押し広げながら、奥の奥まで完全に埋め尽くしたという圧倒的な征服感だった。 結合部から、鮮やかな処女の血が、愛液と混ざり合ってシーツへ滴り落ちる。 「はぁっ、はぁっ……つ、椿姫……痛いか……? 大丈夫か……?」 奥まで突き刺さったまま、兄さんが苦しげに息を吐きながら私の顔を覗き込んだ。 額には大粒の汗が浮かび、眉を寄せて私を気遣っている。こんな状況になっても、まだ兄としての優しさを捨てきれないのだ。 愛おしくて、狂おしくて、たまらない。 私は兄さんの首に両手を巻き付け、自らの腰をわずかに持ち上げて、ペニスをさらに深くへと引き込んだ。 「痛く……ありません……っ。ふふ、兄さん……私の処女おまんこ、そんなに気持ちいいですか? ぎゅうぎゅうに締め付けられて、抜けなくなっちゃいそうですね」 「っ、お前……そんな、生意気なこと……っ!」 私の挑発が、兄さんの奥底にある雄の闘争心に火をつけた。 兄さんの腰が、無我夢中で引き抜かれ、そして再び根元まで叩きつけられる。 ぐちゅり、と肉と肉が衝突する重い水音が鳴り響いた。 「あぁっ、んっ! 兄さん、すごい……っ、奥まで、届いてる……!」 「椿姫、椿姫……っ、あったかい、お前の中、信じられないくらい締まる……っ」 激しいピストンが始まった。 正常位の体勢のまま、兄さんは私の腰を掴み、狂ったように腰を打ち付け続ける。突き入れられるたびに、私の豊かな乳房が激しく揺れ、先端の突起が兄さんの胸板に擦れ合って電流のような快感を脳髄へ送り込む。 結合部からは、愛液と精油の混ざり合った泡がぐちぐちと音を立てて溢れ出し、絨毯を濡らしていく。 処女膜を破られた痛みなど、疾の昔に快楽の奔流に押し流されていた。 兄さんの逞しい陰茎が私の膣壁を擦り上げる感触、子宮口をゴツゴツと小突く凶暴な熱。 そのすべてが、「私は今、兄さんに犯されている」「兄さんの女になっている」という無上の悦びとなって私の精神をとろけさせていく。 「あ、あぁっ! 兄さん、もっと、もっと奥……っ! 私の中に、兄さんの全部をちょうだい……っ!」 「くっ……椿姫、もう、出そうだ……っ、中に出すぞ……っ!」 「出して! 子宮の中に、兄さんの精液、いっぱい種付けして……っ!」 兄さんの動きが一層激しくなり、獣のような唸り声を上げながら、最後の一突きが私の最奥へと打ち込まれた。 「う、おおぉぉッ――!」 びく、びくん、と。 膣の奥深くに突き刺さった亀頭が、激しく脈打つのがわかった。 次の瞬間、熱い、焼けるような白濁の奔流が、私の子宮口を直撃し、胎内へと勢いよく注ぎ込まれていく。 一筋、二筋、三筋。 兄さんの男としてのエキスが、私の純潔を散らした胎内を満たし、溢れかえっていく。 「あぁぁぁんっ……!!」 私は兄さんの背中に爪を立て、歓喜の絶頂を迎えた。 子宮がぎゅうぎゅうと兄さんのペニスを締め上げ、最後の一滴まで搾り取ろうと痙攣する。 兄さんは私の胸に顔を埋め、荒い息を吐きながら、いつまでも私の体温を貪るように重なり合っていた。 外の雨足は、少しも弱まる気配を見せない。 薄暗いリビングに満ちる、濃厚な精液と愛液の匂い。 私は兄さんの汗ばんだ背中を優しく撫でながら、満ち足りた吐息を漏らした。 勝ったのだ。 私は兄さんと結ばれ、その種を受け止めた。 これで、あの忌々しい怪異も、私を諦めて消え去るほかないはず――。 だが。 私の甘い確信は、事後の静寂の中で、無残にも打ち砕かれることとなった。 ペニスをしおらしく引き抜いた兄さんは、絨毯に広がる血と精液の染みを見つめ、血の気を引かせた顔で後退った。 「俺は……俺は、なんてことを……」 「兄さん……?」 「椿姫、俺……俺は、お前の兄貴なのに……自分の欲情に負けて、お前を傷つけて……取り返しのつかないことを……っ」 兄さんの瞳に宿っていたのは、愛の余韻などではなかった。 身を焦がすような激しい自己嫌悪と、妹を汚してしまったという絶望的な罪悪感だった。 兄さんは震える手で服を掻き集め、私から目を逸らすようにして立ち上がった。 「ごめん、椿姫……俺、頭を冷やしてくる……っ」 「待って、兄さん! 私は、嫌じゃなかったのに――!」 私の制止の声も届かず、兄さんは自室へと逃げ込み、内側から鍵をかけてしまった。 リビングに残されたのは、下腹部から兄さんの精液をぽたぽたと滴らせ、途方に暮れる私ひとり。 そして――。 『――く、くく……あーっはっはっは!!』 部屋の隅の影が大きく揺れ、悪神の嘲笑が鼓膜を震わせた。 『見たか、愚かな小娘よ! これが貴様の言う「結ばれる」とやらの無残な結末だ!』 「……黙りなさい」 『兄の顔を見たであろう! あれは愛などではない。若き雄が、発情した雌の肉体に抗えずに欲を吐き出しただけの、ただの生理現象だ! 事後に残ったのは貴様への執着などではなく、薄汚い自己嫌悪のみ! 貴様は兄の心を奪うどころか、その防壁をより強固にしてしまったのだぞ!』 怪異の指摘は、あまりにも正確で、私の胸を鋭くえぐった。 悔しさに唇を噛み締める。 兄さんのあの絶望した顔。あれでは、明日から私と目を合わせることすら拒絶するだろう。妹を女として欲したのではなく、妹の露骨な誘惑に流されて過ちを犯した――兄の認識は、完全にその枠組みに閉じ込められてしまっていた。 『不合格だ、小娘。そのような浅ましい交尾など、余への供物にもならぬ。……さあ、時の終わりを待つがよい』 その言葉の通り、残りの五月は地獄のような冷戦だった。 兄さんは私を避けるように部屋に引きこもり、食事も別々に摂る始末。私がどれほど言葉を尽くそうと、「全部俺の責任だ」「お前に顔向けできない」と心を閉ざしてしまった。 そして、あっという間に過ぎ去った五月三十一日。 深夜零時を迎えた瞬間、世界はふっと色を失い――。 目を開けると、眩しい朝の光。 『5月1日』の卓上カレンダー。 そして、私の股間をそっと手で探れば――そこには、破られたはずの処女膜が、傷一つなく完全に塞がった、何者にも侵されていない無垢な肉体へと戻っていた。 「……っ、うそ……また、膜が塞がってる……!」 悔し涙が、自然と瞳から零れ落ちた。 あんなに痛くて、あんなに熱くて、兄さんの精液で満たされたはずの子宮も、綺麗さっぱり空っぽに巻き戻されている。 階下からは、またあのトーストの焼ける匂いと、何事もなかったかのように明るい兄さんの「椿姫、おはよう」という声が聞こえてくる。 『クク……二周目の始まりだな、我が花嫁よ。次はどうする? また兄に処女を散らさせて、無駄な種を注がせるか?』 天井から降ってくる悪神の嘲笑に、私はシーツをぎゅっと握りしめた。 「……ええ、そうよ。何回だって散らしてやりますわ」 私は涙を乱暴に拭い、ベッドから立ち上がった。 ただ交尾をするだけでは駄目なのだ。兄さんの理性を奪うだけでは、あの善良な兄は自己嫌悪に逃げ込んでしまう。 必要なのは、小手先の色仕掛けではない。 兄さん自身の心を、「妹を守りたい」という倫理の檻から完全に解き放ち、狂おしい独占欲に満ちた「一人の男」へと仕立て上げること。 「見ていなさい、化け物。この五月が終わるまでに、必ず兄さんの方から『お前が欲しい』と懇願させてみせますから」 一筋縄ではいかない。私の処女膜は、これから何度も破られ、そして巻き戻されることになるのだろう。 けれど、兄さんのあの硬いペニスの感触を思い出すだけで、私の太ももの内側は、二周目の朝早くから再び熱い蜜を滴らせ始めていた。