ニャアン人妻概念のおはなしするね ニャアンはエグザベくんと無事結ばれました。マチュもシュウジを連れ戻しました。 ニャアン・オリベは無事名誉除隊しジオン公国の市民権を獲得した。今はジオン公営団地に住んでるよ。隣にはシュウマチュ夫婦が仲良く暮らしています。 採光性も高い大きな窓もある。4LDK風呂トイレ別。愛の棲家にしては十二分だった――― ニャアン達が住むジオン集合住宅。日本や欧米圏の団地そのものなのであるが統一された規格の建物が無機質に並ぶその様子は旧世紀ソビエト社会をも彷彿とさせる出で立ちであった。 しかし、ニャアンはここでの生活を気に入っている。5階建ての集合住宅から見下ろす景色ははジフレドちゃんの中で見たの目線より少し低い。 円形に並ぶ団地には二階建ての建物がある。管理棟でもなければ守衛さんの寄せ場でもない。 それなりに大きい建物であった。小学校や保育園と呼ぶにはすこし小さいけれど。中には小さな体育館がある 集会場もあるし調理室まである 「ジオン第105会館」そうジオンにも「公民館」が存在するのだ、どこか日本的だね 今日はニャアンと公民館のおはなし。 人口照明がやさしく灯るズムシティの日中、ニャアンはふと思った。 「絵本、どうしよう」 素朴な一言であった。なんてことのない疑問であった。 ニャアンの心中はこうだ。 4LDK風呂トイレ別。愛の棲家にしては十二分な我が家である。しかし我が子を育てるには様々な物品が必要である オムツなどの消耗品はもちろん保育瓶、ミルトン(哺乳瓶用消毒槽の意)おくるみ(衣服)や服ベビーベッド、沐浴用の小さなバスタブ(ホームセンターに売っている収納ケースで代用するつもり) 玩具はまぁ、「コンチがいるからあまり必要じゃないかな?」とニャアンは考えていた。 我が子にとってコンチはきっといいお友達になってくれるだろう。音もなるしおしゃべりもできる。我が子の遊びを人工知能との対話で成立させてしまう事に抵抗がないというのは嘘だとニャアンは言う ファンシーな色彩の取っ手兼カバーに包まれた黒い板、タブレットにかじりついている幼児の姿をソーシャルネットワーク上で散見するからだ。 ニャアンあまりスマホは見ないタイプの人間だが、育児に関して調べる事はある。検索するブラウザから時々そういう「黒い物体を凝視する幼児」なるものがタイムラインで流れてくる。 おかあさんにとっては楽だろうけど、あまり健康的じゃないな…とニャアンでも思った。 その点、コンチは安心できる。一応プロジェクター式映像投影機能は備わっているが。そんなものに頼らなくても純粋に遊び相手になってくれる。動画漬けになる心配はいらない ギゴギゴ話す彼はたのもしい 「ありがとうシュウちゃん」 そう、軽くつぶやいた。本来はシュウちゃんの黄色い使い魔であったコンチであるが、今はエグニャア家の立派なペットだ。 本題に戻りましょう、「絵本です」 ニャアンは我が子に本を与えたかった。かつて母親が読み聞かせてくれたように。自分も絵本を我が子に読み聞かせ、情緒と識字力、そして愛を与えたかったのだ。 宇宙世紀0085年、人類が宇宙に住処を移してから一世紀。『電子書籍元年』は訪れませんでした。いまだに紙の本は現役です。コロニーは地球からパルプの原料を輸入し出版しています。 イズマコロニーのニャアンの狭小住宅にも漫画本やエッセイなんかが並んでいたのがその証左です。読む気もないし理解できない「ジオン科学大学」の赤本の存在もありました。 ニャアンはとにかく我が子に文字を与えたかったのだ。しかしここで問題が生じる みなさんあまり想像がつかないでしょうが、絵本はかさばります。理由はスクエアサイズにあります。A4やB4みたいな長方形ではないんです。正方形なのです。 なので本棚からはみ出ます。子供が乱暴に扱っても壊れないようなに作りが頑丈なのでページ数に対して厚みがあります。 そして、物心つく前の記憶が頼りですが。いろんな絵本を読み聞かせてもらったとニャアンは薄い記憶で認識しています。そう絵本はたくさんないといけないのです。 4LDK、決して狭くない物件ですが、置き場所に困る。そして子供が大きくなったらいらなくなってしまう。そういう複雑な存在なのです。 いらなくなった絵本は、次のママさんの元へ、受け継ぐ為に売りに出せばいいのですが。 本を売るという行為にニャアンはすこし拒絶感を感じてしまいます。もったいない精神というより愛着が湧いているのでしょうね。 まだ産まれていない命、しかしもう産むしかない命。臨月のニャアンにも悩みがあるのでした。産む覚悟はできている。しかし育てる事への悩みは尽きないのです。 夕餉の席、エグザベくんにもその旨を伝えました。 「あなた…絵本、どうしたらいいでしょう」 「ずいぶん先の話だねニャアン」エグザベくん、ニャアンの出産が待ち遠しいというか出産という目の前の事柄に集中しているので、絵本の読み聞かせ。最低でも言語を習得する1歳以後の話になるので、彼の言う通り先の話だと思っていた。長期的視野はなかった。 「先の話ですが、いずれ必要になるものです…えほんかさばる…かさばります」 「本の置き場所に困るような家ではないと思うんだけどねぇ」 エグザベくん、この団地の間取りに不満はなかった。 4LDK、リビングとキッチン以外に寝室とニャアンの部屋。そして在宅勤務用のエグザベくんの書斎、そしてもう一つの部屋は現在物置になっている。将来子供部屋になるだろう エグザベくん前言撤回。我が家は広いようで狭い。ニャアンが言う絵本なんてたかがとくくっていたが、そうではないらしい 「物であふれますよあなた…絵本もかさばります…」 臨月を迎えるニャアン。リビングにはもう藤編みのベビーベッドが鎮座している。ベビー用品であふれるのは目に見えている 「ぼくの家は図書館で借りていたよニャアン」 「としょかん遠い…メトロにのって中央図書館までいかないと」 『ジオン中央図書館』ズムシティ行政区域に存在する巨大図書館である今はなきギレンザビ卿が本の虫であった事から蔵書数はコロニー随一である。 団地から徒歩10分「団地前」乗車メトロで20分。ターミナル駅「セントラルパーク前」下車。そこで乗り換え5分「行政区域前」下車、のち徒歩15分 乗り換えを含めると片道1時間はかかる。我が子を背負っておでかけするにはちょっと一苦労。 「エレカー…ほしいね」エグザベくん提案。エレカーがあれば片道20分ですむ。ただし団地に駐車場はない。 「そうだね…けど、きっと「絵本」は思い出の本になると思う、だから借りたり貸したりするより手元におきたい…けど”かさばる”」 堂々巡りであった。問題は解決しなかった。 後日、ニャアンはマチュにも同じ質問をします。 「たしかに図書館は遠いね、行ったことないけど建物は見たことある」 今は政府の要職についているヒゲマン(ジオン統合軍第五特別監査局局長シャリア・ブル将補)の関係でシュウマチュ夫婦はジオン行政地区にしょっちゅう足を運んでいます ※ここで「ジオン行政地区」に関して、ようは官庁街です。霞が関みたいな所だと思ってください、雑多にビルが乱立している訳ではなく、米国のワシントンDCやブラジルのブラジリアのように整備された計画都市です。 「公民館にあるんじゃない?」 マチュ、咄嗟の一言であった、団地に佇む謎の箱物。引っ越してからまだ日が浅いマチュもニャアンにとってまだ未踏の地であった。というかなんか怖くて行く気がしなかった 「公民館って会館?」ニャアン 「そうそう、なんかあるじゃん。建物」 「今度いってみようよ!ねぇシュウジ!」 「公民館はワクワクする場所だよ…ボクもニイガタの公民館で育ったからね」 シュウジが顔をのぞかせる 「いってみようか…」おっかなびっくりなニャアンは決意する 謎の建物「公民館」 少年少女3人のちょっとした冒険がはじまろうとしていた 後編へ続く。 以上がニャアンと公民館概念の前編になります 次回のジークアクスの内容次第で語り足りない所があると思いますので、続きはまた後日。 ニャアン達が住まう団地。ブレジネフカと呼ばれてもおかしくはない共産主義めいた計画居住区である。 ソビエトロシア同様人口のズムシティでは集合住宅が人気であった。人気なのではない、密閉型コロニーですらなお過密な人口を収容できる方法が集合住宅しかないからだ 戸建てという選択肢はあるが、ジオン公国の固定資産税はとても高い。生きているだけで社会的コストがかかる、酸素税が発生するスペースコロニーで