彼の腕の中で、小さな塊がよろめくような熱を放っていた。 一抱えにも満たぬ少女の肉体は、さながら赤熱した梵鐘のようであった。 あるいは本当に割れ鐘であったかもしれない――その喉から溢れる声は、 枯井戸の底より掘り出された水よりも、濁り、絡みつくような重さを持っていたから。 けれど少年は、焼け、転がる鐘を掻き抱く。己の腕の太陽の、僅かの火の粉さえこぼすまいと。 そしてそれに呼応して、少女の体温は上がるのだ――頬は紅く、息は上がり、汗は煌めき。 がらんごろんと、鐘が懐から飛び出しそうになるたびに、少年は彼女を抱き締める。 無論少女の方とて、嬉しくないわけはないのだ。深く想いを重ねた相手、 それとの間に何の障害もないとわかった果てのことだ。なのに―― 感情と正反対に手は彼を押し退けようとする。かと思えば、頭が自然に押し付けられる。 重ね合わせの棒磁石、それがぐるぐると、落ち着くべき場所を探して悶えている。 ただ磁石と違うのは、彼女自身がその行き着く先を知らぬことである。 少女の指は磁界に踊る金属片めいて――ぴくぴくと、忙しなく開閉を繰り返す。 普段なら、あんなに気兼ねなく掴めていた彼の裾。そこに剃刀のあるのを恐れているかのよう。 自らその膝の上に座り込んだり、至近にて顔を見上げてきた過去を忘れたのか? それらの過去が今、彼女の感情をより強くかき乱すのである――たった二文字の言葉が出ない。 否、それは既に彼に届いている。彼から同じ言葉の返ったも同然だ。 ただ少女の肉体の奥底――既に濾過しきっていたと思い込んでいた、 形にならぬ黒い泥が、主の幸福を素直に受け入れさせてくれない。 ようやく彼女の動きの落ち着いた頃には、二人の肌には瑞々しい汗の筋が垂れ、 学生服にもじんわりと、色濃く臭いの強い染みが点々と付いていた。 代わりに、翡翠色の瞳がぐるぐる回って彼の顔と、濃紺の海に浮かぶ黄金色の島を往復し、 また時には、助けを求めるように――他に誰もいない部屋の片隅にも向く。 だが次第に、視線は眼鏡を隔てた、真っ直ぐで、優しい目に吸い寄せられていくのだった。 少年は努めて平静を装って恋人の名を呼んだ。ぴくり、と小さな背が跳ねる。 彼の方とて、肉親以外がこのような距離に来たことはほとんどない――かつての彼女を除いて。 今度は逆に、彼自身の体温が上がっていって――懐の雛鳥を焼き殺してしまいそうになる。 男の、胸板。女とは骨格からして違う、生まれつきに硬い、筋肉と、骨の鎧。 それが吐き出す熱は、柔らかな脂肪によって作られただけの女の体温より遥かに直接的に、 両者の理性を焼き焦がす――卒業してから、と顧問に釘を刺されているというのに。 甘く囁く声に釣られて、少女の喉からも恋人の名がぽつ、ぽつ、ぽつとこぼれ出す。 二人の距離はなお近く、胸板と乳房とは境界を失うように張り付いていく。 汗は接着剤のように、若い恋人達を貼り付ける――だが、間に挟まる邪魔な布地。 彼らを、まだ、彼らでいさせる――枷のような、邪魔っけな、幾枚かの、壁。 先に釦を外したのはどちらであったろうか。先に相手の生肌に唾を呑んだのは? 我慢しきれず、鎖骨に指を伸ばしたのも――そこから地続きの柔らかな首筋に唇を添え、 これは自分のものだと印を付けたのは、さて、どちらが主導してのことだったろうか。 いずれにしても、彼の――彼女の――肌に朱い花の咲くたびに、興奮の度合いは確実に増した。 自然と目端は潤む。一層、相手の顔が魅力的にぼやけ――抗い難い光を放つ。 二人はもはや自分を止める術も、相手を押し退ける力も有してはいない。 触らせる、と、触らせる、は違うのだ。予測、想像、我慢のできる前者。 相手の意のままに動く指は――時に酷く官能的に性感を刺激したかと思えば、 まるきり見当違いの場所に、もどかしさの塊のように埋まってもいく。 その不規則が、自然に生じる斑が。若く――汚れゆく獣達には、心地よい。 もっと触れてほしい。そこじゃない。違う、ああ、そんなに強くは―― 撹拌され寸断され拡散され、理性の樹は今や欠片も残らぬ有様だ。 そうなるように初めから作られていたかのように。二人の唇は、ごく自然に重なっていた。 口腔の粘膜を通じて、二つの生命は本来あるべき一つの塊に戻っていくようだった。 拙い口付けだ――唇が揃いすぎている。歯が当たる。鼻がぶつかって邪魔になる。 息継ぎをすることを忘れ、窒息する直前でようやく思い出したように息を吸う。 顎に手を添える――などという言葉も似合わない、顎の下にぶら下がるような指付き。 けれど、この二人の初めての口付けはこれ以外にありえなかった。 かき混ぜられて互いの口内を行き来した唾液が一本の吊り橋となってかかる。 お互いの瞳を見つめ合う――彼の口からさえも、この感情を形容する言葉は出せない。 そして視線は橋の落ちるのを追って、相手の胸元へ誘導されていくのだ。 むわりとにおい立つ硬い胸板。甘ったるく媚びる柔らかな乳房。唾液の残りが喉を滑る。 再びの口付け――味を知り、匂いを知り、感触を知っての、能動的な。 自分とは違う人間の口の中を知るための。自分とは違う人間に知ってもらうための。 ふとした折に、二人は自分が“どちら”なのかを見失うことさえあった。 だからこそ、名を呼び合うのである。狂おしいほどに、背を抱き腰を抱えるのである。 次第に二人は、名を呼ぶための一呼吸、唇の離れる切なさにも耐えられなくなって、 いよいよ無言で、唇を――全身全霊を、貪り合う。それで止まれるわけもなかろうが。 暑い。ゆえに脱ぐ。脱げばそこに現れるのは裸である。ごく自然の帰結だ。 そして夢遊病者めいて相手の残り僅かな衣類を剥ぎ合っていった先、 全裸体の若い男女がそこに出現した、という事実をお互いが了解した途端、 理性の大樹がむくむくと、心の内側に蘇る。冷や水を掛けられたように、頭が冷える。 自分達は何をしているのだろう――そう、思ってしまったのである。 目の前の小さな身体は、雄を受け入れられるだけの深さを持っているか? 目の前の大きな身体は、雌が全てを委ねるに値する強さを持っているか? ――無意味な仮定だ。そのようなつまらぬ“理性”が目の前の恋人より大事というのか。 裸体を向け合うことの意味、それを分からずに今日、この場を用意するはずもない。 彼は、少女を抱くために。彼女は、少年に抱かれるために、今、ここにいるのだ。 両者はよもやの、相手からの中止の言葉に怯えるように様子を窺いあった。 一呼吸さえも緊張を生む。あっ、という一言が筋肉を強張らせる。 所在なく伸ばされた手の真意を探るかのように、お互いの視線が絡み合う。 そして時間にしてはほんの一瞬――若い獣の身中の火の消えぬうちに、 決意を込めた指先が、相手の肌に優しく触れるのであった。 背丈に反して、明らかに大きな乳房。それはいっそ異様な淫猥さを纏っていたが、 こと彼の指に触れられる場面においては、いくら大きくても足りぬ風でもあった。 指を沈め、その変形する様をまじまじと――童心に返ったように―― 見つめる少年の顔は性的な色さえ失い、純粋に、感情の交錯する赤い跡だけを白の上に残す。 少女の側もまた、自分の持ち物が彼を夢中にさせているという事実に酔っていた。 自分の中の女の部分が、彼を悦ばせうるのだと感じ入っていた。 声は上ずる。男をさらに頭に乗らせる。指の力も強くなる―― ぼろりと漏れた、切なさだけで組み上げられたような、彼の名を呼ぶ声。 また少年の頭は冷えた。先ほどとは違う理由――この雌を自分のものにするという、 冷徹なる決意と覚悟へ、彼を導く冷たさである。指は胸からするすると降りて―― 小さな胴をあっという間に越え、しとしとと濡れた股間にたどり着く。 指先がかかっても、開く様の見えないぴっちりと閉じた乙女の門は、 同年代の男子と比べると明らかに大きな彼のものを、受け入られるようには思えなかった。 実際、彼女の腿にぺちぺちと当たっている半勃ちのそれでさえ、優に余るのである。 恋人を気遣って、やめようかと言う彼の唇を――小さな唇が乱暴に塞いだ。 膝の上に乗せて後ろから、丁寧に、指でほぐしていく――日頃と同じ体勢、距離のはずが、 性的な意味を付与された瞬間、あまりに下世話な姿を見せ始める。 彼の指は、固く口を閉じた陰唇を、少しでも柔らかく、彼女の負担を減らすために動く。 口付けで十分に湿っていた膣口は、その潤滑液によって緩慢ながら隙間を作っていく。 ぬち、ぬち、と生々しい肉の音が、少年に――被虐的な情を起こさせた。 こんなに小さく、狭い箇所に、尻に押し当てられている“これ”を入れられるだなんて。 人一倍人情に敏い彼は、己の肉の突き割られる感覚までも浮かんでくるのである。 だが一番大切なこと――自分からそれを望み、そのために全てを差し出しているということを、 少女は何度も彼の手を握って示すのだ。大丈夫。頑張る。平気―― その頼りない普段通りの言葉に、どれだけ少年は救われたろうか。 やっと指先が辛うじて見えなくなるぐらいの隙間をこじ開けきった彼は、 膝の上の恋人の向きをくるんと回転させ、正対するようにした。 慣性の乗った乳房がたぷんと左右に揺れ残る中――少年の指が、小さな胴を掴む。 それは破壊的な光景である――先端さえ入るかどうかの場所に、勃起しきった凶器が、 少しでも奥に侵入したいとひとりでにぴくぴくしているのが、見えているのだから。 小さな唇は、優しく結ばれた。それで彼の覚悟が固まるには十分だった。 みちみちと、強引に――ゆっくりと――力を抜き、抜かせながら――槍が突き立てられていく。 少女は片手を彼の腕に絡めながら、一方では健気にも口を塞いでいるのである―― その気遣いを無駄にせぬよう、少年は懸命に、針の穴のような狭い穴に、縄を通す。 亀頭一つ収めただけでも快挙であろう――少女の下腹部はぼこりと膨らんだようになり、 一方の彼もまた、万力かと思うような――物理的な圧力に敏感な部位を晒しているのだ。 辛うじて成立している拮抗、行くも引くも困難な、立ち往生に等しい状態―― それをあろうことか、少女は腰をゆっくりとゆさゆさ動かしてみせ、 繋がったままで、彼に何か――この行為の終末に向かう何か――を与えてやろうとする。 刺激としては、締め上げられる力に及ばない。今にも、すぽん、と抜けてしまいそうである。 だが、恋人の気遣いは彼の心を打つのであった。上背のある彼は眼鏡を外し、身体を曲げ、 小さな身体の上から――包むように唇を降らせた。少女もまたそれに応えるのであった。 激しい肉のぶつかり合いではない――繋がったままの、粘膜同士の接触――そして射精。 若い熱は、彼女の奥の奥まで染み込んでいく――火照りが、血管を巡って頭を蕩かせる。 萎びて柔らかくなったものが抜かれると同時に、少女は彼の胸板に頭を埋め、 撫でてくれ、とばかりに擦り付けるのだった――そして彼がそうしようものなら、 またその唇をにへらと歪ませて、嬉しそうに、恋人の名を紡ぐのである。 一般的に三割。そこからさらに三割。一割にも満たぬ確率の回廊を抜けるには至らず、 二人の遺伝子が混ざり合うことは――少なくともこの時には起こらなかった。 だがこのたった一度が、のぼせ上がった二人に家族計画の大切さを教えることになった。 いつか、そのつもり、であっても――それが今でなければならないことはないのだから。 避妊具の中、目的地に辿り着けず虚しく果てる生命の素を見て――二人は思う。 いつかそれが、遥かに重い本物の生命として、恋人の中に生る時を。 いつかこれが、本来の役割を果たして彼との絆の証明となることを。 指を絡め、互いの熱に融かされながら――その姿形を夢見るのだ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 小さな身体とて、浮く。湯船には沈みきらない。それは彼女が沈もうとする力よりも、 二つの大きな浮き袋、一つのさらに大きな水風船の持つ浮力のせいである。 じっ、と少女は背後にいる彼を睨んだ――だがそれは非難のためではなく、 彼の側からぐるりと手を回して、湯船に沈めてくれるように促すためである。 そしてまたいくらかの湯を湯船の外に押し出し終えたのち、二人は肩までやっと浸かった。 しわがれた声も、浴室の中ではいくらかましに聞こえるものだ。 少女は上機嫌に、腹を撫でながらどこかで聞いたような歌を途切れ途切れに繰り返す。 すると赤子も機嫌を良くしたのだろう、ずん、と内側から蹴り上げた勢いで、 湯面には大きな波紋が広がった――しかもそれだけではない、下からの持ち上がる力で 彼女の乳房はまたぐい、と浮力によって水面より上にその生白い肌を晒す。 それをまた沈めてやろうと、彼が後ろから掴むと――湯の熱によって緩んだ乳腺からは、 ぷぴり、と一筋、細く白い橋が掛かって湯船に跳ね、散っていった。 それを皮切りに、ただ彼の指が添えられているだけの少女の乳房――その突端からは、 噴水のように、勢いよく乳汁が噴いて、浴室のあちこちに飛び散るのである。 そして当然片側だけに留まらない。触れられていない方の乳房は、 湯の中でたぽたぽと揺れながら、絞られもせずに白い靄を湯の中に散らしていた。 本人の意志で止められないものを、どうして彼に止められようか。 みるみるうちに水中は白くかすれる。それを止めるために少女の身体ごと引き出したものの、 濡れるのが浴室の床になっただけで、溢れ続けていることに何の変わりもない。 恨めしげに自身の胸をぎゅうぎゅう触ってみる彼女の背後から、太い腕が二本、 抱きかかえるようにその小さな胴を捕まえて、胸に指を食い込ませた。 飛ばす先は、椅子の上に置かれた湯桶である――ぱたたた、ぱちゃ、ぽたた。 二筋の噴水は、止まる気配もないままに、桶の底面を真っ白な水面に沈めてしまう。 そして液面の上に滴が踊り――いよいよ、また床に飛び降りていかんとするところ、 少女はまた、彼の顔を見上げた。申し訳無さの勝つ表情であった。 だがそれよりも彼女は――手によって搾られ、無意味にその乳汁が処分されるよりも、 彼によって消費されることを望んだ。鉄塊でも持ち上げて見せるかのように、 重たい自身の乳房を彼の顔の前に差し出して、吸ってくれ、とせがんだのである。 火照って赤みを帯びて――しかし白い肌の先端に咲く、黒く広がった乳輪。 赤子ではないのだ、抵抗はあろう。それでも彼女の願いを無にするわけにいかず、 ぱくりと咥えた途端、力を掛けられた海綿めいて、ぷしゃあ、と口の中に乳汁が爆ぜる。 先程までの締まりのない流出ではない――相手に、与えるための、授乳。 飲む人間の息継ぎに合わせるように噴くそれは、自然と一定の間隔に収まっていき、 触られずに放っておかれたもう一つの乳房も、断続的な射乳へと落ち着いていった。 浴室には、舌の這うちゅぱちゅぱという音と、少女が噛み殺す、熱を帯びた吐息の音がある。 呼吸のために唇が乳輪から離れた途端、ちゅぽん、と下品な破裂音が壁を跳ね回り、 一層二人の興奮を――本意ならず――煽り立てる。いつの間にか彼は勃起していたし、 彼女の膣口も、さっきしっかりと洗ってもらって湯船にも浸かっていたというのに、 とろとろとだらしなく、発情の蜜を垂れ流し――腿を汚しているのだった。 そしてようやく乳汁が止まったとて、仕上がってしまった身体は収まらない。 少女は彼の腰に、ぐりぐりと尻を擦り付ける。身体が揺れて、ゆさゆさと乳房が横に波打つ。 それは、どの角度から見ても――背後から見ても、くっきり見えるほどに大きい。 また、臨月胎もそれを凌駕するほどの強烈な存在感を放っているのである。 太く、大きな彼のものが浅くなった少女の膣道をあっさりと埋めてしまう。 まだ半分も入りきっていないのに、ずん、と最奥に突き当たる感覚がある。 それをゆっくりと引き抜きながら――ずん。また――ずん。少しずつ、その勢いを増していく。 少女は彼の与えてくれる強烈な一撃を、壁に手を付きながら耐えようとはするものの、 先の搾乳と授乳で蕩けた身体は、脚に、上体を支えるだけの力を残してはくれない。 彼は、彼女自身の身体をも持ち上げるようにがっしり支えながら、 されど逃げるという選択肢を与えないまま、ひたすら、奥を、奥を、突いていく。 腹部をぎっちりと赤子と性器に埋められて、絞り出される声は、たとえ誰が出したとて、 彼女のように、震えてかすれた、聞き苦しいものになるに違いない。 だが彼は、その声色が――確かに、深い快楽と愛情とに甘く上擦っていることを聞き取る。 苦痛の声ではない。小さな己の身体の中に、彼という人間――そしてその間に授かった子を、 しっかりと受け入れて、愛するという想いの詰まった、そんな声である。 そして彼はまた、彼女の一番奥に精を吐く――既に許容量に達した容積は、 当然、放たれる精を抱え込んでおくことはできない。ぼたぼたと、白く粘ついた汚れが落ちる。 気を取り戻した少女は、彼に向けて唇をちゅばちゅばと動かした――赤子めいて。 それを迎える唇は、やはり少女への愛情に満ちている。舌先に垂れる唾液の橋の美しさ―― 腰の抜けてしまった彼女を、彼は抱き抱えるようにして脱衣場に引き出し、 新たな刺激で再び射乳の始まらないように注意しながら、その全身を拭いてやる。 大きく前に突き出した胎は――そこに生命を抱えること自体の無謀さを象徴していた。 それを彼の手が撫でる。ずしり、と余りに重い、存在感そのもの。 ふと無言のまま――手を動かさずにいる彼に、少女は甘えるように抱きつくのだった。 まだほこほこと湯気の上がる彼女の身体を寝室へと運び終えると、 その長い髪の水気を切るために、またぐるぐると頭の上に綿の蛇がとぐろを巻く。 巻き上げられた桃色の髪の付け根、うなじの美しさは――年不相応なほどであった。 それにまた、彼は生唾を飲む。いけない、とわかっていながら、股間が硬くなる―― 背中をぞり、と撫でる彼の先端部の感触に、少女はからかうような笑みを投げかけた。 寝間着の胸元を開いて、黒い乳輪の端を彼に見せ――するか、とだけぶっきらぼうに呟く。 その言葉が、彼を紳士から獣へと引き戻す一番の近道であると知っているから―― 寝床にほとんど釘付けにされたように、もはや己の身体の重ささえ持て余して、 少女はひたすらに、彼が打ち付ける腰のもたらす刺激に集中している。 性交というには、それはあまりに一方的な行為であった――雄が、雌を貪るだけの。 だが彼女にはそれでよかった――否、それが、よかったのだ。 愛する彼が、自分の身体を大事にしてくれる反面――獣のようにも、貪ってくれる。 その事実は何より、彼女の欠けた心の穴を埋めるのである。