始まりの場所に辿り着いた。魔女はどこから来るのか、恐らくは此処がその答えとなる場所だった。 魔女を鎮めることがボクの一族の役目であった。その巫女として現世に蔓延る魔女たちを何千何万と鎮めてきたのである。 それにしても、このような場所が存在するとは思いもしなかった。初めてアレを体験するまでは。 それはドッペルである。マギウスが魔法少女の解放を謳い、作り出した魔法少女の救済機構だった。ドッペルを始めて発現した時、些かの違和感があった。 魔女というものは内から来るもの、それまではそう思っていた。当然の話である。魔法少女が魔女に変容した結果、魔女になるのだ、そして魔女は魔法少女の特徴を顕している姿形をしている。 しかし、ドッペルが発現した時、内から来るものにしては違和感を感じたのだ。 ドッペルと対話した。確かにボクのことをよく知っている。しかしそのドッペルはボク自身ではない、半分直感であったが、そのように思えた。 それに気づき、マギウスとも和解した時からドッペルを研究するようになった。里見灯花、柊ねむ、アリナ・グレイ、各所の調整屋たちが協力してくれた。 里見灯花とは研究仲間から進んだ関係になった。その日々は楽しいものであるし今後も続けたいが、今はそれによってもたらされた研究成果の話もするべきであろう。 それはドッペルの合体である。このような事例は天音姉妹、東の団地の面々、アザレアの三姉妹と多数報告されていた。灯花と絆を深めていったボク、いやボクたちはそれを体験した。 そして検証は進む、ドッペルが合体できるのならば魔女も合体することができるのではないか。ドッペルでの合体を経験していたこともあり実験はスムーズに進んだ。 この実験には特にアリナ・グレイが乗り気になった。魔女が好きらしいので当然の帰結であろう。 魔女の合体にも成功した。これにより、素材の合体によって研究は更なる発展を見せるようになった。 そうしてここに来るまで様々な魔女の素材を集めた。特に重点を置いたのは空間移動を得意とする魔女と単純に魔力が多い魔女だった。 幸運、象徴、そして最大最厄の魔女たる悪風偽の夜、それらの素材を媒介にしてようやく辿り着くことができた。 実際の所、悪風偽の夜の素材を手にした時点で計画を実行することはできた。ただリスクがあったのだ。 それはあの時倒した象徴の魔女の素材だった。どうやらボクが倒したアレは分体だったらしく、本体はまだ生きていた。 その各所に現れる素材を解析した時にわかったことだった、調整の素材として用いると魔力が馴染み魔女を感知しにくくなるのだ。 そこから、魔女の素材から転移装置を作る方向にシフトした。そうして研究を続け、完成し、ようやくこの場に辿り着いたのである。 「この本、興味深いねー。魔女のことが書かれてるよ」 「アッハァ、いれるならずっとここにいたいワケ、っていうかセカンドアトリエをクリエイトしたいんだヨネ」 各々好きに見て回っている、危険な場所ではあるが誰もいない奇妙な静かな場所だった。 本をいくつか読んでみる。これは魔女の図鑑だ。ボクたちがマギアレコードを作っていたように、ウィッチレコードともいうべき代物が作られていた。 となると当然次の疑問は 「これって誰が作ったのかにゃー?今は管理人さんがいないのかなー?」 「もう死んだ、その可能性もあるワケ」 誰が作ったかであった。 「しばらくここにいる必要がある」 「じゃあアリナがいるワケ」 「お姉さまやねむやういに無事を報告しなきゃだね。わたくしたちは帰ろうかな」 「そうだね」 そうして暫しの時が過ぎた。管理人は数か月ほど待ってもついぞ現れなかった。死んだかどうかはともかくいない説を一旦確定させた。 その間にも魔法少女たちが出入りし、研究が続いていた。この空間についてだいぶわかった。やはりここは魔女が生まれる場所であり、それと同時に生まれた魔女を記録する場所だったのだ。 作った人については仮説ではあるものの魔法少女の願いによって作られた、一応そのようにケリがついた。動機はわからなかったが、このような空間を作ることができるのは魔法少女の願い以外にあり得ない。 しかし、まだわからないものがある。それは最下層というべき場所にあるバックドアだった。誰もその扉の先を覗くことはなかったし説教的に話題に出すこともなかった。 パンドラの箱、そのようなものをそういうらしい、そういう意味では覗きたくないし話題に出したくない、というのが適切だろう。 実際のところ、ボクもこの先の未知の領域には得体のしれない恐ろしさを感じていた。深淵、と形容する魔法少女もいた。クトゥルフ神話という話からとったものらしい。 「ウィッチレコードじゃ味気ないヨネ」 この場所に住んでいるアリナが呟いた。万が一ここから出入りできなくなった時のために生活空間が整えられ食料やグリーフシードも備蓄されていた。そういうこともありアリナはここで暮らすようになっていたのだ。 「味気ない?」 「マギアレコードの対照でウィッチレコード、バッドセンスなワケ」 「名前、何か思いついた?」 「ジーニアスアーティストでも、このアメイジングな空間にふさわしいネームは思いつかないんだヨネ」 少し、考えてみる。先ほどクトゥルフ神話を思い浮かべたが、日本にも神話があった。幼いころに学んだ神話を思い出す。 思いついた。 「名塚底根」 ウィッチレコードよりしっくりくる。アリナも頷いていた。 そうしていつの間にか、ボクたちの中でここの名称はウィッチレコードから名塚底根に変わっていた。